2013/06/22

相対性理論は難かしくない

 中学生の親戚から突如「相対性理論について教えてくれ。」と来たもんだ。じゃ、ってんで自己流の入口論を一発ぶってやると、なんか伝わっちゃた感が感じられる微妙な表情に。そりゃそうだ、誰もがすっと理解できるはずがない。が、決して難しくはないのだ。ちょいと纏めておこう。

 相対性理論の産みの親は言わずと知れた知の巨人の一人、アルバート・アインシュタイン博士だ。相対性理論には一般相対性理論と特殊相対性理論があるが、まずは簡単な方、特殊相対性理論に限定した話だけに触れることにする。

 ここで「特殊」とは「特別な場合」ではあるのだが、実際のところ「理解が面倒くさくなる要因、条件を排除した場合」とも言い換え可能だ。逆に「一般」は「めんどくさいけどどんな場合にも適用できる」ということになる。実際、アインシュタイン博士が論文として発表したのは「特殊相対性理論」の方が先だ。

 「特殊相対性理論」を表す方程式を導くためにアインシュタイン博士が行ったのは「思考実験」だけだとされる。「思考実験」とは「もし***だったらどうなるか?」を論理的に考えること、頭の中でシミュレートすることである。ま、実際のところ、「もし***ならば」の***の部分が重要で、ここを踏み外すとどんな頭の良い人だって意味ある結果が得られやしない。アインシュタイン博士の凄さは、この***が適切だったことだ。ではアインシュタイン博士の***とは?

 「光の速度は観察者によって変わらない。」

 厳密には水中と真空中で光の速度は違ったりする訳だが、ここではその差には目をつむろう。条件をより「特殊」にするために、以降では真空中の話と限定しよう。例えば宇宙空間を思い浮かべればかなり良い近似だ。

 さて、真空中に二人の観察者がいるとする。観察者が何を観察(測定)するかと言えば、ずばり「光の速度」だ。どうやって測るのか?例えば距離1mを光が通過するために要した時間を測れば良い。つまり、

 速度=距離/時間 (メートル/秒)。

 一人目の観察者Aは真空中でじっとしている、或いは一点で「じっとできている」。宇宙空間でじっとできているということは、周囲に惑星などが無く、何かの重力に引っ張られていないという実際にはあり得ない理想的な状態だ。(重力の影響を取り扱うためには「一般相対性理論」に踏み込まなければならない。)

 観察者Aが目の前を通り過ぎた光の速度を測定したとする。観察者Aは気付かなかったのだが、その光が目の前を通過している際、光と同じ向きに高速(ただし、光の速度よりは遅い)で移動している観察者Bも同じ光の速度を測定していたとする。

 観察者Cは「あなた」だ。観察者Aの背後にじっとしていて、肩越しに同じ光の速度を測定する。得られた速度は「真空中の光速」となるだろう。観察者Aが得た速度もやはり「真空中の光速」となるだろう。では、観察者Bが得た速度はどうなるだろうか?アインシュタイン博士の***に従えば、やはり「真空中の光速」とならなければならない。ん?

 あなたから見た観察者Bは、光と同じ向きに高速に移動している。つまり、観察者Bが得た速度は

 (真空中の光速) マイナス (観察者Bの移動速度)

になっても良さそうだ。なんか矛盾してるように見えるよね。実はこの矛盾を解決するのが「特殊相対性理論」だ。光の速さの測定方法を思い出そう。つまり、

 速度=距離/時間 (メートル/秒)。

速度を直接測定している訳ではないのが何気に重要なところ、あなたを含めた三人の観察者は、実際には「距離」と「時間」しか測定していない。「特殊相対性理論」が告げる内容は単純、「光の速度は観察者によらず変わらないが、距離や時間は観察者によって変わる。」ということだ。

 距離も時間も「真空中の光速」を基準にして決まると考えるべきなのだ。1秒とは「光が1秒間で進む距離の通過に光が要する時間幅」、1メートルとは「光が1メートル進むに要する時間幅に光が進む距離」なのである。距離や時間は変わる、つまり絶対的ではなく相対的なものに過ぎないという訳だ。

 あなたの立場からは、観察者Bが得たであろう光の速度は

(真空中の光速) マイナス (観察者Bの移動速度)

である。が、「観察者Bにとっての1秒間」が「あなたには1秒未満」に見えれば観察者Bが得た光の速度が「真空中の光速」であっても矛盾は発生しない。この場合、あなたの時間に対して観察者Bにとっての時間は伸びている。これがいわゆる「ウラシマ効果」と呼ばれるやつだ。

 ちょっと単純化し過ぎたかもしれないけれど、特殊相対理論が語る我々の住む世界の仕組みの一端はそういうことらしい。ちなみに次のステップは「我々は常に光速で移動している」というものだ。いわゆる時空、三次元空間+時間の四次元空間内で我々がどのように動いているかを考察すれば、「複数の観察者」という込み入った思考実験よりも時間の伸び縮みを実は理解し易いのだ。(その2)が書かれるかどうかは気分次第だけどね。

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