2021/05/05

暗号解読!?

 三崎律日/Alt F4さんの動画シリーズ「世界の奇書をゆっくり解説」の今回のネタは「Liber Primus」だ。と言うか、「Liber Primus」という本?の登場までの経過(「Cicada3301」によるネット上の騒ぎ)の紹介が実はメインストーリーだ。だが当然のように暗号解読や素数の具体的な話が何度も出てくるし、個々のエピソードを深掘り気味に取り扱っているので、1回の視聴で騒ぎの全体像を把握するのはなかなかに難しいと感じた。

 ちなみに私が「Cicada3301」に関する話を知ったのは、ゆっくりまっちゃさんの動画「【ゆっくり解説】インターネット上最大の謎『cicada3301』について語るぜ」のおかげだ。上記の「暗号解読や素数の話?」となった人はこちらの動画を先に観て、騒ぎの流れ全体をコンパクトに押さえておくのも良いかと思う。

 さて、今回の動画の最後近く、三崎律日/Alt F4さんは視聴者に「暗号」を出した。40桁の数字である。視聴者への挑戦と言うよりもサービスという感じだ。当然、解読に挑戦した。

 結果から言うと、約30分で解くことができた。ただし解読の最後のステップは自力では乗り越えられず、私よりも更に30分程度早く解読した人(つまり私の着手時には解いていた・・・)の動画へのコメントに助けられた。コメントを一見して「あ!」となったときの感覚は独特のものだ。

 動画のコメントを追い、ネットで情報を拾っていけば解読はできるだろうが、やはり「知っていることが多い」人の方が解読には有利だ。解読の流れは大まかに以下のようになる。

  1. 40桁の暗号数字列を4桁毎に分ける。4桁の数字は動画の再生時間を表しており、前の2桁が分、後ろの2桁が秒となる。10点の時間が順番通りに並んでいるのは解読者へのサービスだろう。6を超える数字が少ないことから時間の可能性を類推し易いとは思うが、時間(4桁の数字)の並びが入れ替えられているとそれに気づきにくくなるのは間違いない。

  2. 10点の時間にはそれぞれ画面内に4文字のアルファベット列が表示されるので、これらをメモした。ここで私が幸運だったのは、4文字のアルファベット列がBase64でエンコードされた文字列の可能性にメモを一瞥して気づいたことだ。20世紀にSJISにしか対応していない(海外からのメールは確実に化ける)困ったメーラーを使う組織に属していたことがあり、海外とのやり取りにBase64でエンコードしたテキストを使うことが多かったからだ。つまり、要らん苦労の所為でBase64でエンコードされた文字列を見慣れていた訳だ。

    デコード前文字列:azE1eTBuMDUzazQxNWgxXzJfazRuazB1azN0dDMx

  3. ウェブ上のツールを使ってBase64テキストをデコードした。が、一見意味があるような文字列にならなかった。分かったことは、数字の2が独立して現れる("_2_")こと、一見「カ〇〇ウ」とローマ字読みできそうな文字列があることだ(アンダースコア"_"を根拠無く『空白、ブランク、スペース』と解釈したのも単なる幸運だ)。そこで上記の「私よりも更に30分程度早く解読した人」のコメント中の"leet"と言う単語に気づいた。その次の瞬間には文字列は読め、解読成功を確信した。スッと読めたのは、三崎律日/Alt F4さんが既に自著を出版していることを知っていたことが大きい。

    私の解読結果(白文字):奇書の世界史 2 刊行決定 (k15y0n053k415h1_2_k4nk0uk3tt31)

 と言うような流れで暗号解読に成功した訳だが、幸運はBase64を使った経験と三崎律日/Alt F4さんの活動についてちょっとした情報を知っていたこと、そして"Leet"と言われればそれが何かが分かるぐらいの知識があったことだろう。逆に「Base64って何?」「Leetって何?」では遠回りが避けられず、解くことをあきらめた可能性が高かったろう。

 ちょっと話がずれるが、古代文字の解読にはその文字が記述している言語が分かっていることが重要だ。エジプトのヒエログリフ(古代エジプト文字の一書体)を解読したシャンポリオンは言語の天才でもあり、ヒエログリフが記述していた古代コプト語に関する知識があったらしい。マヤ文字の解読も、古代マヤ語の直系の可能性が高い方言が特定されてから加速した。ちなみにエジプト文字もマヤ文字も表音文字である。私は「解読結果として得られるものはローマ字表記の日本語だろう」と仮定して解読に着手した訳だが、それ故に"Leet"に思い至れなかったとも言える。

 解読結果をある程度予測できていれば、厳密な解読でなくても良ければ"Leet"は解読に不要だ。これは"Leet"を使わないと言うことではなく、「一般的な"Leet"が使われていることを意識しないまま、"Leet"を使ってしまう」と言うことだ。この場合、"Leet"は一種の換字暗号として取り使われていることになる。ちなみに"Leet"は「見た目が近い別の文字(または文字列)に置き換えるもの」なので、上記の通り「一見『カ〇〇ウ』とローマ字読みできそうな文字列がある」なんてことが当たり前に起こる。|V|とタイプしても人の目ならMに見えなくもないでしょ?だから暗号としては弱い。でもコンピュータにとってはそうじゃないところがミソだ。

 上述の通り"_2_"と「カンコウ」が見つかれば、「あぁ、あの本の第2巻/集が刊行されるのか」という推測は十分できる。これは三崎律日/Alt F4さんが自著の出版歴を持つこと、その本が動画と関係あることを私が知っているからだ。ならば探すべきは第1巻/集の書名である「奇書の世界史」換言すればk、i、s、y、o、n、e、a(ヘボン式なら更にh)がどの文字に置き換えられているかを特定することだ。「カンコウ」がもしその通りならば、kとnとuはそのまま、aは4、oは0、までの変換ルールが得られたことになり、焦点は、sは5、iは1、eは3、yとhはそのまま、の変換ルールで良いのかと言う点に集約される。何故ならこれらルールに従えば、得られている文字列の先頭が「kisyonosekaishi_2」となるからだ。更に、tはそのまま、の変換ルールを加えれば、全文が意味ある文章として読める。この一連の流れは、第二次世界大戦中に英国がドイツのエニグマ暗号の解読キー(厳密には暗号化ローターの初期設定。毎日変更される)を総当り法で解く際に、例えば通信文の最後に高確率で「ハイル・ヒトラー」という文字列が入っていることを利用して解読を効率化したことにも似ている。

 ただ、これら文字変換ルールが正しい保証が全くない。少なくとも既存のルールに従ったものでなければ、他者も同じ結果を得る保証にならない。そこで"Leet"だ。"Leet"は規格化されたりといった「唯一の変換ルール群」ではないが、「広く使われている変換ルール群」と言う意味で標準化されていると言える(デファクトスタンダートってやつだ)。だから、文字列を大文字に変換した上で、Wikipediaに掲載されている"Leet"の変換表との齟齬が無ければ良いこととした。

 なお、"Leet"の文字変換は基本的に1対1ではない。だから、原文中で同じ文字でも"Leet"適用時にはそれぞれ別の文字に変換しても良い。解かれたくない場合は特にそうだ。でもそうしていないあたりが、この暗号が動画視聴者へのサービスであるひとつの証左と言えよう。

 ただ、大文字も当然扱えるBase64のデコード結果が小文字と数字の文字列なのに、基本的には大文字表記を対象とする"Leet"(例えば、4はAにはまぁ見た目近いがaにはほど遠い)を適用させるってあたりはちょっと意地悪な一捻りとは言えるかも。まぁ、大文字だとほとんど見た目で読めちゃうのが"Leet"だからねぇ。

 本日の成果はこの暗号解読です、うむ~。とか言いつつ、この解読が間違っていたらどうしましょうかね。

2021/05/04

30倍ならスペイン風邪ちっく

 本エントリの内容は、それこそ子供のころに読んだ本やここ10年ほどにネット上で見た内容を多く含むので、間違いや勘違いが含まれている可能性があるよ。エントリタイトルを眺めながら「『インドア系ならトラックメイカー』と意外に発声時のリズムが似てる」と思うとか、俺って馬鹿だなぁ。

 さて、

昨日、COVID-19の二重変異インド株の感染力(という謎のワード)が既存COVID-19の30倍という文章をネットで見た。また、インド国内ではこの二重変異株がイギリス変異株(感染力?が5倍)やブラジル変異株をほぼ駆逐してしまったとの調査結果もあるようだ。

 なお、最近のインドでの感染爆発の原因として大規模宗教行事の実施が挙げられ、その実施を止められなかったモディ政権への国民の求心力低下まで起きた。が、やはり二重変異インド株の登場が感染爆発の主因のようである。

 で、30倍と言えば、個人的にはスペイン風邪ウィルスの増殖速度に関わる数字だ。スペイン風邪の正体(変異インフルエンザ)が判明したのは1990年代も末期らしい。正体探しのブレークスルーは、いろんなものが埋まっていることで有名なシベリア、ツンドラ地域で発見された「スペイン風邪で亡くなった人のミイラ」だったそうだ。

 ミイラの調査から、スペイン風邪がインフルエンザの一種であるウィルス性感染症であることばかりか、分子生物学的特徴も特定された。そして分子生物学的特徴とやらから「再現」されたスペイン風邪ウィルスは、毎年流行しているようなインフルエンザの30倍の増殖速度を実験で(おそらくガラス容器内で)示したそうだ。結果、感染源からは一定時間あたりの数にして従来の30倍のウィルスが放出される可能性が示唆される。

 体内に取り込んだら感染に至ってしまうウィルス数が従来株と同じなら、まぁ感染力30倍となると言えなくもない・・・問題は、二重変異インド株は免疫系を回避する(免疫系が感染を検出するタイミングが遅れたり、検出に必要なウィルス数が上がる)特性があることだ。感染力が謎ワードなのは、後者の免疫系に関わる因子を考慮してるのかどうかが分からない、「書き手は意味を理解しているのか?」と疑わざるを得ない記述があふれていることに尽きる。

 改めて書こう、そうは言っても30倍だ。ついに来た感がある。これ以上増殖速度が上がると感染即短期間で死亡となってしまい、流行できないままウィルス自体が死滅してしまうだろうという気がする。免疫系が気づく前に終わり、では人間の身体にできることは全く無い。

 では、感染力?が同等?となったスペイン風邪による日本のダメージはどのようなものだったか。死者数/感染者は約1.7%(世界的には10~20%の範囲の数字を目にしてきた)と決して高い印象は受けないが、累計感染者数は当時の国民約5500万人のほぼ半分とされ、死者数で見ると決して馬鹿にならない、いやはや。

  ただ現時点で目にした情報に基づけば、日本において二重変異インド株はスペイン風邪程の感染者は出さない可能性が高いと見ている。理由は簡単、伝わっているスペイン風邪の毒性よりも、二重変異インド株の毒性の方がかなり高いからだ。潜伏期間は短く、発症から2日程で発熱などの症状は治まって一旦回復したように見せておいて、本番の症状はそれ以降だそうだ。[追記3/15]インド二重変異株については、潜伏期間はむしろ長い(3週間以上もあり得る)と報道内容が変わってきている。従って、「発症から重症化」までの期間が短かくなったと理解しておくべきかと思う。[追記 ここまで] 当初からCOVID-19は体中の血管にダメージを与えて多臓器不全を引き起こすと言われてきたが、二重変異インド株の本番の症状はまさにそのようなものだという。肺炎はウィルスが増殖中の場所で起こるごく初期の症状に過ぎない。

 今回の感染症に関する我が家のモットーは1年前から「罹ったら負け」。二重変異インド株の登場、加えて国内にも侵入済とのことで、その意味はますます現実味を帯びてきた。自分はともかく(どうせもう意識が無い)、家族がトリアージの対象になるような状況は考えるのも嫌だ。

2021/04/25

リハビリ Cubase Pro & After Effects

 Steinberg社のDAW Cubase Pro 11とAdobe After Effects CS5(もうサポート対象外の旧バージョンだ)のリハビリ。音源を用意と、それを使ってYoutube用の動画を作る。

 前者の作業は具体的にはほぼ完成していた既存プロジェクトのマスタリング。4年ほど前とかなり考え方を変えてリバーブの使用は最小限とするとともに、イコライジング時にはSonarworks Reference4 Headphone Editionの「B&K 1974スピーカーターゲット」をリファレンスに用いた。後者の作業は文字通り一からで、歯車のモデリングからアニメーション付け、さらに最終マスタリング結果の音源のタイミングに合わせた文字入れまでしてから動画として書き出した。

 ちなみにAfter Effects CS5はもう4代のPCにわたって使ってきたが、いやぁ、今日日のPCは本当に速くなったんだなぁ・・・と使ってみての思いしきり。

 当然、各アプリケーションともに使用方法を思い出しながらの作業となったが、土曜日の昼食を挟んで一気に述べ6時間以下で動画完成まで持って行けたのは実績として個人的には大きい。1年前にはアプリケーションを立ち上げたものの・・・な感じの毎日でしたからね。

2021/04/17

リハビリ Lightwave 3D

 昨夜自らに鞭打って、ほぼ3年ぶりに3DCGモデリング・レンダリングアプリであるLightwave 3DをPCで立ち上げた。バージョンは2020.0.2で最新だが、メジャーバージョンアップは体調を崩してから1回すっ飛ばしている。

 まぁ、「会社の病気休暇中に何遊んでんの?」って言われると「ぐぬぬ」なのだが、この種のアプリでの作業は集中力を要求するし、時間は有限だから作業の手際の良し悪しがアウトプットに直接影響する。だから実際に作業してみての結果は、病状の回復具合の指標となり得ると考えているのだ。結論から言うと、昨夜は2時間ほど、今日は午後の3時間ほど触り、そこそこのアウトプットを得られた。現段階では「新しく始める、一から作る」はキツい、が「次に何をするか自分の中で明確な作業の再開」はできるといったところだろう。

 作業対象のデータは、自分のYoutubeチャンネルなどのヴィジュアルで使うつもりのVocalod GUMI(Megpoid)のモデルだ。まだ頭部だけ、髪も面倒臭くて手すら付けていないが、その代わりにソ連の初期宇宙服のヘルメットを被せてある。現在のYoutubeチャンネルのヘッダーの画像は、今回の作業再開前の最後のレンダリング結果を加工したものだ。そもそもは"High school GUMI"でのヴィジュアルを意識したモデリングだが、着手時はともかく、手癖やらなんやらでもはや見た目は別物だ。宇宙服のヘルメットを被った頭部だけ・・・スカイ三平さんの宇宙開発ゆっくり解説動画中の霊夢みたいやね、とか今突然思っちゃった。

 作業自体は主にリギングで、モデリングはしていない。だが、Nullオブジェクトとチャンネルフォロワーを使って、レイアウト上での黒目(緑目?)位置のコントロール(≒視線のコントロール)を実現できたのは個人的に満足度は高い。前半は厳密さが要求されて気を使う必要があるが、後半は単調な繰り返し作業と、トータルで見ると本当に面倒臭いからだ。やり終えるには多少の気力が要る。次は口と眉のモーフ編集か、身体のモデリングか・・・まぁ、前者だろうなぁ。



 

 具体的にやったことは左右の黒目のテクスチャの貼り付け角度や大きさをNullオブジェクトの回転で制御できるようにしただけだが、貼り付け角度の変更だけでそれっぽい結果を得るためには、貼り付け角度変更時の回転中心(眼球中心位置相当)になる貼り付けの基準位置をまず見つけなければならない。結局作業の大部分は、作図解法さながらのモデリング解法による左右の目のテクスチャ貼り付け位置の特定と、すっかり忘れていたアプリの操作法を思い出すことや新たなキーマッピングの発見などに費やされた。なお、仮想的な眼球の直径は約38cmもあった。

 なお、より真面目な視線コントロール、別の言い方をすると「どこを見ているかをNull位置で指定してやると、そこに視線が向くように黒目の位置が変わるようにする」には、ボーンを2本とNull1個を加え、やはりチャンネルフォロワーを使ってやれば実装できる。この時のボーンの根本(回転中心)は、当然、仮想的な眼球の中心だ。こちらの方法だと視点と顔との距離も黒目位置に反映されるため、寄り目もできるようになる。静止画ではなくアニメーション前提の場合は絶対こちらの方法にすべきだ。

 過去エントリで既に書いたことがあるかもしれないけれど、1日に16時間覚醒状態が保て、一つの作業に2時間集中して取り組むことができれば、少なくとも「会社のオフィスに行って、ちゃんと仕事をしている『振り』」以上のことはできる。だからこそ「今の自分がどのくらいの時間、どのくらいの深さで集中することができるか?」を常に把握したいし、「もしかしたらできるかも」と思ったことには取り合えずチャレンジするようにしている。

 先行して「とにかくブログを書く(誰も読んでないっぽいが)」、「DAWアプリであるCubase Proに触る」にもチャレンジを始めている。今も頭は時に割れるように痛むし、歯もグラグラしているしでツラいと言えばツラいのだが、持論である「取り組んだことを終わらせることができる限りは、自分自身は終わってない」は捨てられない。終えるためにはまず取り組む必要がある。時に中止や廃棄も決断する。上記の持論の実践は体調不良を理由に一時的に停止状態だが、ほんのちょっとだけだけど停止解除への希望が見え始めた。この点は単純に喜んでおこうと思う。

2021/04/16

ブリンケン国務長官をちょっと誤解してた

 対外穏健派の印象が強かったので、会見などで中国共産党の人権侵害問題に触れる際に感じる言葉の強さみたいな何かに違和感を感じていた。その違和感を氷塊させる発端は、5chまとめ記事で目にした「彼は親族にホロコースト経験者がいる」という一文だ。

 調べてみると、ブンリンケン氏の実父はウクライナ系ユダヤ人、母はハンガリー系ユダヤ人、母の再婚相手である継父がリトアニア系ユダヤ人で、継父が(おそらくポーランドでの)ホロコーストを生き延びた人物とのことである。ナチスの占領の有無に関係なく、戦間期~第二次大戦期にユダヤ人迫害が酷かった国名が並ぶ。こんな背景があっては、「ジェノサイド」という表現まで使われるような人権侵害行為の加害者への言及が切っ先鋭いものになっても仕方ないだろう。

 本エントリの本題はここまでで、以下はおまけだ。

 ブリンケン氏の母親は上記の通りハンガリー系ユダヤ人だが、私の関心分野でハンガリー系ユダヤ人と言えば、レオ・シラード、ジョン・フォン・ノイマン、エドワード・テラーらが挙げられる。原子爆弾、水素爆弾、ゲーム理論、そしてPCやスパコン(デジタルコンピュータ)だ。 

 ハンガリー語は日本語も属する膠着語であり、姓名順も日本と同じで姓が先になる(例えば、ジョン・フォン・ノイマンのハンガリーでの名前はノイマン・ヤーノシュ*)。

 1999年のエドワード・テラーの言葉とされる以下の文章*はお気に入りで、メモってある。

われわれは、すべてを変えようとして地球にやってきた火星人である - 歓迎されないであろうことは承知の上だ。そこで、アメリカ人のふりをして、このことを隠しておこうとする・・・しかし、訛りがあるせいで、どうもうまく行かない。そこでわれわれは、誰も聞いたことのない国に住むことにした。そんなわけで、われわれはハンガリー人だと名乗るようになった。

*:ジョージ・ダイソン(吉田三知世訳): 「チューリングの大聖堂 コンピュータの創造とデジタル世界の到来 [上]」, ハヤカワ文庫ノンフィクション, (2017), pp.136.

2021/04/13

2018年8月25日、越谷レイクタウンで何があったの?

 Youtubeのあなたへのおすすめが最近変な方向でヒットを飛ばすようになった。エントリタイトルの通り、越谷レイクタウンで何があった?現場に居たら半笑いにはなるかもしれんけど、ワイ爺さん大悶絶ですわ。あ、発音インチキだけど今でも歌えるよ!

Foooo!

2021/04/11

映画「王立宇宙軍」は実質的に日本語吹き替え版か?

 二つほど前のエントリで、映画「王立宇宙軍」に触れた。その際に頭を掠めた事を書いておく。「王立宇宙軍」では主人公たちは日本語をしゃべるが、敵対する共和国の人間は全く異なる言葉をしゃべり、字幕が出る。劇中の世界の作りこみへのこだわりを感じさせる処理だ。だが待てよ・・・という話だ。

 ここからは朧げな記憶を起点とする話なので、記憶違いだと前提が壊れて以下は全て無意味になる。が、まぁ聞いてくれ。結論から言おう、「吹き替え版でなければおかしい」。

 プロデューサーの岡田斗司夫氏によれば、主人公たちが使っているのは12進数だそうだ。ならば、10が「じゅう」なのはともかく、11や12が「じゅう+1」、「じゅう+2」を思わせる「じゅういち」や「じゅうに」と発音されるのはなかなかに不自然だ。カウントダウンでは「じゅうご」なども用いられているが、この場合は「10+5」ではなく「12+3」を思わせる発音の方がふさわしいだろう。従って、少なくとも数字に関しては、10進数を使う我々でも分かるように「吹き替えられている」とはならんかねぇ。

 以上。

 ちなみにクリント・イーストウッド監督の映画「ファイアフォックス」では英語(と米語とロシア語訛りの米語)とロシア語が使われているが、各シーンでどちらの言語を使うかのルールはあらためて考えるとややこしくて混乱する。ただこれ、英語を母語とする観客の分りやすさを思っての計算ずくのものと思われるので、むしろ気にしない方が良い。観てても気にならない、気にしない人も多いと思われる。細けぇことはいいんだよ。

 ロシア人しかいないシーンでのロシア人同士の会話は基本的に英語である(ストーリー理解に会話内容の理解が不要なソ連旅客機のコクピット内の会話はロシア語だが、ソ連ミサイル巡洋艦リガのクルーは英語をしゃべっている)。だが実際にはロシア語をしゃべっているので、吹き替え相当の処理だ。このようなシーンではソ連第一書記も普通に英語をしゃべる。ところが無線で米国人に「英語で話しかける」シーンでは、件のソ連第一書記は「ロシア語訛り」の米語をしゃべる。単語が区切られ、特に"r"の発音に癖がある(ミスター→ミスタル、プロパティ→プロパルティ、ユー・アー→ユー・アルみたいな感じ)。前世紀にロシア人研究者の英語による研究結果プレゼンを聞いたことがあるが、まさにこんな感じだった。ここではそれまでの流暢な英語はどっかに行ってしまっている、すなわち英語への吹き替え相当の扱いはされていない。

 と言うような例もあるので、まあね。

素人さん、バイデン政権の声明から米韓台朝関係についてちょっと考える。

  バイデン政権が、「台湾を『重要な安全保障、経済面のパートナー』とする声明を発表した」とのこと。米国議会の方針に変化はないのだから、まぁ既定路線だ。米国大統領とは言え万能ではなく、議会の公式方針に良くも悪くも縛られている。

 実のところ、個人的に気にしているのは、台湾が米軍駐留、或いは港湾施設などの米軍利用を今後認めるかどうかだ。もし米陸軍の駐留を認めた場合、部隊の基幹はグアムからの派遣となると思うが、残りの人員や装備(現在は戦車などの装備は配備してあるが、兵士はローテーションで定期的に入れ替わり、常備軍と呼べる兵力は既にいない)は韓国からになると予測している。

 現韓国政権は米軍からの戦時作戦統制権返還を強く望んでいるが、本件はこの話の進展に弾みをつける可能性がある。国連軍(実質は米軍)の司令部は既に横須賀に移動済で、実用最小限のポストを埋めてあるだけで実務要員は既におらず、解散を待ってる状態に近い。

 かつての報道によれば、戦時作戦党政権の返還後、韓国の時の政権は半島有事の際に韓国軍が在韓米軍を指揮できるようになると虫が良いことを考えていた節があったが、米軍がそんなことを良しとする筈が無い。戦時作戦党政権の返還とはすなわち在韓米軍の駐留終了であり、その可能性はロシア、中国共産党ともに織り込み済みと思われる。で、最も困る、と言うか環境が変わってしまうのが北朝鮮だろう。故に万が一にもそのような状態が出来した場合、反応が読めないのはやっぱり北朝鮮である。

 米韓同盟は維持される。少なくとも米国は維持を望む。イデオロギー対立などに起因した対立国家群のこれまでの干渉地域は北朝鮮だったが、今後は韓国が干渉地帯、より正確には米国に選ばれた戦場となる。経済的にはおろか、物理的にも焦土化されることを米国は覚悟する筈だ。もちろん米国自身は韓国の物理的焦土化までは望んでいないが、なんとしてもそれを避けようとまではしない、と言う意味だ。

 一方北朝鮮には、米国寄りの選択的中立という選択肢が転がり込み得る。米中対立下においては、北朝鮮には中立という選択肢が有り得、その可能性も米国は排するべきではない。北京の中南海に到達し得る弾道弾技術と核武装がその選択を可能とする(日本を米国の犬に過ぎないと言う日本人(?)もいるが、同時に日本の核武装やロケット技術の軍事転用も否定するのは、国家間のパワーバランスのリアリティや経済性の視点から著しくバランスを欠く。犬でなくなるためには必要なものがあり、その中でも核武装は経済的である。そうでなければ、北朝鮮が核兵器開発という道を選んだことに合理性が無いことになる)。既に人権の観点から北朝鮮を非難しているバイデン政権にはそれはできない相談とも見えるが、議会や軍のリアリストには十分受け入れられるだろう。

 イランも同様である。米中間で軍事オペレーションが発生したとしても、普通に中立を保つ方が賢明と見る。ただ米国にとっては対イランよりも対イスラエルのケアの方が繊細かつ高くつく可能性があり、この点はトランプ政権時と現行バイデン政権での大きな違いとなる。

 そもそも米国と気や朝鮮は休戦中であり、どちらにも先に戦端を開く必然性が無い。韓国が北朝鮮に侵攻した場合に米軍にそれを支援する義務があるかは米韓同盟の内容を改めて確認しないと分からないが、北朝鮮が米中戦争に対して中立の立場を既に明確にしていた場合、少なくとも軍事的な支援はしない方が筋が通るように見える。

 嘘か本当か現在のピョンヤンは封鎖状態だと言う情報がある。COVID-19の蔓延が原因だ。人民軍もかなりのダメージを負っている可能性も指摘されて久しい。中国共産党支配地域の食糧不足や一般人民の経済不安は増大中に見える。米国が今積極的に動くにはやはり理由があるのでは、と邪推する。

 とある人の話では、数年前に人民解放軍内に日本との開戦との噂が立ったことが原因で、潜水艦搭乗員を中心に退役希望者が続出したことがあったらしい。もし、米国などの大規模戦闘オペレーションが予定された場合、この種の噂を利用した欺瞞作戦が先行的に実行される可能性があると見ている。この種の情報操作オペレーションは、中国共産党支配地域内への浸透要員がまだ活動中とされている台湾の協力があれば可能だ(CIAはほぼ殲滅との由)。

 台湾という因子の有効化で、韓国、北朝鮮の価値は大きく変わった。米中戦争の有無の可能性は、米国が戦争目的をどこに置くかで決まる。戦争目的が中国共産党打倒であれば、米国は戦争はしない、できない。ポンペオ元国務長官らが強調したように、米国の敵は中国共産党ではあるが、理想的かつ有効なアプローチは(現時点では存在しない)中国共産党を代替し得る勢力の支援であるとしか言えない。一瞬であっても、大陸全域を混乱状態にすることは賢明ではないからである(中国共産党は決して望ましい存在ではないが、国共内戦時の生きるか死ぬかの混乱期に比べればよっぽどマシな秩序をもたらしているという一点を持って、中国共産党を支持する、という認識の人民は少なくとも過去には多かったようだ)。がそのような勢力は存在しない。そのような存在こそが最大の脅威であることを知っている中国共産党は、長年にわたり手を打ってきており、完全に成功を収めてきている。

 このため、米国の軍事オペレーションの目的は、中国共産党は潰さないものの、軍事的及び経済的目標の徹底破壊に留めることになるだろう。特に空、海軍兵力は徹底的に破壊する。陸軍への攻撃の程度はインド、ロシアの姿勢が変数だ。例えばインドが国内の亡命チベット政府を押し立ててきた場合、米国も関与した人民解放軍陸軍に対する軍事オペレーションは実行され得る。こうなるとトルコは揺れる可能性がある。エルドアン政権は親中姿勢だが、一般国民の親ウイグル(≒東トルキスタン=東のトルコ国)傾向は根強い。本来のウイグル人の土地の分離も軍事オペレーションの一部として意図した場合、トルコ政権を揺さぶることも目的に含めた情報戦が先行して仕掛けられるだろう。トルコがNATO所属であることを忘れてはいけない。

 海軍力を失った中国共産党への対応は周辺国に任せることとなるがが、台湾ですら調子に乗り過ぎて変な方向に力を傾ける可能性もあるから、台湾の米軍駐留は継続しておいた方が良い。結局のところダメダメなフィリピン政権への楔ともなる。また台湾政府は軍や世論と上手くいなさないと、本来得るべき果実を失う。日露戦争の日本側の戦争目的は「朝鮮半島及び中国東北部からのロシアの排除」だったから、現状追認による講和で目標達成が見えた時点で、「モスクワまで行けー!」とか国民(臣民)を煽っていた糞マスコミや軍の動きを抑え、賠償金を捨ててでも講和に持ち込んだ政府の戦争指導とそれを理解していた外交陣はやはり凄い。実は米国の対中戦争の目的は、台湾が大陸復帰を望むかどうか、米国が台湾が自身が望むことを自力で為し得る力を持っていると判断するかどうかで大きく変わる。が。この辺り、現在ではどうなるか見通せない。

 台湾はそもそも中華民国だから大陸復帰は国是とも言えるが、台湾としての存在感、独自の価値を獲得したのは「大陸復帰などと言う世迷い事から自由になる」というリアリティを志向し始めてからである、換言すれば、「台湾は、大陸の中国共産党支配地域の有無に関係なく、台湾と言う独立した国家足りうる」と考える台湾人が主流派になったてからである。台湾はひとまず「単独で中国共産党を打倒、代替し得る勢力」という看板を下ろすことによって、最近の国際的地位が得た。これは多少皮肉っぽいと言うか、何とも複雑な思いにも捕らわれる展開ではある。

 最後にあんまり関係ない話だが、最近キッシンジャーが「世界は第一次世界大戦前に戻る」旨の発言をしたとの報道があった。老人の言う世迷い事に過ぎないので無視しよう。彼の博士論文はその時代のバランス外交についてのものであり(日本語版をかつて読んだ)、彼は結局今のその時代の専門家以上でも以下でもないようだ。今にして思えば、彼の米国外交は時代を読んでいない酷いものであった。

2021/04/10

パール兄弟「洪水デート」

 「パール兄弟」は音楽の供給媒体がレコードからCDへと徐々に移行していた時代のバンド。だから彼らの曲は私にとっては青春時代の曲、何の例えでもなく失恋が原因で部屋に閉じこもっていた時に聞いていた曲・・・と綺麗にまとめたいところだが、「洪水デート」と言う私の大のお気に入りの彼らの曲は、アルバム「PEARL TRON」に収録された「DISCO鎮魂巻」と言うメドレー形式の曲中の一曲だった。単独の録音がないかと当時探したが、ついに見つからなかった。別音源の記憶(イントロ部の記憶)もあるのだが、30年以上前の記憶なのでもうそれが正しいという自信は無い。

 ちなみに、アルバム「PEARL TRON」のレコードは直ぐに出てくる。っつーか、どこにあるか分かっている。

 どうしてこんなことを書くことになったかと言うと、ギターの窪田晴男さんの「洪水デート」の弾き語り調動画を、本当に偶然に偶然が重なってYoutubeで見つけたから。今日もちまちまと不愉快なことが結構あったんだけど、そんなことは全て忘れて今はなんとも幸せ。

 ちなみに窪田晴男さんは、映画「王立宇宙軍」の音楽にも参加し、サントラでは「戦争」というタイトルが付けられた楽曲のギターを担当していたと記憶している。共和国リマダ駐留軍の新型ジェット機の登場、空戦開始からロケット発射直前の最終打ち上げカウントダウン開始までを含む戦闘シーン、ストーリー展開上のクライマックスを飾る楽曲だ。ただ編集の関係か、映画ではサントラ盤には収録されているイントロ部が使われていない、贅沢と言うか残念と言うか何やってんだよっつーか、映画っぽくないところと言える。まぁ、プロデューサーによれば音楽担当者とは多少あったようで、その影響の可能背は高いわな。この楽曲流れたとたん、当時いっしょに劇場に行った友人と「泣きのギターきたー!」と盛り上がった。そう言われることを当人はどう思うのかは分からないけれども、当時の仲間内の認識はそうだったんですよ。

 この「洪水デート」の動画とのたまたまの出会いでの大事な収穫は、作曲がベース/住職さんのバカボン鈴木さんだと分かったこと。上述のようにメドレー形式の楽曲中の一曲だったので、レコードのライナーノートではどの曲が誰の作曲かがイマイチ分からなかったんですよ。いやぁ、曲自体も弾き語りも良い、良いな。歌詞については敢えて保留、ガチで思い出補正入っちゃってるから・・・泣いちゃうぞ・・・

政治的に中立?

 ファーストリテイリングの決算報告会の決算会見で、ウイグル族の強制労働と自社の企業活動との関係性について問われて、会長兼社長は「われわれは政治的に中立なので、これ以上発言すると政治的になるので、ノーコメントとさせていただきます」と答えた。

 「ノーコメント」はまぁ良い。常套句に過ぎない。だがその前段は色々不味い。ファーストリテイリングに悪意を持つ者、正当性の有無はともかく自分の信じる正義に基づいてファーストリテイリングを攻撃しようとする者らにとっては涎モノの悪手も悪手だ。

 そもそも、何を言おうとしているのかが分からない。まず一句目の「政治的に中立」と言う表現は対応する既存の「政治的対立」の存在を示唆するが、それが何かは発言者は明言していない。このため、「これ以上発言すると政治的になるので」と語を継がざるを得なかったと個人的には見る。「われわれは政治的に中立なので」が意味するのは自社が選んだところの自社の姿勢(=自分たちにしか分からないこと)、「これ以上発言すると政治的になるので」が意味するのは(察して欲しい?)自社の立場や状況(≒自分たち以外の人間でも常識の範囲内で十分適切に推定できること)であって、同じことを2回言っているのではない。言い換えのつもりなら、「すなわち」と言った接続詞を入れれば良いだけだ。接続詞が無いことも、その前後の内容が同じではないことを示唆する。なおここでは、発言の背後には明確な論理的思考が存在していることを前提としている。発言者が論理的であるが故に、論理的に入る筈が無い接続詞の類を入れられなかった、という解釈だ。嘘が付けなかった、ということでもある。

  念押しだが、「ウイグル族の強制労働」に関わる中共と諸外国との間の対立は「人権問題」に依拠し、中共が「政治問題化」したがっているに過ぎない。「政治利用」とは別物なのは注意されたい。このため、会長兼社長の言う「政治的中立」の前提となる政治的対立が「ウイグル族の強制労働」に関わるものを指している場合、ファーストリテイリングは「ウイグル族の強制労働」に依拠する対立は政治問題であるという中共と同じ立場を採っていることになる。質問、回答の文脈からは、この一点に関してはファーストリテイリングは中共と同じことを言っていることになろう。枝葉末節などと思うなかれ、全くの逆でこっちが本質であり、会見の内容を論理的に理解するために必須のピースだ。どうですか、それなら「一つの中国の原理(principle)」をコミットされますか?(従来日米などがコミットしていたのは「一つの中国の方針(policy)」までだ。)

 ちなみに「~ので、(接続詞無し)~ので」は、言い直しを避けようとした際に良く現れる。「失敗のリカバーに失敗した状態」の可能性が高いので、客先でライバル会社の人間が客相手にこのような表現を使った時には、その前後の内容をきっちりチェックしておこう。

 中間の句が無いと、「わたしたちはこれこれこういう姿勢ですので、ノーコメントです」となり、実態として「われわれがどうしようとお前らには関係ねぇだろう。われわれがどうするかは我々が決める、世間も国も関係ない。」と回答しているにほぼ等しい。うっかり(?)発生してしまったそのような可能性に、切れ者の発言者が気づかない筈がない。「それには明確に答えられないんですよ、察して下さいよ」という自社の(苦しい?)状況を託した、或いはそう託したように忖度されるであろう「これ以上発言すると政治的になるので」と言う発言は、後に続く「ノーコメント」という「行動」と1句目との論理的リンクを切断するために挿入せざるを得なかった句であり、その句の内容自体にはさして意味が無いと見做して良いだろう。

少なくとも日本国内においては。 

 かつてのエヴァを引くまでも無く、失われつつあるとはいえ、「察しと思いやり」は多くの日本人が美徳として持つものだ。だが、少なくとも米国の政治の世界にはそんなものは存在しないし、それがグローバルスタンダードだろう。如何にも国内専用の回答内容、言葉選びも将来的に悪手だったとされる理由となるかも知れない。

 バイデン政権は人権政治を掲げた。EUや英連邦国家なども追従した。「ウイグル人の人権問題」に対して中立であることは、既に「悪」として確定済である。どう考えても「善」とは見做せないからである。 

 ところで、NHKの本件の報道においては「ノーコメント」と言う言葉がタイトル中に切り出されている。上記のように、「ノーコメント」という発言や行動に対しては、「もっと上手くやりなよ、グローバルスタンダードなやり方を踏襲しなよ、所詮は形式なんだよ、嘘さえつかなければ逃げ切れるんだよ」ぐらいにしか思わない。「今は」とか「現時点では」が付けばほぼ満点だ。だが「われわれは政治的に中立なのでノーコメント」という切り取られ方をすると、「自分の会社を国家と肩をならべ得る存在の如く位置づける経営者の発言」ととられ、そのセンスの無さと不快感を隠さない者も現れよう。

 この発言自体は、忖度しがいもない無様なものだ。気を付けておいて欲しいのは、本エントリの内容は、あくまで会見でのやり取りの一部を意図的に切り取ることで現れ得るひとつの可能性だ。会見としてどうだったかは、会見全体をもって判断することになるが、本エントリでは踏み込まない。

 ま、個人的にはこの発言者、「頭は良いのだが勉強不足や視界の狭さが原因で滑っている発言の多い人」に分類されている。これは、報道された発言自体の論理展開には問題は感じないものの、論展開の前提に間違いがあったり、情報が古かったり、必須要件が欠落していたり、根拠不明の決め付けとしか思えない考えが主な拠り所だったりして、発言全体は無意味になっていることが多い人のことだ。口が思考についていけない人に多いと言えば多い残念パターンである。

 ちなみに私が就職した際、仕事上の発話に時折英語を強制されていた人が課内に居た。英語を使うのはその人だけだった。上長に理由を尋ねたところ、「彼は頭の回転が速いので、日本語でのしゃべりが考えに追いつかない。英語だとしゃべりと考えの速度が合う」とのことだった。成程、興が乗って「ゆっくりしゃべることを忘れる」と、その人の日本語のしゃべりは全く分からなくなった。「われわれはなので、これ以上発言、ノーコメいただきます」みたいになるのだ。どもるとも違う、なんか不思議な感じだった。なお、後に一緒にお仕事をさせて頂いたことがあるのだが、数式を使うことが多かったにを幸いに英語がダメな私は筆談を多用させて頂いた。