2019/11/13

YouTubeのRecommendedの耐えられない軽さ

 YouTubeのHome画面の仕様変更(個人的には大改悪)に触れたエントリで、「Recommendedの教育内容がリセットされた」とうっかり書いてしまった。が、正確に書くならば「リセットされたとしか思えない結果しか返ってこなくなった」というところだろう。具体的に発生した状態は、「以前に『興味がない』と指定した動画またはチャンネルの動画がRecommendされたものの8割程度を常に占める」というものである。

 「興味がない」とした動画やチャンネルをいちいち覚えているほど記憶が良いなんて訳ではない。特定の動画またはチャンネルを「興味がない」と指定する際のルールがはっきりしているだけに過ぎない。

 例えば「(日本の)80年代シティポップ」なんてタイトル、内容の動画は例外無く「興味がない」と指定してきた。ところがタイトルがまんま「80年代シティポップ」だったり「80年代シティポップ」を含んでいたりする動画ばかりがいきなり20個以上Recommendされたのだ。このキーワードをタイトルに含む動画群がRecommendされ続けるに状態には一時期心底悩まされたため、この例に関してだけは「興味がない」と指定したことのある幾つかの動画タイトルやチャンネル名は(サムネイルの絵と併せて、文字列としてではなく絵や図形という形で)さすがに覚えていた。当然のように記憶にあるサムネイル、動画タイトル、チャンネル名がそこに並んでいたのである。そして類似の状態がHome画面をリロードする度に繰り替えされた。

 新しいHome画面では、Recommendされた個々の動画に対していきなり「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」という指定ができる。従来は「(この動画を含む)このチャンネルは好きではない」までしか指定できなかった。従って「チャンネルからは動画をRecommendしない」という指定相当の状態を実現するためには、次々とRecommendされる続ける特定のチャンネルに含まれる動画に対して、延々と「このチャンネルは好きではない」という指定をし続けるしかなかった。という訳で、Recommendedの教育内容がリセットされた(ように見える)状況にはうんざりしたものの、「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」という指定ができるようになったことでRecommendedの再教育が加速できるのではと同時に期待したのだった。だが、結果から言えばその期待は裏切られる。

 まず「指定する機能」の実装の問題がある。

 以前は「このチャンネルは好きではない」という指定はHome画面以外の画面からもできた。動画閲覧画面の右側にサムネイルが縦に並んで表示されている動画に対しても指定できたのである。が、現在は動画閲覧画面では「このチャンネルは好きではない」どころか「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」も指定できない、つまり「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」の指定は、Home画面で動画がRecommendされなければ指定できない。一方、「このチャンネルは好きではない」は画面を問わず一切使えなくなった。これではむしろ教育効率は下がってしまう(=教育に必要な時間が延びる、または教育する機会が与えられない)。

 次いで、「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」というのは劇薬の如く強力過ぎることである。

 Recommendedの教育方法はあらためて考えるに非常にダサく(=ハイテクとか冴えた考えとかと無縁にしか見えない)、例えるならば「『嫌い』は指定できるが、『好き』は指定できない」ものとなっている。つまり、「こういうのが好き!」「こんな感じのものをRecommendして!」といったポジティブな教育はおろか、「この状態を維持して!」といったニュートラルな教育すら不可能なのだ。言わばRecommendedの教育過程とは、

「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」・・・

というネガティブで非常に気持ち悪いものなのだ。もともと「嫌い」を中和するような指定が不可能とあっては「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」は結果が非可逆的でるが故に過激すぎる。間違って「嫌い!」としてしまった場合、それを取り消す手段は用意されていない。

 結論から言うと、まじめに1時間程「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」・・・を、当然興味が無い動画のチャンネルのみに対して繰り返したところ、再生回数が1年で1~2桁の動画がぽつぽつという状態を経て見事に何にもRecommendされなくなった。指定することに意味があるのかと疑問すら持つことがあった従来の「このチャンネルは好きではない」の緩さでなんとか保たれていたバランスは見事に崩壊、私に対してのRecommendedは1日とかからずに破綻したようである。「嫌い!」とはしなかった動画やチャンネルの情報は使われないのか、どこへ行ったのか・・・ユーザ個人に対しては捨てているも同然の取り扱いなんだろうね。

 ちなみに新しいHome画面では、Recommendした動画が無い場合も「空のRecommended欄」が表示される。「ちゃんと考えてつくられたもの、気を配ってつくられたもの」なら、このような場合は「Recommended欄」自体を表示しないんじゃないですかね。
じゃあ「好き」はどこにあるのか。敢えて挙げるならばSubscribed(登録済み)なのだろう。観たからといってその動画やチャンネルが「好き」とは限らない、むしろ観た結果嫌いになっている可能性すらある。しかし、SubscribedとRecommendedのそれぞれの内容が相互作用していると感じたことは一切無い。Subscribeしたチャンネルの動画がRecommendされることはあるが、そんなことされても意味は無い(=知ってた、でしかない)、相応の計算機リソースを消費しながらRecommendはユーザにとって意味あることを一切しておらず何の価値も生み出していない。

 YouTubeのRecommendedには動作だけではなく在り方自体に何か釈然としないものを感じていたのだが、このたった2日間でその理由が分かった気になってしまった。Recommendedがやっていることは、90年代の大々容量データに対応したデータベースソフトができたこと未満の低レベルなものなのである、少なくともこの2日間で起きたことを見る限りは。

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