2014/08/15

クリスティアン・アングラオ著「ナチスの知識人部隊」読了。

 博士論文に筆を入れたものとのことで、読み物としては重い。

 テーマはナチス政権下でのドイツの東方進出の正当化に重要な役割を果たし、さらに東方進出後には行動部隊(虐殺も行うことになる)の指揮にも関わった博士を含む大学出身者の行動、言動である。内容についてはちょっとやそっとでは纏め切れないので具体的には触れないが、まずナチズム有りきではないこと、第一次世界大戦の敗北~戦後の混乱期が当時のドイツの学生の目にどう捉えられていたか、どう彼らの思考に影響したかという視点が特徴の書と言える。第一次大戦で一部ドイツ人が感じた「民族絶滅の危機」が如何にその後の行動の正当化と繋がっていくか、そしてそれが実は姿、主体を変えて繰り返され、現在もなお繰り返されつつある、という視座を読んだ者に残すだろう。つまり本書は意外にもナチズムを扱ったものではない。が、ナチズムと総称されるものの一部、かつナチズム無しでも存在できたひとつの思想、の正体を明らかにしている。それ故に恐ろしくもあり、示唆に富む内容となっていると思う。

 もし太平洋戦争敗戦時に「国体」が外科的に解体されていれば、日本でも一周遅れで起きたかもしれない、と覆わせる部分も多々あるやに思う。

 少し脱力してしまったのは翻訳者のあとがき。無用な修辞を不用意に使ったせいで、まるで本書を読まなくても書けるような奥行きの無い内容となっている。うっかりあとがきだけ読んで「つまらん」などとは思わぬように、翻訳はきっちりとしたものです。

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