実はドイツに対する印象はすこぶる悪い。勢い任せのエネルギー政策の筋の悪さとか、通貨ユーロに対する態度とか色々と気に食わない。Siemensも商売のやり方も気に入らない。Miniブランドの扱いも気に入らない。
加えて個人的な経験もある。かつて「商用利用禁止」で公開した3Dモデルをとあるドイツ人が販売しようとしていたのをコミュニティメンバーが教えてくれ、私に味方した多数のコミュニティメンバーの圧力も借りてネット上の件のドイツ人の販売チャンネルを全て潰すということをやったことがある。要は、多数のサイトに対して私が「著作権の侵害の通知」や「権利保有者からの販売差し止めの請求」をメールしたということだ。著作権がらみとなると、真っ当な仲介業者の反応は速く、徹底している。「ウチでの販売数は0である」という書類のpdfを送って来た業者すらあったくらいだ。
ここまでなら別にドイツ人だろうが関係なかったのだが、当人とのメールのやり取りで「日本人だろ?(先の大戦では)仲間だったじゃないか」と書いてきた時点で完全にキレてしまった。「それは件の話とは全く関係ない」ところに物凄く腹が立った訳だ。実のところ、冷静になれば「仲間扱い」に対して余計に腹を立てていたかも知れない。ナチスドイツは日本と交戦状態にあった中華民国(当時は国民政府)に武器輸出していたし、第一次世界大戦では敵であった。三国干渉はもとより、日露戦争に至る流れの中で当時のドイツの振る舞いは日本を利用する気満々だったようにしか見えない。
朝日新聞デジタルの記事「『中国偏重』のアジア外交修正か メルケル独首相訪日で」は冒頭だけでも十分に胡散臭い。
メルケル独首相が9日、7年ぶりに日本を訪れる。ウクライナ情勢での連携や、日独経済関係の強化が狙いで、メルケル氏自身が「極めて重要」と位置づける肝いりの訪日だ。ドイツの東アジア外交はこれまで「中国偏重」が目立っていた。バランスを欠けばリスクになるとみて、東アジア外交の軌道修正に乗り出す意味合いがありそうだ。
70~80年代に中共と実質的にビジネスをやっていたのはドイツ企業ぐらいだ。例えば、フォルクスワーゲンはかつて中共では全くと言って良いほどブランド力が無かった。原因は、中共でタクシーが普及した時代、タクシーが全てフォルクスワーゲンだったからである。当時から中共に進出していたドイツ企業と中国共産党との関係には未だ不透明感がぬぐえない。
理由は様々だろうが、某巨大ネット掲示板でも朝日新聞の報道内容についてはネガティブな反応が意外に多い。本当に「乗り換え」するとしても、「乗り換え」自体が多くの日本人には不義理や利己主義的に見えよう、中途半端に「バランサー」的な振る舞いをしようものなら拒絶する者も少なくなかろう。「何故今か」という点も色々と突っ込みどころがあるし、朝日新聞記事中の「ウクライナ情勢での連携」に至っては全く意味不明だ。現在のウクライナ情勢の原因に関与しておきながら、ドイツは問題解決へのコミットをのらりくらりとかわし続けている。日中、日露関係への干渉が狙いなら、まぁ、朝日新聞がそう報じるのも分からなくはない。そういう意味でも、少なくとも「今」のタイミングで日本がドイツとどうこうすることに問題点は多数見出せても、利点は全く見出せない。
今まで日本を相手にしてこなかった国が態度を変えてきたとすれば、そこには表に出せない思惑もあると見るのが当然だろう。「ドイツには警戒すべきで、安易に信用してはいけない」というのがとにかく持論だ。「中共への圧力になるとでも思ってるのかな」ぐらいの認識で、さらっとあしらうのが「今」はベストじゃないかと思う。