2021/06/18

メインPC、CPUのダウンクロック(その3)

 クロックダウンかアンダークロックといった表現が普通で、ダウンクロックとは今は言わんらしい。仕事でつきあいのあったDECとか日本SGIの人は・・・20世紀の話だし、まぁいいか。かつてのGoogle検索では、「内蔵ハードディスク」よりも「内臓ハードディスク」の方がヒット数が多かった期間が結構長かったんだよねぇ・・・主犯はおそらくMS-IMEだが。

 同名エントリ、初夏の最終回です。文体は気分次第で変わるのでその点はご容赦を。これまではCinebench R23のベンチマーク計算結果に基づく話でしたが、私の使っている3DCGIアプリであるLightWave3D 2020のレンダリングでも同じ結論となるか確認しました。レンダリングには全16スレッドを割り当てたので、Cinebenchのマルチコア測定時と同じっちゃ同じ条件です。

 複数のターボブースト最大TDP設定に対して、レンダリングに要した時間、CPUコア最大クロック及びCPUパッケージ最高温度を調べました。上図は、右下に示されているようにターボブースト時最大TDPを70W(デフォルトは120W)まで低減した際のレンダリング中の画面です。

 まず出荷時設定、ターボブースト時最大TDPが120Wの場合です。

 レンダリング時間:170.2秒(基準)
 CPUコア最大クロック:4.1GHz(基準)
 CPUパッケージ最大温度:100℃(基準)
 スロットリング有無:サーマルスロットリング

レンダリング開始直後からサーマルスロットリング(CPUパッケージ最大温度を100℃以下に制限)により、ターボブースト時のTDPは105~108Wでした。つまり、120Wに設定しても、冷却力不足からそのワット数では動作できないことが分かります。

 そこで、ターボブースト時最大TDPを108Wに設定してみました。

 レンダリング時間:170.5秒(+0.1%未満)
 CPUコア最大クロック:4.1GHz(±0%)
 CPUパッケージ最大温度:99℃(-1℃)
 スロットリング有無:無

案の上、レンダリング時間は最大TDP120Wの場合と実質的に変わりませんでした。これはCPUコア最大クロックが変わっていないので妥当な結果でしょう。CPUパッケージ温度がぎりぎり100℃に達しないので、サーマルスロットリングは発生しませんでした。

 ターボブースト時最大TDPを70Wまで下げると・・・

 レンダリング時間:192.6秒(+12.9%)
 CPUコア最大クロック:3.6GHz(-12.2%)
 CPUパッケージ最大温度:85℃(-15℃)
 スロットリング有無:無

やはりほぼ1コア分(~12.5%)の計算パワーを棄てた形になりました。CPUコア最大クロックの低下幅とレンダリング時間の伸び幅とが良く一致しています。最後にターボブースト時最大TDPを100Wにしてみました。なお、100Wという数値自体には、「108Wより低い切りの良い値」以外の意味はありません。

 レンダリング時間:175.1秒(+2.7%)
 CPUコア最大クロック:4.0GHz(-2.6%)
 CPUパッケージ最大温度:98℃(-2℃)
 スロットリング有無:無

当然のように、CPUコア最大クロックの低下幅とレンダリング時間の伸び幅の一致は良好です。

 今回の追加のテストで、新たに分かったことがありました。現行のCPUクーラーでは、ターボブースト時の最大TDPとして108Wを超える値を設定することに意味が無いと言うことです。サーマルスロットリングによって最大TDPが108Wを超えることが無いからですね。逆に最大TDPを108Wと下げても、全コア/スレッドの100%負荷時のマルチコア計算能力の低下は120Wに対して実質的にありません。

 なんともはや、少なくともこのモデルではDellやっちまったなぁ・・・って感じですね。と言うか、今時はそういう設計が一般的なかなぁ・・・。

 Dellは電源がかつかつだとか後から手を入れにくい製品を出しますが、IFやメモリ規格などは最新のものを一早く、リーズナブルな価格で取り入れる面もあります。そのため、高価格帯製品(と言っても、20万円ぐらいの構成をベースにメモリを増設したりグラボのランクを上げたりして、セール時に18万円ぐらいで買う感じ、要はXPSの最上級モデルかその手前のモデル構成に手を入れたもの)を選んで買っておけば、そのまま4~5年は普段使いには十分性能的に通用したりしてきました。ただIntel i7-10700や11700などの発熱は、従来の製品設計の流儀ではいなせなかったみたいですね。

 カタログスペックでのIntel i7-10700のターボブースト時クロックは4.8GHz、一方出荷時の構成では冷却力不足によるサーマルスロットリングでターボブースト時クロックは4.1GHzまで低減、更に現在の私の設定では3.6GHzまで下げています。性能がクロックに比例すると仮定すると、出荷時で既に17%程度のCPUパワーが活用できていないことになります。私の現行設定では-25%程度、実に3/4程度のCPUパワーしか使えないことになります。

 ただし私の現行設定であっても、CPUをフルパワーで動かす場合以外でのCPUパワーのロスは限定的です。先行するエントリで触れたように、単一のコアやスレッドのみが高パワーを出すような場合・・・普段使いでの条件はたいていこちら・・・では、該当するコアは4.1GHzやそれ以上で駆動できるため、この場合のロスは17%以下どころか実用上はほぼ0と見做せる場合も多いようです。

 例えばDAWであるCubase Pro 11使用時には、特定のスレッドやコアに負荷が連続集中しないようにCPUが制御されています。その結果、DAW上のCPU負荷表示が50%程度のプロジェクトで楽曲を再生しても、各コアの温度上昇が抑えられているので、最大クロックは4.6GHzを余裕で維持します(=最大TDP70W設定でもサーマルスロットリングは作動しない)。

 また最大TDPが70WでのCPU冷却ファン音だったら、ターボブースト動作時でも既存の吸音材を張り付けた段ボール紙を寝具とPCの間に置くだけで問題無く寝られそうです。ダイソンの送風ファンの方が五月蠅いぐらいなんですよ。つまり私が寝ている間もPCにきっちり働いてもらうことができます。3DCGでアニメーションを作ろうとしたら、レンダリングに時間をかけなければなりませんからね、夜間の時間が使えるとなれば実はダウンクロックは良いコトづくし?要はアウトプット完了までの効率が最重要で、時間は失われることしかないやっかいなコストですから。

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