ゲームの音楽にはとんと疎いので、今回のゲストのお二人、来兎氏と山岡晃氏については全くの予備知識なし。どんな感じになるかと思えば、お二方ともお話が面白い!充実の2時間ですよ、U-stripライブを視聴しててほんとに良かった。
とても名古屋のタクシー運転手さん達向けのAM放送の内容じゃない。パーソナリティの佐野電磁氏、ディレクターらスタッフ一同を称賛すべきなのか、や、どうなのよ!って話ですよ。初の配信フル参加で私の「奇妙な喪失感」もあっさり発動。名古屋に土曜日に出張したもののラジオを持ってくるのを忘れ、仕方ないので9:00PMごろにタクシー捕まえて「2時間、適当に流してくれ。ラジオはCBCで頼む。」とか、さらっと変な妄想。タグも追加。
来兎氏は沖縄在住のゲーム音楽作曲家とのことだが、そもそもトラック自体をクライアントに納入する訳だから、編曲、音色編集/選択、音声/MIDIデータ編集、ミキシングほかもやってることになる。肩書きと実態との乖離が激しいのはフリーランスのプロでは良くあることだが、実態に即した相応しい肩書を誰か思いついてくれないものか。
来兎氏のお話は、ゲーム製作に関わる同人活動から現在に至る経緯、パッケージが凄すぎる「もえちん(萌えるちんすこう)」への関わりなど多岐にわたり、ステムミックス、とろ美氏、ベーマガ(Basicマガジン)、Basicのmusic文、SHARP mz-1500、クイックディスク、NEC PC-88、カモンミュージックなどの濃いキーワードが飛び交う展開。
某学会の大会を沖縄でやってくんないかのぅ、「もえちん」買ってくるから。あ、ひらがな4文字なのな、やっぱり。
ちなみに「ステムミックス」は言葉は知っていたが、実際にどういう形態なのかが分かったのはちょっとした収穫。ステムミックスというのは、クライアントに音楽を納入する際にドラム、ベース、メロディなど個別のパートを独立した音声トラックデータとしておくことらしい。いったんステレオなり5.1チャンネルなりでミックスしてしまった音声トラックデータだけを納入した場合、「ここではドラムパートだけ使いたい。」といった時にクライアント側では対応できないからだという。「クライアントは神様です。」というのは悲しいかな事実ではあるのだが、ステムミックスを納入した場合は、作った人間の意図しない使われ方をされる可能性もあるということだ。
Stemは名詞としては「茎」、動詞としては「茎を接ぐ」或いは全く逆の「茎を取り去る」という意味がある(動詞の場合の両者の意味は目的格の前置詞で決まる)。ざっくり「剪定」「草刈り」或いは「枝葉を取り去る」というニュアンスで捉えれば、ステムミックスとは特定のパートのミックスのみを取りだしてきたものと解釈するのではなく、特定のパートだけとなるように完成品のミックスからそれ以外のパートを取り除いたものと解釈すべきなのかも知れない。まぁ結果は一緒なんだけど、この種のニュアンスを曖昧にしない癖を付けておくと、外国語の学習は少しは楽になるよ、実際。
閑話休題。
面白かったと書きながら、来兎氏のパートの話の中身に踏み込めないのには理由がある。二人目のゲストである山岡氏のお話がさらに面白かった、というか、どう言や良いんだ?
山岡晃氏はPSゲーム「サイレントヒル」の音楽、効果音などサウンド全般に関与、続編へ進むにつれて肩書きはプロデュース寄りに変わりながら、実態はよりゲームの具体的中身に関与を深めていったということらしい。来兎氏に輪をかけて肩書き不明、挙句にはパーソナリティの佐野電磁氏から「『人間』・山岡晃氏をゲストに迎えてお送りしております。」と紹介されることになるのだが、それもむべなるかな。
「誰でもフェラーリが買える」(実際の話ではピンク色のランボルギーニ・ガヤルド?のオープンカー)の話は触りの触りということと、この話の大枠は自分も20年以上前からやってることにほぼ等しいので置いておくとして、UnityやUnreal(ともに3Dゲームエンジン兼ゲーム製作ツール)を触るのが大好きだとか、コード(和音)名や楽譜も読めないのに作る音楽のレベルや完成度の高さが半端無いとか、「サイレントヒル」の関わっていたころは1日20時間働いていて「時給はマクドナルド(のバイト)より安かったんじゃないか。」とか、とにかくデキる人が大抵二つぐらい備えている資質や有り様を五つも六つも備えている「ある種トンデモない人」であることが良く分かった。
「え、未だにそんなことやってンですか?」という佐野氏の問いにさくっと「だって、楽しいじゃん。」って返せる辺り、私の目指してる有り様がそのまま目の前のPC画面内で展開されてるのは、いやはや、愉快を通り越してただただ驚愕するのみである。お話の内容についてはキーワードぐらいは書けるけど、とても文章では伝えられない濃さと痛快さ、本ブログなんかでは絶対伝えられないのでそれに挑みもしませんよ。
一つだけ山岡氏の発言に触れておくと、「グラフィッカーなので、4、5分の音楽は絵みたいに捉えられる。」とのこと。一種の可視化、見える化であって、言葉(音楽では楽譜が相当するのだろう、少なくともクラシカルは。)に頼らないが故に全体と部分を一気に把握、理解できるということだろう。加えてのポイントは、頭の中に既にあるものを我々が聞くことができるサウンドの形に落とし組む作業を「楽しむ」ことが当たり前にできるところだろう。
デキる人の一部は、頭で分かった時点で当人にとっては終わってしまい、具体的な出力は面倒臭がってやらないことがままある。そういう人といっしょに働いていると、そりゃ聞き上手になっちゃいますよ。気持ち良く出力させることさえできれば周囲も本人も幸せですからね。そういう観点から見れば、山岡氏はまさに生き物でありながら価値発信装置、価値を生み出すだけではなくそれを周囲に送出し続ける(しかも本人は楽しい)というやっぱりトンデモない人としか思えないのだ。
来週のU-strip配信も楽しみですなぁ。
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