コスモゼロ - 零式宇宙艦上戦闘機52型

セクシーですかそうですか。いつかは取り組まねばならなかったコスモゼロ、再々挑戦でリベンジ成る!


製作覚書き・正調編


 「コスモゼロ」にはオフィシャルな三面図が有るが、これが松本零士氏のイラストや作画用設定資料とシルエットが一致しないのは一部で有名な話。初期のバンダイのプラモデルは明らかにこの三面図に準じた形状で、組み立てて色まで塗ったものの「なんか違う」感に打ちひしがれたのはもうかれこれ35年以上前、ガンプラ以前のお話。横から見てる分には良いのにな~ってあたりで更に打ちひしがれましたよ、打ちひしがれましたとも。然るに3DCGモデルでのコスモゼロの製作は、改造テクを持っていなかった35年以上前の残念なプラモ製作結果へのリベンジであり、幼少の私がイメージした「カッチェー」コスモゼロの形状を取り戻す個人的には意義のある一大事業なのである。

 「押井守やエロゲーやDOOMやフライトシムやテクノやエヴァやスニーカーやギャラクティカに浮かれてそんなこと30年ぐらい忘れてたでしょ?」というのは図星だから言ってはいけません。

 真面目なところリベンジ計画開始はかれこれ10年程前、多少貯金もできたので腹をくくってLightwave3Dを購入した直後に遡る。が、当然いきなり思い描く曲面をポリゴンモデルに与えられるテクが有るはずも無く、幼少時の再現と相成るのが当然の定め。リベンジは敢え無くとん挫する。再リベンジのきっかけは、Lightwave3Dモデラーにこれまで使ったことの無い機能、キャットマル - クラーク・サブディヴィジョン・サーフェス(Catmull-Clark subdivision surface)があることを2012年8月末に思い出したことである。正確なところはとにかくググって頂戴としか言えないが、要は三次元曲面をモデル化する際に「無茶が効く」極めて便利な機能なのである。「キャットマル博士は『トイ・ストーリー』などを製作したピクサー社の最高執行役員だよ」という点を指摘すれば、CG映画製作の現場の必要性から生まれた技術であろうことは明らか。この機能、Lightwave3D ver.9で既に実装されていたらしいのだが、ver.8あたりまでで自分なりのモデル製作法が固まってしまったため無意識にスルーしてきたのだ。では、この機能を理解し、新たなるモデリングテクを会得するために最適な素材は何だろうか…それが曲面の繋がりが命と言える私にとっての「カッチェー」コスモゼロだったのである。と言う訳で、実は再リベンジもキャットマル - クラーク・サブなんとかを使いこなせず失敗する可能性を充分にはらんでいたのだ…というのは今だから言えるお話。

 リベンジを期して早10年、思えば時は巡り、ヤマトは復活したと思えばキムタクを乗せて再びさらばしてしまい、果てはアホ毛キャラ達を乗せて妹が増えたスターシャの住む惑星イスカンダルへ再び旅立ってしまっていた。

  コスモゼロ再リベンジでの条件は二つ。キャットマル-クラークなんとやらを使い、最後までフリーズ(曲面をポリゴン群に変換すること、非可逆な操作)しないことと、参考図面は松本零士氏のイラスト1枚と同アングルの作画設定資料1枚のみとすることである。幸いにして、後者にはコクピット内の設定画も含まれ ている。これに幼少時のイメージを加えれば、件の三面図が入り込む余地はない。またGoogleを用いたリサーチで、ぷうぺら氏+エス氏による松本テイストを追求したガレージキットのコスモゼロ製作例を発見。目指すところに多少の違いはあるものの、バンダイのプラモの形状に「なんか違う感」を持つ人々が他にも居る事実に大いに勇気づけられたのが2012年9月のことであった。こんなページを読んじゃう人には絶対お勧め、是非一度リンクを辿ってその目で確認めされよ。
 形状決定上の重要な方向性は、まずインテイク状の部位がそのまま外せそうに見えないこと、別の言い方をするとエアインテイク状部位が胴体の一部で あるように見えることである。従って、モデル自体も胴体~インテイク~主翼を一体とすることが必須となる。また胴体(主翼前縁付け根から横向きスラスター までの前後方向スパン)断面形状はカレーパンマンの顔っぽいというか真横から見た銀河ぽいっと言うか、円を芯として側面が薄く横に張り出すような形状と し、むしろ平たいという印象とすることである。結局断面は、垂直尾翼位置で外側に凸の曲線、主翼取り付け位置でも外側に凸の曲線、ところが中間のインテイ ク状部取り付け位置で外側に凹の曲線を描く。ただし、この胴体断面もインテイク内では後端に向かって円形にならなけらばならないのは拘束条件だ。これらの 方向性を当然一つの解釈と感じる人も居ると思うが、私にとっては参考図が三次元的に成立していると仮定した場合に得られる当然の帰結なのである。

 ところでコスモゼロののデザイン、銀色で円形エンジンノズルを有するためか、国内外を問わずロッキード F-104スターファイターを連想する人が少なくない。F-104をモチーフとするならば、胴体断面を円形に近づけ、機首(正確には2本のアンテナ状突起の基部付近)の横幅を絞る方向を選ぶというのは当然の方向性である。対して私のコスモゼロデザインへの感触はむしろF-104的形状へのアンチテーゼであるため、胴体断面をどれだけ円形から遠ざけられるかがむしろ肝となる。結果として、胴体断面形状はF-104とロッキードA-12/SR-71のそれらの中間的な形状となる。

 旧日本軍機かFW190Aの星型空冷エンジンのカウルをモチーフとしたと思われるエンジンノズル基部の大きさとその前面の開口幅を決めてしま えば、胴体断面形状、寸法、インテイク状部と胴体との接続位置などは参考図から自動的に決まったというのが実情である。やはりこの部分に解釈は不要であっ た。他方、機首付近の横幅は参考図よりやや広めとし、件の三面図にやや近い形状を選択した。これは幼少期のイメージを優先し、F-104的形状解釈を嫌っ たためである。という具合にモデリングの方向性はあっさりと固まり、寸法参照用のラフモデルは1時間程度の短時間で組みあがってしまった。
 ラフモデルで露わになったのは、両脇のスラスターからキャノピーかけてのラインにはひと工夫が必要だということ。ラフモデルでは上述の胴体断面形 状からさらに側面を単純に延長しただけなので、キャノピー両脇が凹み過ぎ、張り出し部もスラスターを取り付けるには余りにも薄い。この辺りの形状は胴体後 ろ側からは決められそうもないので、とにかく機首側の断面形状をどうしたいかから考えた。その結果、スラスター部分は「リスが両頬に食べ物をほおばったよ うに膨らませる」ことで解決できそう、との結論に至った。錨マーク感も全体形状で出せそうだし、前面キャノピーフレーム近くまで胴体の凹み部を延長できれ ばコクピットから楽に滑って降りられそうな凹みが作れるじゃないですか!具体的には以降の図を参照頂きたいが、よもやリスや滑り台がモチーフとして組み込 まれているとは誰も思うまい。あらためて文章にすると自分でも可笑しいが、スムースに滑り降りられるようにコクピット~スラスター付近にパネル境界を設けないことにしたのは本当の話。
 大抵はモデリング作業で何度か躓くものだが、今回ばかりは隘路に迷い込むことが無かった。自分の求める全体形状を塊として着手時に掴めていたのが理由であろう。ヤマトの苦難の航海とは違い、敢えて例えるならば「マゼラン星雲波低シ」である。ちなみに胴体後端の処理は、見えないのを良いことに上図の ようにざっくりしたものである。正直トイレットペーパーの芯にしか見えない。(オレンジ色のパーツは寸法参照用のラフモデルの一部。)

 そして、リベンジ成就を確信するに至った製作中の1枚がこれ。磨きあげられた金属製風洞模型のよう。まだリスっぽさは今一つ。

 形状ほぼフィックス。着陸脚も作ったが後脚は若干長くてギリギリ格納できない。胴体の平べったい感じは狙い通り。
 カレーパンマンでリスで滑り台で錨マークでトイレットペーパーの芯ではあるが、今回の挑戦により個人的にはリベンジ成った。述べ作業時間30時間 以内の完成は私にとっては異例中の異例の早さである。胴体側面にある排気口らしき複数のスリット状開口部の位置は参考図面とは違うものの、完成したモデル は私にとっての「カッチェー」コスモゼロの要件を全て満たしている。とにかくどの方向から見ても自分のイメージと齟齬をきたさないシルエットを持つ「マ イ・コスモゼロ」が出来たと手放しに自画自賛する次第である。細かく言えば何箇所か凹状エッジが甘くなっているが、必要であれば治せば良いだけの話。なお 胴体側面のスリット状開口部の位置ずれはモデリング初期におけるサーフェス制御点配置のミスと滑り台の導入が重畳したのが原因。開口部形状はサメのエラが モチーフである。
 最後にキャットマルなんとかであるが、癖や利点、バグかも知れない奇妙な振る舞いまで含めて多くの知見が得られた。問題は必要メモリの大きさ。事前の予測は150MB程度であったが、Lightwave3Dレイアウト上で実に1GB強を要求する。いまいち使う人のいない機能である理由の一端を垣間見た気がする。




(2012/11/12-14記 - 宇宙戦艦ヤマトBGM集1、2を聞きながら)


製作覚書き・妄想編 !!注意:下ネタあります!!


 オフィシャルなコスモゼロ三面図が、設定資料におけるコスモゼロと全く整合しないフォルムを持つことは先に述べた。ここからは思考実験というか妄想。

 もしこの不整合が意図的であるとしたらどういう理由が考えられるか?
もしここから先もお付き合い願えるならば、共通認識として件の三面図を知っておいてもらう必要がある。知らない人は「コスモゼロ」か「cosmo zero」でGoogleあたりでイメージ検索して欲しい。それっぽいものはすぐに見つかるはず。公式三面図におけるコスモゼロの形状の特徴は以下の通 り。

①設定資料画から曲面の多くが平面に置き換えられている、特に正面から見て胴体各斜め上下方向の傾斜面はインテイク前端より後ろから機首付近までそれぞれ単一の極めて平面に近い面を構成している。

②上面図では胴体やインテイク状部の横幅が後ろに向かって直線的に広げられている。

③主翼後縁にも大きな後退角があり、翼端はインテイク状部の後端近くまで後ろに下げられている。

④明らかに胴体は平べったい。

①による効果は、両脇のスラスター付近に上下方向へのふくらみを持たないことである。また②および③の効果は、エンジンノズル部を除く上面からの形状が三つの二等辺三角組み合わせたように見えることである。具体的には、主翼、胴体(両脇スラスターより後ろ)、機首(両脇スラスターとそれより前)である。これらの効果の結果として、胴体部と機首部が「一本の構造物」と言う印象を薄め、胴体が両脇スラスター位置直後部位置でくびれている或いは機首部分が胴体部分 に対して太いという印象が巧妙に回避される。

 では機首は二等辺三角形のまま、胴体と主翼を長方形に置き換えるとどうか。これは設定資料図からの私の解釈にやもすると近いのだが、シルエットは突如男性のシンボル的様相を呈す。ここで胴体を円形に近い横広の楕円とすると、三次元的にも件のシンボル的形状をうっかり獲得しかねない。つまり、④の特徴は件の形状獲得の回避の駄目押しとして機能する。私の妄想の結論は簡単。公式三面図が規定するフォルムは上述のシンボル的形状の獲得を巧妙に回避している、そしてその回避は意図的である、ということである。

 「公式三面図が規定する形状こそが玩具の形状である」という状況下において、件のリスクを見通せた力量のあるデザイナーならどのように対応するか…あるいは上面図のシルエットのみとは言え第三者から件のリスクへの懸念が事前に表明されていた場合は…妄想が導き出す回答は常識的なものである。公式三面図の規定するフォルムは、「大人のおもちゃ」的フォルムから積極的に離れることで獲得、乃至は意図的に与えられた「子供のおもちゃ」としての正当なフォルムなのである、私の妄想の中ではね。

 続いてもう一つの妄想。上述のようにコスモゼロの胴体を円形に近づけると件の形状を獲得するリスクの発生は避けられない。だが、それだけで件の形状を必ず獲得するわけでもない。実は人間の腰回り位の縦横比の楕円断面、という別の選択肢をラフモデル作成直前まで残していた。私が「ぷうぺら氏+エス氏が獲得したコスモゼロの形状」にこだわってしまう理由は、この実現されなかった選択肢とどうしようもなく関係がある。

 この選択肢での「マイコスモゼロ」のモチーフ、それは「松本零士的女体」である。この妄想編、男性のシンボルの次は女体なのである。

  更に加えるならば、求める女体のフォルムは「ミステリーイブ」や「セクサロイド」の時代のそれである。この時代の「松本零士的女体」は腰がとにかく細い。どれくらい細いかと言うと太股付け根と同じぐらい細い。結果、腰~太股間で横幅を約2倍に拡大され丸みも備えたラインはお尻のボリューム感を否応なく強調する。ここで個人的に大事にしたいモチーフは「腰の細さ」よりむしろ「丸いお尻」である。さらにその女体の頭部に「千年女王」風の赤い三本角ティアラを、両手に槍なりをそれぞれ与えると、もうひとつの「マイコスモゼロ」のモチーフたるシルエットが現れる。

 絵が下手なのが実に遺憾だが、描いてみるとこんな感じ。私にはこれはまぎれもなく
 さて、立体形状への落とし込み方である。大まかな方針は以下の通り。

①腰のくびれに相当するくびれを両脇スラスター~インテイク間に設ける。

②「丸いお尻」のシルエットをインテイク状部~エンジンノズル基部が担う。インテイク状部、エンジンノズル基部ともよりグラマラスに、丸みを強調する。

③両脇スラスター位置を首~肩口相当とし、主翼全縁は両腕のライン相当とする。

 これらの方向性に従ったアウトラインの一案は下図のようになる。
 「松本零士的女体」案では両脇スラスター位置での横幅が今回のCGモデルの胴体幅と同等、つまり胴体厚みはスラスター取付けに充分で、「リスの頬」形状の導入は不要となる。ただし機体後半部をグラマラスにした分、機首先端を絞り過ぎずにボリューム感を稼いでおかないと、重心が後ろに依り過ぎて上手くない。また機体後半部、後ろに向かって幅広となる胴体とインテイク状部との接続部も悩みそうだ。ここであらためて文章にしてみると、例え取り組んでいたとしても立体的に成立させられたかは甚だ疑問だ。ちなみに上図の「松本零士的女体」案の形状決定ガイド用の一点鎖線のアウトラインは、図らずも女性モチーフの道祖神的シルエットとなっている。コスモゼロのシルエットは匙加減一つで男女ともに化け得るのだ。

 さて、ここまで来れば私がぷうぺら氏+エス氏による松本テイストを追求したガレージキットのコスモゼロ製作例の形状にこだわらざるを得ない理由は明快だ。幸いにしてぷうぺら氏とはメールでやり取りする機会を頂けた。氏のホームページ、メールのやり取りからは、氏が「丸いお尻」にこだわったなんて形跡は当然微塵も見られない。にもかかわらず、インテイク状部~エンジンノズルおよび機首~スラスターの形状やボリューム感、全体形状のバランスは、私の「松本零士的女体」案が獲得すべきものに極めて近いという思いは強い。

 ぷうぺら氏は既にデスラー総統のグ ラスや惑星間弾道ミサイルを立体造形物としてものにしておられる。思えばこれらのデザイン、極めて松本零士的な曲線、曲面に満ちている。女体、グラス、ミサイルを問わず松本零士氏がペンで描いたそれらのアウトラインが共通の美意識に基づいているならば、ぷうぺら氏は既にその共通の美意識に立体化という作業を通して触れており、その一部なりを会得されていると考えたっておかしくない。もしそうなら、ぷうぺら氏が具体化し、エス氏の手でチューンされたコスモゼロの形状と、私の「女体」アプローチから追い求めたマイコスモゼロの形状とが交錯することに何の不思議もないのかもしれない。

 ここで「デスラー総統のグラスのアウトラインの向こうに『松本零士的女体』のアウトラインが常に透けて見える」と言いたい訳ではないので念の為。「女体のアウトライン」は行きつく先ではなく、特定の美意識という関数に「女体」を入力した際の素の出力に過ぎないという意味である(少年漫画ではさらに「フィルタリング」処理がなされたものが最終的な出力となるだろう)。おそらく、ぷうぺら氏は自身が会得されている「松本零士的なもの≒松本氏の美意識を反映した何か」という関数に「コスモゼロ」を入力し、ガレージキットという形で具体的な出力を得た。そしてその出力結果が目指していた方向性は、エス氏によってさらに研ぎ澄まされ、或いは純化された。他方、私は「松本零士的女体のアウトライン」という松本氏の最終出力結果だけを引用したに過ぎない。例え結果が似ていても、そこには本質的な相違がある。かの方々の立つ位置は私の立つ位置のまさに彼岸である。姿は見えども間にある水は余りに深く、その流れは余りに激しい。

 妄想終了~! 



(2012/11/15-17記 - 電気グルーブ/イルボン2000を聞きながら)

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