2021/03/27

石山先生の「冗談じゃない」

 "那覇市  中華人民共和国による人権侵害問題に対する調査及び抗議を求める意見書"をキーワードとして「すべて」でGoogle検索すると、検索結果の1番目の検索結果は、那覇市議会が可決し、内閣総理大臣等に送付した「中華人民共和国による人権侵害問題に対する調査及び抗議を求める意見書」のpdfファイルである。那覇市のウェブサイトで公開されているオフィシャルとも言えるものだ。

 では2番目の検索結果は?大紀元(EPOCH TIMES)の日本語版ニュース記事「那覇市議会で中国人権状況に関する意見書、全会一致で可決」だ。意見書も全文掲載されている。

 さて、キーワードはそのままに、「ニュース」で検索してみる。おやおや、1件のニュースも結果に出てこない。

 本件からも明らかなように、こと特定の国や政党が関わる事項に関しては、海外のみならず国内の話であっても日本国内向けの日本語報道では十分に手に入らない状況にある。このような状況の出来は別に昨日今日のことではないが、習近平が、じゃなくてペーさんが某党で権力を握ったあたりから明らかにその傾向が見られ始めた。具体的には、国内メディアが報道しない国内外の事を、BBCや中国共産党・・・っと、まぁいいや、中国共産党支配地域外に拠点を置く華人メディアから知る、ということが急激に増えだしたのだ。

 当時のソースは新唐人TV(NTDTVJP)のYoutubeチャンネルの日本語版ぐらいだったが、大紀元時報|EPOCH TIMESが日本語版のサイトやYoutubeチャンネルを運営しだす辺りのタイミングで、一気に日本語でのこの種のニュースソースが増えた感がある。本エントリでは煩雑になるから触れないけれど、台湾発も含む中国語による報道の内容を毎日紹介、解説してくれている有難いYoutuberさんもいる。

 成程、新唐人TVにしても大紀元にしても、中国共産党の言行に関する報道内容が中立であることは必ずしも保証されない。特に法輪功が絡んだりすると、多少の偏向はあっても当然と言える。これは「中立でないから全体がダメ」などと言いたいのではなく、「そういうもんだと見る側、読む側である私は承知の上だよ」と言いたいだけだ。新唐人TVは反中国共産党の立場も、運営に海外居住の法輪功学習者が関わっていることも隠していない。また、冒頭の那覇市議会の意見書に関する報道は事実報道なので、基本的に偏向の余地は無い。加えて意見書は全文掲載され、「切り取り+印象操作」された報道とはなっていない。本件に関しては国内報道機関の「報道しない自由の行使」や、検索サービスの「報道されたものを隠す行為の行使」の疑いが拭えない。

 那覇市議会と同様の動きは他の自治体にもみられているとのことだが、現段階でその種の情報をネットで効率よく集めるのは難しい。より厳密には、同様の行動を起こしている自治体が分かれば公式サイト等で公開されている宣言書なり意見書なりそのものを見つけられる可能性は高い。が、「宣言書なり意見書なりを出している自治体」を効率よく見つける検索キーワードは無い。これはまるでセールスマン巡回問題のような「一般的な解法が無い」状態であり、唯一の解法は検索キーワードを変えながら試行錯誤的に検索を繰り返すだけだ(実際には、手掛かりを求めて那覇市議会議員のブログやツイートなどを追うところから始めるだろうが)。ちなみに多数回の試行錯誤を効率よく高速で実行可能とされる技術の代表が量子コンピューティングだ。ただし試行錯誤自体は効率を問わなければ現在の技術でも可能なのだから、それをやっていないだろうことには意味がある。「結果に対して時間や電気代などのコストが見合わないから」と言うのが正解だろうが、「報道されたものを隠す行為の行使」の良い訳にも使えると言うのは意地悪過ぎる見方だろうか。またちなみになのだが、「結果に対してコストが見合う」とされる試行錯誤例は少なくなく、例えば「新薬の候補物質の探索」はその時点での最高速スパーコンピュータを使ってまでも行われる高コストかつ壮大な試行錯誤と言える。

 と、ここで魔物除けのおまじないでも唱えておこうか。翠!六四天安門事件!

 で、実はここまでは前振りで、本エントリの本体はここからだ。

 中国共産党や中国共産党の支配地域で起きている様々なことを知るうえで、「そういう見方や要素は考えたことすらなかった!」とか「アレとコレの原因はこれだったのか!」といった類の発見が多くて、日本語の新作公開が楽しみでしょうがないYoutubeの動画シリーズがある。日本語でのタイトルは「冗談じゃない」、「石山視點 - Shi Shan’s Outlook」というYoutubeチャンネルの動画シリーズ「有冇搞錯(≒誤りがあるぞ)」の日本語吹き替え版で、大紀元系のYoutubeチャンネル「ニュース最前線 香港」で公開されている。

 内容はと言えば、大学の先生とかにいそうなルックスの石山氏(石山先生って呼びたくなるんだな)が様々な時事を解説するというものだ。一見マニアックなテーマであっても分かりやすく、話の内容から一見関係なさそうな別の知見との接点を発見できたりと、新しいことを知ることができるだけでなく、驚きを伴うことが少なくないコンテンツなのだ・・・少なくとも個人的には。

 最新エピソードは「中国 種子の危機 民族の存亡に関わる」とマニアック感満載だが、繁殖用の種豚(これも「種」扱い)や穀物の種の輸出入の話は、他のソースから得られている最近のロシアと中国共産との関係に照らすと更に興味深くなる。

 例えば私は以下のような事前知識を持っていた。米国の政権移行後にロシアと中国共産党は軍事的に関係を深めてきているが、日本の中にもそれは脅威とは捉えず、「ロシアが中国を毟りにかかっているぞ」と分析している人もいる。理由は「それがロシア流だから」だそうだ。では今は何を毟っているのか。また、一昨年来、豚コレラの流行で中国共産党支配地域内の豚肉供給量が不足している。このためロシアなどからの豚の輸入量を増やしたが、そもそも豚コレラはロシアからの輸入豚が持ち込んだ可能性が高いとされている。

 最新エピソード内では、ヒマワリの種などはロシアからの輸入が多いが、この1月にロシアがこれらの輸出関税を大幅に引き上げたことにさらりと触れている。このロシアの行動、中国共産党の足元を見てのものに見えなくもない。少なくとも蜜月感を削ぐ情報ではある。また輸入する豚は繁殖用の種豚が多く、直接食肉用として輸入している訳ではないことを初めて知った。しかも種豚の頭数が限られる以上は遺伝子の多様性などの問題で、繁殖可能な世代数は限られる。石山氏によればそれは4世代であり、再び豚コレラの流行があれば4世代分の豚が一気に失われる可能性があることを指摘している。更に種豚の輸出制限が為されようものなら中国共産党支配地域へのダメージは計り知れないと明確に述べている。

 私はせいぜいミリタリー好きの視点からぐらいでしか対中戦略などを捉えることができなかったが、種豚の輸出制限の影響の大きさの話を知った以上は食糧事情視点も持たざるを得なくなった。当然、日本の食糧事情についても、これまでに無い視点からも見ることになるだろう。中国共産党支配地域への種豚の輸出禁止、食肉用豚または豚肉のみ輸出可能の状態を4年維持ができれば、中国共産党支配地域は支配できなくとも、中華人民共和国人民の胃袋は支配できそうだ。

 ちなみに冒頭のコールが「有冇搞錯(ィュウモウガーゥチョっぽい音だから広東語かな?)」。

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