輪をかけて酷い。
症状だけ見れば、不眠、ホルモンバランス不全、自律神経失調が依存関係不明のまま平行進行しているみたいだ。いみじくも会社の上長が「まるで実験場」と呼んだ如く、脳内はどう贔屓目に見ても薬品漬けと言って良い。特定の薬の服用は汗に混じる香りからすら分るほどだ。現在文章が書けるのも、新たに今日昼間用の薬を処方してもらったせいなのは間違いない。医者曰く、「まぁ、眠気を取るための覚醒剤だわな」。今晩はともかく、明日以降の生活が全くイメージできない。
この2カ月以上は、精神的に身体的にもうつの症状はない。
ではさきの薬が無いとどうなるかと言うと、治まらない頭痛と眠いけど一瞬として絶対眠れない半端状態が続く。短期記憶に頼った論理的思考は高速で回せるが、記憶は実質的に使えない。故に高速で回して得た複数の論理的思考結果が統合できないどころか、新しい思考を始めるとその前の思考結果の詳細は消える。もうオフィスの机上はメモ書きだらけである。
初見の論文は続けて10回は読む(2回目以降は速読だが)。仕事の打合せ時は記憶だけではしゃべれないので、メモ片手に以前と同じ(と思われる)思考を改めて回しながらリアルアイムで思考結果を口にする。他人の発言内容は記憶できないので、自分の思考内に組み込んで回し続けるしかない。忘れる前に、0.5秒に一回ごとぐらいのペースで意識して記憶し直すのだ(バッファーから読み出し、同じバッファーに書き込むイメージ)。実際のところ、エクセルでのセル2つ移動に要する時間(当然アニメなどの全視覚効果はオフだ)でも記憶的には危ない。なお重要故に繰り返し記憶され続けられた内容は、どこかの段階で別の記憶域に記憶されるようだ。あと、他の人の記憶も利用するためにとにかく結論を先に口にする。思考内容がうっかり途中で失われても、「結論なんだったっけ」と周囲に聞けば高確率でリジュームできる。
そんなことできるの?と思う方もあろうが、訓練し、おそらく必要な犠牲を払えばできる、としか言えない。うつ病をやった経験も個人的には無視できない。うつ病をやると、どうも論理的或いは厳密な思考になりがちだ。これは私だけの体験ではなく、同じ病を患った2人の知り合いも同じだ。個人的に意見だが、「いなし上手」「いいかげん」な上司は部下をうつ病などで潰しやすい。それらこそがうつを引き起こす原因となり得るが故、うつ克服後にそれらを嫌うのだ(アニメ「ひそねとまそたん」は哀れ歴史や智への理解も論理性も欠くため、このような尺度からは適当過ぎる内容故に評価の対象にすらなれないのである)。「直観的な人だなぁ、感覚的な人だなぁ」と新たな職場に行くたびに言われ続けた私が今や「論理的な人」と言われるようなるとはね。
さて、メモを見ながらながら思考し、同時にしゃべっている時は、メモ記載の図や文字群以外の視覚情報をおそらく脳は処理していない。ある人によると、「目から光が失われ、どこを見ているのか分からなくなって不気味、眼球周りの筋肉が一切動かない」のだそうだ(トイレの鏡などで片目からすっと光が消える瞬間は自分でも見るようになった。片目だけ痙攣をおこしているだけかも知れないが、昨日は右目の光景だけ数分間サイケデリックな配色になった)。結論を先出ししているので、結論自体に問題が無ければ話は中断されずに聞いてもらえる。そもそも短い文章を積み上げていくしゃべり方だし、しゃべる量自体が少ない。
喋りには日本語しか使えない。英論文を読んでる途中で日本語を口にすると、英論文の内容の記憶は失われる(英語は読めるものの所謂学者英語なので、使っている脳の部分は後天的に割当てたところだろう、つまり日本語とは全く別の部分を使っている)。そのせいか、英論文を読んでいる間やしゃべる気が無さそうな時は空いている手で口きっちり塞いでいるらしい。また論文を読んでいる途中なのに視線がしょっちゅう派手に泳ぐらしい。おそらく思考中なのだろう。視線が泳いでいる間、特に何かを見ているちう意識はない。つまり、実際には何も見ておらず、記憶の中の空間内に分散配置した文章(概念)を読み直すといった脳内の視覚情報処理にでも合わせて動いている可能性が高い。
と、なんか格好良いことを書いているように見えるかもしれないが、違う。むしろ、「皆さんが意識せずに難なくこなしている様々な思考」を「意識的にやらないとできない状態である」と考えて欲しい。
単一の思考ループのみを回すから早いのは当たり前、皆さんは相互に依存関係がある複数の思考ループを常に回しているのだ。単一ループしか回せないということは、損得勘定や駆け引きができないし、発展的な会話もできない。概念や情報の統合、整理やまとめができないので資料作成は非効率的、分析の深さにも限界がある。細部を組み立てて全体を作ることは非効率とは言えできるが、逆は無理だ。全体は理解できるが、記憶の支援無しでは相互依存関係を維持したまま構成要素への分解はできない。たいていのゲームもできないだろうが、そもそもやろうとすら思わない。
だから現在の私単独は、会社では役に立たない。かろうじて出番があるのは、同僚皆が忙しくて、回せる思考ループが1つか2つ不足しているからだ。このような状況は「なんかもやもやして釈然としないところが残る」という感覚の原因になりがちだ。だから、そんなもやもやを吹き飛ばせるような「提案」のために思考を回す。そういうところこそ相談してもらう。様々な人からの相談を受けた結果、一種の情報ハブとしても機能する。同僚間で話を通してみたりする。レベルがそれなりに高い同技術分野では悩み所のバリエーションはあまり多くない。結果、私が書いた単一のメモ、時に同僚の机を一周したりするわけである。
ただこんな(ある意味恵まれた)状況が続けられるにも限界はある。なんとかしたいのだが、薬にぶん回されている状況ではなかなか能動的に手が打てない。オカルト小僧崩れで柔道もやっていたから整体、気功、鍼灸、漢方もある程度の理解の上で取り入れているけれど、ね。新しい事ができないと企業の開発エンジニアに価値はないし、そこに自らの価値を見出してきた自分自身が辛い。
睡眠薬に対する反応が極端らしく、医者からは「めんどくさいなぁ」とか「面白いなぁ」とか言われるものの、当人には何も面白くない。まぁ、通常の睡眠効果が7時間とされる薬が18時間以上効いてしまったり(ほぼ20時間寝っぱなし)、翌日には同じ薬が1秒も効かなかったり(一睡もできず)、副作用が原理上無いとされる薬で副作用ライクなわやくちゃな反応が出たりするようでは仕方がない。なお現在使っている薬の場合、11時就寝(スイッチオフ、または気絶という感覚だ)で、約3時または約5時に覚醒(瞬間的に覚醒し、まさにスイッチオンの感覚だ)という状態で安定(?)しているものの、その後は夜11時のスイッチオフまで寝られず、昼間の状態は前述の通りである。夢を見た記憶は皆無、寝たという感覚すらも正直持てない。蕁麻疹も酷く、両手とも膨れ上がってしまってちゃんと手が握れない。もちろん車の運転なんてできない。
さて、どうなることやら。