本日の「窪田順生の時事日想:なぜマスコミは『憲法9条』がらみになると話を盛ってしまうのか」、そう、まさにそれですよ。
日本のマスコミはこういう大事な部分を隠して、「あれ、言ってませんでしたっけ?」みたいな顔をしてニュースを流すことが多い。その最たるものが「憲法9条」だ。
先ほどのリベラル系番組ではよく憲法9条を「世界でも唯一の平和憲法」とか言うが、これは正確ではない。駒沢大学名誉教授の西修氏が世界の憲法188を調べたところ、平和項目がある憲法は158もあった。さらに言えば、「国際紛争を解決する手段としての戦争放棄」という条文はイタリア(1947年)、アゼルバイジャン(1995年)にもあるという。
ちなみに、イタリアもベルルスコーニ首相の時にイラク戦争に参加しているし、アゼルバイジャンの軍隊もPKOでコソボ、アフガニスタン、イラクに派兵をしているだけではなく、NATO(北大西洋条約機構)も加盟する「平和のためのパートナーシップ」に加わった。「蟻の一穴」理論でいけば、両国とも権力者が平和憲法を無力化しているわけだから、軍国主義になっていなければいけないが、そういう話は聞こえてこない。
このことからも分かるようにマスコミ人の間では、「憲法9条」がらみでは多少話を盛ってもいい、みたいな免罪符がある。
さらに上記の引用部分の内容も踏まえると、次の引用部分は二重、三重に捻じれていてシュールなまでに秀逸。「当時者の無知(不勉強)」、「別の意図が疑われる『思いつき』」、「偏向報道(の疑い)」が重なってもはやこれは報道の名に値しない。全文に目を通して頂いて、引用元の文章が含む毒、秘めた切っ先の放つ鈍い輝きを味わって欲しい。
その象徴が『朝日新聞』が4月に出した「憲法9条にノーベル賞を 主婦が思いつき、委員会へ推薦」という記事だ。タイトルそのままの内容だと、9条に対してなんの思い入れもない奥様がある日、突然閃(ひらめ)いたみたいな印象を受けるかもしれないが、事実は違う。
この「主婦」なる女性は、キリスト教系の団体でさまざまな平和活動をしているのだ。だから、読者を誤解させないためには正しくはこう書かなくてはいけない。
「憲法9条にノーベル賞を 女性平和活動家が思いつき、委員会へ推薦」
つまりはそういうこと、付けたす言葉もありませんわ。