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2021/05/25

SONY WH-1000XM3、DAWモニタリング用に復帰する

 DAW触ってる限りはモニタリング用ヘッドフォンを物色し続けるんだろうなぁ。

 で、エントリタイトル記載の状況発生の原因なのだが、もちろん一つではなくてざっくり以下の3点に集約される。

  1. DAW(Cubase Pro)を動かしているPCのBIOSがアップデートされたら、ヘッドフォン端子の挙動がおかしくなった。
  2. DAW(Cubase Pro)を11にバージョンアップしたら、BluetoothヘッドフォンがDAWのアウトプットに指定できなくなった。
  3. DAWのモニタリング用ヘッドフォンについて改めて考える機会があった。

 まず前段について簡単に記す。

 2019年に購入したヘッドフォンSONY WH-1000XM3は、ノイズキャンセリング機能には文句のつけようがないのだが、如何せん周波数応答特性に「味付け」が過ぎた。ここで言う「味付け」とはメーカーが意図的に施した周波数応答特性の調整を指す。低音の強調とかが典型的な例だ。味付けが過ぎることの問題は、聞こえる音が音楽の作り手、送り手が意図したものからどんどん離れていくところにある。逆から言えば、「味付け」が過ぎるヘッドフォンで「いい感じ」に聞こえる音は、他のヘッドフォンやスピーカーで再生した際に聞くに堪えないものになる可能性があると言うことだ。故に、SONY WH-1000XM3はDAWのモニタリング用ヘッドフォン、特にマスタリング時にはとても使えないと言う残念な結論に一旦至った。まぁ、下調べが足らんかったと言えばそれまでなのだが、まさかあの価格帯で、しかもノイズキャンセリング機能を売りにする製品で、あんな強い「味付け」が為されていようとは思わなかった。

 じゃあマスタリング以外での使い勝手はどうかと言うと、Bluetooth接続によるレイテンシ(ここでは、音の再生遅れ)が大きくて輪をかけて使えない。聞こえる音の音量などの変化とDAW上のメーターの上下動とのズレの所為だけで、私は数分で酔ってしまう。

 とは言え高い買い物ではあったし、PCならば周波数応答特性はいじれなくもない。そこで昨年当初に試したのがSonarworks Reference4 Headphone Editionと言うソフトの試用版だ

 このソフト、測定結果に基づくプリセットデータがあれば、ヘッドフォンの周波数応答特性を「味付けが無い状態(以下、周波数応答特性がフラットな状態、または単にフラットな状態、と言う)」に限りなく近づけてくれる。別の言い方をすれば、作り手、送り手が意図した音に近づけてくれる(筈)。あくまで「私の耳」での話だが、ソフトを介して特性をフラット化したSONY WH-1000XM3とSennheiser HD599(半開放型)との音は様々な音源で区別ができなかった。敢えて分かる差があるとすれば、クローズハイハットのような高周波数を含む音の輪郭がSONY WH-1000XM3の方がはっきり聞こえる(粒立ちが良く聞こえる)ぐらいだろうか。が、これは密閉型+ノイズキャンセリング機能のおかげが大だろう。とは言えBluetooth接続のレイテンシの大きさは如何ともし難く、加えてSonarworks Reference4を介することでも追加のレイテンシが発生するから、やはりDAW操作時のモニタリング用途には使えないとの結論に至った。

 ただ、DAW操作時のモニタリングのメイン機として使っているSennheiser HD599の周波数応答特性にもSonarworks Reference4を介せば私の耳でもすぐ分かるレベルの「味付け」は有ったので、暫くしてSonarworks Reference4 Headphone Editionを購入した。ちなみにこのソフトにはDAW用のプラグインも同梱されている・・・と言うか、本製品の真価が本当に問われるのはDAW上でだろう。

 これでやっと前段の説明終了だ。DAWのモニタリング用途も意図してSONY WH-1000XM3を購入したものの、1年以上も塩漬け放置状態となっていたと言うことだ。では、SONY WH-1000XM3の復帰?を促した上述の3つの原因に触れていこう。

 まず原因その1。私のメインPCはDell社の2020年モデルなのだが、最近うっかりBIOSをアップデートしてしまった。具体的には1.0.5から2.0.11へのアップデートだ。不用意なBIOSのアップデートを原因とするオンボードのオーディオ機能の不具合に悩まされる経験が重なったことからBIOSのアップデートは避けてきたのだが、今回はMicrosoftアップデート内に紛れてアップデータが配信されてしまい、チェック漏れから万事休すとなった。

 今回のバージョンのBIOSでもオーディオ周りに幾つか不具合が発生している。例えばPC動作中にフロントのヘッドフォン端子からヘッドフォンを一旦抜くと、ヘッドフォンを刺し直そうが別のヘッドフォンを刺そうがOSがヘッドフォンを認識しない。より厳密には、OSから見てヘッドフォン端子自体が無い状態となる。ヘッドフォンの再認識には、ヘッドフォンを端子に刺した状態での再起動が必要だ。このような状態発生のひとつの回避方法は、ヘッドフォン用の延長ケーブルをPCフロントのヘッドフォン端子に刺して絶対抜かず、ヘッドフォンの交換は延長ケーブル経由とすることである。もうこの時点でハードウェアとOSの連携が取れなくなっていることが分かる。この連携を担うものこそがBIOSなのは言うまでもない。

 結果として延長ケーブルのメス側端子が常にが手元にある状態となり(PC本体はお気持ち遮音と綺麗なエアフロー経路の確保を目的とした簡便な仕切り板の向こう、1m強離れたところに置いてある)、ヘッドフォンの交換の億劫感がエラく下がった。

 次いで原因その2。メインDAWであるCubase Proのバージョン11へのアップデートに合わせてGeneric ASIOドライバーもアップデートされたが、BluetoothヘッドフォンがDAWのアウトプットの選択肢として表示されなくなった。ASIO4ALLやFLStudioASIOと言った他のASIOドライバーでは選択肢として表示されるので、これはOSではなくドライバーの問題だろう。ただ私の環境では、DAWとASIOドライバーとの相性からGeneric ASIOドライバー以外の選択肢は無いので、SONY WH-1000XM3をCubase Proで使いたければ有線接続するしかない・・・ん?、有線接続ならBluetooth接続を原因とするレイテンシは気にしなくて良くなるぞ、アレ?

 最後に原因その3。まず、Sonarworks Reference4 Headphone Editionを後継製品のSoundID Reference Headphone Editionに最近アップグレードした。利用しているオンライン決済サービスからのクーポンなどを最大限活用し、かなりお得にアップグレードできた。次いで、Youtubeでお勧めされたシユウさんの動画 「【最強ヘッドホン】全ての音が見える『YAMAHA HPH-MT8』は、聴いてるだけで音作りが上手くなるぐらいヤバい。」を観て、さらにSonarworks Reference4でYAMAHA HPH-MT8の周波数応答特性を確認したところ「(少なくとも周波数応答特性に関しては)成程!」となったことが大きい。

 SONY WH-1000XM3の周波数応答特性は下図の紫のラインだ。黒い水平な直線が「味付け」の無いフラットな特性であり、私がモニタリング用ヘッドフォンに求めている理想の特性、作り手や送り手の意図した音が再現できる特性だ。50Hz以下の領域でも実際よりも大きな音で再生する特性となっているので、音がモコモコし易い。また1k~5kHz付近の音を実際よりも小さく再生する特性は多くのヘッドフォンで見られるが、6dbを超える再生音量の低減はやり過ぎだ。

対してYAMAHA HPH-MT8の周波数応答特性は下図の通りで、明らかにSONY WH-1000XM3よりもフラットだ。

 

 周波数応答特性がフラットな方が「音が良くなり得る」或いは「聞き心地が良くなり得る」理由は考えてみれば単純で、「プロが楽曲のマスタリング時などに使用している機器の音周波数応答特性が基本的にフラット」であるからに他ならない。作り手、送り手の意図通りの音が再現されるから、と言い直しても良い。

 「じゃぁさっさとYAMAHA HPH-MT8を買ったら?」と思ったあなたは正しい。だがヘッドフォンは実際に装着してみないと分からないことも多く、新型コロナ禍下の田舎暮らしの身にはなかなか実物に触る機会が作れない。まぁ金銭的に余裕が出てくれば、実物を触らないまま何かをポチりそうであることは否定しない。

 一方、「SoundID Reference Headphone Editionとやらがあれば、別にYAMAHA HPH-MT8なんて買う必要なくね?」と思ったあなたもかなり正しい。実際、ここで触れていないものも含めて様々な要因から現状の私はそういうポジションを取っている。故に「有線接続前提で」SONY WH-1000XM3がDAWモニタリング用に復帰した訳だ。何のかんのとノイズキャンセリング機能の利点はバカにできない、バッテリーの持ちも良い。物理的にはやっぱり重いけどね。

 とは言え、SoundID Referenceにもレイテンシがある。20~60ms台なので基本打ち込みしかしない私には許容範囲だが、録音する人には耐えがたいレイテンシだろう。故に「SoundID Referenceがあれば良くね?」と言うのはあくまで私のようなDAWの使い方をしている人間にしか当てはまらない訳で、YAMAHA HPH-MT8とかを使って低レイテンシとフラットな周波数応答特性の音を両立するのが王道なのは変わらない。

2020/11/13

続・Cubase11へアップデート(年貢支払い)

 先のエントリでは触れなかったけど、Cubase Pro11のライセンス認証(アクティベート)には一悶着どころではないゴタゴタがあった。漠然と「認証サーバーかユーザデータベースの管理サーバーのどちらかにトラブルが出ているな」と考えていたが、どうも当たらずとも遠からずだったよう。

 今朝(11/13)、おそらく製品ユーザ全員に向けてと思われる、Steinberg社プレジデントからのメッセージのメールが届いた。状況だけ抜き出すと、認証サーバーの能力が負荷(認証要求)に追いつかず、ライセンス認証がなかなか進んでいないということらしい。このため、Cubase Pro11の「アップグレード及びアップデート」の販売を現在中止しているとのことだ。あとメッセージ中には、「ライセンスが失われることは無い」、と明記されている。まぁ、この一文が無いと未だ認証が成功していない人は不安だろう。

 ただ新規通常版やアカデミック版の販売は続けていることから、「サーバーの能力≒ハードウェアの計算能力」の不足がそもそもの原因ではなくて、ソフトウェア的なトラブルか、ストレージやメモリといったサーバーの構成機器のトラブルを起点として、一部サーバーの停止などによる「サーバーの能力≒ハードウェアの計算能力」の不足状態が発生しているのでは、と言う気はする。もともとブラックフライデー(今年は11/27)を予定に進めていた発売を前倒した結果、新規ハードウェアのテストが不十分だったとか初期不良を起こしたとか、知らんけどね。

 なお私の場合は、ライセンス管理サーバーへの接続エラーでCubase 10.5のライセンスがPC上のライセンス管理ソフト(eLicenser)上から消えてしまったり、24時間の時間限定ライセンスでいったん認証されたりと正直かなりスリリング。これらの状態、私のPC上とSteinberg社のアカウント情報データサーバー上とライセンス管理サーバー上とで、認証状態が一致していない時間があったということですからね。どの時点でどこの状態を「正しい」としてもらえるか、何気に怖い。人の手で1件づつロールバック(時間を遡ってデータを確認)しながら処理したとか、最悪のシナリオも否定はし難い。で、Steinberg社のWebページで確認できる私のアカウント情報が正しければ、私のライセンスが正常に認証された時刻はPCの電源を落としてから3時間後ぐらい、11/12早朝のことでしたとさ。

 ちなみに購入のためのショップへのログインにも当時は問題は起きていて、Steinberg社の日本語のWebページからはログインできず(リンクが壊れていたり、ログイン待ちが10分以上続いたり)、結局私は英語版のWebページからログインしました。と言うわけで、Steinberg社の今回のトラブル、実際には結構広範囲のものではないかと思ったり思わなかったり。

 あ、今見ると確かに「近日発売」になってますね。

2020/11/12

Cubase11へアップデート(年貢支払い)

 DAWのCubase Pro11を10.5からアップデート、占めて¥11,000也。Cubaseは毎年年末に0.5刻みでバージョンアップがあるため、「年貢」などとも呼ばれます。実は昨年の10.5はバグレベルの変な挙動が多かったので、結局ほとんど10(最終的に10.0.50)を使っていました。いや実際、ライセンスを持っている別のDAW、FL Studioへの本格的な移行も考えていたぐらいだったのです。

 Cubaseの助かるところはアップデートをインストールしても古いバージョンを上書きせずに残してくれること、つまり上述のように10.5をインストールした状態でも10など(残してあればや9や8でも)古いバージョンが使えることです。おかげで今年もCubaseユーザとして年末を迎えられそう・・・となりました。

 さて、Cubase Pro11ですが、新規機能についてはまだ語れません、なんといってもアップデートしてから未だ1時間程度ですから。なのですが、既にお気に入りと言うか、助かりポイントが多数ありました。代表的なもの2点だけ触れておきましょう。

  • 設定データの初期化が不要!!!
    少なくともCunbase8.5~10.5ではアップデート後に設定データの初期化が要求されていましたが、今回のアップデートではそれがありませんでした。結果、インストール完了から2,3分で、インストール前までアップデータ前のバージョンで編集していたプロジェクトを新しいバージョンで編集できてしまいました。設定データを初期化すると編集してきたファイル/プロジェクトの履歴が消えるし、プラグインデータベースも一からの作り直しとなります。これらは結構うざいんですよ。

  • とにかくイキナリちゃんと動く、10.5のような変な挙動なし!!!
    まぁ、10や10.5で編集してきたプロジェクトを読み込み、再生してみて、というレベルでのお話ではあります。VariAudioとか使いだしたら、10や10.5同様に初期不良的な変な挙動はあるかもしれません。が、10.5などは最初の起動段階で頭抱えるレベルに挙動不審でしたから、印象が全然違います。

 まぁ、ぽちぽち触りますか・・・

 今回はとっても参考になりました!つーか、アップデートのリリースを知ったのは昨夜のこの動画のおかげ、今年は例年よりアップデートが早くないかなぁ。

2019/11/25

Cubase 10.5、変

 Cubaseユーザの年末と言えばアップグレード、もちろん有料。「年貢」なんて言い方もされるDAW界の風物詩です。今年はバージョン10から10.5へのマイナーバージョンアップでした。

 さて、本日Cubase10.5(Win)を触ってみたのですが、挙動が色々と変。 ASIO設定周りのウィンドウの変な挙動(操作しなければならない新たに開いたウインドウが既に開いていたウインドウの下に表示され、実質的に操作不可になるなど)は明らかにバグでしょう。

 やっかいなのは、Cubase10で作成した同じプロジェクトファイルを読み込んだ時に、Cubase10とCubase10.5で「Outputでのトラックの音量バランスが別物レベルで違うことがある」こと。起きるプロジェクトファイルと起きないプロジェクトファイルがある訳です。ちなみに全トラックのオーディオインサートを無効にしても音量バランスは違うままなので、特定のvstエフェクトが無効化されたりクラッシュしたりが原因の可能性は極めて低く、まさに音量、フェーダーに関わる不具合のように見えますね。

 あと再現性が無いんだけど、プロジェクトファイル読み込み中にいつの間にか落ちていることが多々ある。有効にできないオーディオインサートFXがある。

 アップデートを重ねたCubase10も悩まされるレベルの細かな不具合がまだまだ残っていましたが、確認した範囲でそれらもきっちり10.5に引き継がれていましたね・・・

補足(2019/11/25):
 色々とアカンですね、不審な挙動が多すぎますよ10.5。暫くは10で行きます。

2018/05/26

使用DAW、見直し機会到来か?

 DAWソフトのFL Studioが20周年ということで、バージョン13~19をとばしてバージョン20となるらしい。Youtubeでも既にレビュー、新機能紹介の動画を多数見つけられる、つまり新規機能の振る舞いも含め、実際に動いている様を既に確認できるのだ。正直なところかなりにポジティブな印象を受けている。他DAWが先行して取り入れた機能を良いと思えば衒いも無く積極的に取り込む姿勢も今まで通り、バージョン20でついにMacにも対応するので更に普及が進む可能性が高い。

 FL Studioのライセンス形態は特殊だ。一度購入すればバージョンアップは無料、個人での使用である限り複数のPC/Macに同時にインストールしてよい。このようなビジネスモデルが成立するためにはFL Studioは常にユーザーを増やし続けなければならない。が、既に20周年を迎えていると言うことは、程度は不明だがそのビジネスモデルは成功しているということなのだろう。

 FL Studioはプロも含めてユーザーは多く、ネット上に蓄えられたノウハウも膨大、既にライセンスは所有済なので今後使い続けても追加費用発生は無い、なのに未だ使っているDAWはCubase・・・だからと言ってCubaseが好きだと言う訳ではないのだ。また別途、Bitwig Studioも評価中だ。

 と言う訳で、FL Studio20の登場は期せずして使用DAWの見直し機会を招いてしまった形となっている。

 さて、突然ながらここでかつて存在したDAWであるCakewalk Project5にご登場を願おう。私にとってProject5はいわば初恋のDAWとでも呼ぶべきものだ。そしてこのProject5のワークフローこそ、未だに私の理想とするワークフローに最も近いのだ。ちなみに下の動画の音声トラックはProject5による。ソフトシンセとオーディオを同時に使える私にとっては初のソフトで、Vocaloidの使用には便利だった。
 さて、Project5について多少詳しい仕様が気になる方はこのページで確認いただくとして、同ページから(勝手ながら)2枚の画像を転載させていただく。
 1枚目の画像はCubaseなどでおなじみのレイアウトに見えるが、それは見かけだけの話だ。MIDIデータやオーディオの素材は「クリップ」という単位で管理され、各トラック中の同じ色の帯状要素は同一のクリップと理解してもらって構わない。例えば1小節の長さのMIDIシーケンスを16回繰り返す場合、1小節のクリップを作成してそれを16個並べれば良い。この状態で16個中の1個のクリップを編集するとどうなるか・・・16個のクリップは「同一」のものなので編集内容は残り15個全てのクリップに反映される。またオートメーションも基本的にクリップに含める。

 2枚目の図は「グループマトリックス」と呼ばれたクリップの管理やクリップのトラック間での組み合わせの検討(アレンジの検討)のためのインターフェースで、Bitwig Studioのクリップランチャーは機能的にはこのグループマトリックスの正常進化版と言って良い。

 このような「クリップ」とそれに基づくワークフローの概念はCubaseには全く無い。そもそもCakewalkがProject5のクローズ後にリリースしたSONARにもクリップの概念が無く、更に操作性もProject5と全く変わってしまった(Project5のワークフローは多くのユーザーからは好評では無かったようだ)。このため「MIDIノートエディタの操作性がProject5に相対的に近い」という一点を実質的な理由として、私はあっさりとSONARからCubaseに乗り換えてしまったのである。

 FL Studio、Bitwig Studioともクリップの概念を持ち、特にBitwig StudioではProject5とほぼ同じワークフローも実現できるワークフローの選択幅を持つ。「ならばBitwig Studio一択ではないか」となるのが自然な流れなのだが、ここでは具体的には書かないとある2つの機能をBitwig Studioが未だ備えていないのが障害となっている、う~ん、早く導入してくれないだろうか(とか言いつつ、障害の一つはOzoneなどのマスタリング用プラグインなどでなんとかなるっちゃなる。ほぼ同じ障害を持つFL Studioでも、公開されているアマチュアのデータを見るとOzoneが刺さっていることが多く・・・っつーかOzoneを抜くと楽曲自体がふにゃふにゃで聞くに堪えられなくなるくらいにOzoneに頼り切っていることが少なく無い。Cubaseならミックスコンソールだけで・・・時間はかかるが・・・Ozone Elementが自動でやってくれるぐらいまでのことはできる)。

 他方FL Studioのクリップの概念はProject5やBitwig Studioのそれとは違う。ただし、おそらく「トラックの概念が違う」せいで「クリップの概念の範囲が違って見える」と理解するほうが妥当だろう。Project5のグループマトリックス、Bitwig Studioのクリップランチャーともに縦軸はトラックだが、FL Studioの同様のインターフェースの縦軸は音源(例えばソフトシンセ)である。

 FL Studioにおいて(実はBitwig Studioも)「クリップに含める範囲」は、「クリップが元々MIDIデータだろうがオーディオデータだろうが、クリップ中でオーディオデータに変換される。オーディオ変換後はクリップ内では処理を区別しない(そもそも区別する理由が無い)」という考えに基づいていると個人的には見る。故に、FL Studioのクリップにはエフェクターなどのオーディオデータ変換後の処理も含めることになる。

 この考え方は「素材を組み合わせる」という形のワークフローにおいてのみならず、プログラム内での処理としても極めて論理的、合理的だ。しかし、ミキサーのインターフェースが旧来のミキサー卓、つまり「Project5、Cubase、Bitwig Studioらにおけるトラックの基本概念のまさに実体、元ネタ」をただ模しているため、クリップ出力後のシグナルフロー(結線状態みたいなもの、チャンネル番号のような数字だけみせられてもねぇ・・・)が一望できず、慣れない私には物凄いストレス源となる。特に音量バランスや定位の調整のためにクリップまで戻る必要があるのは、「そうしなくても良いワークフローを使用者(私)が確立」できない限り非効率とならざるを得ない。ミキサー部だけは、他の部分の持つ論旨性、合理性とマッチングしていないのは明らかで、私にとってFL Studioが一番の選択肢とならない理由となっている。

 個人的な考えとしては、FL Studioのアーキテクチャーはノード編集型のインターフェースに向いている気がする。良い例ではないが、例えば下図は典型的なノード編集型のインターフェースである。ノードと呼ばれる各要素の入力、出力の有無、数、内容だけでなく、ノードの入出力端子間を線で接続することでノード間のシグナルフローの全てが明示化可能であるとともに、シグナルフロー自体をGUIにより編集もできる。FL Studioのワークフローの持つ論理性、合理性は、マルチトラックテープなどを使っていたデジタル化以前のワークフローと多くの点で整合しないどころか、むしろアンチテーゼと見える部分も多い。そのため、「トラックの概念そのものと言って良い旧来からのミキサー」を模したインターフェースが、他の要素とめちゃくちゃ相性が悪いのは致し方ない。失敗などとは思わ無いが、どうしようもなく中途半端なところであり、「この中途半端さが受け入れられない(私のような・・・ただし私はもう購入済なのでセールス的には貢献した側)タイプの人間」には拒絶され続けられるだろうと思う。「トラックの概念」自体は残そうが壊そうが変形しようがどうでも良いのだ。ワークフロー全体の整合性、見通しの良さの問題なのである。
  ミックスを施した後の出力を起点に出来上がり(最終出力)の調整を考える方法をトップダウン方式、ある程度作り込んだ素材を組み立てて得られた出力を起点に素材の微調整を考える方法をボトムアップ方式とするならば、Cubaseは前者、FL Studioは後者であろう。ではProject5やBitwig Studioはと言うと、実のところ「両者の良いところ取りのポテンシャルを持つが、完全な域には未だ至らず 」といった感じじゃなかろうか。

 なお私見ながら、FL Studioのワークフローにおけるノウハウは初心者でも導入し易いため、出来上がりのレベルの底上げが期待できる。が、同時に似たり寄ったりの楽曲が量産され易く(つまりFL Studioというジャンルの出現だ)、また他楽曲との差をクリップレベルだけで出そうとするために、楽曲全体のバランスが悪くなったりこけおどしの音に頼ったりと劣化版コピーも生まれがちだ。

 FL Studioのむき出しのワークフローをそのまま使うということは、出来上がりのイメージが明確にある場合に限るべきだ。センスの良し悪しが出来上がりに露骨に反映されると言いかえても良い。そういう意味で、自分のセンスに賭けることに自信の無いユーザーは、敢えてFL Studioを使わないという選択肢もあると思う。とは言え、私の見たところFL Studioのインターフェースなどが暗黙の裡に示す(だが頭空っぽにして見ればむしろむき出しに見える)ワークフロー自体は論理的故に硬直的ですらあるが、同時に頑丈で破綻しにくく無茶が効きそうだ・・・FL Studioの一つのミキサーチャンネルには最大幾つのソースの出力を送りこめるのかなぁ・・・何か起きないかなぁ。

 繰り返すが、FL Studio20の登場予告により期せずして使用DAWの見直しを意識せざるを得なくなっている。困った事に、この見直しでは対象である複数のDAWの優劣を判断する訳ではない・・・(FL Studioの持つ圧倒的なコスト優位性を無視しても)文字通り、どのDAWの良さ、特徴を選びますか、という選択の問題なのだ。


追記(2018/6/11):

 Project5(バージョン2)はWindows10でも動き、実は現在のPCにもインストールしてました(汗)。昔作ったプロジェクトファイルも発見したので、動作している状態の動画を上げておきましょう。曲はウズベクの有名な(汗)ポップス、"Yalla habibi(Ялла Хабиби)"のカバーです。なお、当時使用していたオーディオループやワンショットオーディオデータが全くインストールされていないため、アラブ系パーカッションは全滅しています。またプラグイン画面がキャプチャされていないので、マウスカーソルの挙動が不審ですね。
 なお、楽曲のオリジナルはこちら。
 さらにオマーケ。

2015/11/15

Windows10のメジャーアップデートで、iTunes購入不能再び

Windows10へのアップグレード後に生じた問題と言えばざっくり以下の通り。
  1. EDIROLのMIDIコントローラ PCR-M1のドライバがインストールできない。
  2. Cubase Pro 8で音飛びが発生、異常な高CPU使用率。
  3. iTunesで楽曲などの購入ができなくなる。
上の二つは解決(1,2)し、最近のWindows10のメジャーアップデート(TH2)後も全く問題ない、が、最後の問題が再び発生した。楽曲購入時の症状は以下のようなものだ。 
  • 楽曲購入ボタンを押すと、確認のダイアログボックスが表示される。
  • ダイアログボックスの購入ボタンを押すと、「iTunesへのアクセス」を開始するが一瞬で終了。エラー表示は無い。
  • 購入楽曲はダウンロードされない、購入履歴もない。つまり、購入自体ができていない。
まぁ、課金だけされて購入品が入手できていないという訳でもないので実質的な不利益は無いのだが、如何せん気持ち悪いし、そのままではいつまでたっても欲しいものが購入できない。 

 実は先々月にも同じ状況になったので、Apple社のサポートにもコンタクトを取ったのだ。サポートからは
  • iTunesをアンインストールしてから再インストールしてください
という連絡を受けたのだが、結論から言えばこの方法では解決はしなかった。と言うか、ファイル破損でも起きていない限り、こんな方法では解決する筈もない。そこで「いつもの手」を使ってみたところ見事に問題は解決した。「いつもの手」とはずばり、
  • アプリを「管理者として実行」して、1回問題を再現する
だ。件のiTunesの問題の場合は「管理者として実行」しても発生する。しかし、次回の通常実行以降には問題は発生しない。

 Windows10では特定ファイルへのアクセス制限などのセキュリティがらみの制限がWindows7より厳しいが、セキュリティ絡みのメッセージはむしろより表示しなくなっている。このため、セキュリティ絡みの問題は原因特定がより困難になっている。このiTunesの問題がセキュリティ絡みかどうか分からないが、対処療法としてはこれで2回解決に成功したことになる。

 ちなみに、Cakewalk社のシンセZ3TA+2やサンプラD-Proの実行には「管理者権限」が常に必要で、vstiの実行も同様だ。だからDAW上でこれらvstiを使う場合には、DAW自体を常に「管理者として実行」すればいい。

 この種の話をすると「Macにすれば?」と言う人が当然居るのだが、すまん、俺BSDが大嫌いなんだわ

2015/10/25

Cubase Pro 8、 Windows10対応!

と言うか、Windows10側のアップデートで互換性の問題が解決したらしい。

 本件に関するスタインバーグのリリースは10/22、直近のWindows10アップデートをチェックすると10/17に所謂「累積的な更新プログラム」がインストールされていた。

 「この1週間程は以前にも増してCubase Pro 8の調子がいいなぁ~」などと思っていたが、どうも気のせいばかりではなかった様だ。

2015/09/18

Windows10環境なら Cubase Pro 8.0.30アップデートは吉

 Cubese Pro 8はまだWindows10対応していないが、最近公開されたアップデータ(8.0.30)はWindows10ユーザーなら当てておいて損はなさそうだ。

 8.0.20をWindows10上で使うと、音飛びが発生する場合があった。
  • Asio-Guard機能ををONにすると、音飛びが頻発
  • DirectX Full Duplex Driverを使うと音飛びどころの騒ぎではなく、どっどっどっって感じで周期的にしか音が出ない。
これらの症状は8.0.30アップデータでほぼ解消した。特に後者の発生はCPU負荷とは無関係だったが、アップデート後はCPU負荷が平均50%ぐらいのデータなら、1時間鳴らし続けても音飛びが発生しなかった。

 8.0.30アップデータでASIO-Guard機能がマルチCPUに対応したということだが、おそらくこの辺りが効いているんじゃないかと思う。

 ただCubase Pro 8がWindows10に非対応とされる原因は、Windows側の処理優先順位管理機能の変更にあるとされる。つまり、Windows7や8ではリアルタイム性が要求される楽曲再生処理を優先するようにCubaseから設定できたが、Windows10ではそうはできないらしい。

 とは言え、Windows10はMIDI、オーディオ周りがDAW向けに完全に再設計されている。Cubase ProのWindows10対応が本質的なものであれば、結構快適になるんじゃないかとの期待もできる訳だ。