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2021/08/19

三万人

 米国議員が「台湾の駐留米軍三万人」とツイートし、中華人民共和国政府がそれに反応したり、その後間違いとしてツイートが消されたりとか。このあたりの話はもう何カ月も前の日本語訳もあったネット上の報道で明らかになってるのでは?とひとしきり首をかしげる。

 台湾にはトランプ政権時代に米国から一万人以上の軍事顧問団が派遣されていて、台湾の対中防衛ドクトリンを改定し、それに対応した台湾軍再編成も今年の春に完了済みで、現在は新ドクトリンに合わせた兵装の配備と習熟の段階にある筈だ。準備完了とは言えないが、事実上の援軍は欧州からもやってきている。なお別エントリに既に書いたような気もするが、英海軍船が日本に寄港する場合は(朝鮮戦争の)国連軍として振る舞うのではないかと思う。故に、米海軍が駐留する港のうち、国連軍活動での使用も割り当てられている横須賀辺りが候補だろうと見る(8/29追記:英国フリゲート艦HMS Richmondが佐世保入港の報。改めて調べると、佐世保海軍施設も国連軍が使用できることになっていました。どこで記憶違いをしたのか不覚。外務省ウェブページ「朝鮮国連軍と我が国の関係について」2-(2)-ウ)。

 防衛ドクトリンの変更の要点は想定する戦場で、90年ごろは台湾の海岸だった(兵役経験のある台湾人の同期入社がソース)が、現在は敵地攻撃、すなわち侵攻部隊の大陸海岸近くの兵力集合地が前提となっているようだ。従って、短距離砲や無反動砲主体(件の台湾人同期は対火車猟兵=対戦車兵だったとのことで、事が起きれば最前線に配置されるので戦死は必至と考えていたらしい)の待ち伏せ型の兵力構成から、長距離ミサイルと航空兵力を押し立てて人民解放軍を海へ出さないことを第一とした攻撃的な兵力構成となっているだろう。

 蔡英文政権になってから、台湾政府は「有事に備え、三峡ダムのとあるヶ所に巡航ミサイルの照準が既に合わせてある」と一度豪語している。これは三峡ダムの強度的、構造的弱点をピンポイントで攻撃するぞと言っていることになる。構造的に壊せれば攻撃として満点だが、発電機能や排水量調節機能を奪えればそれだけで十分なダメージを与えたと言えるだろう。これだけでも台湾の対中防衛ドクトリンの変更は明確だが、米国軍事顧問団の派遣後にその具体化が加速したことは想像に難くない。時が進めば、F-16V(相当品)も同様の任務に使えることになる。ソースは全く無いが、台湾空軍パイロットの米国でのF-16習熟訓練はとっくに始まっているだろう。イスラエル空軍でのF-16運用などがかなり研究されているのではないだろうか。F-35Bなどの習熟訓練で渡米している航空自衛隊パイロットや管理要員と「たまたま」会う機会もあるかも知れない。

 で

現在、台湾に駐留する米軍は事実としていない。だから、「間違い」を理由に米軍の駐留兵数に関する件のツイートが削除されたのは妥当だろう。軍事顧問団がもう三万人規模になってるってことなんだろうかね・・・ならば派遣規模はベトナム戦争よりも既に多いことになる。

2021/08/15

米軍のやる気?本気?

  米軍が自国内で高速道路を使った軍用航空機運用の訓練を始めた。やる気?本気?を垣間見た気がした。自軍航空基地が攻撃され、使用不能となった際の空軍に対応訓練とのことだが、自軍基地があるのが敵国内か敵国に隣接する国である想定であろうことは想像に難くない。

 注目点は幾つかあるが、目立つのはフェアチャイルドA-10攻撃機の運用だ。A-10は陸軍地上部隊の支援が仕事で、活動地域は地上戦の最前線となる。よって、高速道路を使った臨時航空基地はやはり戦線の直後方であると考えるべきだ。空軍・陸軍合同の敵地侵攻を前提とした訓練に見えなくもない理由がここにある。

 直近で、鉄道やら自動車道路やらの整備を自国内で急ピッチで進めている国はどこだろうか。自国軍の侵攻、兵站のために整備した交通輸送網は、そのまま戦争相手国の侵攻、兵站経路となる。北京を出た列車がラサに至るが如く、ラサを出た列車は北京にも至る。台湾の高速道路は最初から長い直線区間を多数持つ。

 実のところ、このような地上と空の兵力連携は米海兵隊の十八番だ。湾岸戦争でその真価は発揮され、橋頭保の直ぐ後方を基地としてVTOL攻撃機を運用することの威力のほどを示した。米海兵隊は海軍、空軍、陸軍のそれぞれの機能のうち必要なもの全てを有し、他軍の支援が無くとも戦力を投射、確保した橋頭保を維持できることを意図した自己完結的な特殊な軍組織だ。今回の訓練は、海兵隊が担ってきた戦闘行動を、陸軍と空軍の共同運用でも実現する意図を反映したものと見る。

 では海兵隊はいらない子かと言うと、状況は逆でむしろ大規模で重要な役割が与えられそうだ。要は、本来海兵隊に任せていた多くの仕事に海兵隊の手が回らないから、陸軍と空軍が共同してまるで海兵隊みたいなことを始めたのではないかと思えるぐらいだ。

 現在太平洋では、海軍と海兵隊の共同訓練が実施されている。初ではないが、何十年かぶりの面子での共同訓練なのだそうだ。しかもオリンピック期間中に被っての軍事訓練実施は米国では異例だ。こちらの訓練の内容は島嶼への戦力投射と橋頭保確保とされる。従って想定される作戦の主体は海兵隊であり、強襲揚陸艦、F-35Bやオスプレイが最大限活用される。私が読んだニュース記事では海軍の位置付けが良く分からなかったが、空母打撃群が参加していないことから、海兵隊の支援が主任務と思われる。ここは完全に私の妄想だが、作戦が実行に移された場合には、英国の国籍マークを付けたF-35Bが米海兵・海軍艦隊の上空を飛んでいるのではなかろうか。想定される作戦海域の先には香港がある。面子に敏感なのは中共だけではない。むしろ面子のみを追求する勢力よりも、実益の為に面子には「いったん目を瞑れる」勢力の方が怖い。「面子にいったん目を瞑る」と言う状態は、いずれは面子を取り戻すという強い意志や決意の存在の裏表だ。

 こうなると米国の空母打撃群はほぼフリーハンドとなる。海軍の持つリソースは別の場所に投射可能だ。特に海峡部での日本海への出入りを封じ、日本海を実質的な内海状態とできれば、空母打撃群の配置の自由度は増す。日本海に入らなければ空母打撃群の受ける脅威は長距離核ミサイル攻撃にほぼ限定されるが、日本海にもイージス艦は配置されているだろう。このような時点で、前線支援を除く米空軍、宇宙軍が何もしていない筈が無い。

 因みに一部報道が事実なら、クイーン・エリザベスを中心とする英海軍空母打撃群は国籍不明の原子力潜水艦(推進音は人民解放軍・商級原子力潜水艦並みに五月蠅かったらしい)の追跡を探知、音紋等のデータ収集をした上でピン(ピコーンってやつ)を打ち込んで「お前が居ることは知っているぞ」をアピールまでしたらしい。文字通り、水面下では色々始まっているようだ。

2021/04/11

素人さん、バイデン政権の声明から米韓台朝関係についてちょっと考える。

  バイデン政権が、「台湾を『重要な安全保障、経済面のパートナー』とする声明を発表した」とのこと。米国議会の方針に変化はないのだから、まぁ既定路線だ。米国大統領とは言え万能ではなく、議会の公式方針に良くも悪くも縛られている。

 実のところ、個人的に気にしているのは、台湾が米軍駐留、或いは港湾施設などの米軍利用を今後認めるかどうかだ。もし米陸軍の駐留を認めた場合、部隊の基幹はグアムからの派遣となると思うが、残りの人員や装備(現在は戦車などの装備は配備してあるが、兵士はローテーションで定期的に入れ替わり、常備軍と呼べる兵力は既にいない)は韓国からになると予測している。

 現韓国政権は米軍からの戦時作戦統制権返還を強く望んでいるが、本件はこの話の進展に弾みをつける可能性がある。国連軍(実質は米軍)の司令部は既に横須賀に移動済で、実用最小限のポストを埋めてあるだけで実務要員は既におらず、解散を待ってる状態に近い。

 かつての報道によれば、戦時作戦党政権の返還後、韓国の時の政権は半島有事の際に韓国軍が在韓米軍を指揮できるようになると虫が良いことを考えていた節があったが、米軍がそんなことを良しとする筈が無い。戦時作戦党政権の返還とはすなわち在韓米軍の駐留終了であり、その可能性はロシア、中国共産党ともに織り込み済みと思われる。で、最も困る、と言うか環境が変わってしまうのが北朝鮮だろう。故に万が一にもそのような状態が出来した場合、反応が読めないのはやっぱり北朝鮮である。

 米韓同盟は維持される。少なくとも米国は維持を望む。イデオロギー対立などに起因した対立国家群のこれまでの干渉地域は北朝鮮だったが、今後は韓国が干渉地帯、より正確には米国に選ばれた戦場となる。経済的にはおろか、物理的にも焦土化されることを米国は覚悟する筈だ。もちろん米国自身は韓国の物理的焦土化までは望んでいないが、なんとしてもそれを避けようとまではしない、と言う意味だ。

 一方北朝鮮には、米国寄りの選択的中立という選択肢が転がり込み得る。米中対立下においては、北朝鮮には中立という選択肢が有り得、その可能性も米国は排するべきではない。北京の中南海に到達し得る弾道弾技術と核武装がその選択を可能とする(日本を米国の犬に過ぎないと言う日本人(?)もいるが、同時に日本の核武装やロケット技術の軍事転用も否定するのは、国家間のパワーバランスのリアリティや経済性の視点から著しくバランスを欠く。犬でなくなるためには必要なものがあり、その中でも核武装は経済的である。そうでなければ、北朝鮮が核兵器開発という道を選んだことに合理性が無いことになる)。既に人権の観点から北朝鮮を非難しているバイデン政権にはそれはできない相談とも見えるが、議会や軍のリアリストには十分受け入れられるだろう。

 イランも同様である。米中間で軍事オペレーションが発生したとしても、普通に中立を保つ方が賢明と見る。ただ米国にとっては対イランよりも対イスラエルのケアの方が繊細かつ高くつく可能性があり、この点はトランプ政権時と現行バイデン政権での大きな違いとなる。

 そもそも米国と気や朝鮮は休戦中であり、どちらにも先に戦端を開く必然性が無い。韓国が北朝鮮に侵攻した場合に米軍にそれを支援する義務があるかは米韓同盟の内容を改めて確認しないと分からないが、北朝鮮が米中戦争に対して中立の立場を既に明確にしていた場合、少なくとも軍事的な支援はしない方が筋が通るように見える。

 嘘か本当か現在のピョンヤンは封鎖状態だと言う情報がある。COVID-19の蔓延が原因だ。人民軍もかなりのダメージを負っている可能性も指摘されて久しい。中国共産党支配地域の食糧不足や一般人民の経済不安は増大中に見える。米国が今積極的に動くにはやはり理由があるのでは、と邪推する。

 とある人の話では、数年前に人民解放軍内に日本との開戦との噂が立ったことが原因で、潜水艦搭乗員を中心に退役希望者が続出したことがあったらしい。もし、米国などの大規模戦闘オペレーションが予定された場合、この種の噂を利用した欺瞞作戦が先行的に実行される可能性があると見ている。この種の情報操作オペレーションは、中国共産党支配地域内への浸透要員がまだ活動中とされている台湾の協力があれば可能だ(CIAはほぼ殲滅との由)。

 台湾という因子の有効化で、韓国、北朝鮮の価値は大きく変わった。米中戦争の有無の可能性は、米国が戦争目的をどこに置くかで決まる。戦争目的が中国共産党打倒であれば、米国は戦争はしない、できない。ポンペオ元国務長官らが強調したように、米国の敵は中国共産党ではあるが、理想的かつ有効なアプローチは(現時点では存在しない)中国共産党を代替し得る勢力の支援であるとしか言えない。一瞬であっても、大陸全域を混乱状態にすることは賢明ではないからである(中国共産党は決して望ましい存在ではないが、国共内戦時の生きるか死ぬかの混乱期に比べればよっぽどマシな秩序をもたらしているという一点を持って、中国共産党を支持する、という認識の人民は少なくとも過去には多かったようだ)。がそのような勢力は存在しない。そのような存在こそが最大の脅威であることを知っている中国共産党は、長年にわたり手を打ってきており、完全に成功を収めてきている。

 このため、米国の軍事オペレーションの目的は、中国共産党は潰さないものの、軍事的及び経済的目標の徹底破壊に留めることになるだろう。特に空、海軍兵力は徹底的に破壊する。陸軍への攻撃の程度はインド、ロシアの姿勢が変数だ。例えばインドが国内の亡命チベット政府を押し立ててきた場合、米国も関与した人民解放軍陸軍に対する軍事オペレーションは実行され得る。こうなるとトルコは揺れる可能性がある。エルドアン政権は親中姿勢だが、一般国民の親ウイグル(≒東トルキスタン=東のトルコ国)傾向は根強い。本来のウイグル人の土地の分離も軍事オペレーションの一部として意図した場合、トルコ政権を揺さぶることも目的に含めた情報戦が先行して仕掛けられるだろう。トルコがNATO所属であることを忘れてはいけない。

 海軍力を失った中国共産党への対応は周辺国に任せることとなるがが、台湾ですら調子に乗り過ぎて変な方向に力を傾ける可能性もあるから、台湾の米軍駐留は継続しておいた方が良い。結局のところダメダメなフィリピン政権への楔ともなる。また台湾政府は軍や世論と上手くいなさないと、本来得るべき果実を失う。日露戦争の日本側の戦争目的は「朝鮮半島及び中国東北部からのロシアの排除」だったから、現状追認による講和で目標達成が見えた時点で、「モスクワまで行けー!」とか国民(臣民)を煽っていた糞マスコミや軍の動きを抑え、賠償金を捨ててでも講和に持ち込んだ政府の戦争指導とそれを理解していた外交陣はやはり凄い。実は米国の対中戦争の目的は、台湾が大陸復帰を望むかどうか、米国が台湾が自身が望むことを自力で為し得る力を持っていると判断するかどうかで大きく変わる。が。この辺り、現在ではどうなるか見通せない。

 台湾はそもそも中華民国だから大陸復帰は国是とも言えるが、台湾としての存在感、独自の価値を獲得したのは「大陸復帰などと言う世迷い事から自由になる」というリアリティを志向し始めてからである、換言すれば、「台湾は、大陸の中国共産党支配地域の有無に関係なく、台湾と言う独立した国家足りうる」と考える台湾人が主流派になったてからである。台湾はひとまず「単独で中国共産党を打倒、代替し得る勢力」という看板を下ろすことによって、最近の国際的地位が得た。これは多少皮肉っぽいと言うか、何とも複雑な思いにも捕らわれる展開ではある。

 最後にあんまり関係ない話だが、最近キッシンジャーが「世界は第一次世界大戦前に戻る」旨の発言をしたとの報道があった。老人の言う世迷い事に過ぎないので無視しよう。彼の博士論文はその時代のバランス外交についてのものであり(日本語版をかつて読んだ)、彼は結局今のその時代の専門家以上でも以下でもないようだ。今にして思えば、彼の米国外交は時代を読んでいない酷いものであった。

2021/01/26

AK、更に増殖!

 ここでAKとは、カラシニコフ将軍の手になるAK-47を祖とするアサルトライフルシリーズを指すと思って頂きたい。私の記憶での現行のラインナップは、ロシア軍向けのAK-12/15と、それとは独立した輸出も想定した製品群であるAK-100シリーズだった。ちなみにYoutubeで「AK-103の2つのクローン製品を比較した動画」を昨晩観たばかりなのだが、もうね、AK-74より後のAKは、ピカティニーレールの有無ぐらいの見分けしか付かないです。

 そんな中、以前に紹介したYoutube動画シリーズ「カラシニコヴァ・ショー」に「AK-200」が登場。正直、今までのAK製品とどこが違うのか全く分かりません(T_T)

2020/02/08

X-32、不憫。

 Boeing X-32は、Lockheed Martin F-35の試作型であるX-35と軍の正式採用を争った第5世代ステルスジェット戦闘機の試作機だ。その外観はモダンな戦闘機としては特異な方で、たまにかわいいと言われることはあっても、かっこいいと言われることは稀なようである。ちなみに私は、機首~空気取入れ口周りの形状が見た目だけでなくエンジニアリング視点でも好きであり(一応、流体力学分野で飯を食っている)、特に斜め後方45度前後、斜め上方-10~+10度範囲の位置から見た全体形状にはX-32にしか見られない独特の機能美を感じてしまう。一方とっても長い主脚は・・・アレは色々とマズそうだ。

 さてYouTubeのチャンネル「USA Military Channel 2」で、「【ボツになった戦闘機】ボーイングX-32ステルス戦闘機」と題する動画が公開された。米軍の日本語版公式チャンネルということで未見の映像が含まれることを期待したが、全て既に観たことのある映像だった。また、以前に観たものより高画質だったという映像も無かった。
 X-32とX-35との、つまりBoeing社とLockeed Martin社との闘いのドキュメンタリーとしては、米国PBSネットワークのNOVA枠で放送された「Battle of X-planes(2003)」が有名だ。上の動画中のほぼ全ての映像は「Battle of X-planes」内で観ることができる。00年代後半のころは、このドキュメンタリーの内容はネットの上の戦闘機好きの間では基本教養と見做されていた。私も何とか観る機会を作り、話題について行こうと当時頑張った。

 今現在も大したレベルではないのだが、このドキュメンタリーを何度も観たことで多少なりとも英語リスニング力が向上したのは間違いない。BBCのドキュメンタリー(ユーロファイター・タイフーンやハリヤー、初期ジェット軍用機のものが多い)もそうだが、ドキュメンタリー番組のナレーションは概して聞き取り易い。自分の興味とマッチするドキュメンタリー番組を見つけて原語で観るというのは、外国語のリスニング力を上げる方法としては効率が良いのではないかと思う。会話重視なら、映画の方が良いかもしれないけど。

 閑話休題。

 「Battle of X-planes」の面白さの一つは、何故X-32が負けたかが良く分かることだ。何故X-35が勝ったか、ではない。

 コンペティション(競争)では両社2機づつの試作機を製作、両社ともに要求仕様に基づく独自の試験計画を作成、実行して自社設計の性能をアピールし合う。軍から派遣される試験パイロットがX-32は海軍、X-35は空軍という違いの影響もあろうが、両者の試験計画はかなり異なっている。

 YF-22のコンペティションの経験を反映してか、試験計画はLockheed Martin社のX-35の方がアグレッシブだった。Boeing社のX-32の試験計画の内容も決してX-35のそれに見劣りするものではなかったが、試験中のミスやトラブルが目立った。そして私が見るところもう一つ重要だったのは、正式採用にあたって大きな設計変更がX-32には必要と、Boeing社自身がコンペティションの途中で認めざるを得なかったことだ。3DCGモデラーとしての視点からだと、X-35からF-35へも外観差も一からそれぞれ作るべきだろうというレベルではあるのだが、それでも全くの別機体とは見做し難い。が、もしF-32が誕生した際には、その外観はX-32とは明らかに別物となる。要素の形や寸法が変わるだけでなく、重要な機能をも持つ構成要素が増えるのだ。

 ドキュメンタリー内で確認できる試験時のミス、トラブルとしては、例えば以下のものがある。
  • 飛行中の操縦プログラム異常
  • 飛行中の油?漏れ
  • 空中給油試験時に、給油ドローグ(先端に漏斗状のエアシュートが付いた給油機側ホース)のエアシュートを空気取入れ口が吸い込みそうになった。このシーンは観ていて結構怖く、映像にも撮影者の心の動揺みたいなものを感じ取れる。文字通り「ふっ」と、或いは「すっ」とエアシュートが空気取入れ口に向かって突然動くのだ。
  • 垂直着陸試験時、ほぼ着陸のタイミングでエンジン異常燃焼
 設計変更は主翼の小型化と水平尾翼の追加とかなり大きなもので、海軍からの要求仕様の変更に対応するための重量低減が目的だ。ドキュメンタリー内ではまず、尾翼構成を通常の垂直尾翼×2+水平尾翼×2とするか、垂直尾翼と水平尾翼の機能を併せ持つ尾翼(ペリカン尾翼)×2とするかをスタッフ内で議論、責任者が決定するシーンが登場する。そして、その後にその決定が覆える様も登場する。小さくない設計変更が必要というだけでもX-32の正式採用には十分逆風なのだが、設計変更内容がふらふらするのもうまくない。Boeing社も良くこんなシーンのTV放送を許したものだと思う。

 X-32の敗因として、軍の多くのパイロットが「あんなカッコ悪い機体には乗りたくない」と言ったなどと聞いたり読んだりすることがある。優秀なパイロットに乗りたいと思わせるために戦闘機のようなF-117という名称が与えられた爆撃機もあったぐらいなので、それもさもありなんとは思う。が、大きな設計変更が避けられなかったことこそ、X-32の敗因だと個人的には考えている。試作機の性能が要求仕様を満足しない、開発期間・コストが更に必要であることが明確、の二重苦状態では勝機は薄い。

 著作権的には問題あるが、「Battle of X-planes」は今はYouTubeで観られる。なお、再生開始位置はX-32の尾翼設計変更に関するところとしてある。

2018/06/26

ミラージュGのこの手の映像は珍しい?

 さて、先のエントリでネタ的に取り扱った仏TVシリーズ?"les chevaliers du ciel"ですが、つらつらと幾つかのエピソードを眺めていたら珍しい機体を発見。試作で終わった可変後退翼戦闘機ミラージュGです。単発のせいなのか、角度によってはシルエットがミグ23に似てますね。オープニングの後、いきなり登場します。

 操縦翼面周りのアップのカットやコクピット内のカットがあったりして、下手な公開の公式記録映像よりも資料性は高いかも。なおフランス語はからっきしなので、エピソードの内容は不明です。

2015/08/21

「珍島犬1号」が出たとか出てないとか

 韓国で「珍島犬1号(ちんどけんいちごう)」が発令されたとの情報がある。

 珍島犬は「珍島の犬」、例えば「秋田犬」などと言葉として同じ意味構造を持つ。が、後ろに「1号」が付くとけっこう物騒で、韓国軍が「(軍事的な)警戒態勢に入ること」が発令されたことになる。これは北朝鮮指導部が人民軍に対して「準戦争状態」を発令したことへの対応だ。ラジオニュースでも言っていたが、今回も北朝鮮からの通知はホットラインである専用FAXを用いたということらしい。

 朝鮮戦争休戦後の朝鮮半島南北国家の武力対決は、やれ「プロレス」だ、「無慈悲な炒飯」だと何気に牧歌的ではあったのだが、今回はちょっと雰囲気が違うように感じる。杞憂であれば良いのだが、昨今の韓国政府は他者の面子に対する察しが欠如している。韓国がちょっとでも強硬的な対応を選べば北朝鮮を追い詰めることになる。

 さて、件のラジオニュースで韓国のステートメントが紹介されていたが、1か所引っかかるところがあった。ステートメントでは「(今回の事案は)休戦協定に違反するもの」といった文言が含まれていたが、「韓国は休戦協定に調印していない」のが事実だ。当時の韓国大統領である李承晩がサインを拒んで調印会場にすら行かなかったのだ。つまり、「韓国と北朝鮮は休戦していない」のである。ちなみに協定にサインしたのは、国連軍を代表する米軍、中共人民解放軍志願軍、北朝鮮軍である。韓国の国連入りは1991年だから韓国軍が国連軍に含まれる筈もない。さらに畳みかければ、北朝鮮は何度か休戦協定の破棄を宣言している。

 斯くの如く韓国の朝鮮戦争に対するお花畑具合、なんか勘違いしてる具合には度し難いものがある。ま、内戦に過ぎないんだけどね、国際政治的には。

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    11: ジャングルキャット(福岡県) 2013/04/05(金) 15:31:37.57 ID:3DN4I3wu0

    緊急献立会議した
    チャーハンを作るよう指示した。
    食材を仕入れるよう指示した。
    食材を仕入れる準備に入った。
    食材の仕入れが完了し調理待機状態に突入した。
    食材の下拵えを指示した。
    鋼鉄の包丁がかつてない程の切れ味で食材を切り裂くだろうと発表した。
    鋼鉄の包丁が待機状態に入ったと発表した。
    食材の下拵えが終了したと発表した。
    下拵えを終えた食材が待機状態に入った。
    鋼鉄のフライパンを準備するよう指示した。
    鋼鉄のフライパンのが待機状態に入った。
    チャーハンの調理を指示した。
    チャーハンの調理が可能な待機状態に突入した。
    強力な火力で炒めるだろうと発表した。
    ガスコンロが待機状態に入った。
    お昼までに重大な決断をすると発表した。
    お昼のメニューがチャーハンに決定したと発表した。
    チャーハンを作ることが承認された。
    この世の誰も体験したことのない革命的食感のチャーハンになるだろう。
    本物のチャーハンを味わうこととなるだろう。
    カレーライスの予定を白紙に戻す決定が下った。
    ガスコンロの元栓が総解放され、残されたのはチャーハンの調理だけだ。
    チャーハンの調理開始まで1分1秒の状態だ。
    すでに客には通告している。

2015/06/14

サーブ・グリペンの最新プロモーション動画

 今月公開になったサーブ社によるグリペンのプロモーション動画、至極まっとうな作りで驚きとかはない。だが、グリペンの方向性と言うか、有様、ひいては商売上のメッセージは明確だ。

 ドラケンから引き継がれる稼働率の高さや良好な整備性は当然ながら、 ネットワーク機能(情報共有機能)の導入具合は群を抜く。「個ではなく群れで狩る」ことを大前提に開発された最初の近代多用途戦闘機ではないかと思う。敵を狙う機体とその敵を撃つ機体が「同じ群れに属する」別々の機体で良い、と言うのが典型的な「群れで狩る」例だ。

2015/02/24

映画「コマンド戦略」のモデル、第一特殊部隊のドキュメンタリー

 映画「コマンド戦略」は、米国-カナダ連合部隊である第一特殊部隊の編成からイタリア戦線での活躍までがモデルとなっている。映画の原題の"The Devil's Brigade"は直訳すれば「悪魔の旅団」だが、これは実際にドイツ軍が第一特殊部隊を「黒い悪魔」と呼んだことにちなむと言う。

 これはその第一特殊部隊のドキュメンタリーだ。訓練キャンプの実際の光景など、映画中のそれらのイメージとほとんど違和感が無いのには少し驚かされましたよ。