さて、地球の衛星軌道上に何かを2つ投入に成功した北朝鮮の「事実上の弾道ミサイル」の発射だが、中共(中国共産党)の今後の振る舞いの自由度を一気に削いだ感がある。TVを観ていても同様の論調はあり、必ずしも突飛な認識でもないのではないかと思う。
米国大統領予備選に現在挑んでいるトランプ氏の発言は総じてつまらないものだが、以前から一つだけ気に入っているものがある。「北朝鮮を制御できない中国なんてぶっ潰してしまえ」というやつだ。後段はつまらないものだが、前段の前提に相当する部分の一種の問いかけは、意外に含蓄があるように思う。
そうは言っても、トランプ氏の方向性は概ね「対外不干渉主義」っぽいから、おそらく「ぶっ潰す」の主体は米国ではない。「米国は何もしたくないし、何もしないが、北朝鮮は目障りだ。北朝鮮の始末は威勢の良い中国がやればいい。中国がやらないんだったら日本や韓国にやらせればいい。武器は売ってやるから、北朝鮮ついでに中国にも一発みまってやれ。中国も日本も韓国もそれぐらいの存在価値しかねーわ」って辺りが彼の本音と言うか妄想なのではないかと思う。故に後段については別に何か斟酌してやる必要は無いだろう。
話を 「北朝鮮を制御できない中国なんて」に戻すと、かなり見事に現状に当てはまっているように見える。各種報道が伝えるところでは、先の「水爆実験実施」に対して国連安保理事国の大部分は「追加制裁やむなし」との姿勢だが、中国つまり中共は「制裁に慎重」らしい(ロシアの姿勢に関する情報が無くて困っているのだが、プーチン氏は土壇場まで旗色を明確にしなさそうだ)。
北朝鮮に対する経済制裁は既に実施されているが、少なくとも北朝鮮の現状の体制へのダメージは見えてこない。皆さんもご存じの通り、経済制裁が北朝へのダメージに直結していない理由の一つは「中共の制裁破り」にあるとするのが広く共有されているコンセンサスだ。この見方のベースには、「中共は現在の北朝鮮の位置に共産主義国乃至は社会主義国といった干渉地帯が不可欠と考えている」という認識があるのは明白だろう。
さて、上述のコンセンサスが事実であるすれば、有効な「追加制裁策」は明確である。「制裁破り実施国を含む、実質的な北朝鮮支援国も追加制裁の対象とする」というものだ。つまり、中共が現行通りの北朝鮮への実質的な支援を続けると、当然ながら中国も制裁対象となる。ただ、中国は拒否権を持つ安保理理事国だし、現在の世界大統領はアレだし、ロシアがどう出てくるか読めないし、ドイツもアレなので、そうは問屋が卸さないだろう。今後のインドやイランの動きは、これらの国々の国際的存在感を大きく変えるかも知れない。
とは言え、中共が追い詰められているのは確かだ。「北朝鮮を制御できない中国なんて」という言説は、裏を返せば「北朝鮮の不興を買っている数々の振る舞いは中共が原因」と言っているに等しいし、実際のところそうとしか見えない。北朝鮮の現行体制は「中国の干渉地帯としての北朝鮮」を実に高く中共に売りつけることに成功しているように見える。
中共は六か国協議の再開を主張しているらしい。この中共の姿勢に対する分析として、中共が「もう交渉は米国と北朝鮮で直接やってくれ」と言っているとするものがある。おそらく、当たらずと言えども遠からずといったところだろう。が、ここで中共に好き勝手に足抜けさせてはいけない、少なくとも現状に対する落とし前を付けることをやり方が陰湿であろうが中共に求めるべきだ。
中共が如何なる言い訳を重ねるか、面白くもなんともないが目を離すべきではないね。