2014/11/22

FIAT 500 Twinair Dualogic インプレッション - 1年間乗ってみて

インプレ最終回、結論から言えば「ぞっこん」です。

まずは前提となる条件からのおさらい。
  • 車はTwinairエンジン、Dualogic(オートマチックモード付きクラッチペダルレスシーケンシャル5段トランスミッション)、 ただし足回りのセッティングはほぼマニュアル車500Sと同等。
  • 乗り換え前の車は、先代のFIAT Nuova Panda Plus、1.2ℓFIREエンジン、Dualogic(同上)。
  • 用途は主に通勤で方道約9km。行き(出勤時)のみ軽い渋滞あり。高速道路使用は年に2、3回で方道70~150km。 
  • エコモードは酷い渋滞時以外は未使用、スタート&ストップは基本的に常時ON。
  • 停止のための減速時以外はマニュアルモードでシフト操作、エンジンブレーキも多用。
 ただでさえ足回りが日本車一般と較べて硬めの欧州車でかつ スポーツ仕様なので、明らかに足回りは硬いです。道路事態やマンホールの段差をもろに拾うので、好き嫌いは分かれるでしょう。私自身は運転しながら路面状態が把握できる方が好きなので、むしろ好ましいぐらいです。コーナリング時の車体のロール(横方向傾斜)はほぼ0で、ここは一旦ロールはするもののきっちり戻る(コーナリング後に反対方向へロールすることがない)先代Pandaとも味付けが違います。

 先代Pandaでは50km/h以上でのコーナリング時に感じたアンダーステア感(ハンドルを切ったほど曲がらない)は全くありません。少なくとも街乗りで使う速度域(70km/h以下)ではアンダーステアは感じません。その代わり、先代Panadaでは登り坂のカーブで多用したタックイン(コーナリング時にアクセルを緩めて速度を落とした瞬間に、ハンドル角度はそのままでもきゅっとより曲がる。)は使えません。一般的にアンダーステアが出るという事は「車がそういう運転はやめてと言っているに等しい」訳ですから、先代Panadaにとっては厳しい運転をしていたという事でしょう。実際、先代Pandaではコーナリング時にタイヤが鳴る事が多々ありました。が、500ではタイヤを鳴らしたことはまだ一度も有りません。ステアリング感は高速道路走行時でも変わらず、「ハンドルを切った分だけ曲がる」という感じです。500で初めて高速道路を運転した際、アンダーステアが出ることを前提に先代Pandaの感覚で車線変更をしたところ、あまりに急激に曲がったのでびっくりしたぐらいです。

 先代Pandaと較べると重量は+5%、ただし馬力は+30%ですから、動力性能には今のところ不満はありません。Twinairエンジンの応答性は非常に高く、これまた「アクセラレータ ペダルを踏んだ分だけ回る」といった感じです。3000回転を狙ってアクセラレータペダルをやや深めに踏み込んだ状態で2400回転を越えたらマニュアルでシフトアップという加速操作なら、3速に上げた時点でほぼ60km/hに達してしまいます。最大トルクが1900回転で出るのがTwinairエンジンの特徴(FIRE系エンジンは3000回転付近)で、これが良好な加速特性に寄与していると思います。このためFIRE1.2ℓエンジンを搭載した先代Pandaの「3速で引っ張って」とは一味違います。気を付けないといけない点は、アクセラレータペダルの踏み込み具合はそのままで5速までシフトアップするとストレス無く80km/hを余裕で越えてしまうこと。望む通りに「加速し、止まり、曲がる」ため一体感は得やすいのですが、「ドライバーが車の一部になって」エンジンや車自体が望むような運転をしてしまうと道路交通法i違反は必至です。

 速度は160km/hまで確実に出ます。ちなみにカタログスペック上の最高速度は170km/h超です。120km/h辺りまでの加速にはエンジンのトルクが太い2000回転超の領域が使えるので何らストレスはなく、高速道路合流時に速度不足となるような心配もありません。140km/h辺りでドアミラー付近からの風切り音が気になり始め、加速感は頭打ちになってきます。ただし、高速道路での追い越しのための110km/h付近から140km/h付近までの加速にはほとんどストレスはありません。高速道路でもアンダーステア感はほぼ無く、路面の凹凸はがつがつ拾うものの接地感が失われることはありません。ただし、これらはあくまでで好天時の話なので念の為。先代Pandaで雨天時に高速道路を走った際には、時折タイヤが滑ってるような感覚がありました。エンジン回転数は120km/h巡航時に5速で2800回転程度、アクセラレータペダルは気持ち踏んでいるだけなので瞬時燃費表示には平然と20~40km/ℓの値が示されます。エンジンを3000回転以上回そうとするとそれなりにアクセラレータペダルを踏み込む必要がある、といった感じでしょうか。なお、高速道路走行時にエンジン振動が気になることはありません。

 Twinairエンジンのトルクバンド下限は1400回転付近にあります。ですから、この辺りの回転数でアクセラレータペダルを踏み込むとエンジンは「どっどっどっ」とばかりに低振動数で大きく振動します。これは結構気持ち悪い振動で、「酔う」人がいるのも分かります。一度わざと1400~1600回転中心で運転してみたら30分程度で私も気分が悪くなりました。Dualogicをオートマチックモードにしておけば、シフトアップ直後にアクセラレータペダルを緩めるといった意地悪な運転をしない限りはこれらの回転数領域は使われません。マニュアルモードならば尚更回避は容易です。先代Pandaはエンジンのトルクバンド下限を積極的に使う事で大幅に燃費改善が可能(私の実績は3000km平均18.6km/ℓ)で、エコモードでもこの回転数領域を積極的に使うようになっていました。つまり、先代Pandaのエコモードは「エンジン回転数を上げない」というものでした。対して500のエコモードはシフトアップ時のエンジン回転数は通常モードと同等のまま、エンジンの燃料噴射量などを調整して燃費向上を図ります。この違いは、「Twinairエンジンではトルクバンド下限付近のエンジン回転数が振動のため使えない」という判断に基づくものだと推測しています。4速まではDualogicに任せてとにかく加速、巡航速度で可能ならマニュアルで5速にシフトアップして1700回転ぐらいを使う、という運転の方がだらだら加速するよりも平均燃費は良くなるんじゃないかと思います。私の500の実績は1000km平均で17.0km/ℓ。

 2気筒エンジンのためかエンジンブレーキは「エンジンの音の割には」効きません。特に2速で効かない印象で、減速時に2速にシフトダウンするとアクセラレータペダルを踏んでもいないのに「ぬるぬるっと僅かに加速する」感じを受ける事があります。この特性は正直不満、とういうかちょっと気持ち悪いところですね。Dualogicも熟成され、先代Pandaの鬼門であった「緩傾斜を1速で下っている際の自動半クラッチ解除時のかっくんがくがくがく」に類する「分かっていても避けられない」困った挙動は完全に無くなりました。

 走行速度メーターとエンジン回転数メーターのレイアウトは一部で「読みにくいのでは?」という声もありました。しかし、要は慣れとメーターのレンジ設定の問題です。2000回転超付近、60km/h超まで の運転条件であれば両者の針の位置は近くて一目で両方とも確認できます。また、Twinairエンジンならエンジン回転数はエンジン音、トルク変化を反映したアクセラレータペダルの踏込み量と加速感との関係で3000回転ぐらいまではメーターを見なくとも直ぐ分かるようになりますよ。

  さてFIAT 500 Twinair、癖はあるけどキビキビ感に満ちた良い車だと思います。少し寄り沿ってあげれば「癖は最大限生かすべき特徴」となります。ガチガチ行きたければマニュアルトランスミッションの500S、更にパワーが欲しければアバルトもあります。ちょっとなんちゃってクロス感は否めませんが500Xも控えています。現行PandaもTwinairエンジン搭載となりました。噂では500は千葉県の一部で物凄く普及してしまって食傷気味だとか、でもそれはあくまで「見た目」の話。同じ500でもFIRE1.2ℓ、FIRE1.4ℓ、Twinair、更にはアバルトとエンジンが変われば旋回半径(Twinairエンジンは小さいので前輪の最大舵角も大きく取れるそうです)どころか可能な走りも全く別物なのです。

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