2021/01/22

中華人民共和国外交関係者の沈黙

 犯罪者引き渡し法などに関して香港が騒がしかったころ、オーストラリアの大学内でも騒ぎが続いていたという報道を観た記憶がある。恐らく新唐人テレビのYoutubeチャンネルの動画ではなかったかと思う。

 オーストラリアの大学内の騒ぎとは、香港支持派華人と半香港派華人の衝突だ。ここで華人という表現を使わせてもらってけれど、これにはさして大きな意味は無い。ただ、衝突の当事者の大部分は香港を含む中華人民共和国からの留学生だが、中国系オーストリア人も混じっていたからだ。「衝突の当事者=中国からの留学生」ではない、のニュアンスである。

 そもそもは「香港を応援しよう」という集会が大学内で開かれたことに端を発する。参加者の中心はおそらく香港からの留学生だろうが、中国系オーストラリア人も少なくなかったように感じた。英語の発音が違う、特にb、dだ。

 さて、トランプ元大統領はその退陣が近づく中で少なくない数の大統領令を発し、それらには中国共産党(中共)にとって面白くないものも含まれていた。ポンペオ国務長官の昨今の動きも中共にとってはウザいものだったろう。が、「戦狼外交」などと称された攻撃的な中共の外交姿勢がここのところ鳴りを潜めている。有り体に言えば、何も言わない。

 習近平の健康問題説自体は、独自の信じられる情報源なんか持たない私には否定も肯定もできない。ただ、もしこれまで攻撃的な言説を繰り返してきた戦狼外交の担い手らが沈黙しているならば、その理由について私なりの仮説は立てられる。「忠誠を示す相手の不在」、または「忠誠を示す相手の不透明化」だ。具体的な状況は分からない、そこまでだ。

 先に述べたオーストラリアの大学内の留学生の対立の光景をYoutube動画で観た際の印象は、「半香港派華人の(習近平体制への)忠誠心アピール合戦」だった。半香港派華人は他の半香港派華人と競っていたのではないか、と言うことだ。アピール内容は極めて内的な、別の言い方をすると極めて内輪向けのものだ。このため、アピール内容が過激化すればするほど、外部の人間からは理解不能なものとなっていく。文化大革命時の紅衛兵間でも見られたとされる、内部対立の火種ともなり得る状況の出来だ。習近平体制が個人崇拝色を強めた結果、文化大革命時と類似した状況が現れ得るのは極めて自然に思える。

 戦狼外交の担い手の発言の向かう先はいつでも中共内部である。特に支配体制のトップである。内容も、特に過激化を極めた場合は、所詮内輪の論理にしか耐えられない代物となる。ここまで来ると、戦狼外交の担い手グループは一種の「喜び組」と言って良い。また戦狼外交の担い手の大部分が外交経験の無い党官僚との話もあり、そもそも内輪の論理しか知らない人間のムーブとの印象を裏切らないバックグラウンドと言える。蛇足ながら書いておくが、つまり外交本流の官僚達ではないと言うことだ。

 戦狼外交の担い手の忠誠アピールの対象は党ではなく、指導層内の特定の人物である。静かになったとは言え戦狼外交の担い手が現時点でも同じポジションにいるならば、現在「特定の人物の不在」が出来している可能性が高い。この場合のポイントは「不在」で、「交代」や「変更」ではない。もし「交代」や「変更」があったならば、外交的に明確なシグナルがあって然るべきだからだ。そもそも、戦狼外交の担い手グループはもはやそれまでのポジションにはいられない。

 しかし一般的に、「不在」という状況は早急に是正されるべき状態である。ならば「不在」事態が演出、意図的に維持されている可能性がどうしても疑われる。この先についても思うところはあるけれども、この時点で十分に妄想レベルなので書くのはここまでとしておこう。

 何れにしても中共の外交的沈黙は気持ち悪い。戦狼外交の登場により、中共の外交レベルは3歳児レベルまでいったん退化した。反応が分かりやすい、予測できる相手は全然怖くない。ところが昨今、戦狼外交どころか全ての外交において中共は実質的に沈黙している。ホント、中共内では今何が起きているのだろうか。

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