2015/03/03

事後法という無法

 以前のエントリでも触れた事があるが、「事後法」は近代法治国家にあっては許されない。と言うか、これをやってしまうと少なくとも法治国家ではない。

 ここで言う事後法とは「その法律が無かった時代の過去の事案」に対して適用する法律である。別の言い方をすると、過去においては法律に触れない事案を、新たにつくった(事後につくった)法律を用いて裁くというものだ。恣意的な運用で如何なる事案も罪に問え得るという恐ろしいものであるため、近代法治国家たらんとすれば法律の遡及的な適用は厳に禁じられる。だが、それを当たり前にやってしまう国がある。

 朝鮮日報の記事「韓国政府、親日派土地1000億ウォン分を還収」の内容は恥ることはあっても誇れないものだ。こんな記事が当たり前のように書かれる事に心から慄然とする。そこには理性も論理も知性も恥の概念もない。当事者たる議会、行政機関、法務機関なども同様である。
日帝時代、親日派が日帝に協力した見返りとして築いた財産の国庫還収作業が年内にも終了する見通しだ。親日財産をめぐり、政府と親日派子孫が争ってきたほとんどの裁判で政府側が勝訴し、現在は大法院(最高裁)に係留中の2件だけが残っている。残りの裁判が終了すれば1000億ウォン(約108億6000万円、土地公示地価基準)を越える親日派財産の国庫還収作業の終了に目処がつくことになる。

 韓国法務部は1日、「2006年親日財産調査委員会の決定で国庫帰属が決定した土地に対する訴訟123件中121件が上告審まで確定し、2件は大法院に係留中」と明らかにした。法務部国家訟務課は「現在係留中の2件も1・2審で政府側に勝訴判決が下されているため国庫に還収される可能性が大きい」と説明した。残り2件はともに王室の宗親(王の親戚)で日帝から侯爵爵位を受けた李海昇(イ・ヘスン)の孫であるグランドヒルトンの李愚英(イ・ウヨン)会長(76)が起こした訴訟だ。

 2005年「親日反民族行為者財産還収特別法」の導入後に組織された親日財産調査委員会は2006年7月13日から2010年7月12日までの間に168人の親日派に対して財産国庫還収決定を下した。子孫に相続したり第三者に処分した土地がその主な対象だった。合計2359筆地(2010年公示地価基準1000億ウォン相当)・13平方キロメートルで、汝矣島(ヨイド)面積の1.5倍水準だった。これには第三者に処分した土地116筆地(267億ウォン相当)も含まれている。親日派子孫は直ちに「親日に関連なく築いた財産」と反発して政府を相手取り訴訟を起こした。日帝から貴族爵位を受けたり総督府の高位官僚だった閔丙ソク(ミン・ビョンソク)、宋秉ジュン(ソン・ビョンジュン)、徐晦輔(ソ・フェボ)、朴熙陽(パク・ヒヤン)、趙性根(チョ・ソングン)、李建春(イ・ゴンチュン)、洪承穆(ホン・スンモク)らの子孫が代表的だ。

 裁判所は相次いで政府勝訴の決定を下している。朝鮮総督府の中枢院副議長だった閔丙ソクの曽孫である閔さん(77)の場合、2011年4億4650万ウォンの不当利得金返還判決が確定した。宋秉ジュンの曽孫である宋さん(70)は親日財産還収とは別に国家所有の仁川市富平区(インチョンシ・プピョング)の米軍部隊一帯の土地13万平方メートル(当時公示地価2600億ウォン)に対して「宋秉ジュンの土地」としながら土地所有権訴訟を起こしたが2011年敗訴が確定した。 
事後法の適用は歴史改変、改竄も同然であり、理性的な過去の清算とは何らの接点も無い。「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法 」という法律は議員立法として弁護士出身の大統領の時代に成立した法律だ。それだけでもグダグダ具合が分かろうというものだ。

 かの国は常に生贄を求めているかのようだ。現在のみをゆがんだガラス越しに眺め、他人の不幸を、特に富む者の不幸を、歓喜の声をもって迎えて恥じる事も無い。かの国は現代の「化外の地」と言って良く、その住民の多くは近代への歩みといった「人間の知性或いは理性(Ratio)の活動」に意味も価値も認めていないかのようだ。少なくとも「法治」の本質を理解していないかのようだ。もし本当にそうなら、私には彼らを人とは、少なくとも知性ある存在とは見做せない、見做したくも無い。いや、愚民化政策の成果なのかも。

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