2014/03/03

インドネシアの製鉄所で爆発!?

 嫌韓だとか反韓だとかとは別の観点、つまり一技術屋としてびっくりした話。

 韓国・ポスコ社が現地法人との合弁で立ち上げた製鉄所がある。昨年末に炉の火入れ式を盛大に執り行ったものの、すぐにトラブルで操業停止に陥った、ということだった。原因は高炉の破損…ということで、報道を信じる限りは設計レベルの問題としか思えなかった。ポスコ自体からの公式のニュースリリースも無く、「実際のところどうだったんだろうね」という思いを持ったまま仕事に忙殺されていたのが実情だ。まぁ、ニュースリリースが無い時点でポスコは当事者能力が無いことが露呈したと言える。

 ちなみにポスコの株価は上記の報道を受ける形で急落していた。

 今日、久々の休日にいろいろとネット上をふらついていると、なんと先週辺りに件の製鉄所で爆発事故が発生していたことが判明。しかも、爆発の原因が水蒸気爆発ではないかという報道内容に絶句。これが事実なら、余りにレベルが低いっつーか一技術屋の想像を超える当事者の想像力の無さだ。

 具体的には、先のトラブルで高炉内に固まったまま残っていた鉄鉱石を再熔解させるため、高炉をまず作動させた。この時点で既に事故は約束されたようなものだ、エンジニアとしては常識を逸した判断としか言えない。次いで熔解した鉄鉱石が高炉内にあった水と接触、急激な水の沸騰で高炉の外壁が破壊されるような高圧力蒸気の発生を招いた、というものだ。

 水蒸気爆発は実はそう簡単には起きない。が、起きるとその威力は半端じゃない。だから、蒸気爆発発生の可能性がある場合、如何に起きる条件を回避するかに金や技術をつぎ込む必要がある。いや、そもそも水蒸気爆発が起きる可能性が想定されるようなことは、はなっから選択肢としてはいけない。割に合わないのだ。

 一度、製鉄所内のトラブル対策を受けおったことがある。対象は周辺機器だったのだが、何度か製鉄所にも立ち入る機会があり、製鉄設備の規模感は身体が覚えている。その際に製鉄会社の方に教えてもらったことのひとつが、「いったん動かした高炉は絶対止めない」ということだった。高炉を止めるのは二度と起動しないことが大前提で、止めた高炉の復旧は新規に作るよりたいてい高く付くとの話だったと記憶している。間違っても正規の停止手順、つまり再起動を前提とした対策を含めた停止手順を踏まない限り、再起動は有り得ないということだ。

 さて話をインドネシアの製鉄所に戻すと、爆発は2回発生し、貯蔵していた燃料であるコークス(石炭)にも引火、周辺設備もかなりのダメージを受けた模様のようである。手間や金を惜しんで危険行為に手を出し、更なる損失を出したとなると本当に笑えない。もし危険行為であることを認識していなかったとなれば、もはや底抜けの××としか言えない。報道を信じる限りは爆発や火災に伴う人的被害は無かったようだが、その限りにおいてのみ笑いモノになることはできるだろう。

 翻ってアラブ首長国連邦の原発は大丈夫なのか、事故時にはそのものズバリの水蒸気爆発のリスクもあるのだが。ちなみに別エントリに書いたことがあるトンデモ韓国製品はポスコの系列会社によるものだった。

 何れにしても製鉄所が操業できていない時点で相当な経済的損失がインドネシアで発生している筈である。アラブ首長国連邦の原発プロジェクトでは、損金が発生した場合の負担先は韓国政府、つまり韓国国民の税金だ。このプロジェクトではどうなってるんだい?

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