DAWアプリケーション Studio Oneが期間限定でディスカウントとなっている。入門グレードのArtistは¥999と安いが、VSTなどのプラグインが使えない事を思うと余りお勧めできない。むしろ入門者ならば、言わばArtistグレードのフリー版のStudio One Freeを触ってみる事をお勧めする。かく言う私もStudio One Free(Windows 64bit)をダウンロードして少し使ってみた。
オープンソースなどのフリーで使えるDAWソフトウェアは一通り触ってみたが、正直なところどれも自分のニーズとはマッチしてこなかった。私の主なニーズは
- VSTiプラグインとしてソフトシンセサイザが使えること
- MIDIデータ入力がめんどくさくないこと
- 安定して動作すること(クラッシュしないこと)
- Windows7 64bitで使えること
の4点に過ぎないのだが、それでもなかなかというのが実情だ。
3点目は開発中のオープンソースアプリでは確かに厳しい条件で、DAWアプリに関しては所謂安定版の登場まで1年くらいまだかかりそうだという感じがする(これは伸び代(藁)。2点目は、多用する機能の操作手順が面倒くさいと結局いじらなくなってしまう事の裏返しだ。例えば同じピアノロール画面上でのMIDIデータ入力でも、Cubase6ではマウスだけでデータ入力できたが、Sonar X1ではマウスを操作しつつCtrlキーも押さなければならなかった。このような「たった一つのキーを押す手間」が実のところ相当うっとおしいし、何故そのキーを押さなければならないのか全く理解できなかった。ほとんどこの一点を持って私はSonarからCubaseに乗り換えたと言って良い。
DAWアプリも出自は大まかに2系統に分かれる。ひとつはMIDIデータ作成から始まりオーディオ編集機能が統合したもの、もうひとつはハードディスクレコーディングソフトにMIDIデータ入力機能を統合したものである。私のニーズには前者の系統がマッチし易いし、Cubaseなどはその典型であろう。後者はオーディオデータ編集には優れるもののMIDIデータ入力操作が煩雑なものが多い。海外ではFL Studioの人気(シェア)が最近は高い様だが、理由の一つは出自が3つめの系統、すなわち現行のDAWアプリの概念(MIDIデータとオーディオデータをほぼ等価に扱える)或いは所謂カジュアルユーザーのニーズが確立されてからのプロダクトである事も大きいと思う。出自に依存したような操作の煩雑さが無く、操作自体もロジカルで一貫性があると言う事だ。オーディオデータを使う事があっても編集はしないのであれば、renoiseの様にキーボード入力に特化したインターフェースもアリだ(Mod Tackerとして見れば普通ではあるが)。
さて、Studio One Freeは1点目を除けば私のニーズは満たす。触った限りではなかなか使い易いのではないかとも思うが、操作には独特の癖がある。「やりたい事がはっきりしている場合にアプリを立ち上げた時点でどうすれば良いかが分かる」という点では未だProject 5を越えるアプリに出会った事が無いのだが、残念ながらStudio One Freeの操作も他のDAWを触ったことのない人間には分かりにくいだろう。Cubaseユーザーとしての使用感は、
- アプリ自体の動作が軽い
- ピアノロール画面でのMIDIデータ入力はマウスだけでできる。ペイントツールの場合、既に入力済みのデータをクリックするとデータを削除する。
- オートメーションの入力のためのツール(ペイントツール、直線ツールなど) が充実していて、かつ直観的に使える
- オーディオデータの切り貼りも動作が軽い
- トラックへのエフェクトのインサート方法がなかなか分からなかった
と言ったところだ。最後の点はとある領域をダブルクリックすれば良いのだが、せめて専用のボタンでも表示してくれていれば、とも思う。
とは言いつつも、Studio One FreeはDAW初心者には基本的にお勧めだ。機能としては物足りないかも知れないが、これを触ってみて、かつ「アレもしたい、コレもしたい」とならない様では高いお金を出してまで別のDAWアプリを買うのは馬鹿馬鹿しい。つまり、Studio One Freeを触ってみることで、自分にとってDAWが必要かどうかという点が結構明確になるんじゃないかと思う。
なお、Studio One Free単体では音が出ない(音源としてバーチャル・インストゥメントのPresenceが添付されているが、データが含まれていない)ので、フリーの拡張コンテンツを本体インストール後に別途追加インストールする必要がある。追加コンテンツのインストールは簡単で、Studio One Free起動後に「メニュー=>Studio One=>Studio One インストール...」を選べば専用のウィンドウが開き、ダウンロードからインストールまでがワンストップで実行できる。「PreSonusユーザーアカウントからコンテンツをインストール」を選ぼう。