2016/06/20

【のっソロ The Division】 どうやら総括すべき時が来たようだ、または私はどこで間違ったのか(2)

 "Car-Door Closing Simulator(車のドア閉じシミュレーター)"との異名もじわじわと定着してきたThe Division、そこは真顔で「うむ、半開きの車のドアを閉める機能に関してはバグがあったためしはない」などと素直に納得しましょう。笑うところではありません(棒

 パッチ1.2以降で増えた「壁越しの命中弾」の件ですが、私も散々経験し、さらに言えば必ず発生する場所も一か所見つけたりしました。そこは壁越しどころではなく建物越し、より正確にはビルの一部です。敵弾のみすり抜けるばかりか、敵からは見えない(筈の)そのビルの裏側では幾ら移動しても敵は正確に射撃してきます。おそらくパッチ1.2で導入された新しいバグではなく、元々からあるバグなのでしょう。たまたまサーチ&デストロイで新たに戦闘用に指定した領域にそんなビルが含まれていただけ、ではないかと思います。

 まともにテストされていないことが丸分かりですね。

 ちなみにこのビルの件はパブリッシャーUbi、デベロッパーMassiveも早い時点で把握したようで、現在ではそのビルが含まれる領域がサーチ&デストロイの対象領域となることは(私がプレイした限りでは全く)無くなりました。Ubi & Massiveにしては珍しく常識的で的確な対応、とは言えますが、当然ながら褒められる点は一つとしてありません。

 さて、「うっかりこのゲームを購入してしまった自分はどこが間違っていたのか」を問うエントリシリーズ、その第2回です。文体は気分。

 そもそもの私の二つ目の間違いは次の様に信じたことにあります。 

 オープンワールドゲームである
ほら、ちゃんと書いてある。

 「3Dで構成された自由に動き回れる広いマップ」というのはオープンワールドゲームにとっては必要条件に過ぎず、所謂「サンドボックス」性も併せて備えるべき、というのが個人的な考えです。実際、日本語ウィキのオープンワールドのページでも「サンドボックス」についてあまりにもさらっと当然の如く触れています。つまり、「サンドボックス性が極めて乏しいこのゲームは、オープンワールドゲームが本来備えるべき面白さを備えていない」というのが私の考えであり、その意味でこのゲームはオープンワールドゲームではないと見做さざるを得ないということです。

 私にとってのオープンワールドゲームとの出会いはおそらく「マーセナリーズ」 、2008年ごろのお話です。私はすっかり魅了され、少なくとも5周(5回コンプリートクリア)することになります。ではどこに魅了されたのか、まずはざっくりと列挙してみましょう。
  1. 広いマップ、移動手段や移動経路の選択自由度の高さ
  2. ミッション選択及び選択順の自由度の高さ
  3. ミッション内容のバラエティ
  4. ミッション目的の達成方法の自由度の高さ
  5. ミッション目的自体が複数の達成レベルを持ち、達成レベルが以降のプレイ内容にも影響
  6. 突発事象(エンカウント)が本当に突発 など
幾つか具体例も加えましょう。

 まず移動手段は徒歩はもちろん車両、ヘリコプターも利用可能、車両も乗用車から主力戦車まであり、加えて複数の勢力のものが貸与されたりハイジャックできたりします。

 ちなみにプレイヤーキャラクターは傭兵なのでどの勢力にも属していません。最大の特徴は使用する車両によって「所属勢力の偽装」が可能となることで、バレなければ(特定の敵キャラに目撃されない、敵対行為を働かない)敵陣中央部への侵入も可能なのです。 もちろん、敵対勢力に偽装している場合は問答無用で攻撃対象とされてしまいます。このため、勢力Aを攻撃するため勢力Aの主力戦車をハイジャックしたものの、ミッション領域到達前に勢力Aに敵対的な勢力Bと接触すると面倒なエンカウントとなります。

 勢力Bは当然攻撃してきます。ここで反撃しても良いのですが、もし傭兵であることがバレ、さらに敵対行為を及んだと判定されると「プレイヤーと勢力Bとの友好度」が低下し、常に勢力Bからの攻撃対象とされるばかりか、勢力Bからのミッションも受けられなくなったりします。PvEは「プレイヤー vs 環境」の意味ですが、まさに環境との相互作用が避け難く起こる訳です。

 ミッションは完全に目的ドリブンです。

 軸となるミッションは敵勢力の重要人物排除で、生きたまま捕獲または殺害すれば目的クリアです。しかし、対象の生死によって賞金額は異なります。このため、ミッションのクリア方法に知恵を絞ることになります。ここで、私のオープンワールドゲーム観における2つの重要ポイントが出てきます。

 重要ポイントの一つ目は、「ミッション開始時点でミッション領域内の環境が全て整っていること」です。より具体的には、ミッションに関わるNPC(ノンプレイヤーキャラクター、要はAI制御の敵キャラや一般人などのモブキャラ)は全て配置されており、地形的制限や距離などの現実世界と同じ合理的理由が無い限り、プレイヤーがミッション領域内の全NPCを偵察行動などにより「把握可能」ということです。これ無くしては的確な攻略プランを立てようがありません。

 ミッション中の敵勢力の追加があっても、それらはミッション領域境界の侵入可能経路からまたは兵舎といった追加勢力の登場が予測可能な場所からでなくてはならず、加えて戦闘が開始されたといった追加の理由も必要です。「マーセナリーズ」の場合は追加勢力となり得るパトロール部隊の巡回範囲もミッション領域に含まれており、偵察段階で巡回タイミングが把握可能であるだけでなく、パトロール部隊単独の殲滅も可能です。むしろパトロール部隊の車両はハイジャック対象に最適ですらあります。

 重要ポイントの二つ目は、「ミッション目的達成のため、環境、状況を最大限利用できる」です。極端な例を挙げましょう。ミッション目的は勢力Aの重要人物排除です。ミッション領域を偵察した結果、勢力Aは山を背にした広場に配置しており、重要人物はその一番奥にいます。重要人物背後にはヘリコプターが着陸可能です。さらにミッション領域のすぐ外に勢力Bの軽戦闘車両部隊がいます。そこで勢力Aのヘリコプターを確保、勢力Bの軽戦闘車両部隊を軽く攻撃して誘導、二つの勢力を戦闘状態にします。そのままヘリコプターで重要人物の背後に着陸して素早く身柄を拘束、拘束した重要人物を物影に運んで暫し高みの見物です。やがて勢力Aは全滅、勢力Bの生き残りは移動し、晴れて目的達成です。まさに「PvE」ではありませんか?

 私が「マーセナリーズ」に魅了された最大の理由は「PvE」です。環境はプレイ内容に利用できる反面、対応を誤れば以降のプレイに悪影響を及ぼしかねません。しかしそれら結果は あくまでプレイヤーの選択への反応であり、「PvEによるサンドボックス性の深化」とでも呼ぶべきものなのです。

  私のオープンワールドゲーム観における3つ目の重要ポイントもPvE絡みです。ただし、上記の2重要ポイントとは違い、機能ではなくプログラムへの実装というレベルの低いお話しです。

 地雷を仕掛ける場合を考えましょう。例えば敵勢力が南北向きの一本道の両側に配置されている場合を考えましょう。道の両側は切り立った山地であり、登ることは容易ではありません。プレイヤーは一人なのでミッション中の敵勢力の追加は望ましくありません。そこで北側の道上に地雷を設置し、南側から攻めることにします。ミッション中に北側の道から追加勢力が来た場合、地雷は爆発するでしょうか?爆発しなければPvEがちゃんと実装されているとは言えないことは明らかでしょう。

 "Far Cry 3 (FC3)"では地雷は爆発します。"Metal Gear Solid V (MGSV)"では爆発しません。

 MGSVがリプレイされることも無くクリア後に私のPCから速やかにアンインストールされた理由はこれで明らかですね。私のオープンワールドゲーム観からすれば、MGSVはオープンワールドゲームの資格が無いからです。MGSVでも「プレイヤーが見ていれば」地雷は爆発します。しかし小さな丘越しに30mも離れれば、追加勢力の車両は無傷で到着します。どうやらMGSVでは「追加勢力が地雷を設置している場所を通過しているという計算」を全くやっていない様なのです。こんな調子ではPvEの深化は期待できません。

 方やFC3では徹底しており、一定時間内では真面目に計算している様なのです。例えばミッションとは無関係に路上に地雷を仕掛けてからそこを離れ、5~10分後に戻ってくるとまだ地雷はあります。再びそこを離れてさらに5~10分後に戻ってくると地雷は無くなって代わりに破壊された車両の残骸が転がっていたりします。プレイヤーの挙動とは無関係に、そこを車両が通過したので地雷が爆発したことが計算されている訳です。これぞPvEです。

 私的にFC3は「PvEとして起こり得ることは起こる」ゲームであり、そこが無視しがたい魅力なのです。以前のエントリにも書いたことがありましたが、また極端な例を挙げましょう。FC3において野犬の群れはプレイヤーにとって脅威です。対応を誤ればプレイヤーの死も覚悟しなければなりません。敵拠点を偵察中、背後から野犬の群れに迫られました。野犬に向かって発砲すれば音で拠点の敵に存在がバレてしまいます。しかし野犬を放っておくと食い殺されるのは明らかです。そこで私は野犬の群れに追いかけられるまま敵拠点を駆け抜けるという暴挙に出ました。結果、拠点の敵と野犬の戦闘中に複数の爆発が発生、拠点の敵は全滅します。私は一発も発砲することなく、拠点占拠に成功します。 このときには感動すら覚えたものです。もちろん、あと一人敵を倒せば拠点が占拠できる状態で野犬など野生動物に殺された例は数えきれないほどあります。

 で、やっと本題です。The Divisionはオープンワールドゲームと言えるのでしょうか?私的には完全に「No」としか言いようがありません。

 まずマップですが、余りに建物が外見だけのただの障害物に過ぎないことには正直びっくりしました。多少内部が作りこまれている建物もミッション絡みが大部分で、普段は入ることすらできません。「美しい背景を有難う」はRedditで以前に目にした書き込みですが、移動の自由度が極めて低いマップに対する不満を端的に表した表現かと思います。ただし、The Divisionのミッション設計の方向性から、より自由度の高いマップもプレイヤーの戦術作成には価値が無いのはイタい限りです。

 The Divisionのストーリーミッションは進行も空間的にも一次元的で、プレイヤーが戦術を練る余地はほぼありません。それはオープンワールド要素もPvE要素もほぼ考慮されていないからでしょう。ではパッチ1.2で導入されたサーチ&デストロイミッションはどうでしょう?PvEエリア(とされるマップ領域で)のミッションですが、プレイヤーが目的地域に近づくと敵がスポーンされ配置に付く様を目にすることになります。これはオープンワールド的にもPvE的にもガッカリの実装です。ダークゾーンにもオープンワールド要素、PvE要素ともに基本的にありません。待っていると敵が目の前にスポーンする、なんて実装はオープンワールドを名乗る以上は言語同断のあり得ないものと言えます。

 改めて結論します。"Tom Clancy's The Division"はオープンワールドゲームの資格を備えていません。マップの自由度の低さに目は瞑れても、PvE(プレイヤー vs 環境)要素の欠如は明らかです。PvEエリアとされる領域も、実態はPvNPC(プレイヤー vs ノンプレイヤーキャラクター)にしかすぎません。建物の角部を破壊すると銃弾が通過可能となるだけではPvEを名乗るには不十分です。車のドアを閉めてもプレイには何も実質的な影響は無い訳ですし。

 次回、最終回の「私の間違い」は
  • RPGである
  • そのほか諸々
です。
[予告]

TOM CLANCY'S
THE DIVISION
ONLINE | PLAYER-KILLING | RNG

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