約1年間に購入したDELL XPS 8940(Intel Core i7-10700)のCPU冷却性能向上及び静音化作業に一区切りがついた。そもそものは6月、たまたま調べたCPU温度の余りの高さに驚いたことから始まった話だ。
CPUの最高出力を制限することでなんとか誤魔化そうとするところから始まり、色々調べた結果として根本的な対策が必要と判断し、CPUクーラーとケースファンの交換にまで至った。おかげで実効的に使えるCPUパワーの大幅な向上と、静音化が実現できた。ただこの根底には、「そもそもDELL XPS 8940の熱設計が余りに酷い」という悲しい現実がある。海外(≒米国)ではこの問題は多数の個人、メディアのレビューでボッコボコなまでに叩かれており、ほぼ一般知化していると言えるが、同時に参考となる具体的な対策の情報にも事欠かないところがミソだ。また、ことXPS 8940(及びゲーミング用PCバリアントのG5)に関しては流通数が少なくないこともあってか、パーツメーカーが自社製品のマーケティングに陽に(=案件)陰に(=ステマ)に利用している節もある。
私の見たところ、日米のユーザーのメーカーPCとの付き合い方には結構違いがある。ざっくり言ってしまえば、日本でメーカーPCを買うような人間は製品に多少問題があってもそれに気付かないか、気付いても部品交換までやろうとはしない傾向が強い。またメーカーPCを購入する層と自作派層との間には、「しゃべる言葉が違う」レベルの距離が日本ではある。一方米国はメーカーPCだろうが問題や改善の余地があれば徹底的に弄り、SNSで情報発信したりもする。それは弄り代の少ないDELL製品であっても同様だ。特定のメーカーPCの改良でしか使えない特殊部品の3Dプリンタ用データが無料で利用できるCreative Commons下で公開されている状況からもそれは明らかのように見える。このような状況は日本文化にはほぼ根付いていないハッカー文化の発露にも思える。ガレージでダクトテープを使って・・・といった感じの「改造は日常」というDIY文化の延長だ。
CPUクーラーの選定には価格.comの日本人の書いたレビューを参考としたが、今回は見送った対策を含めてそれ以外の対策は主に米国人の手になるYouTube動画を参考とした。動画の良さは、英語が聞き取れなくとも画を観ていれば必要な情報が手に入る点だ。
ただ、少なくともYouTube動画に限ってみれば、PC用パーツのレビューの内容の充実具合や役立ち度は日本人の手になるものが突出して高い。海外、時に米国人によるものは結構淡白で、「使ってみたよ」「ちゃんと取り付けられたよ」「ちゃんと動いたよ」辺りで終わってしまうものが多い。ジャンク品主体のネタ動画ですら定番ベンチマークプログラムを一通り回してしまいがちな日本人自作erってのは世界的に見れば特殊で、愛すべき存在じゃないかと正直思う。
さて、きっかけから作業終了までの関連エントリは以下だ。
- メインPC、CPUのダウンクロック
- メインPC、CPUのダウンクロック(その2)
- メインPC、CPUのダウンクロック(その3)
- メインPC、CPUクーラー交換!(その1)
- メインPC、CPUクーラー交換!(その2)
- メインPC、CPUクーラー交換!(その3・おまけ)
これらに記載した内容と、3.5インチHDDの取り付け位置変更がやった作業の全てだ。
後で写真も示すが、出荷時の3.5インチHDDの取り付け位置はフロントパネルの裏側の専用ベイで、ケースの空気流入口の一部を塞いでいる。これをケース天井に沿ったもう一ヶ所の3.5インチHDD専用ベイへ移動することで、ケースへの空気流入がよりスムースにできる可能性があった。結果から言うと、ケースファンの騒音が僅かだが明らかに低減した。理由の説明は長くなるので省くが、「力づくで風量を確保する用途には向かない」この種のファンでは、上流側の流れの抵抗が小さい方がファンの駆動系への負荷が下がって静音化し易い。
換気扇は屋外の風が強いとファン自体は逆回転しなくても短期的に逆流が発生し、時にファンの回転が遅くなったり止まったりする。このような状況下でファンを駆動するモーター軸には逆回転方向の強い負荷がかかっているのは間違いなく、モーターが異音を発したり振動したりする原因となる。HDDの移動は、これとは逆の状況を作る効果を多少なりとも生み出したようだ、きっと、おそらく、多分。
では手を入れる前の状態の写真・・・と言いたいところだが、当然のように撮影なんかしていなかったので 「パソコン徹底比較購入ガイド」さんのXPS 8940のレビューページから無断引用させて頂く。撮影範囲はケース内の上側3/5ぐらいで、撮影範囲の最下部の水平の基板がグラフィックボード、写真外のその更に下に電源がある。
写真の上下は実際の上下と一致しており、右側がフロントになる。写真右端の箱状部分が使用中の3.5インチHDDベイで、写真右上の横に細長い口を開いた金属箱部分が未使用の3.5インチHDDベイだ。また、写真左上の空きベイは2.5インチHDD用だ。写真中央がCPUクーラーのファン、写真左側のファンがケースファンだ。
で、現在の状態が下の写真だ。
3.5インチHDDの移動によって新規CPUクーラーのファンの正面、メモリの空気入口側の空間がより広くなり、メモリの冷却は良くなっていそうだ。他方、写真ではCPUクーラーのすぐ下に位置するSSD(マザーボード基板高さ)の冷却が現状で十分かはイマイチ分からない。モニターしている温度を見る限りは問題無さそうだが、ヒートシンクぐらいは正直付けたくなっている。なお3.5インチHDDの移動によるCPU温度低下は70℃付近で1℃程度と無視できるレベルだ。
下の別アングルの写真を見ると、CPUクーラーのファン、CPUクーラーのヒートシンク、ケースファンがほぼ同軸の一直線上に並んでいることが分かる。両ファンとも最大風量は約45CFNと同等なので綺麗なエアフロー形成が期待できそうだが、ケース閉止時にはヒートシンクとケースファンの間辺りだけ局所的にケース表面が温かくなるので、ケースファン上流側では大き目の安定した循環流ができているかも知れない。
騒音だが、ここではiOSアプリで測定したデシベル値(単位はdb)を参考として示す。校正した値ではないので絶対値の正確度は不明だが、大小関係は信用できるだろう。
- 部屋のバックグラウンド:14~21db
- ダイソン ホット・アンド・クール(送風のみ・送風量1及び5、側面・距離30cm):32~37db及び41~45db
- XPS 8940(ターボブースト出力無制限・100%出力時、正面・距離30cm):41~43db
- パナソニック 電子レンジ(500W、正面・距離30cm):48~50db
別エントリで既に述べているが、一連の対策で騒音は(安いのであまり静かではなさそうな)電子レンジの作動音よりも低く抑えられたようだ。なお、40~45dbはオフィスでの会話レベルだそうだ。
最後に解決済だが想定外だった騒音について記しておく。それはケースのビリビリいう共振だ。振動源はファンではなく取り付け位置を変更した3.5インチHDDで、マウンタをケース(シャーシ)に固定する2本のネジのうち1本の締め付けが緩んだことが原因で上手くない振動を発生してしまっていたようだ。このため、緩んだネジを締め直すことでケースの振動はあっさり消えた。
ミニタワーとはいえペラペラした凹凸の無い華奢なケースとの印象を持っていたので、原因が分かった際には正直さもありなんとは思った。昔のフルタワーのXPSでは「XPSロゴ」でケース側壁に凹凸(タブ)を設けたりして、剛性を向上したり共振周波数を高くしていたものだが・・・この辺りも改善の余地がある安さの秘密なのかもしれない。
p.s.:現在の私の構成では、DELL社のファームウェアレベルの構成機器チェックでケースファンが「互換性が無い」と判定されるが、使用においては問題無さそうだ。とあるYouTube動画中でも、同じファンに交換した人が同様の事例を報告している(と言うか、ファン交換作業の動画末に、そのディスプレイ画面をノーコメント・長回しで大写しで挿入)。「互換性が無い」と判断された場合は、機器名や問題の内容が二次元バーコード付きでディスプレイに表示される。ここで鳴らされるのはビープ音といった警告系の音ではなく、キーボードの様々なランプの点滅と同期した小音量の音楽なのが和みポイント(?)だ。