朝日新聞を「売国新聞」、特定の朝日新聞社記者や特定の朝日新聞社幹部を「売国奴」と呼ぶ人も少なくないが、それに関しては私は異議を唱えたい。彼らは単に「嘘つきの卑怯者達」に過ぎない。「売国奴」と持ち上げてやる必要なんかない。それは「勘違いテロリスト(間違った状況認識に基づいて他者を殺めたり負傷させた者)」を「建国の父」や「国の英雄」と呼ぶに等しいぐらいの現実感の欠如である。なんちゃって。
繰り返す、「嘘つきな卑怯者達」で十分である。なんちゃって。
バカにすらつける薬のないこの世界では、もちろん卑怯者達につける薬などないし、自浄なんて上品かつ知力と腕力が同時に必要な行為はそうは期待できない。なんちゃって。
世界情勢と言う冷徹なリアリティは、普通の日本人にも「味方」と「それ以外」の区別を要求し始めているぞ。なんちゃって。
私は親戚からとあるミッションを受け、盆休みに結論を出すことが求められている。この2日で心は決した。だが心配するな朝日新聞社、10戸にも満たぬ世帯が購読を止めるだけだ。「天下のクオリティペーパー」らしいが、きっとこれも嘘のひとつなんだよね?ね?なんちゃって。
とまぁ、おふざけはさておき、エントリタイトルの件である。
朝日新聞及び朝日新聞デジタルは 「慰安婦問題を考える」というシリーズ記事を最近掲載した。はてさて、今度はどう出てくるかと思ったが、悪い意味で予測が的中、時宜もわきまえず、自らの非も認めずといった内容であった。私なら(自己検閲)。本エントリから始まるシリーズは、「慰安婦問題を考える」の記事に解説と言うか、「読者への考えるきっかけ」を加える試みである。「不完全な」に込めた意味は主に下記の3点である。
- 記憶に頼るところが多く、ソースが示せない内容を含む。
- どう頑張っても一個人の力だけでは客観性を完全に担保することはできない。
- 事実ベースのアカデミック寄りの姿勢は譲れない。
記憶、と言うのは大学生時代に足しげく大学や自治体の図書館に通って目にした戦前~戦後の新聞紙面、歴史研究書、手記、個人的な聞き取りの内容である。これらはネットだけでは引用元を担保できない。また、先の震災経験後に蔵書を泣く泣く処分した。従って引用元が手元に無い場合も多い。
さて、具体的なやり方だが、
- 定本は朝日新聞デジタルの記事とする。より厳密には、 まず2015年8月6日午前7時42~44分の間にダウンロードした記事のウェブページの内容とする。
- 不完全とは言え解説を目指すので、記事全文の引用を基本とする。
- 解説を加える部分に下線を引き、下線部の末尾に"*数字"を付す。つまり、こんな感じだ。*3
- 記事引用の後に、番号毎に解説を付す。
って感じかな。
なお、必要に応じて刺激の強い表現、単語も使用している場合がある。ご注意のほど。
記事開始
「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断
2014年8月5日05時00分
〈疑問〉日本の植民地だった朝鮮*1で戦争中、慰安婦にするため女性を暴力を使って無理やり連れ出したと著書や集会で証言した男性がいました。朝日新聞は80年代から90年代初めに記事で男性を取り上げましたが、証言は虚偽という指摘があります。
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男性は吉田清治氏。著書などでは日雇い労働者らを統制する組織である山口県労務報国会下関支部で動員部長をしていたと語っていた。
朝日新聞は吉田氏について確認できただけで16回*2、記事にした。初掲載は82年9月2日の大阪本社版朝刊社会面。大阪市内での講演内容として「済州島で200人の若い朝鮮人女性を『狩り出した』」と報じた。執筆した大阪社会部の記者(66)は「講演での話の内容は具体的かつ詳細で全く疑わなかった」と話す。*3
90年代初め、他の新聞社も集会などで証言する吉田氏を記事で取り上げていた。
92年4月30日、産経新聞は朝刊で、秦郁彦氏による済州島での調査結果を元に証言に疑問を投げかける記事を掲載。週刊誌も「『創作』の疑い」と報じ始めた。
東京社会部の記者(53)は産経新聞の記事の掲載直後、デスクの指示で吉田氏に会い、裏付けのための関係者の紹介やデータ提供を要請したが拒まれたという。*4
97年3月31日の特集記事のための取材の際、吉田氏は東京社会部記者(57)との面会を拒否。虚偽ではないかという報道があることを電話で問うと「体験をそのまま書いた」と答えた。済州島でも取材し裏付けは得られなかったが、吉田氏の証言が虚偽だという確証がなかったため、「真偽は確認できない」と表記した。その後、朝日新聞は吉田氏を取り上げていない。
しかし、自民党の安倍晋三総裁が2012年11月の日本記者クラブ主催の党首討論会で「朝日新聞の誤報による吉田清治という詐欺師のような男がつくった本がまるで事実かのように日本中に伝わって問題が大きくなった」と発言。一部の新聞や雑誌が朝日新聞批判を繰り返している。*5
今年4~5月、済州島内で70代後半~90代の計約40人に話を聞いたが、強制連行したという吉田氏の記述を裏付ける証言は得られなかった。
干し魚の製造工場から数十人の女性を連れ去ったとされる北西部の町。魚を扱う工場は村で一つしかなく、経営に携わった地元男性(故人)の息子は「作っていたのは缶詰のみ。父から女性従業員が連れ去られたという話は聞いたことがない」と語った。「かやぶき」と記された工場の屋根は、韓国の当時の水産事業を研究する立命館大の河原典史教授(歴史地理学)が入手した当時の様子を記録した映像資料によると、トタンぶきとかわらぶきだった。
93年6月に、吉田氏の著書をもとに済州島を調べたという韓国挺身隊研究所元研究員の姜貞淑(カンジョンスク)さんは「数カ所でそれぞれ数人の老人から話を聞いたが、記述にあるような証言は出なかった」と語った。
吉田氏は著書で、43年5月に西部軍の動員命令で済州島に行き、その命令書の中身を記したものが妻(故人)の日記に残っていると書いていた。しかし、今回、吉田氏の長男(64)に取材したところ、妻は日記をつけていなかったことがわかった。吉田氏は00年7月に死去したという。*6
吉田氏は93年5月、吉見義明・中央大教授らと面会した際、「(強制連行した)日時や場所を変えた場合もある」と説明した上、動員命令書を写した日記の提示も拒んだといい、吉見氏は「証言としては使えないと確認するしかなかった」と指摘している=注①。
戦時中の朝鮮半島の動員に詳しい外村大・東京大准教授は、吉田氏が所属していたという労務報国会は厚生省と内務省の指示で作られた組織だとし、「指揮系統からして軍が動員命令を出すことも、職員が直接朝鮮に出向くことも考えづらい」と話す。
吉田氏はまた、強制連行したとする43年5月当時、済州島は「陸軍部隊本部」が「軍政を敷いていた」と説明していた。この点について、永井和・京都大教授(日本近現代史)は旧陸軍の資料から、済州島に陸軍の大部隊が集結するのは45年4月以降だと指摘。「記述内容は事実とは考えられない」と話した。
■読者のみなさまへ
吉田氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します。*7当時、虚偽の証言を見抜けませんでした。*8済州島を再取材しましたが、証言を裏付ける話は得られませんでした。研究者への取材でも証言の核心部分についての矛盾がいくつも明らかになりました。*9
◇
注① 吉見義明・川田文子編「『従軍慰安婦』をめぐる30のウソと真実」(大月書店、1997年)
記事終了
- (百歩譲って)議論の分かれる「当時、朝鮮半島が植民地であったか」について当然のようにこう書く姿勢を疑う。朝日新聞社は「植民地の定義」を明確にしなければならない。
歴史上の事実は「合邦」であり、大日本帝国憲法が朝鮮半島にも適用された。この形態は例えばドイツ帝国のパラオや、英国のインドの取り扱いとは一線を画しており、同様に「植民地」と呼ぶには論理的に無理があるとともに、当時の実態に対しての印象操作が疑われても仕方ない。
- 全ての記事(残り15件)も記事中で特定すべきである。特に「記事を取り消す」以上、特定は朝日新聞社の責任において為されなければならない。特定しないという態度は、他の記事については何時でも言い逃れできるようにしていると解釈されても仕方ない。「特定していない記事を取り消します」ということに意味があると理解するのは無理である。
- これは単なる一記者の感想であり、客観的であるべき本記事の本質から言って不要である。吉田氏を「口の上手い詐欺師」扱いする意図でもあるのか、つまり印象操作と勘繰られても仕方ない。
- 伝聞形であるが、主体が不明確である。 「東京社会部の記者(53)」が主体であることを担保する文章となっていない。
- 朝日新聞社への同様の非難は90年代からあり、安倍首相の発言はその一つに過ぎない点に触れていない。安倍首相に対する印象操作、及び10年以上にわたって虚偽報道を放置してきたことの隠蔽を疑われても仕方ない。
- 伝聞形であるが、このような点も取材、確認していないということか。主体も不明確である。
- 2項記載のように、取り消すとした記事のうちの15件を特定していない。従って、この「取り消し」自体が1件の記事を除いて実効性を伴っていないのは明らかである。
- 何が言いたいのか論理的に不明。単に言い訳なら、尚更詳細な訂正記事を掲載すべきである。
- 記事にすべきである。2及び8項を踏まえた記事とすれば、実効ある訂正記事とできる可能性がある。
全体・感想
「当時、虚偽の証言を見抜けませんでした」と明言する以上、現在は嘘を見抜いていることになる。かつての虚偽報道内容と現在明確に嘘だと見抜いた事項について、きっちりとした説明をする責任が朝日新聞社にはある。新聞社であること、虚偽報道が新聞記事であったことを鑑みれば、引用可能な訂正記事とすることが筋である。つまり、口頭だけなどでは責任を問われよう。
事実を語る人間を時にヘイトスピーカーに貶める口実を与えてきた主体が、特定もしていない記事の取り消しごときで加害者である立場から逃れられる筈もない。ヘイトスピーカーと貶められた人々の名誉回復のためにも、朝日新聞社が取り消し対象としている記事を特定した上で、個々の記事の内容について無用なレトリックを排し、曖昧さを残さないきっちりとした訂正記事を掲載すべきである。国益に関する点についてはここでは問わないが、訂正記事が出されれば論理的帰結として是正されるべき点は是正される。
2014/08/06 初版