2021/08/01

ソ連/ロシア映画 "The Dawns Here Are Quiet(А зори здесь тихие…)"

 ソ連/ロシア映画にたまにある、こういうウェットと言うか、センチメンタルな作りは日本人にも受け容れやすいのではないかと思う。この土日はネットで同じタイトルの作品のリメイク映画(日本語字幕)、リメイクTVシリーズ版(英語字幕)、そしてオリジナル映画かそれに基づくTVシリーズ(英語字幕版)を観た。やっぱり映画はスクリーンで観るかどうかに拘らず、機会を作ってでも観続けなきゃいかんなぁ。なお、原作小説を始め、この作品はソ連/ロシアでは根強い人気があるらしい。

 作品のタイトルはエントリタイトル記載の通り、"The Dawns Here Are Quiet(А зори здесь тихие…)"で、独ソ戦開戦初期のお話だ。一言で言えば戦争映画である。

 主人公は激戦地に挟まれたとある村に駐屯する対空砲撃部隊の男性指揮官(曹長)だ。ただし主人公は「村に配属されている状態」で、部隊が入れ替わっても彼が常に指揮官になる。村は沼沢地も含む起伏の激しい自然環境に囲まれているため戦場とはなっていないが、上記のように激戦地の間故にドイツ軍機がたまに通過する。このため対空砲が配備されている訳だ。だが裏を返すとこの地域は、後方かく乱などを狙った小部隊にとっては戦線の途中にぽっかりと開いている格好の侵入路だ。

 物語冒頭での主人公の悩みは戦争中としては牧歌的とも言えるものだ。ヒマがちな対空砲撃部隊の兵士たちは酒を飲んでは村人らとトラブルを頻繁に起こすのだ。ついに「酒を飲まない兵士の部隊」の配属を求めた主人公に対する上官の答えは、「女性兵士のみで構成された対空砲撃部隊」の配属だった。そして、そんな女性兵士の一人が村の近くで二人のドイツ兵を目撃したことから物語が本格的に動き出す。舞台が「沼沢地も含む起伏の激しい自然環境」であることがドラマの展開においても十二分に生かされている辺りは心憎いまでにそつがない。

 最初に観たのはGYAO!で無料配信されているリメイク映画版(日本語字幕、2015年)で、タイトルは「レッド・リーコン1942 ナチス侵攻阻止作戦」(2021/8/20まで)だ。「観たい!」と思う人がいたなら、これを勧める。2時間近い作品で、展開はゆっくりしているが、個人的にはダレることなく一気に観れた。「15+」とレーティング付きだが、これは女性兵士の入浴(サウナ)や川での水浴びシーンがあるためだろう。

 YouTubeには、上記映画の撮影フィルムに基づくTVシリーズ(全4エピソード、第1エピソード)が製作会社の公式チャンネルで公開されている。各エピソードが45分弱なので尺は映画の1.5倍あるが、ストーリーは同じものだ。追加の尺は、過去エピソードなどによる登場人物の造形の掘り下げや登場人物の関係性の強化を中心に使われている。映画版ではセリフだけで処理したり描写がそっけなかったりで分かりにくい部分に上手く手が入っている。映画とTVとの視聴環境の違い、視聴者のコンテントへの集中具合の差の観点からは、定番中の定番の処理とは言える。また、連続モノには必須のクリフハンガー(エピソードのラストで主人公大ピンチ!)のための進行調整にも使われているだろう。字幕は英語、ロシア語のみだが、CC機能を使っているのでユルユルで良ければ自動翻訳の日本語も選べる。

 最後はオリジナル映画版かそれに基づくTVシリーズ(1972年)で、英語字幕版をYouTubeで観ることができた。権利関係が?なのでリンクは控える。モノクロ主体でカラーが限定的に使われていることが一つの特長だが、良くも悪くも演出レベルでの使い分けであろう。カラーの発色具合を見てもしやと思ったが、やはり映画「惑星ソラリス」と同年の作品だった。

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