2015/01/15

石油輸出国機構の挙動についてちょっと考えてみる。

 日本でもガソリン価格の低下が進んでいる。世界的な原油価格の低下によるものだが、これは石油輸出国機構が原油の減産をせず、値上げもしないことが大きな原因であるのは明らかだ。また欧州、中共などの経済減速による原油消費量の抑制が、市場での原油のだぼつきの加速を後押ししている。

 石油輸出国機構の「自らの利益をわざわざ削るような振る舞い」の意図に関しては多くの推定が報道されているが、未だ「それだ!」とお思えるようなそのものズバリの理由には出会っていない。もちろん石油輸出機構機構参加国にはそれぞれ別の思惑があり、おそらく儲けられない状況を苦々しく思っている国もあろう。

 当初はISIS対策との声があった。ISISは支配下に置いた油田、石油精製施設からの原油及び精製製品をブラックマーケットに安価で供給することで多額の活動資金を得ているとされる。しかしISISはスケールメリットを生かした低価格化に限界があるため、低価格化のチキンレースには石油輸出国機構には勝てないとの見立てだ。つまり、石油輸出国機構はブラックマーケットとISISの資金源を同時に潰すことを狙っている可能性である。今後、ISISが身代金目的の誘拐などを大々的に始めたり、勢力が急激に縮小し始めたりすることがあれば、この見立てを支持するサインとも思われる。

 対象としているブラックマーケットは原油、石油製品関係だけではないかもしれない。ISISが入手した資金の一部は武器、弾薬の購入に使われるだろう。 自国内への制御されない武器、弾薬の流入はどんな国も望まない。武器、弾薬のブラックマーケットの規模縮小は、実のところマーケットへの武器供給国への無言の圧力となる。という訳で、今後の石油輸出国機構参加l国とブラックマーケットへの武器供給が疑われる国との間の大型投資案件の内容はきっちりワッチしておく必要がある。あと、ISISを快く思わない中東の国が自国周辺に他国軍を展開させるという事は、傭兵をほぼタダで雇っているのと同等である点にも注意が必要。陰謀論ではなくて、あくまで各国の安全保障方針も含めてビジネスライクに全体状況を理解できないかということだ。

 もちろん、ISIS対策を口実にライバル潰しにかかっている側面も見逃せない。原油価格の低下によって米国のシュールオイル・ガス田の大部分はもはや採算割れが避けられない。カナダのオイルサンドに至ってはもう採算可能ラインを大幅に下回っている。また、経済危機も噂され始めたロシアでは輸出品である天然ガスなどの価格が上げられなくなっており、まさに泣きっ面に蜂という状態にある。

 いずれにしても現在の原油価格の低下は人為的なものであり、市場原理の枠外での動きだ。 しかも、石油輸出国機構への参加国は少なくとも短期的には利益機会の喪失を受け入れている。でもこんな状態が長く続く筈も無い。石油輸出国機構の本当の意図が見えた時には、既に彼らの勝利が確定したという事なのかも知れない。

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