2022/01/02

欧州エネルギー政策のバカバカしい大騒ぎ

 やっと欧州の一部がエネルギー政策で目を覚まし始めた・・・厳密には左派的な理想の限界に直面したので現実路線を取り始めただけのだが、そこは武士の情け、大っぴらには指摘せずにおこう。

 太陽光発電も風力発電も電力源としてはいろいろと問題が多い。それらの問題は90年代までに明らかになっており、太陽電池ならば数倍でも足りない効率向上などの「半端ないレベルの技術革新待ち」の状態のままに現在に至っている。

 日本の電力会社はいずれも世界的に見ると大企業で、経営陣も含んで人材層は厚く、投資力も高い。しかも90年代までは再生可能エネルギーやその周辺システムの研究・開発にかなりの額を投入している。それらの結果が現在の日本の電源構成に影響しているのは当然の帰結と言える。有り体に言えば、研究・開発の結果として現行の太陽光発電や風力発電に手を出すことが営利企業として適切ではないと多くの電力会社は判断した、ということだ。これら発電手法は経済原理に照らせば選択肢としての魅力を著しく欠くものだ、と言い換えても良い。

 昨今の欧州のエネルギー政策見直しに関わるニュースは事が事だけに笑えないが、個人的にはとても可笑しい。なぜならば、議論の内容や前提条件が90年代や10年代と変わっていないのに、結論だけがクルクル変わっているからだ。天然ガス供給のロシア依存は昔のまま変わらないし、ドイツ(旧西ドイツ)の芸術的なまでの手のひらクルーぶりはこの分野でも健在だ。

 80年代に西ドイツが開発を勧めていたペブルベッド型高温ガスがSMR(小型モジュール(原子)炉)の先駆けであったのは間違いない・・・といった辺りは正直お笑いポイントだ。実験炉まで運用していたのにね。左巻きのポピュリストに国を投げ渡すとああも酷いことになるものなのかと本当に陰鬱な気分になるし、それこそがメルケルの意図したドイツと見る某氏の主張の多くに実際共感する。対して、フィンランドや北欧諸国のエネルギー政策のブレの無さと堅実さ、いやむしろ理性的な取り組み姿勢と呼ぶべきだろうか、には多くの学ぶべき点を見ることができる。オルキルオトの某発電プラントもいよいよ初臨界を迎えそうだし、火事などのトラブルを経験しつつも核のゴミの最終処分場は既に可動している。

 関連しそうな過去エントリをざっとさらうと3つほど見つかった。2013〜2014年のエントリばかりだ。他にも、ドイツでのシェールオイル開発の挫折(埋蔵量は少なくないが、油田が都市部に近いことなどを原因として環境破壊問題がクリアできなかった)など海外報道でしか目にしなかったネタに触れたエントリもあった筈だ。ウクライナの原子力発電導入への傾倒はかれこれ15年来は続いているし、その背景にロシアやドイツの政治的駆け引きやロシアからの天然ガスパイプラインの経路などが関わっていているのはもっと古くから変わらない。