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2022/12/25

2022年は我が家のミニPC元年

 今回の話は「散財」と言われても仕方ない。この冬、我が家には2台のミニPCが導入された。1台は用途が無くなり処分済のノートPCの後継品、もう1台は使用中だが処分予定の古いデスクトップPCの後継品だ。ただし購入したPCは3台だ、あれ?

 さて、先行するエントリでIntel i5-1235U搭載のBeelink SEi12ミニPC(メモリ32GB)の購入について触れた。が、コレ、入手したその日にはHDMI画面出力が出なくなって実質的にお亡くなりになってしまった。CMOSクリア実行から始めて色々と回復に務めたものの、割と早い段階で心折れてしまった。保証期間内なので返却・交換も考えたが、分解したい欲求には勝てず、購入から3日で起動ドライブもメモリも外されたベアボーン機状態となった。来年早々には、地方自治体の電子機器リサイクルボックスに放り込まれるだろう。まぁ箱出し時にケース内に謎のネジ1本が入っていた時点で、この顛末の可能性を考えておくべきだったのだろう。

 分解して分かったのは、まずマザーボード基盤への端子コネクタ取り付けの雑さだ。コネクタに横方向の力が加わると半田が割れたりはがれたりしそうな付け方となっている。HDMI出力の不具合も端子の抜き差しのタイミングで発生したので、マザーボードへの端子の取り付け周りがその原因の可能性が捨てきれない。

 次いで、本製品の魅力の一つは間違いなくミニPCの名に恥じないコンパクトさだが、その熱設計(冷却設計)はIntel i5-1235Uの発熱量に対してはほぼ限界設計と呼んで良いものではないかと思う。ここで「限界」とは、CPUの冷却に関わる機器のうち一つでも不具合を起こすと爆熱(冷却不足)か爆音(過剰な冷却)となりそうだ、という意味だ。温度センサの取り付け方も上記の端子の取り付けと同様に雑なので、温度センサが所定の位置から外れることで冷却系の制御がおかしくなっても驚かない。あと、高出力時の冷却ファンの音はゲーミングノートPCでありがちな「吐息のような音を全力運転前後に伴うひゅーん」といった音で、個人的にものすごく苦手なタイプだ。

 続いて登場のPCはIntel i5-8279U搭載のBeelink SEi8(最終的にメモリ32GB)だ。使用目的に照らすとSEi12がややオーバースペック(cinebench R23マルチで約6800ポイント)だったこと、SEi12から外したメモリなどが再利用できることから、最小構成で購入した。先に書いて置くと、こちらは極めて安定して動作していて、メモリ交換のために分解した範囲から判断する限り、ケースがほぼ同寸のSEi12に比べれば熱設計には余裕がありそうだ。高出力時のみ発生するファン音は「さー」といった感じで気に障るようなところは無い。「さー」以外の音は実質しないので、「”ほぼ”無音」といった製品の謳い文句はまぁ許せる範囲だ。が、「無音」は嘘だ。

 ところで本PCの問題は、使用目的に対する能力不足、厳密には能力の余裕がゼロな点だ。Intel i5-8279UはCPU単体では使用目的に対して30%以上の余裕がある筈なのだが、出力上限が28Wに制限(最大クロックがベースクロック相当?cinebench R23マルチで3180ポイント)されていること、ネットワーク周りの機器のオーバーヘッドが事前予測より高かったことから微妙な性能となってしまったようだ。CPU使用率がほぼ0%の時間と100%の時間との間を行き来するような稼働状況となるため、色々と寿命が早く来そうで嫌な感じなのだ。つまり耐久性に不安が付きまとってしまう。そこで3台目のPCの登場となる。

 最後のPCはAMD Ryzen 9 5900HX搭載のMINISFORUM EliteMini HX90だ。実はBeelink SEi12が私の初Intelヘテロジニアスコア搭載機で、本PCは私の初AMD製CPU搭載機だ。なお、本機の後継品は本日発売開始だったかと思う。

 「手のひらに乗る」といった感じのBeelink社製品と比べると本製品はかなり大きく感じる。容積的には5倍は固い。Ryzen 9 5900HXの能力(cinebench R23マルチで約6800ポイント、バーストモード時は時間制限はあるが約13000ポイント)は使用目的に対しては十分だ。実際、使用目的に沿った運用時の最大負荷は約30%であることが確認できている。高負荷時(厳密にはバーストモード時)のファン音は静音寄りのタワーケースPCと大差ない。実際の寸法までは確認していないが、そもそものファン径が大きいこともその原因だろう。対してSEi8の冷却ファンはノートPCに多いシロッコファン、SEi12ではCPU用のシロッコファンに加えてケース内冷却用に直径2cmぐらいの小さなファンが使われている。

 なお、今朝からMINISFORUM EliteMini HX90が処分予定PCの後継機のトライアルに入った。

 かつてはデスクトップPCとノートPCとをそれぞれ1台ずつ、というのが私のPC運用スタイルだった。が、従来ノートPCに担わせていた機能の大部分をAndroidタブレットに移行したことで状況が変わった。ノートPCは持ち出されることが無くなって据え置き機化し、さらに在宅勤務を機会に導入したモバイルディスプレイ(基本的に会社からの貸与PCを接続するだけなので、仕事時以外は余り)が使える状況では、ディスプレイ一体型(=別途ディスプレイを用意する必要が無い)というノートPCのメリットは実質無くなってしまう。特にディスプレイ解像度やサイズが小さいノートPCが据え置き機化すれば、より大画面、高解像度の外部ディスプレイとの常時接続は避けられない。我が家ではつい最近ノートPCが消えたばかりだ。結果から言えば、「サブPC=ノートPC」から「サブPC=モバイル用途はタブレット、据え置き用途はミニPC」への転換が起きたとも見做せようか。

 最後に個人の見解、ただし「3Dゲームはやらない」が前提です。

  • Beelink社製品かMINISFORUM社製品かの二択を迫られた場合、メインPCにするつもりならMINISFORUM社製品一択だ。価格的には若干上だが、少なくともこの1年間のモデルについてはその分性能も上だ。
    分解して中身を見ると、初期不良や使用開始から早い段階での故障の可能性はMINISFORUM社製品よりもBeelink社製品の方が高いように思える。また、私が購入したSEi8、SEi12ともにBeelink社製品の電源にはPSEマーク(電気用品安全法に適格)が表示されていないため、電気機器の安全性に多少のクエスチョンマークが付く。一方、MINISFORUM EliteMini HX90の電源にはPSEマークが付いている。加えてSEi12の電源のコンセントはアース含む三口で、かつ二口への変換コネクタは附属していなかった。
  • ラズパイやワンチップコンピュータは敷居が高いが、WindowsやLinux環境下でWifi、Bluetooth、usbなどで接続できるガジェットで遊んでみたい、いつPC本体が壊れてもあきらめがつく、みたいな向きには低価格のBeelink社製品の複数導入はアリかもしれない。凄く短いHDMIケーブルが付属しているなど、そもそもデジタルサイネージ利用も睨んだ消耗品的な使い方が想定されている製品に見えなくもない。
  • ネット上で触れている人が少なくないのだが、両者製品共にプレインストールされているWindows11 Proの仕様は「日本語対応版」であって「日本語版」とはちょっと違う。メッセージの日本語がおかしかったり、単一のメッセージ内で英語と日本語とが混在したりする。表示言語を日本語にしてもキーボードマッピングが英語キーボードのままだったりもする(ログイン後には手動で設定変更できるが、マイクロソフトアカウント入力のためにも英語マッピングでは「@」が「SHIFT+2」なのは覚えておいた方が良い)。ただ、アップデートの度に状況は良くなっている感じはする。
    プレインストール版のライセンスはMicrosoft社にちゃんと認証されているので、Microsoft社サイトで入手できるセットアップメディアツールを使えば日本語Windowsの再インストールは可能のようだ。再インストール方法などはググってくだされ。

2022/12/11

カラカラ

 本エントリのタイトルはあの楽曲とは全く関係無いので為念。

 今回のボーナスでBeelink社のミニPCを購入した。目的はセカンダリPCであるDell XPS 8700の後継品で、用途はアパート内のネットワーク通信監視みたいなものだ。

  XPS 8700のCPUは'14年発売のIntel i7 4970で、現状の用途ならまだ十分なパワーを持っている。しかしPC全体にはガタが来る兆候が目立ち始めていた。例えば電源周りの不安定や複数あるファンの騒音の増大などだ。これらは掃除を含む通り一遍のメンテナンス作業ではカバーしきれない。また、経験的に冬場はPCの突然死(主に電源)が起きやすい。つまり、今回の後継品の購入は一種のリスクヘッジとも言える。いや、まぁ、何となく嫌な予感がしている・・・と言った方が正確だろう。

 用途が明確なので後継品への要求も明確だった。CPUの能力はi7 4970以上でありながら消費電力は低いこと、メモリは16GB以上あること、起動ドライブ容量は500GB以上あること、グラフィックスチップはCPU内蔵で良いこと、OS(MS Windows11)込みで価格が¥10万を下回ること、だ。

 そして、どうせだったら今まで使ったことないミニPCとやらにしてみよう、と言う訳でIntel i5-1235U搭載のBeelink SEi12ミニPCの購入に至った。Cinebench R23のスコアは約+50%となり、CPUパワーには問題無い。価格はモデルチェンジ前の割引+クーポンで¥10万を余裕で下回った。起動ドライブの容量は500GB、メモリは32GBで、ともに文句の付けようが無い。ちなみに最大CPUパッケージ出力は既に制限値を15Wに下げ、CPUパワーのアドバンテージ分と引き換えに24時間運転を睨んで冷却ファン騒音と最大CPUパッケージ温度を低減している。今後1~2週間テスト運用し、問題が無ければセカンダリPCは置き換えるつもりだ。

 さて、本日午後一に開封したSEi12ミニPCだが、筐体を傾けると中からカラカラと音がした。怪訝に思って底板を外してみたところ、小さなネジが1本転がり出て来た。余分なネジよ、中華人民共和国からはるばる来たのか。

2021/11/02

メインPC、CPUクーラー交換!(その6・結果的に若干の静音化)

  昨日は都内の病院へ、帰りに2.5インチSSDと"noctua NF-A9 PWM" 92mmファンを購入して帰宅した。前者はメインPCの内蔵ハードディスクドライブ(Dドライブ)の置き換え品、後者はケースファン又はCPU冷却ファンの予備品だ。

 Dドライブとして使ってきた3.5インチハードディスクは出荷時取り付け品なのだが、購入から約1年を経てヘッド動作時にがカンカンとかガキン!とか音を立てるようになった。五月蠅いし音自体に突然死とかするんじゃないかとの不安感も煽られた。既存エントリで触れたようにドライブ自体の振動が大きいのも気になっていたので、静音化も兼ねてDドライブをSSD化しようと考えた訳だ。置き換え自体は何のトラブルも無く、ファイルのコピーやドライブレターの変更に時間や手間がかかっただけ、という印象だ。

 いやぁ、PCから聞こえてくる音は電源からのものも含めてファンノイズだけになりましたね、静か。

 購入したファンは使用中のケースファンと同品なのでまさに予備品だ。一方CPUクーラーのファンは単品では販売されていないので、このファンが不調となった際に備えての代替品の意味もある。

 使用しているCPUクーラー"ID-COOLING SE-914-XT"は極めてコストパフォーマンスが高く、DELL社製PCでもファン周りのエラーを吐かずにきっちり動作する良い品だと思う。が、使い続けていると気になるところが二つぐらい出てくるのは致し方ない。一つ目は最大回転数時に聞こえるブーンといったモーター音、二つ目は回転数増減時に一時的に発生するやはりモーター起因と思われるなんとも表現が難しい音だ。両者とも音量は小さいのだが、普段は風切り音しか聞こえないが故に耳についてしまう。前者の原因の一つはおそらくファンの最大回転数が2200rpmと若干高めなことだろうが、後者の原因は良く分からない。

 そこで、CPUクーラーのファンを"noctua NF-A9 PWM"に代えてみた。知っている人は知っているように、このファンは性能も値段もお高い。noctua社が"ID-COOLING SE-914-XT"と同クラスの自社CPUクーラーに採用しているファンでもあり、最大回転数は2000rpmながら送風量のスペックは"ID-COOLING SE-914-XT"付属のファンと同等となっている。色々期待しちゃいませんか?

 さくっと結果。CPUパッケージ出力175W以下の全領域(実際に使い得る全運転条件範囲にほぼ相当)で見て、CPUパッケージ温度は1~1.5℃上昇、PC全体のファンノイズ(本体正面 30cm)は1~3db低下した。つまり冷却能力は若干下がり、静粛性は若干上がった。ケースカバーさえ閉じてしまえばファンノイズは風切り音のみとなった。

 なんとも微妙な結果となったが、今回は2.5インチSSD導入と併せてPCの静音化を選択、CPUクーラーは"noctua NF-A9 PWM"へ置き換えることにした。とは言え、「ミニタワーケースでCPUを空冷する」という要求に対する"ID-COOLING SE-914-XT"のコストパフォーマンスの高さが改めて確認された形にもなった感じだ。価格だけ見ても、"noctua NF-A9 PWM"×2枚より"ID-COOLING SE-914-XT"×1台の方が安いんだよね。

2021/10/09

メインPC、CPUクーラー交換!(その5・悲しいお知らせ)

 既存エントリに記載した通り、私のメインPCであるDELL XPS 8940(Intel Core i7-10700)はCPUクーラーとリアケースファンの変更で性能的に別物になった、と言うか本来有るべき姿にかなり近づいた。が、上手くいったらいったで更に欲が出てしまう。

上のグラフは、3つの条件でのCPUパッケージ出力とCPUパッケージ温度との関係だ。横軸のCPU出力が大きいほどCPUクロックが高くなるため、引き出されているCPU性能も高いと考えてもらって良い。私のi7-10700個体は約175Wで全コアのクロックが最大値に達し、いわば100%の性能を発揮している状態になる。

 さて、グラフ中に紺色で示すのが出荷時構成での関係で、CPU出力が85W程度でCPUパッケージ温度は80℃を越え、CPU出力が105W程度で100℃に達する。実のところこれは余り望ましくない高温条件であり、出荷時のCPUクーラーの冷却力不足が原因なのは明らかだ。

 一般にCPUパッケージの制限温度は二つあり、一つはCPUのヒートスプレッダの性能低下が回避できる温度(ケース温度)、もう一つがCPUの結線部分が痛まない温度(ジャンクション温度)だ。ヒートスプレッダはCPUの除熱を担う部品だから、この部品の性能低下はCPU温度の上昇を招き、CPU寿命を短くする要因となり得る。Intel CPUならば前者はCPU型番によるバラツキはあるがおおむね72℃、後者は製造方法で決まるのでCPU型番に依らず100℃となる。Intel CPUの出力はジャンクション温度を越えない温度範囲内で出力などが制御されるので、CPUの最大出力(≒最大性能)はジャンクション温度未満で実現できる最大CPU出力で決まる。

 このため、出荷時構成での最大CPU出力はCPUパッケージ温度がジャンクション温度である100℃に達する105W程度となる。i7-10700が最高クロックで動くために必要なCPU出力は約175Wなので、出荷時構成のDELL XPS 8940ではCPUの能力を生かしきれないことになる。また容易にCPUパッケージがケース温度を越え、その状態が維持されるため、CPU劣化が加速する可能性も高い。故のCPUクーラーの交換だった。

 赤色がCPUクーラーとリアケースファン交換後、かつPCケースのカバー閉止時のCPU出力とCPUパッケージ温度との関係だ。CPUパッケージ温度90℃、すなわちジャンクション温度よりも低い温度で約175Wを達成できており、(ケース温度である72℃以上を許容すれば)CPU性能を100%発揮できるようになった。またリアケースファンの交換(80mmから92mm)によりファンノイズも低減できた。ここまでは奇跡的なまでに上手くいったと言って良い。

 で、欲に繋がるのが緑色で示した関係だ。これは赤色で示した構成のまま、PCケースのヵバーを開放した場合のCPU出力とCPUパッケージ温度との関係だ。一般的にカースカバーを開放するとCPUパッケージ温度が5℃程度下がると耳にしていたが、まさにそのような結果(4~6℃)となった。別の見方をすると、ケース内の空気の流れの向きや量(エアフロー)を良くできれば、同じCPUクーラーのままでカバー閉止時のCPUパッケージ温度を数℃は下げられる可能性があると言うことだ。

 良く使われる手は、PCケースへの外気の吸入や内部空気の外気への排出のためのケースファンを追加したり、大容量化することだ。DELL XPS 8940はリア(背面)に排出用ケースファンを1つ持つだけなので、フロントに吸入用ケースファンを単純に追加してみた。使用したケースファンはnoctua NF-A12 PWMで、取り付け位置は下の写真中の「移動前」の3.5インチHDDの位置だ。話が前後するが、写真は右側がフロント、左側がリアになる。

 結論を書いてしまおう。いったんケースファンを追加したものの、CPU温度の実効的な低下が見られず、その癖PC全体のファンノイズが嫌な感じで増えたため、早々に取り外してしまった。下のグラフはフロントケースファンが無い場合とある場合のCPU出力とCPUパッケージ温度の関係だ。フロントケースファンを追加すると(紺色で表示)、むしろCPUパッケージ温度が(1℃程度とは言え)上昇した条件すらある。これはかなり残念な結果だ。

とは言えケースファン追加の効果が皆無かと言うとさも非ず、3.5インチHDDの温度は40℃→35℃と5℃程度低下した。ここまでなら追加したケースファンは残しただろうが、なんとも悪い塩梅にファンノイズが増加してしまった。

 下のグラフはとあるiOSアプリで測定したCPU出力に対するノイズレベルの変化だ。測定位置はPC本体の真正面、距離30cmである。ちなみにPC操作者は、PC本体の真正面から斜め45°方向、距離約90cmの位置に居る。

 ここは個人的な感覚に強く依存した話になってしまうのだが、ノイズレベルが45dbを越える辺りから急にノイズが不快に感じられるようになる。グラフ中の紺色で示すように、フロントケースファンを追加すると、CPU出力100W以上でノイズレベルが45dbを越えてしまう。そして、これに私が耐えられなかったのだ。いやぁ、音を聴いていると何か気持ち悪くなるんですよ。
 
 かくして、更なる、とは言っても良くて2~3℃に過ぎないのだが、CPUパッケージ温度の低下を狙ったフロントケースファンの追加は完全な失敗と言う悲しい結果に終わったのだった、無念。

2021/09/12

メインPC、CPUクーラー交換!(その4・アフターサーヴィス)

 約1年間に購入したDELL XPS 8940(Intel Core i7-10700)のCPU冷却性能向上及び静音化作業に一区切りがついた。そもそものは6月、たまたま調べたCPU温度の余りの高さに驚いたことから始まった話だ。

 CPUの最高出力を制限することでなんとか誤魔化そうとするところから始まり、色々調べた結果として根本的な対策が必要と判断し、CPUクーラーとケースファンの交換にまで至った。おかげで実効的に使えるCPUパワーの大幅な向上と、静音化が実現できた。ただこの根底には、「そもそもDELL XPS 8940の熱設計が余りに酷い」という悲しい現実がある。海外(≒米国)ではこの問題は多数の個人、メディアのレビューでボッコボコなまでに叩かれており、ほぼ一般知化していると言えるが、同時に参考となる具体的な対策の情報にも事欠かないところがミソだ。また、ことXPS 8940(及びゲーミング用PCバリアントのG5)に関しては流通数が少なくないこともあってか、パーツメーカーが自社製品のマーケティングに陽に(=案件)陰に(=ステマ)に利用している節もある。

 私の見たところ、日米のユーザーのメーカーPCとの付き合い方には結構違いがある。ざっくり言ってしまえば、日本でメーカーPCを買うような人間は製品に多少問題があってもそれに気付かないか、気付いても部品交換までやろうとはしない傾向が強い。またメーカーPCを購入する層と自作派層との間には、「しゃべる言葉が違う」レベルの距離が日本ではある。一方米国はメーカーPCだろうが問題や改善の余地があれば徹底的に弄り、SNSで情報発信したりもする。それは弄り代の少ないDELL製品であっても同様だ。特定のメーカーPCの改良でしか使えない特殊部品の3Dプリンタ用データが無料で利用できるCreative Commons下で公開されている状況からもそれは明らかのように見える。このような状況は日本文化にはほぼ根付いていないハッカー文化の発露にも思える。ガレージでダクトテープを使って・・・といった感じの「改造は日常」というDIY文化の延長だ。

 CPUクーラーの選定には価格.comの日本人の書いたレビューを参考としたが、今回は見送った対策を含めてそれ以外の対策は主に米国人の手になるYouTube動画を参考とした。動画の良さは、英語が聞き取れなくとも画を観ていれば必要な情報が手に入る点だ。

 ただ、少なくともYouTube動画に限ってみれば、PC用パーツのレビューの内容の充実具合や役立ち度は日本人の手になるものが突出して高い。海外、時に米国人によるものは結構淡白で、「使ってみたよ」「ちゃんと取り付けられたよ」「ちゃんと動いたよ」辺りで終わってしまうものが多い。ジャンク品主体のネタ動画ですら定番ベンチマークプログラムを一通り回してしまいがちな日本人自作erってのは世界的に見れば特殊で、愛すべき存在じゃないかと正直思う。

 さて、きっかけから作業終了までの関連エントリは以下だ。

これらに記載した内容と、3.5インチHDDの取り付け位置変更がやった作業の全てだ。

 後で写真も示すが、出荷時の3.5インチHDDの取り付け位置はフロントパネルの裏側の専用ベイで、ケースの空気流入口の一部を塞いでいる。これをケース天井に沿ったもう一ヶ所の3.5インチHDD専用ベイへ移動することで、ケースへの空気流入がよりスムースにできる可能性があった。結果から言うと、ケースファンの騒音が僅かだが明らかに低減した。理由の説明は長くなるので省くが、「力づくで風量を確保する用途には向かない」この種のファンでは、上流側の流れの抵抗が小さい方がファンの駆動系への負荷が下がって静音化し易い。

 換気扇は屋外の風が強いとファン自体は逆回転しなくても短期的に逆流が発生し、時にファンの回転が遅くなったり止まったりする。このような状況下でファンを駆動するモーター軸には逆回転方向の強い負荷がかかっているのは間違いなく、モーターが異音を発したり振動したりする原因となる。HDDの移動は、これとは逆の状況を作る効果を多少なりとも生み出したようだ、きっと、おそらく、多分。

 では手を入れる前の状態の写真・・・と言いたいところだが、当然のように撮影なんかしていなかったので 「パソコン徹底比較購入ガイド」さんのXPS 8940のレビューページから無断引用させて頂く。撮影範囲はケース内の上側3/5ぐらいで、撮影範囲の最下部の水平の基板がグラフィックボード、写真外のその更に下に電源がある。

 写真の上下は実際の上下と一致しており、右側がフロントになる。写真右端の箱状部分が使用中の3.5インチHDDベイで、写真右上の横に細長い口を開いた金属箱部分が未使用の3.5インチHDDベイだ。また、写真左上の空きベイは2.5インチHDD用だ。写真中央がCPUクーラーのファン、写真左側のファンがケースファンだ。

 で、現在の状態が下の写真だ。

3.5インチHDDの移動によって新規CPUクーラーのファンの正面、メモリの空気入口側の空間がより広くなり、メモリの冷却は良くなっていそうだ。他方、写真ではCPUクーラーのすぐ下に位置するSSD(マザーボード基板高さ)の冷却が現状で十分かはイマイチ分からない。モニターしている温度を見る限りは問題無さそうだが、ヒートシンクぐらいは正直付けたくなっている。なお3.5インチHDDの移動によるCPU温度低下は70℃付近で1℃程度と無視できるレベルだ。

 下の別アングルの写真を見ると、CPUクーラーのファン、CPUクーラーのヒートシンク、ケースファンがほぼ同軸の一直線上に並んでいることが分かる。両ファンとも最大風量は約45CFNと同等なので綺麗なエアフロー形成が期待できそうだが、ケース閉止時にはヒートシンクとケースファンの間辺りだけ局所的にケース表面が温かくなるので、ケースファン上流側では大き目の安定した循環流ができているかも知れない。

 騒音だが、ここではiOSアプリで測定したデシベル値(単位はdb)を参考として示す。校正した値ではないので絶対値の正確度は不明だが、大小関係は信用できるだろう。

  • 部屋のバックグラウンド:14~21db
  • ダイソン ホット・アンド・クール(送風のみ・送風量1及び5、側面・距離30cm):32~37db及び41~45db
  • XPS 8940(ターボブースト出力無制限・100%出力時、正面・距離30cm):41~43db
  • パナソニック 電子レンジ(500W、正面・距離30cm):48~50db

別エントリで既に述べているが、一連の対策で騒音は(安いのであまり静かではなさそうな)電子レンジの作動音よりも低く抑えられたようだ。なお、40~45dbはオフィスでの会話レベルだそうだ。

 最後に解決済だが想定外だった騒音について記しておく。それはケースのビリビリいう共振だ。振動源はファンではなく取り付け位置を変更した3.5インチHDDで、マウンタをケース(シャーシ)に固定する2本のネジのうち1本の締め付けが緩んだことが原因で上手くない振動を発生してしまっていたようだ。このため、緩んだネジを締め直すことでケースの振動はあっさり消えた。

 ミニタワーとはいえペラペラした凹凸の無い華奢なケースとの印象を持っていたので、原因が分かった際には正直さもありなんとは思った。昔のフルタワーのXPSでは「XPSロゴ」でケース側壁に凹凸(タブ)を設けたりして、剛性を向上したり共振周波数を高くしていたものだが・・・この辺りも改善の余地がある安さの秘密なのかもしれない。

p.s.:現在の私の構成では、DELL社のファームウェアレベルの構成機器チェックでケースファンが「互換性が無い」と判定されるが、使用においては問題無さそうだ。とあるYouTube動画中でも、同じファンに交換した人が同様の事例を報告している(と言うか、ファン交換作業の動画末に、そのディスプレイ画面をノーコメント・長回しで大写しで挿入)。「互換性が無い」と判断された場合は、機器名や問題の内容が二次元バーコード付きでディスプレイに表示される。ここで鳴らされるのはビープ音といった警告系の音ではなく、キーボードの様々なランプの点滅と同期した小音量の音楽なのが和みポイント(?)だ。

2021/09/07

メインPC、CPUクーラー交換!(その3・おまけ)

 メインPCとして使っているDell XPS 8940(Intel Core i7-10700)のCPUクーラーを交換し、実効性ある結果を得た件については既に述べた。今回は「その後」の話だ。

 CPUクーラー交換後に気になったのがファン音だ。特にCPU出力100Wを超えたあたりから聞こえ始めるブーンといった音が大きく、かつ聞いていて落ち着かなかった。遠心式ポンプやスクリューコンプレッサと言った高速回転機器と仕事上長く付き合ってきたためか、回転軸のブレや潤滑不良を想起させるこの種の音はとにかく苦手なのだ。CPUクーラーの交換で、60Wを超えるCPU出力でもCPU温度をほぼ気にせずに長時間・連続運転できるようになったからこそ生じた問題だ。

 そこでケースの側面板を外して様々なCPU出力で運転してみたところ、件の音の源がケースのリア排気ファン(以下、ケースファン)であることが分かった。出荷時のケースファンはFOXCONN PVA080F12Hで、ファン径80mm、最大4200rpmという高回転数によって最大風量45FCNを叩き出すちょっと癖のある製品だ。ファン回転数は4-pin PWM制御で、低負荷時には回転数を抑えて文字通りの静音運転を実現する。が、高回転運転で風量を稼ぐ仕様なので、高負荷時には色々と音を立ててしまうのは避けられない。ブーンといった音もその一つだ。悪い製品ではないとは思うのだが、積極的に使いたいCPU出力域で五月蠅いのは頂けない。

 と言う訳で、ケースファンをnoctua NF-A9 PWMに交換した。ファン径は一回り大きい92mmだが、最大回転数が2000rpmなので最大風量は約45CFNで交換前と変わらない。静音化のみを目的とした割切った選択だが、選択理由は「ピンと来てしまったから」としか説明できない。公開スペック並べてみると、noctua NF-A9は同径ファンを用いた他製品と比べて最も低ノイズという訳でもなく、正直価格は高めだ。なおDell XPS 8940のケースには80mmケースファン用の取り付け穴だけでなく92mmケースファン用の取り付け穴も用意されているので、noctua NF-A9への交換には何の障害もなかった。

 交換結果を簡単に言えば、CPUの使用可能範囲全域(CPU出力174W以下=CPUの100%性能動作時の出力以下)で、ケースファン音はCPUクーラーのファン音よりも常に小さくなった。当然、ブーンといった不安感を誘う音は無くなった。

 ファン購入費を十二分に取り返したぞ、これは。

 「ファン音が五月蠅い、ファンが壊れるんじゃないかと不安になる」という理由でCPU出力を敢えて抑えて運用する、という選択肢は、睡眠時の連続・全力運転時を除いてもはや無くなった。

 ケースファン交換前はCPU出力120Wでもその音からファンが壊れないか不安になったものだったが、今や170Wでも「廻ってんなぁ」ぐらいにしか思わなくなった。実際、CPU出力120W時のファン音は、半開きのドアを通して隣接するキッチンから聞こえる電子レンジの作動音よりも小さくなってしまったぐらいだ、なんともはや。しかも、CPUパッケージ温度が72℃に達する110Wを超えると、ファン回転数が最大値に達しているようでファン音の大きさはもうCPU出力を上げても変わらない。

 ファン音が静かになったので、取り合えず普段使い時のCPUのターボブースト最大出力を75Wから95Wに上げた。ここで普段使いとは「3DCGIアプリのリアルタイムプレビューが常に動作しており、作業時間の1/3以上でCPU使用率が100%」といった使い方だ。典型的な動作クロックは4.1GHz、CPUコアパッケージ温度は基本的に68℃未満が維持され、CINEBENCH R23のマルチCPUスコアは10169と10000を越える。

 なお、ベンチのベストスコアは12245@ワット数無制限・・・CPUパッケージ温度が90℃にいっちゃうので長時間連続運転には敢えて使わない。が、爆音とまでは言えないレベルのファン音でCPUの性能が100%出せる冷却性能が得られたことは、PCとしては別物になったと言える。CPUクーラー交換前はCPUパッケージ温度が上限値の100℃に達するためCPU出力が110Wまでしか上がらず、CPUクーラー交換後はCPU出力無制限で運転できるようにはなったもののファン音は大きいわケースも共振するわで120W越えの運転はヒヤヒヤしながらだった。が、ケースファンの交換後はCPU出力無制限(実際には174W付近でフルパワーに到達)での運転でも「頑張って廻っとる、国内ブランド安物電子レンジよりは静か」な感じのファン音しかしなくなった。必要な物品の購入コストが約¥3600(CPUクーラー)+¥220(ネジ)+約¥2200(リアケースファン)でこれは安い、安くない?


  では最後はおまけのおまけ。

  • ケース側面板を外しただけで、ケースファン無しでもCPUパッケージ温度が6~7℃下がるCPU出力域があった。世間の評判通り、Dell XPS 8940のエアフロー設計を含む熱設計は余り褒められたものではなさそうだ。

  • 海外の動画などを観ていると、Dell XPS 8940についてはフロントにケースファンを2個追加する例も珍しく無い。そんな中、フロントパネル裏のHDD(HDD自体の冷却を意図してか、ケースの吸気口の一部を実質的に塞ぐ形で設置されている)を外してまでその位置にケースファンを取り付ける理由が分からなった。実はこの位置のケースファンは、サイドフロー型CPUクーラー使用時にはそのファンと向かい合う。つまり、CPUクーラーに吸気したばかりの外気を直接吹き付けるような形となるのだ。なお、もう一つの追加ファンはグラボに吸気を直接吹き付けるためのものだ。

    ケース側面板を外した方がCPUが良く冷える理由は明確ではないが、側面板が取り付けられている状態ではケース内に循環流が発生しており、CPUクーラーのファンの吸気にクーラー下流の高温の空気が混ざっている可能性などが考えられそうだ。今回のケースファン交換では風量は変えていないのでケース内エアフローへの影響は極めて小さいだろうから、CPUパッケージ温度に影響が見られなかったのは当然と思える。半面、ケース内エアフローに改善余地があるのは明らかだろう。

    まずはHDDの位置、変えてみる?

2021/08/28

Kill all Killer services AGAIN; Kill'em all ABSOLUTELY!

 Dell XPS 8940には"Killer Control Center"及び/またはその関連サービスがプレインストールされていました。このソフトウェアサービス群はネットワーク通信の優先順位などを制御して通信速度を最適化するとされるものですが、実際にはYouTubeなどの特定のサイトに接続できなくなったり、IPv4接続だけ一時的に使えなくなる場合があるなど、ただただ迷惑なものでした。そもそも有線接続、高速回線環境下ではもはや通信速度のボトルネックはPC外にあり、そのような制御は無意味です。そこで別エントリで書いたように、"Killer Control Center"及び/またはその関連サービスは全て停止していました。

 ところが、KillerネットワークサービスのドライバがWindowsアップデート経由でアップデートされたとたん、停止していたサービスが有効化され、不具合が再発しました。Windowsアップデートでドライバが提供される時点で何か関連サービスが動いていた可能性も考えられることから、関連サービスそのものの完全削除に踏み切りました。

 削除したサービスは最終的に6つでした。うち1つは他サービスとの依存関係が一切なく、サービス名から明らかに削除済みのアプリ"Killer Control Center"下で動くものだったので躊躇なく削除しました。一方、残り5つはネットワーク関連の複数のサービスと依存関連があったため、依存関係のあるサービス、ドライバーの機能、内容を一つ一つ確認しながらの慎重な削除作業となりました。

 サービスの削除はリスキーでそれに伴う不具合の責任なんて取れませんから具体的な削除対象や削除手順にここでは触れませんが、サービス削除に"sc"コマンドを使ったことだけは記しておきます。同じようなことをしようと考えている方は「Windows10 サービス 削除」辺りでググってみてくださいね。因みに"sc"コマンドは、サービス登録の解除だけでなく、不要となったレジストリのエントリも削除するとのことです。レジストリが汚くなるのが嫌いな方には嬉しい機能ですが、本来削除してはいけないサービスを削除してしまった際の手動復旧が極めて困難となるので念の為。

 上記のサービス削除から1週間経ちましたが、現時点で不具合は一切出ていません。むしろ通信速度が上がっているのではないか、と思わざるを得ないことも起きています。従来は並行して運用しているLinuxPCにfast.comで測定した通信速度は常に10~15%負けていましたが、上記のサービス削除後は5%程度の負けまで差が詰まりました。

 あと、サービス削除作業中にやはり迷惑プレインストールソフトである"WAVES | MaxxAudio Pro"関連サービスも見つけたので、併せてそのサービスも削除しました。こちらの方は特に変わった事はありませんが、もしかしたらSoundIDのパラメータ変更時に発生していたノイズが消えたかも・・・未だ確信はありませんけど。

2021/08/19

バッジエンジニアリング

 今回はふと思い出した昔話。

  バッジエンジニアリングと言う言葉は元々自動車業界で生まれたと昔人から聞いた記憶があるのだが、真偽は不明だ。例えばダイハツが製造した軽自動車を、別の名前と自社のバッジを付けてトヨタが販売するような状況を指す。新車発売だが、エンジニアリングと呼べる作業は自社のバッジの製造と取り付けだけだ。

 OEM商品も似たところがある。今は無き三洋電機は、一時期OEM生産での儲けが余りに大きくて自社ブランド製品が無くとも会社は安泰と言われた。色んな会社の白物家電のデザインが似ていると思ったら、製造は皆三洋電機だったというオチだ。日本の家電製造会社のシェアがあった時代の末期近くは、相互に得意製品をOEM供給し合うようなこともあった。が、OEM供給元が国境を超えるようになると、三洋電機の製造部門は急激にOEM顧客を失った。家電品は今や販売(ブランド)、設計、製造が別会社に分離されるまでに至っている。例えば鴻海は色んなものを製造するが、自社では設計も販売もやらない。

 で、本題。

 三洋電機が未だ大儲けをしていたころは、多くの企業グループで社員に対する「グループ企業の製品を買おう」という圧力は本当に強かった。旧財閥系で顕著だったろうことは想像に難くない。以下は、グループ内に自動車会社を持つ大企業に就職した先輩から当時聞いた話だ。

 キーワードは「〇菱インテグラ」だ。

 先輩の就職先の独身寮の駐車場には〇菱自工の車しか置けないルール、一方寮監さんは車に全く詳しくない。そのため〇菱自工のバッジを付けたホンダ・インテグラとかが現れる。しかも何台もだ。寮の近くの自動車修理工場は〇菱自工のバッジを常に用意していて、小遣い稼ぎとばかり手ぐすね引いて寮生が車を持ち込むのを待っている。当然ハンドルのバッジも交換する。寮監さんは「自工は本当に色んな車をつくってるんだなぁ」といつも困惑半分、感心半分な表情で言っていたそうだ。本来の意味とは違うが、話を聞いた時にはまさにバッジエンジニアリングだなと心底呆れた記憶がある。

 ただそのような圧力、空気も21世紀には基本的に持ち込まれなかった。業務に関わる調達作業の過程で、会社自体がグループ内企業を特別扱いしなくなったのだから当然だ。

2021/08/11

メインPC、CPUクーラー交換!(その2)

 前段の話は先行するエントリで。大まかに流れをまとめると、

  • Intel Core i7-10700搭載のDell XPS 8940では、CPUパッケージ温度がすぐ100℃まで上がる。要はCPUクーラーの除熱性能が足らない。
  • CPUパッケージ温度をを下げるために、ターボブースト時の最大CPU出力の設定を120Wから60Wまで下げた。連続・高負荷時のCPUパッケージ温度は85℃以下となったが、CPUのピーク性能は2割ほど下がった。
  • CPUクーラー交換を検討して候補を絞り込んだが、「85℃でいいっしょ」と高をくくって暫く放置。連続・高負荷運転30時間など、長時間の85℃運転を10回程度繰り返した。
  • Intelの技術文書を改めて丁寧に読むと、制限最高温度の一つであるケース温度はIntel Core i7-10700でも72℃前後であることが分かった。つまり「85℃運転はヤバい」。以前の検討に基づいて、CPUクーラーとしてID-COOLING SE-914-XTの導入を決心するに至った。ファン径92mmが決め手、120mmだともうミニタワーケースには収まらない。これが8/9の夜。

となる。 

 で、翌8/10は都内の病院への月一の通院日だったので、その帰りに秋葉原に寄った。「こんな時期になんだ」と言われそうだが、中途半端な田舎住まいには逃し難い機会だ。その規模故に密になりにくそうな大店舗を選び、ID-COOLING SE-914-XTとM3×20mmネジを購入して早々に帰宅した。

 元々付いているCPUクーラーはネジ4本を緩めるだけであっさり取り外せた。かつて動画で観た「AMD CPUのすっぽん」の光景が頭をちらついてやや恐る恐るの作業となったが、ネジを緩める過程でネジ部のバネの力だけでCPUとは分離した(私がPCを盛んに自作、改良していた時代は、CPUクーラー無し~リテールクーラーで十分なころ。つまりCPUクーラーをCPUから外すのは生まれて初めて)。グリスは乾いておらず、接触面全体に広がっていたため、CPUクーラーの性能は十分に発揮できていたと思われる。CPUクーラー自体は、少し昔風の言い方をすると「リテール品よりもヒートシンクが厚いトップフロー型」とでも言えようか。埃の付着はファンの最先端部に僅かにある程度で、ヒートシンク内も綺麗だった。

 SE-914-XTの取り付けについては特に述べないが、CPUクーラー固定用のステーとステーとマザーボード基盤との間に挟む樹脂製スペーサを固定するネジは、マザーボード基盤高さにあるネジ穴が全く見えない状態で、上から挿入して締めることになる。私の場合はネジの代わりにつまようじを使って仮組みし、つまようじを1本ずつ実際のネジに置き換えていく方法をとった。なお、CPUクーラーの交換はケースカバーを外しただけの状態で実施した。ただマザーボードのファン電源ピン周りは狭いので、既存のCPUクーラーを外した時点で新しいファンの電源ケーブルを接続しておくのが吉かと思う。

 あ、何故ステー固定が面倒臭いのか、そもそもどうして別途購入のネジなんかで固定するのかについては先行するエントリ(その1)を参照されたい。これは附属品ではSE-914-XTがXPS 8940に取り付けられないというXPS 8940の構造が原因だ。更に言えば、今回の取り付け方法ではマザーボードをケースに組み込んだ状態での作業が必須となる。ステーはマザーボードではなく、マザーボードを半ば貫通している「ケースの一部」に固定するからだ。

  さてID-COOLING SE-914-XTの性能だが、まず冷却力は私の想定には十分ミートした。良くも悪くもミニタワーケースに入るコンパクトな空冷クーラーである。以下、具体的なCPUパッケージ温度が表れるが、これらは全てCinebench R23のマルチコアテスト(10分)の終盤に得られた値だ。

 まずはターボブースト時の最大出力を150Wに設定した場合のCinebench R23の結果だ。150WはSE-914-XTの最大対応TDPになる。

 ベンチマークの数値自体は「あ、ふ~ん。それっぽい数値出てるね」ぐらいでの受け取り方で良い。このベンチの過程で得られた大事な知見は、CPUパッケージ温度は83℃とケース温度を超えたが、コアクロックは全て最大値の4.6GHzが維持されたことだ。つまり、CPUの計算能力としてのパワーが100%引き出せている。逆に、ターボブースト時の最大出力を150W超とすることに意味は無いことになる。

 ターボブースト時の最大出力を出荷時設定の120Wとした場合はどうか。CPUパッケージ温度は72~74℃とケース温度付近、コアクロックは全て4.4GHzが維持された。コアクロックは最大値に及ばないものの、ケース温度の観点からはこの辺りがターボブースト時の最大出力設定の候補となる。が、さすがにファン音が大きい。ブーンという音が乗って、機械的な不具合発生の不安を感じる一歩手前ぐらいの感じの音だ。

 続いて95W。この出力ならコアクロックが4.0GHz以上とできることが予測され、日常的に使えると嬉しい設定点だ。従来の60W設定時に対してコアクロックが+20%以上となる。CPUパッケージ温度は68℃でケース温度未満、コアクロックは4.0~4.1GHzと狙い通りだ。ファン音にブーンといった音が無くなり、如何にも高速回転中といったサーといった音だけになる。音量は8畳向けエアコンの低風量時よりやや大きいぐらいだが、ノイズ多めなので耳障りで隣で寝るのは無理っぽい。

 60Wならファン音が認識できない静音状態で、アイドル時と変わらない。CPUパッケージ温度は63℃、コアクロックは3.5GHzで、旧CPUクーラーの84℃、3.3GHzとは本質的に違う。なお、アイドル時のCPUパッケージ温度は60℃台から40℃まで下がった。コアクロックの違いは自動制御されているコア電圧の違いを反映している。ファン音が聞こえ始めるは70W、「これは隣では眠れないかも」感が出始めるのが75Wだ。睡眠時も運転することを考えると70W、CPUパッケージ温度64℃、コアクロック3.7GHzでほぼ決まりだ。

 まとめると、連続・全力運転を前提したターボブースト時最大出力は、睡眠時70W、日中不在時は95Wぐらいが良さそうだ。冬場は部屋を温めておいてくれるだろう。

 SE-914-XTのファン回転数制御は、意地でもCPUパッケージ温度を70℃未満としたいかのようだ。ファン音が気になり始めるのが63~64℃、100W以下の広いCPU出力範囲でCPUパッケージ温度のブレの上限が68℃となる。これはIntel Coreのケース温度(ヒートスプレッダの許容温度)が72℃付近であることを考えると納得の設定だ。半面、CPUパッケージ温度が60℃前半の段階からファン回転数を上げ始めるので、静音運転に拘ると思っていたよりもCPU出力が上げにくくなっている。この辺りはこのサイズのケースに収まるコンパクトさとの兼ね合いというのが実態だろう。ただしケース温度制限を考えなくとも良い、という点は精神衛生上実に好ましい。また、CPUパッケージ温度が低くなれば電圧を上げやすくなるので、同じCPU出力でもコアクロックは僅かではあるが上がる。

 で、別のまとめ方。

 価格.comのレビューなど、他の人によるネット上の情報とも矛盾しないし、値(特にキーとなるCPUパッケージ温度68℃)の一致具合も高い。繰り返すけど、高回転時のファン音はノイズ混じりで、個人的にはやや不安感を煽るものだ。コンパクトさの代償だね。CPU出力70~80Wの範囲でCPUパッケージ温度の変化勾配が上がるが、その上昇はいったん68℃で止まる。つまり80~100Wの範囲内に、CPU出力に依存せずCPUパッケージ温度が68℃一定となる範囲がある。

 なおBIOS/UEFIが既に第11世代Coreに対応しているので、実用性を担保しつつ最低でも一世代はCPUアップグレードできる見通しが立っている。が、現時点ではコストパフォーマンスが悪いからやらないけどね。

 んん?高出力時のこの騒音は実はケースファンからかな?(続くかもしれん)

 雑談。

 今回のCPUクーラー交換の検討段階でCPUクーラーの性能比較や性能紹介動画を多数見た。が、CPU出力を「100%」としか紹介しないものが少なくなかったのが頭痛の種だった。私の観点だと、最高出力を20Wに設定すれば20W出力で100%だし、150Wに設定したら150W出力で100%だ。上のグラフの全ての点が「CPU出力100%におけるCPUパッケージ温度及びコアクロック」の測定結果になるのは明らかで、「100%」と言う表現は付加条件が無いと意味がない。

 3DCGレンダリング時(≒実際の使用時)の負荷は、ターボブースト時のCPU出力設定に使っているIntel Extreme Tuning Utility(Intel XTU)のストレステストの負荷よりも明らかに大きいようだ。CPU出力が同じでも、XTUストレステスト時の方が CPUパッケージ温度は低い。より具体的には、XTUストレステストではCPUパッケージ温度が上下するが、3DCGレンダリングでは上限値に貼りつく。

 ちょっと似た話で、DAWはCPUパワーを要求するため昔からCPU使用率表示が行われてきた。今でもそんな表示は残っているが、パワー要求(デマンド)に対して制限範囲内で計算能力が追従する昨今のCPUに対して意味あるんですかねぇ。

メインPC、CPUクーラー交換!(その1)

 とにかくCPUパッケージ温度が100℃近くまでしょっちゅう上がるので、メインPCのCPUをダウンクロックした話は以前にした。CPUはIntel Core i7-10700で、具体的には120Wだったターボブースト出力を60~70Wにまで下げた。それでも、CPUパッケージ温度は85℃付近まで上がる。

 あらためて断っておくが、私はオーバークロッカーの類ではない。趣味で3DCGをやっているだけだ。が、3DCGの世界のレンダリングという作業では、特に動画を作る場合は、PCを2~3日間全力運転させることなんてざらにある。だから「趣味の範囲で」という注釈の下(つまりまずは安く)、そのようなタスク「も」そこそここなせるPCが欲しい。できるだけCPUの能力を引き出しつつ、故障や不具合発生の可能性を下げた運用が可能で、睡眠を阻害しないレベルで静かなPCだ。じゃぁ何でDellなのか・・・いやいや、先代のメインPCだったDell XPS 8700は、グラフィックボードこそは交換したが上記の私の要求を満点で満たすものだったのだ。Alienwareを買収したあたりから製品の技術的傾向に変化が見られ始めた感じがする。まぁ今回のCPUクーラーの件のようにPC性能の足を引っ張る明確なアキレス腱があって、そこに約¥4000とちょっとした作業だけでPC性能が「そこそこ化ける」・・・って展開は試されてるみたいでまだ楽しめるレベルだし、Dellのハードウェア設計の基礎部分の手堅さみたいなものは感じる・・・感じない?フルタワーケース製品以外に拡張性はもはや求めちゃダメだけどね。

 さて、

 「CPU温度 適正」といったキーワードでググると「高負荷時でも70℃台、80℃越えはヤバい」といった辺りの情報が大勢だが、Intelのスロットリング(上限値制限制御)のロジックからはそういう印象を受けない。という訳で「85℃でもええやんけ」と思っていたのだが、Intelの公開されている技術資料を見て考えが変わった。これが8/9の夜の話。んで8/10にはCPUクーラーを交換しちゃった訳だが、最近のエントリの内容はこういう早い展開が多いな。

 従来よりIntel CPUの許容最大温度としてケース温度T_caseが用いられてきた。これはヒートスプレッダの最高許容温度であり、以前より熱暴走や破損を防ぐ上での基準となっていた。具体的に72℃付近であり、少なくとも第4世代以降のCoreではほぼ変わらない。一方、最近では、書類でかつてT_caseが書かれていた位置にはジャンクション温度T_junction_maxと呼ばれる温度が書かれることが増えた。これはコア内の接続部が破損しない(=断線しない)温度で、具体的には100℃である。Intel Core i7-10700などでコア温度が100℃に達すると、クロック周波数を下げるなどして温度を下げる制御が為されるのはこのためだと思われる。

 ではCore i7-10700にとってケース温度T_caseは気にしなくても良いかと言えばさに非ず、ネット上に公開されているIntelの技術資料をきっちり読めば Core i7-10700でもケース温度T_caseが72℃程度であることははっきり書かれている。つまり、「85℃でもええやんけ」という考えは間違っている。技術屋気質を気取るなら、反省する間も惜しんで事態の本質的是正に動くべきってところだろう。

 ちなみに、ネット上には「昔はケース温度T_case、今はジャンクション温度T_junction_maxが制限」といった文章もあるが、書いた当人の肩書がどうだろうがIntelが発行・公開している技術文書の記述に基づけばこれは当然間違いである。こんなんに仕事出してるようなレベルお察しな会社、経営大丈夫か。まぁ、ターボブースト運転を連続24時間とか、普通の用途では有り得ない使用条件であることは認める。

 さて、メインPCはDell XPS 8940というちょっと困ったちゃんである。

 まず、CPUファンやケースファンの回転数を取得するインターフェースが無い。安さの秘密だ。つまりケースファン回転数やその制御ロジックはユーザーに対してマスクされていて、BIOS/UEFIやソフトウェアでそれらを確認したり変更することができない。

 次いで、ファンやヒートシンクの大きさを見る限りCPUクーラーはTDP65W級なのだが、ターボブースト時の最大出力のデフォルト値が120Wになっている。実際には色々なスロットリングの所為で100~110W動作が限界だが、それでもCPU温度は100℃を叩き続ける。このためターボブースト時の最大出力を下げて実質的にダウンクロックした訳だ。TDPが65Wだからとの主張は一見正当だが、ターボクロック動作時の性能でCPU製品の価値を位置付けている(=価格が違う)ところも実態としてあるから、ターボブースト時を考慮しないスペック上のTDPは熱設計においては参考程度の意味しかない。

 更にミニタワー型の筐体は縦置き時の幅(厚み)が160mm程度しかない。これは簡易水冷どころかちょっと大きめの空冷ファンも入らない。定番どころの虎徹Mk.IIも入らない、というか背が高すぎてケースの蓋が閉じられないそうだ。まぁ、メーカーPCはそんなもんでしょ。

 あ、後ひとつ、CPUクーラーは、ケースから伸びてマザーボードを貫通する4本のM3メスネジ(ポリコレ的には不味い表現)付の筒と言うか棒と言うかにそれぞれM3オスネジ(ポリコレ的には不味い表現)で固定する。これは空冷ファン取り付けに良く使われるバックプレートに相当するが、逆に言えばCPUクーラーに添付されている専用バックプレートが取り付けられない。少なくとも4本の筒なり棒なりを切断、除去しなければ無理だ。このような構造も安さの秘密かもしれないが、マザーボードへの荷重負荷をほぼゼロとしつつネジ4本でCPUクーラーなりがきっちり固定できることを考えると割と「冴えたやり方感」はある。要は同じ構造、或いは同じように使える構造、及びそれらに対応したパーツが増えれば状況は変わる訳だ。

 とは言え、Dell XPS 8940のCPU高温の問題に対して私と同じような悩みを持った人が居ない筈も無い。ネットを徘徊すると、価格.comのレビュー内にそのものズバリの内容のものがあった(CPUはIntel Core i7-11700だが、マザーボードやケースは同じ)。製品はID-COOLING SE-914-XTというサイドフロー型の空冷クーラーで、メーカースペック上はTDP150W対応だ。ポイントは、M3×20mmネジを別途用意すれば、CPUクーラー添付のバックプレートを使わないどころか、PCを一切加工することなく取り付けられたという事実、実績だ。これを検討しない手はない。ID-COOLING SE-914-XT自体には特に音についてはネガティブな評価もあり、実際に使ってみて成程と思わなくも無いが、これは

「Dellユーザーなどに堕した報い」

かもしれんね。最近はちょっと部品が高いけど、使用目的が明確な場合には、構成品をきっちり選んだ自作PCに勝るツールはそうそう無いですわな。

続く!

2021/07/25

USBメモリ運用にこだわって、Linux MintをXPS 8700で使う

 先のエントリに記載の通り、セカンダリPCとなった私のDell XPS 8700は短期のうちに何度も何度もWindows10をクリーンインストールされるという憂き目にあった。が、それと並行してLinuxの導入も試みられていた。そもそもサーバー用途での運用が目的だから、OSには堅牢性、特に原因不明の(嘘、アパート内に迷惑なパケットをばらまく連中がいる)変な通信負荷を喰らっても落ちない強さが求められる。この視点からは、何れかのLinuxディストリビューション(安定版とされるもの)の導入の検討は自然と言える。ただし現行のサーバー運用はあくまで短期的なものなので、いつでもWindows10運用に戻れる状態をPCとしては維持しておきたい。

 なお、約20年程前にはRedhat Linuxベース、自作PCで数値計算用のベオウルフ型PCクラスター(6台構成)を職場で一人で組んだ経験もあるので、私自身のLinux歴自体はわりと長い。

 と言う訳で、Linux Mint MateをUSBメモリベースで運用できないか色々試してみた。Linux Mintを選んだ理由は特に無いが、パステルグリーンは好きな色だ。まぁ数値計算に使う訳ではないので、個人使用での評判が良い印象のubuntu系が良いかなとはちょっと思っていた。具体的な理由は省略するが、”ベクトル化&MPI並列”ガチ派(地球シミュレータ全盛期に数値計算高速化を経験的に学んだ世代に多い)の生き残りなので、数値計算用ならCentOS一択だったろう(少なくとも3年前までの知識に基づけば。今はどうなんかね)。

 さて、USBメモリベースと一言で言っても、具体的な運用形態として少なくとも以下の3つの方法がある。

  1. ライブUSBメモリとして使う(本来はインストールメディアなのだが、これからブートしてデスクトップ環境まで使える)
  2. 書き込み可能なライブUSBメモリとして使う
  3. USBメモリにインストールする

 1.のライブUSBを使う方法の利点は動作の軽さだ。Linux Mint MateのライブUSB運用でのキビキビした動作は心底衝撃的だった。また後述するように、読み取り速度がそれなりならばUSBメモリの性能を選ばないのも一つの利点だ。USBメモリからの起動となるので別ドライブにインストール済のWindows10にもEFIシステム領域にも触らないし、別PCに刺しても使える。欠点は作成したデータや変更した設定が残せないことだ。直近のサーバー運用ではウェブブラウザと1つのアドオン、加えて1つのシェルスクリプトを使うだけなので、実のところブート後の10分もあれば必要な環境は構築できる。一旦稼働すれば数週間そのままと考えれば大した手間でもないのだが、それでもそこをなんとか・・・と言うところが人間やね。

 3.はUSBメモリ自体をインストール先ドライブとして使い、既に別ドライブにインストール済のWindows10とデュアルブートできるようにする手だ。EFIシステム領域にはLinuxのブートローダー(Linux Mintではubuntuのブートローダー)が追加される。変更した設定や作成したデータは残るが、USBメモリを別のPCに指せばそのまま動く、と言う訳には当然いかない。またオチを書いてしまうと、パッケージを追加していくにつれて急激に動きがもっさりし始める。これはUSBメモリのランダム書き込み速度の影響が大きい様に思われる。別PCに刺しても動かせない、動作は重いとなると、USBメモリへインストールする旨味は実質的に無くなってしまう。要はHDDなりSSDなりにインストールしろと言うことだ。

 で、結局2.を主案として、具体的な使い方を色々試すことにした。2.の方法の利点は1.の方法の利点に加えて、作成したデータや変更した設定が残せることである。他方パッケージの追加などは、3.の方法と同様に動作を重くする要因となる。だから、「色々試す」とは、動作を遅くすることなくどこまでパッケージが追加できるか、を探ることに等しいのが実態だった。ここでメディアの作成やフォーマットには、rufus Ver.3.7を使った。

 最終結果から書くと、OS付属のウェブブラウザFirefoxにアドオンを1つ入れ、vimのパッケージをインストールして運用開始とし、それ以外は日本語環境パッケージすら入れなかった。まぁ良いんですよここまでで、現時点での利用に関してはね。とにかくキビキビ動作するところがミソで、常に開いているウィンドウはシステムモニタ、ブラウザ×2、ターミナル×1だけだ。いじった設定もファイアウォール、キーボードマッピング、電源管理(スリープ機能のオフ)、フォントサイズ(老眼対応)ぐらいだ。

 とは言え、おそらく日本語環境パッケージの導入までは、キビキビ動作をスポイルしないものと考えている。ただし、書き込み速度が高いUSBメモリを使うことが前提っぽい。実は日本語環境パッケージの導入は3つのUSBメモリで試していて、キビキビを維持できたものと、耐えられないレベルでもっさりしたものがあった。あと例外なくもっさりを引き起こしたのは、Chromeリモートデスクトップの導入だ。セカンダリPCには専用モニタが無いのでリモートデスクトップが使えると運用が便利なのだが、パッケージ導入後は起動からデスクトップ表示までは早いものの、それ以降はうんともすんとも言わなくなってしまった。

 なお、私の使ったLinux Mint Mateでは「アイドル10分で画面スリープ」がGUIからは解除できなかったので、ネット上の情報に従ってxsetコマンドでこれを解除した。全くもって先人の知恵は有難い。このエントリを書いている時点で既に4日間連続稼働しており、地味で退屈なタスクを10秒単位でこなし続けている。

 最後に検討時に用いた3本のUSBメモリの性能(CristalDiskMark測定結果)と使用感について簡単に触れておく。

 1本目は容量32GB、USB3.1対応だが、ライブUSB以外では使い物にならなかった。理由はおそらく書き込みの遅さで、特にランダム書き込みの低速ぶりが致命的のようだ。下に示すCristalDiskMark測定結果の図中右下の数値がランダム書き込み速度だが、0.00MB/sって何ですか?このUSBメモリにはインストールも試みたが、ファイルのコピー(書き込み)が余りに遅いため、インストール開始から完了まで20時間程を要した。就寝前に開始したファイルのコピーが、起床時には未だ終わっていなかったのには正直驚かされた。繰り返すが、ライブUSBとしては全く問題を感じることは無く、動作は常にキビキビしていた。また同製品はWindows10の回復ツールを格納してクリーンインストールの際に何度も使っており、そちらでも特に問題や不満を感じたことは無かった。最初にisoイメージファイルをシーケンシャルで書き込み、基本読み出しでしか使わないから、ランダム書き込みが悪さする状況が無いんだわな。

 2本目は容量16GBでUSB3.1対応で、インストール先にしてもインストール作業自体は2時間もあれば終わった。1本目との最大の違いはランダム書き込みが数百倍速いことだ。書き込み可能なライブUSBとしても速度的に使えるレベルだが、容量が小さめなのは微妙に問題。書き込み可能領域として8GBは確保できるので日本語環境のインストール(4GB程度必要)もできて2.の使い方でも容量は十分とする向きもあるが、作業内容によってはtmp下に8GBは欲しい場合もある。私の場合はtmp下に16GB欲しかったので、より容量の大きい3本目を使うこととした。

 3本目は容量128GB、USB3.2対応で、書き込み可能なライブUSBとしては容量的にはオーバースペックかと思う。右上のシーケンシャル書き込みが3本の中で圧倒的に速いが、その差を実感したことは無い。2.の使い方では書き込み可能領域に64GB割り当てたが、tmp下の容量は要求ギリギリの16.7GBだった。まぁ不要ファイルの削除をシェルスクリプトで徹底的に処理するようにしたので、問題無いでしょ。3.の使い方のインストール先としても使ってみたが、Chromeリモートデスクトップの導入後は重いどころの騒ぎではなく使い物にならなかった。LinuxのUSBメモリでの運用では、ランダム書き込みの速度がOSの動作速度に明らかに影響するように見えるが、同レベルの別要素も有るようでイマイチすっきりしない。まぁ、書き込むばかり、読み込むばかりなんて状況は実用上はまず発生しないからねぇ・・・

2021/07/19

Dell XPS 8700の受難

 余りに馬鹿々々しい経験をしたのでメモっとく。他人にとっては面白くも無いし、まず役にもたたないだろう。

 昨年9月にほぼ6年ぶりに新規PCを購入し、従来のメインPCだったDell XPS 8700はセカンダリPC扱いとなった。手間はかかるが金はかからない正規の手続きに従いとっとと処分する予定だったが、緊急かつかなり非生産的な理由により24時間稼働のサーバーとなった。ある時はデータサーバー、またある時はネット帯域監視サーバーと用途を変えつつ、今後も暫くは稼働予定である。

 私のDell XPS 8700は2014年のWindows7プレインストールモデルで、CPUはIntel i7-4790(4コア8スレッド)、メモリは32GB、グラボは最終的にnVIDIA GTX1070になった。ゲーム、3DCGI、DAWと全て睨んだ上での構成だ。ただ起動途中のシャットダウンなど故障が予測される兆候も示し始めたことから、第一線を退いてもらうことになった。

 さて、 エントリタイトルにもある受難のスタートラインであり、以降でキーとなる初期状態を列挙する。
  • レガシーBIOSブートである。これはプレインストールのWindows7から上書きでWindows10に無償アップグレードしたためだ。
  • OSはWindows10 Proで、Windows10自体の機能を使って初期化した。

次いで内部のドライブ構成について示す。

  • ドライブ0:SATA 2TB HDD、以降は単にHDD、ドライブレターは\D
  • ドライブ1:mSATA 256MB SSD、以降は単にSSD、ドライブレターは\C

初期状態のブートドライブはもちろんSSDだ。

 さぁ、淡々と行こう。

1.BIOSのアップデート → セキュリティ関連ファームウェアの破損

 BIOSをA13から最新のA14にアップデートした。アップデート用ファイルはもちろんDellから入手したものである。BIOS自体はアップデートされたが、セキュリティデバイスである「Intel Management Engine Interface」のファームウェアのアップデート中にエラーが発生、オプションで強制書き込みを指定してもアップデートが弾かれるようになった。もう少し状況を丁寧に書いておくと、アップデートプログラムがファームウェアのバージョンを取得できないままエラーを吐いて落ちる。結果、OS起動後のデバイスマネージャー上で「Intel Management Engine Interface」と「SMバスコントローラ」に「!」マークが付く状態となった。

2.SSDからのUEFIブートにブート方法を変更 → SSDのディスク形式を誤変換

 ブート方法を変更するには、まず起動ドライブのパーティション形式をMBRからGPTへと変更しなければならないが、Windows10には"mbr2gpt.exe"というそのためのコマンドが用意されている。"mbr2gpt.exe"の良いところは、ディスクの内容は一切失わないことにある。早速このコマンドを試したところ、エラーで変更できない。原因は所謂OEMパーティションというやつだ。OSプレインストール版メーカーPCの多くで、起動ドライブのパーティション構成はメーカー独自となっている。Microsoftにとっては預かり知らない状況となっている訳で、"mbr2gpt.exe"にパーティション構成を教えてやらなければならない。ネットを漁ると教えるべき内容を見つけることはできるが、まぁ、当然ながら色々とリスクだらけだ。

 で、Dellのユーザーコミュニティスレッドで見つけたとある情報を使って"mbr2gpt.exe"を実行したところ見事変換完了、BIOS/UEFIでブート方法をUEFI、Windows Boot Managerに変更したところ見事OSが起動した。動作は快調だったのだが、ディスク管理画面を見るとSSD(\C)の中身が見えない。実は "mbr2gpt.exe"実行時に使った情報には1ヶ所誤りがあり、本来ディスク形式を「ベーシック」のままにしておくところを「ダイナミック」に変換してしまっていたのだ。

 SSDの中身を失なわずに「ベーシック」に戻す方法は基本的に無い。有料中華アプリで対応できるものもあるとのことだったが、本質的な原因はWindows7プレインストールPC用のOEMパーティション構成だ。ここはもう意味の無くなったOEMパーティションの呪縛から逃れるべく、Microsoftの回復ツールを使ってWindows10をSSDへクリーンインストールすることにした。既に紐付け済みのマイクロソフトアカウントとXPS 8700のハードウェア情報に基づいてWindowsライセンスを認証してもらう必要から、インストール時はインターネットと有線接続しておいた。

3.Windows10をHDDにインストール後、SSDに再インストール
  → OSはSSD、EFIシステムパーティションはHDD

 Microsoftの回復ツールを書き込んだUSBメモリからブートしても、SSDの再フォーマットなどは回復ツール上からはできない。これがダイナミックディスクの罠だ。一方、HDDはNTFSでベーシックドライブ、しかも空っぽだ。

 と言う訳でSSDを取り外し、Microsoftの回復ツールでまずHDDにWindows10をインストールした。HDDからブートすれば再取り付けしたSSDのディスク形式などもディスク管理機能で変更でき、晴れてSSDへのWindows10のクリーインストールの準備が整った。SSDへのインストールの為だけに、一度HDDにインストールした訳だ。当然ながら、EFIシステムパーテションはこの時点ではHDD上にある。

 USBメモリ上の回復ツールを使ったSSDへのWindows10のインストールは何のトラブルも無く完了し、これで万事OKかと思いきや、EFIシステムパーティションがHDDに残っている、っつーか、HDDにあったEFIシステムパーティションがアクティブのまま使われていて、SSDにはEFIシステムパーティションすら無い。これはHDDを使ってSSDをブートすると言う余り上手くない状況と言える。場合によってはHDDは外してしまおうかとも思っていた矢先、本当に上手くない。

4.Windows10をSSDに再々インストール、HDDをまっさらに

 HDDの信号及び電源ケーブルを抜いてMicrosoftの回復ツールを書き込んだUSBメモリでブート、SSDへWindows10を再々インストールした。アクティブなEFIシステムパーティションがSSDに移動したのを確認し、アクティブではないEFIシステムパーティションを含むHDDの全領域を削除、フォーマットした。本来は2.の途中で終わっていた筈の作業がここまでかかってしまった。

 ところが24時間稼働状態にしたところ、特定の通信内容に対してネットワーク機器が停止することが分かった。時に不意の再起動も起こす。調べると、PC起動から10分程度経つと「Intel Management Engine Interface」に「!」マークが付き、不具合が起きた時にはその状態にあることが分かった。

 実は「Intel Management Engine Interface」に「!」マークが付くことは以前から少なからずあり、これまではBIOSアップデートなどで解決してきた。が、「Intel Management Engine Interface」に「!」マークが付いているからと言って、ネットワーク接続やPC自体が不安定化した記憶は無かった。その当時との違いについて改めて考えてみると、ブート方法とWindows10のバージョンの違いしか思いつかなかった。

5.Windows10をSSDに再々々インストール、レガシーBIOSブートに戻す
   → 「違う、そうじゃない」ことに思い至る

 レガシーBIOSブートとすべく、SSDにwindows10を再々々インストールした。インストール作業が必要な理由は、SSDのパーティション形式をEFIブート用のGPTからレガシーBIOSブート用のMBRにする際に、ディスクの内容が全て消えるからだ。

 さて、レガシーBIOSブートとすることで、「Intel Management Engine Interface」に「!」マークが付いていても、OS自体の勝手な再起動やシャットダウンは発生しなくなった。 一方、ネットワーク機器の停止は1日に2回程度発生し続けた。

 いよいよ頭を抱えざるを得なくなったところで天啓(になるかも知れない)が訪れた。2000年代前半まで、つまりPCを自作していた時代の自分なら真っ先にやっただろうことを思いついたのだ。

 CMOSのクリアだ、困ったらコレ。That's the PC-AT!!

 手順と結果は別エントリに記載してあるが、"Intel Management Engine Interface"のファームウェア更新も成功し、デバイスマネージャーから全ての「!」が消えた。

6.EFIブート再び

 72時間連続稼働に耐えたし、「!」マークも現れないので、改めてレガシーBIOSブートからEFIブートに変更することにした。今回のSSDのパーティション構成はMicrosoftによるものだから(=OEMパーティションではないから)、"mbr2gpt.exe"はそのまま使える筈だ。結論から言えば全く問題無し、"mbr2gpt.exe"実行後に2回再起動(BIOS/UEFI設定変更含む)して以降は快調そのものだ。現在24時間稼働の2日目に突入、ログを見ると以前はネットワーク機器停止に至ることが多かったイベントにもきっちり耐えている。テスト兼実運用は暫く続くことになる。

 あと、「!」マークを消す件は色々と重要だ。「Intel Management Engine Interface」に「!」マークが付いている状態では、EFIブートに異様に時間がかかった。Dellロゴが表示されている時間が3~5分、Windowsロゴが表示されている時間が約20秒といった具合だった。今やDellロゴが10~20秒、Windowsロゴは表示されることもなくサインイン画面に至る。

7.実は書いていないこともある

 やれ24時間稼働だ、やれサーバーだ、なんて話なら、Windows10に拘る必然性は全く無い。実際、並行してLinuxの某ディストリビューションの導入も試していたのだが、USBメモリでの運用に拘ったために沼ってしまっている。昨夜辺りで「快適に使いたければここまでにしときなさい」というラインが具体的に見えたので、それが再確認できて気が向いたら別エントリに顛末を書くことになると思う。それはそうと、他製品と比べてシーケンシャルリード・ライト、シーケンシャルライトは悪くないのに、ランダムライトだけ1/200以下っていう製品(個体ではない)があるのは、USBメモリ界隈では普通なんですかねぇ?

2021/07/13

Intel Management Engine Interfaceに「!」マーク

 Dell XPS 8700で下記の問題症状が出ている場合は、ジャンパスイッチをいじってCMOS設定をリセットしよう。ジャンパスイッチの位置やリセット方法などは、Dellのサポートページにあるオーナーズ・マニュアルのpdfででも確認して頂戴。そのものズバリの名称の章がある。「dell 8700 サポート マニュアル」辺りでググれば見つかる。私はこれで「頻繁なオンボードLANの機能停止」と「たまに問答無用に発生するOSの再起動」を克服シマシタ。

 そもそものトラブルの原因はCMOS内の「ログ」の破損と思われる。Dellユーザーコミュニティへのとある投稿(英語)では、同じ症状の解決にはBIOSだけでなくOSのバージョンも出荷時に戻す必要があることを示唆しているが、これは間違いと思われる。BIOSのバージョンを出荷時に戻す操作はCMOS設定のリセットに他ならないから必要だが、OSを出荷時に戻す必要性は技術的視点から全く見いだせない。

 で、問題の症状。OSはWindows10だ。

  • BIOSアップデータ実行時に、BIOS自体は更新されるが、バージョンが取得できないことが原因で「ME」とやらの更新に失敗する。ちなみに「ME」はManagement Engineの頭文字だ。
  • デバイスマネージャーのIntel Management Engine Interfaceに「!」マークが付いている。ドライバーは当たっているが、デバイス起動に失敗している。
  • UEFIブートの場合、起動中にDellのロゴが表示される時間が1分以上と明らかに長い。

CMOS設定をリセットしたら、あとはOSを再起動してBIOSアップデータを実行するだけ*だ。

*:アップデータのBIOSのバージョンが現状と同じか古い場合は、コマンドプロンプトかパワーシェル上で"/ForceIt"オプション(大文字小文字は区別しないので、"/forceit"でも"/fORcEiT"でも結果は同じ)を付けてアップデータを実行すれば良い。例えばバージョンA14のBIOSにバージョンA14を強制的に上書きする場合は

<フォルダ>\XPS_8700_BIOS_A14.EXE /forceit [ENTERキー]

とする。アップデータである"XPS_8700_BIOS_A14.EXE"がHドライブのルート(\)に有る場合は

H:\XPS_8700_BIOS_A14.EXE /forceit [ENTERキー]

となる。ちなみに、BIOSのバージョンをA03やA06からA14へ直接アップデートできることは確認している。逆にA14からA06やA03への書き換えも、意味は無いが可能である。

 なおCMOS設定のリセットでBIOS周りの設定やログが初期化されるので、BIOS/UEFIの設定が一度必要だ。警告っぽいビープ音1回を伴うPCの再起動が2~3回発生すると思うが、そこは驚かず気にせず淡々と画面の指示に従うだけだ。ビープ音1回ならばむしろリセット成功を知らせていると見做して良い。また、特に理由が無い限り、BIOS/UEFIでは何も考えずにデフォルト設定をロードしてしまうことをお勧めする。まずはBIOS/UEFI起動に成功してナンボだから、その可能性が最も高い状況から始めるべきだ。設定をいじるのは、起動することを確認してからでも遅くない。

 似た症状で、

  •  デバイスマネージャーのSMバスコントローラに「!」マークが付いている。そもそもドライバーが当たっていない。 

というのもあるが、こちらは上記の件とは無関係に、「Dellが提供するIntel関連のドライバーの最新版を一切合切インストールする」ことで解決できている。私の場合はWindows10をクリーンインストールした際に現れた症状だ。Chipset関連は当然ながら、せっかくだからBluetoothやWirelessLAN関連のドライバーも更新しておこう。OS起動が遅い原因が特定のBluetoothドライバーせいだった、なんて疑いが拭えないケースの情報もかつてネット上で読んだことがある。因みにデバイスの動作に問題が無い場合、デバイスマネージャー上に「SMバスコントローラ」なんてデバイスは最初っから現れない。「SMバスコントローラ」とは機器名称が特定できないために使われた仮名みたいなもののようで、そのようにデバイスの認識に失敗している状態では適切なドライバーが当たる筈も無い。なお正常状態における「SMバスコントローラ」の名称とか、或いはそのデバイス自体がデバイスマネージャーに表示されるのかどうか等は確認していない。

 この「!」を放置すると「OSの再起動が頻発する症状」に見舞われる可能性があるので軽く見ない方が良い。

 ここでドライバーが「Dellが提供する最新版」である点を強調しておきたい。Intelは第4世代コアベースのシステムのサポートを既に打ち切っているため、Windowsアップデート経由も含めてIntelからXPS 8700への適用が保証されたドライバーやツールを入手することはもはや期待できない。結局「今は存在しない、Intelサイト上のファイルへのリンク」に行き着くばかりなので、本件に関しては2020年以前の口コミやブログ記事をググっても時間の無駄に終わる可能性が高い。故にインストーラーに「古いドライバーで置き換えますか?」と聞かれてもここはまずはYes一択だ。最新版ドライバーで動作していない時点で、最善の策は古いドライバーを試してみることだ。現時点でIntel提供の最新版ドライバーやツールがサポートしているのは、第7世代以降のコアとそれらをベースとしたシステムだけと考えてほぼ間違いない。

2021/06/29

Windows11互換性 × Dell XPS 8700 = やっかい

 Windows11が公式発表され、互換性チェックプログラムなるものも公開された。互換性チェックプログラムによれば、現行のメインPCは「互換性に問題無し」、先代のメインPCは「互換性に問題あり」となった。この先代のメインPCがDell XPS 8700である。

 で、互換性チェックプログラムをマイクロソフトのサイトからダウンロードしたのは昨夜なのだが、今日の午前中にはダウンロード用のリンクは消滅、「準備中」となっていた。「DellやHPなどの多くのメーカーPCで、互換性が担保できなかったせいではないか」と邪推しているのだが、如何だろうか?実際、私のDell XPS 8700の状況はやっかいだ。

  Dell XPS 8700は2014年モデルで、CPUとして第4世代Intelコア、ハズウェル・リフレッシュ世代のコアを搭載している。私のPCではIntel i7-4790(4コア8スレッド)だ。現時点でこのCPUは対応プロセッサリストに含まれていないが、いやいやまだ切れんでしょうよと思うのだ。だから現時点では未対応でも気にしないことにしている。それに実際のところ、大ボスは別のところにいた。

 さて、Windows11は「UEFIによるセキュアブート」を要件としている。別の書き方をすると「トラステッド プラットフォーム モジュール (TPM) バージョン 2.0の実装」を必須としている。Dellは幅広いラインナップでTPMを採用しておらず、Intel PTTという安価な代替ソリューションをBIOSレベルで提供している。ここでまず引っかかる。

 ちなみにIntel PTTを採用している大手メーカーのPCは決して少なくなく、マイクロソフトが要件を緩めるか、或いは各メーカー独自でこの辺りの顧客対応をちゃんとしないと、次からそのメーカー製品を選んでもらえなくなる可能性も出てくるのではないかと思う。企業や官庁に自社製品を一括大量導入しているメーカーの中には、リアルタイムで頭抱えてるところもあるんじゃないかな?DELLのサポートは技術仕様書類を公開するだけでトラブルシューティングはもうユーザーコミュニティへ丸投げだから、一部の顧客は捨てることになるんだろう。が、「うちのやり方はDELLとは違います」なんてサポートについてDELLとの違いをアピールしてきたメーカーで「新しいのにWindows11互換性が無い製品が多数」なんてことになったら、技術も含め顧客に直接接する現場は目も当てられない。

 技術畑の人なら理想論としては分かってもらえると思うのだが、この種の要件の導入には1商品サイクルぐらいの移行期間がやっぱり必要だ。Windows10のサポート終了時期こそ、その種のサイクルに基づいて決めたものじゃないのかねぇ?

 閑話休題。

 現時点では「互換性で弾かれる」という意味で駄目なIntel PTTだが、将来的には分からない。上述の通り、この要件はメーカーに対して大きな負荷要因となり得る、つまり少なくとも歓迎はされない。それに特定の機能の有無が問題ならば、BIOSのアップデートは必要かもしれないにしてもPTTでTPMを代替し得る筈だからだ。機能を代替できる(ことになっていた)からこそPTTには意味があったのだ。が、Intel PTTはレガシーBIOSでは使えず、Windowsの起動をUEFIとしないといけない。XPS 8700はWindows7と8.1のプレインストール機が並売された最後の世代の製品であり、かく言う私も「最後のWindows7プレインストール機」故に購入したと言って良い。ここでDellは、Windows7プレインストール機をレガシーBIOS起動でセットアップして出荷した。従って、そのままWindows7からWindows10に無償アップデートしたXPS 8700はレガシーBIOS起動のままなのだ。つまり、Intel PTTすら使えない。

 「じゃあ起動をUEFIに変えれば良いじゃないか」と思うかもしれないが、そうは問屋が卸さない。起動ドライブ(普通はCドライブ)もUEFIに対応していなければならないからだ。具体的には、パーテションがMBRベースではなくGPTベースでなければならない。レガシーBIOSの場合がMBR、UEFIの場合がGPTだ。この点についてはWindows10自体が"mbr2gtp.exe"という変換プログラムを用意しているので、一見対応可能だ。通常は1分程度で変換される。が、Dell製品の多くで、起動ドライブのパーテション分割が独自のもの(OEMパーテションという表現が見られる)となっている。XPS 8700も然りだ。

 "mbr2gtp.exe"は独自のパーテション分割には自動で対応してくれないので、プログラム実行時にユーザーがパーテション情報をオプション(/map=・・・)として具体的に与える必要がある。とは言え、どうやってそのオプションの数値を手に入れるのかも分からんし、入力間違いなどしようものなら変換結果がどうなるかも分かったもんじゃない。OEMパーテションの情報と対応したオプションに関する情報は国内外で蓄積が進んでいるようだが、やっかいな問題であることには変わりなく、余りに建設的ではない作業に能力ある人間の労力が割かれるというのも悲しいばかりだ。

 ちなみに私のDell XPS 8700はこれまたイマイチ建設的ではない用途で24時間稼働中だが、とてもWindows10のサポート終了時まで運用することになるとは思えない。だから本来はWindows11との互換性なんてほっておけば良かったのだが、PCを自作していた10年以上前の気分がちょっと蘇ってしまっていじりだしたのが運の尽きだった。様々な困難や勘違いが生み出した結果に打ちのめされ、結局Windows10のクリーンインストール(ただしUEFI起動に変更)に至るのだが、その過程での知見は上述の通りである。散々調べ、考えて実行した結果、1文字のタイプミスのせいで取り返しのつかない事態を引き起こした・・・なんて醍醐味は久しぶりだなぁ(棒

 思えば最初の作業、BIOSのA13からA14へのアップデートが正常終了しなかった(インストールは終了したのだが、チェックプログラムがクラッシュした)時点で、その後の泥沼、やろうとしていることの筋の悪さを予見すべきだったのかもね。得たものの少なさは正直つれえ。

2021/06/28

レンダーファーム、使用料おいくら?

 最近、13~10年前にYouTubeに上げた3DCGI動画のリメイクに手を染めた。ざっくり10年でのCPUパワーの増加は10倍強で、20倍には届かないというのが実感だ。ただ、3DCGIで最も時間のかかるレンダリングは並列計算向きで、アプリ側もマルチコア/スレッドCPUの特性を最大限利用するように発展してきている。加えて、メモリやストレージの性能向上もレンダリング時間短縮に明らかに寄与しているよう見える。結果、CPUによるレンダリング速度は、20倍をやや超える程度までは向上したように思う。

 20倍強というと微妙な感じもする人もいるだろう。だが一般的なサラリーマンの1ヵ月あたりの出勤日が約22日であることを考えると、1日の出勤だけで給料一ヵ月分貰えるような「比率」ではある。3週間かかっていたレンダリングが1日で終わる。丸1日かかっていたレンダリングが1時間ちょっとで終わる。特に前者の場合は、私なら以前は絶対やろうとしない条件だ。とは言え、"Enough  is not enough"なのが人間だ。そんな人こそレンダーファーム・・・なのかな?

 レンダーファームとはレンダリングのためのCPUパワーのレンタルサービスや、そのためのハードウェア・ソフトウェア環境を指す。歴史をすっ飛ばして現状だけ見れば、クラウドコンピューティングサービスの一種と見做せるんじゃないかと思う。要は自分のPCの代わりに、レンタルした並列計算環境にレンダリング計算をしてもらうサービスだ。時間をプロダクションコストに含めなければならないプロフェッショナルの世界では、昔から必須のサービスだ。また、フリーランスの3DCGIアーティストが自己宣伝用デモリールを作る際に、仕上がりをプロフェッショナル級にするために使われることもあるようだ。

 で、いくつかのレンダーファームサービスの価格を調べてみた。結論から言うと、良くも悪くもサービス提供元による価格差はほとんど無かった。もう少しばかり定量的に書くと、円-ユーロ、円-ドルの為替レートの変化でどこのサービスが一番安いかが変動するレベルの差だ。と言う訳で、米国ベースのとあるサービスの簡単見積りページで価格を見積もってみた。条件は、私のメインPCでレンダリング実績のある以下の通りとした。

  • 600枚の静止画をレンダリング
  • Intel i7-10700で静止画1枚/分、総レンダリング時間は10時間
  • 200ノード並列
  • 優先度は普通

ここでは、CPUを特定し、そのCPUでのレンダリング時間を与えている。サービス提供元のノード又はCPUの計算能力と特定したCPUの計算能力との換算が妥当ならば、かなり正確な見積りになるのではないかと思う。ノード並列数には特に意味は無いが、レンダリング枚数を超える意味が無いことと、レンダリング枚数の約数であることは意識した。優先度というのはざっくり実行順で、お金を積んで「高」とか「最高」にすれば、「普通」の他ユーザーの計算を止めてでも先に計算してもらえるようになる。

 見積り結果は以下の通り。

  • 実効計算時間は約80秒
  • 価格は約¥1,300-

実効計算時間はノードの性能から妥当な感じ、使うとしても全く文句は無い。データのアップロード、ダウンロードを含めたターン・アラウンド・タイムは15分ぐらいだろうか。生成され、ダウンロードするデータの量は多いが、これらデータの一時保存などのコストは見積りに含まれていなかった。まぁ大抵はそのためのネットワークストレージサービスを別途契約しておいて、レンダリング結果はレンダーファーム側が適宜書き込む形にすべきなのだろうけれども。

  対して価格だが、これが微妙。趣味かつ作成動画からの収益無し、という条件下ではやはり高値感がある。せめて半分、ただ¥300+消費税なら使うかもしれない。ちなみにCPUの最大TDP60WでメインPCを10時間全力駆動した場合の電気代の「増分」は約¥16-で、計算する前の予想よりは安かった。結局のところ、レンダリング時間である10時間が「睡眠時間+アルファ」又は「出勤で部屋のPCに触れられない時間以下」なので、金を払ってでも取り返したい時間になかなかならないのが高値感の原因だろう。

 レンダリング時間が更に100倍になる辺り・・・価格¥13万-以上・・・からがレンダーファーム利用の本領発揮ラインだろう、というのが今回の感覚的な結論かな?200並列ならば「40日後の結果を今日の午後に得られる」となるが、こうだとさすがに価格の見え方も変わってくる。場合によっては「40日後に得られる予定だった結果を見ることで、40日後に得る筈だった新アイディアを今日の午後に得られる」なんてこともあるかもしれない。後者の場合、本来無かった筈の40日も別途購入したようにも考えられなくもなくない?

2021/06/25

TDP60Wの力、2010年と2021年のCPU対決

 長時間駆動を前提としたCPUダウンクロックが良い感じとなった勢いそのままに、2010年に一度レンダリングしたシーンを再レンダリングした。今度のネタは米国TVシリーズのBSG(Battlestar Galactica)だ。

 同一のLightWave3D用シーンファイル(一世代前)を用い、睡眠時間中も含めた約10時間で600イメージをレンダリングするという、記憶通りであれば2010年の際と全く同じ条件を課しての実行となった。暗算に抵抗無い人なら直ぐに分かるように、平均1分で1イメージをレンダリングするということだ。

 2010年の際のCPUはIntel Core 2 Duo E6850で、ウェブ上のいくつかのベンチマークデータを参考にすると、総計算パワーは現行メインPCのCPUであるIntel i7-10700の約1/10~1/12だった。改めて調べて分かったのはE6850のTDPが60Wだと言うことで、この値は長時間駆動用にダウンクロックした現行CPUの最大TDPと同じだ。

 70Wまで低減した過程は先行するエントリで触れたが、その後、主に気温の上昇(28~29℃)が原因で、それでもCPUパッケージ最高温度を85℃以下に保つために60Wまで更にTDPを下げることとした。日当たりの良い締め切ったワンルームでは、日中の室内温度が急激に上昇している昨今では致し方ない。コアの最大クロックは3.6GHzから3.4GHz付近まで下がり、コア1/2個分の計算パワーを更に捨てたことになる。つまり全力かつ連続駆動時の計算パワーは、6.5コア、13スレッド相当となる。

 TDPはあくまで熱設計用のパワーだが、実用上は計算に要するパワーに近い値とされる。ならば、1イメージのレンダリングに要するパワーは2010年と今回とでほぼ同じとなる。しかしここ10年のCPUの発展の歴史では、省電力化が大きな位置を占める。では、レンダリングの設定がどれだけ変わったか、これすなわちこの約10年の省電力化+周辺機器の性能向上の恩恵は如何ほどだったか?結果から言うと結構凄かったのだが、さすが10年と言うべきか、されど10年と言うべきかはなかなかに難しい。あ、あとソフトウェアであるレンダラーもマルチコア前提で変わっているんだよなぁ。

  • レンダリング画面は16:9だが、高さ(9の側)は360ドットから1440ドットへと4倍まで増やせた。つまりイメージサイズは16(=4×4)倍になった。この点は結構ビックリだが、3DCGIのレンダリング作業は典型的なマルチコア向き作業だ。
  • メモリサイズは2010年時は16GB、今回が32GBだ。レンダラーが表示したメモリ使用量は約20GBなので、2010年時は完全なオンメモリでレンダリング計算ができていなかった可能性、すなわちHDを用いた仮想メモリ機能を用いていた可能性が高い。
  • 船体表面のライトの数を増やすと、レンダリング時間がてきめんに伸びる。2010年時はライトをあきらめた(配置したがOFFとした)が、今回は最小限のライト(約30個)をONにした。
  • アンチエイリアス、ノイズフィルタの設定は「感覚的に」同等とした。これはレンダラー間でアンチエイリアスやノイズフィルタ手法が基本的な考え方からして違うためで、比較の基準となる客観的な数字が無いためだ。結局のところ、出来上がりのイメージを見て「趣味のプロダクションとしては、まぁ許容レベル」 と自分として言えるかどうかで判断するしかなかった。当然、こんなんじゃ金は取れないっつーか、解像度がまず足りていないのは言わずもがな。
    なお、先行して似たことをやったVF-1Aの場合には、ノイズフィルタの適用量が「趣味のプロダクション」だとしても不足していると判断した。故に「テスト」止まりな訳だが、そもそものレンダリング設定がテスト用のそれでしかないのだから当然と言える。

 なお、動画作成は前回も今回もAdobe After Effects CS5を使った。ここだけは10年以上を経ても変わっていない。音声は2010年版のYouTube動画から抜いたものをDAW上で軽く手を入れて用いた。モコモコした感じが若干抜けて、音がややクリアになっているのではないかと思う。ちなみにYouTubeにアップロードする前の2010年版動画は、ハードディスククラッシュで他の多くのデータとともに未来永劫失われている。

 で、2010年版。

 と、2021年版。

2021/06/23

4K解像度アニメ、テストレンダー

 ターボブースト時の最大TDPを抑えることで、メインPCの長時間全力稼働にも現実味が得られた。内蔵HDやSSD、メモリの温度も大丈夫そうだし、冷却ファン音もさして気にならない。と言う訳で、早速既存のデータを用いてLightWave3D 2020での動画用連続レンダリングを試みた。条件は、夜間も含めた24時間以内で終わること、解像度はせっかくだから4Kとすることだ。その代わり画質やフレームレートは捨てる。そして全力稼働中のPCと同じ部屋で寝る(=夜間がレンダリング時間として使える)。

 ちなみに2011年に使っていたPCのCPUはCore2 Duoではなかったかな。ラジオシティで4K解像度とか、静止画1枚でもできる気がしなかったねぇ。

 全360枚、レンダリング時間は約18時間。レンダリング開始直後にCPUパッケージ温度が一瞬100℃となるが、後は88℃以下を全時間でキープ、終了時のSSD及内蔵HDの温度は49℃、36℃で想定内だった。なおレンダリング時の室温は25~28℃。

 動画自体はノイズがちらちらしてかなり落ち着かない仕上がりとはなった。十分なノイズ除去には、やはり最低4倍のレンダリング時間が必要だ。また、非平面に対するレンダラーのトレランスが以前のバージョンより更に厳しくなっているので、レンダリングエラーが幾つか発生していた。モデルの方はもう手を入れるつもりも無いフリーズしたものなので、明らかに対応すべき非平面ポリゴンを3分ほどの作業で全て三角分割した。一方、現行のメインPCでどこまでやれるか、と言うあたりの現実的なラインはちょっと見えた気がする。こればっかりはベンチマークだけやってても全然分からない。

 あと、古いも良いところのAdobe After Effects CS5に4K解像度のプロジェクトのテンプレが無いのは当然とは言え草。

2021/06/18

メインPC、CPUのダウンクロック(その3)

 クロックダウンかアンダークロックといった表現が普通で、ダウンクロックとは今は言わんらしい。仕事でつきあいのあったDECとか日本SGIの人は・・・20世紀の話だし、まぁいいか。かつてのGoogle検索では、「内蔵ハードディスク」よりも「内臓ハードディスク」の方がヒット数が多かった期間が結構長かったんだよねぇ・・・主犯はおそらくMS-IMEだが。

 同名エントリ、初夏の最終回です。文体は気分次第で変わるのでその点はご容赦を。これまではCinebench R23のベンチマーク計算結果に基づく話でしたが、私の使っている3DCGIアプリであるLightWave3D 2020のレンダリングでも同じ結論となるか確認しました。レンダリングには全16スレッドを割り当てたので、Cinebenchのマルチコア測定時と同じっちゃ同じ条件です。

 複数のターボブースト最大TDP設定に対して、レンダリングに要した時間、CPUコア最大クロック及びCPUパッケージ最高温度を調べました。上図は、右下に示されているようにターボブースト時最大TDPを70W(デフォルトは120W)まで低減した際のレンダリング中の画面です。

 まず出荷時設定、ターボブースト時最大TDPが120Wの場合です。

 レンダリング時間:170.2秒(基準)
 CPUコア最大クロック:4.1GHz(基準)
 CPUパッケージ最大温度:100℃(基準)
 スロットリング有無:サーマルスロットリング

レンダリング開始直後からサーマルスロットリング(CPUパッケージ最大温度を100℃以下に制限)により、ターボブースト時のTDPは105~108Wでした。つまり、120Wに設定しても、冷却力不足からそのワット数では動作できないことが分かります。

 そこで、ターボブースト時最大TDPを108Wに設定してみました。

 レンダリング時間:170.5秒(+0.1%未満)
 CPUコア最大クロック:4.1GHz(±0%)
 CPUパッケージ最大温度:99℃(-1℃)
 スロットリング有無:無

案の上、レンダリング時間は最大TDP120Wの場合と実質的に変わりませんでした。これはCPUコア最大クロックが変わっていないので妥当な結果でしょう。CPUパッケージ温度がぎりぎり100℃に達しないので、サーマルスロットリングは発生しませんでした。

 ターボブースト時最大TDPを70Wまで下げると・・・

 レンダリング時間:192.6秒(+12.9%)
 CPUコア最大クロック:3.6GHz(-12.2%)
 CPUパッケージ最大温度:85℃(-15℃)
 スロットリング有無:無

やはりほぼ1コア分(~12.5%)の計算パワーを棄てた形になりました。CPUコア最大クロックの低下幅とレンダリング時間の伸び幅とが良く一致しています。最後にターボブースト時最大TDPを100Wにしてみました。なお、100Wという数値自体には、「108Wより低い切りの良い値」以外の意味はありません。

 レンダリング時間:175.1秒(+2.7%)
 CPUコア最大クロック:4.0GHz(-2.6%)
 CPUパッケージ最大温度:98℃(-2℃)
 スロットリング有無:無

当然のように、CPUコア最大クロックの低下幅とレンダリング時間の伸び幅の一致は良好です。

 今回の追加のテストで、新たに分かったことがありました。現行のCPUクーラーでは、ターボブースト時の最大TDPとして108Wを超える値を設定することに意味が無いと言うことです。サーマルスロットリングによって最大TDPが108Wを超えることが無いからですね。逆に最大TDPを108Wと下げても、全コア/スレッドの100%負荷時のマルチコア計算能力の低下は120Wに対して実質的にありません。

 なんともはや、少なくともこのモデルではDellやっちまったなぁ・・・って感じですね。と言うか、今時はそういう設計が一般的なかなぁ・・・。

 Dellは電源がかつかつだとか後から手を入れにくい製品を出しますが、IFやメモリ規格などは最新のものを一早く、リーズナブルな価格で取り入れる面もあります。そのため、高価格帯製品(と言っても、20万円ぐらいの構成をベースにメモリを増設したりグラボのランクを上げたりして、セール時に18万円ぐらいで買う感じ、要はXPSの最上級モデルかその手前のモデル構成に手を入れたもの)を選んで買っておけば、そのまま4~5年は普段使いには十分性能的に通用したりしてきました。ただIntel i7-10700や11700などの発熱は、従来の製品設計の流儀ではいなせなかったみたいですね。

 カタログスペックでのIntel i7-10700のターボブースト時クロックは4.8GHz、一方出荷時の構成では冷却力不足によるサーマルスロットリングでターボブースト時クロックは4.1GHzまで低減、更に現在の私の設定では3.6GHzまで下げています。性能がクロックに比例すると仮定すると、出荷時で既に17%程度のCPUパワーが活用できていないことになります。私の現行設定では-25%程度、実に3/4程度のCPUパワーしか使えないことになります。

 ただし私の現行設定であっても、CPUをフルパワーで動かす場合以外でのCPUパワーのロスは限定的です。先行するエントリで触れたように、単一のコアやスレッドのみが高パワーを出すような場合・・・普段使いでの条件はたいていこちら・・・では、該当するコアは4.1GHzやそれ以上で駆動できるため、この場合のロスは17%以下どころか実用上はほぼ0と見做せる場合も多いようです。

 例えばDAWであるCubase Pro 11使用時には、特定のスレッドやコアに負荷が連続集中しないようにCPUが制御されています。その結果、DAW上のCPU負荷表示が50%程度のプロジェクトで楽曲を再生しても、各コアの温度上昇が抑えられているので、最大クロックは4.6GHzを余裕で維持します(=最大TDP70W設定でもサーマルスロットリングは作動しない)。

 また最大TDPが70WでのCPU冷却ファン音だったら、ターボブースト動作時でも既存の吸音材を張り付けた段ボール紙を寝具とPCの間に置くだけで問題無く寝られそうです。ダイソンの送風ファンの方が五月蠅いぐらいなんですよ。つまり私が寝ている間もPCにきっちり働いてもらうことができます。3DCGでアニメーションを作ろうとしたら、レンダリングに時間をかけなければなりませんからね、夜間の時間が使えるとなれば実はダウンクロックは良いコトづくし?要はアウトプット完了までの効率が最重要で、時間は失われることしかないやっかいなコストですから。

2021/06/17

メインPC、CPUのダウンクロック(その2)

 先行するエントリで、Intel i7-10700を搭載したメインPCのCPUをダウンクロックしたことについて述べた。 全力動作時にCPUパッケージ温度が100℃に達することを嫌い、TDP最大値を120Wから80Wに下げたのだ。そもそもの原因はCPUクーラーの冷却能力不足なので対処療法に過ぎないのは悲しいことだが、最大パワーを約10%捨てる(最大クロック4.1GHz→3.6~3.7GHz)ことで、CPUパッケージの最大温度を90℃以下とし、CPU冷却ファン作動音の1ランクの低下を得た。

 が、その後更にTDP最大値を70Wまで下げることにした。これはIntel i7-4790を搭載した先代のメインPCではパッケージ温度が85℃を越えなかった結果を受け、CPUパッケージの最大温度ターゲットを85℃以下に見直したことによる。結果、最大クロックは3.5GHzとなって更に4%弱パワーを捨てたことになるが、全力動作時のCPU冷却ファン作動音は更に低下した。Cinebench R23(マルチコア9296)を信じるなら、それでもマルチコア性能はIntel i9 9880H(マルチコア9087)を超える。

 まぁ全力動作時のパワーとして、ついに1コア分を捨てたことになった。

 アプリによっては使用スレッド数やコア数を制限できるものもある。しかしCPU温度制限によるサーマルスロットリングで最大パワーが決まる今回の状況下では、アプリで使用コア数やスレッド数を減らすよりも各々のコアのパワーを若干削ってでも全コア或いは全スレッドを使った方がより大きなパワーを確保できる。同時にCPU温度も下げられるし、PCの静音化もできる。

 あと用途によって大事なことは、これらのクロックダウンはTDP制限を下げた結果に過ぎないことだ。これは、TDP制限やデフォルトのCPU温度制限(100℃以下)に引っかからない場合、コア単体の最大能力は下がらないということを意味する。Cinebench R23のシングルコア性能測定時は、次々と使用するコアを切り替えながら常に単一のコアしか全力では動作させない。このようなコアの使い方をした場合、CPUパッケージのTDPはせいぜい40W程度だし、パッケージ温度も80℃すら越えない。換言すればスロットリングは一切行われない。結果としてベンチマーク中のコアクロックは4.6~4.7GHzに維持され、ベンチマークスコア(1230前後)も基本的にTDP制限が120Wでも70Wでも変わらない。MS比は7.5だったので、現行設定では0.5コア分のパワーを捨てていると評価されたような感じだ。

 ただマルチコア/スレッドとシングルコア/スレッドとにおける単一コア/スレッドの計算パワーの関係は、単一コア/スレッドに割り当てられる計算量(所謂、粒度)や同時に使うコア/スレッドの総数、更に各種レイテンシによって変わるので単純ではない。この辺りの機微は、12~15年間に並列科学技術計算に関わった経験がある人には良く分かるのではないかと思う。

 以下雑談。

 当時の議論対象は、①そこそこの大きさのメモリと高速なCPUを組み合わせたものを多数並列化したシステム(分散メモリシステム)と、②大きな単一のメモリにそこそこの計算速度のCPUを可能な限り多数接続したシステム(共有メモリシステム)の2つのシステムの利点・欠点だったものだが、もはやこの種の議論に意味は無くなっている。①はPCクラスターを経て、②はGPGPUとニーズに合わせて並列共存する形で、計算機技術としてはともにクラウドコンピューティングに収れんしてしまった。計算速度特化と言う意味でスパコンは未だ特殊だが、傍目からの素人目線では、とにかくデータ転送・通信のレイテンシの低減、隠ぺい(物理的には分散メモリだが、動作は限りなく共有メモリに近くする)にコストがかけられる最後の技術分野と言ったところだろう。クラウドコンピューティングではレイテンシ低減の代わりに闘いは数だよ兄貴!数にコストをかけ、併せて冗長性も確保する。 

 なお①はDAWや3DCGIのモデリング向け、②は3DCGIやあらゆるコンポジット(合成)プロセスのレンダリング向けだ。動画エンコーディングは②のほぼ最終のプロセスに当たる。

 爺さんになりつつ身の私から見ると、今のPCは色んな意味で①と②のキメラになってしまった。マルチコアCPUを搭載したシステム概念として既に①と②のキメラであり、グラフィックス機能のCPUへの内蔵は物理的にも①への②の内蔵だ(Intelのララビー・アーキテクチャを覚えている人はいるかな?)。グラフィックボードの導入は①+②のシステムの具体的な実装であり、①と②のどちらを選ぶべきかと言ったかつての真面目な議論をあざ笑うかのような状況以外の何物でもない。DAWやCGI、そしてグラフィックリッチだったり最善手を常に追い続けるような対戦ゲームのためのハードウェアだ。だから現在のPCはとても「皆のもの」と呼ばれるものではなくなった。だからPCを使えない、触ったことが無い若者が居るなんて話を聞いても驚かない。要らん人には要らんでしょ、こんなもん。だからと言ってChromebookはセンス無さすぎでしょ。

2021/06/15

メインPC、CPUのダウンクロック

  ここ10年程は何も考えずDell社の特定の製品、価格のPCを乗り換えて来た。安く買えるタイミングを狙って購入してきたし、幸いにか外れと思った製品に当たることも無かった。現在のメインPCは昨年秋に購入した2020年前期型で、CPUはコアシリーズ第10世代のIntel i7-10700(8C16T@2.91GHz)だ。先代機よりケースが2周りぐらい小さくなったのにちょっと驚かされたが、まぁ、改造する事もあるまいと思ってそこはその時は流した。如何にも安そうなケースの高級感の喪失具合もちょっと凄いが同様に流した。

 事はYoutubeでとあるジャンク系PC動画を観たことで始まった。動画は第11世代のIntel i7-11700のベンチマークに関するものだったのだが、Cinebench R20実行時にコアパッケージ温度があっさりと100℃に達してしまったことに驚いた。原因は明らかに空冷CPUクーラーの冷却能力不足で、動画主さんは直ぐにクーラーを簡易水冷型に変更していた。

 翻って、私のメインPCはどうだったか。購入直後に一通りのベンチマークは実行していたが、CPU温度は気にしていなかった。早速Open Hardware Monitorを立ち上げ、改めてCinebench R23を実行したところ、なんとベンチ開始からものの2秒も経たずにCPUパッケージ温度が98~100℃をウロチョロし始めた。クロックもいったん4.6GHz程度まで上昇するが、サーマルスロットリング(CPUコアやパッケージの温度制限)で直ぐに4.1GHzまで下がることが分かった。ちなみにCinebench R23のマルチコア時のスコアは10591だった。

 さて、現実問題としてCPUを全力で動かすシチュエーションは限られる。しかし、DAWにしても3DCGIにしても、いったん高いCPU負荷が必要な作業に入るとその状態を維持する時間は長くなりがちだ。この種のニーズは動画のエンコードが典型的だが、私の場合はエンコードする動画が短かかったり、負荷の多くをGPU(nVIDIA RTX 2070 Super)等に分散しているので余り気にならない。さりとてCPUコアやパッケージが長時間100℃近くに維持されるのはやはり気持ち悪い、っつーかかなりマズいのではないかい?

 なおサブPCである先代機(Intel i7-4790, 4C8T、2014年ごろのハズウェル・リフレッシュ世代)のパッケージ温度は外気温26℃に対してCinebench R23マルチコア計測時ですら85℃は越えず、サーマルスロットリングもTDPスロットリングも発生しなかった。つまり、絶対性能はともかく、CPUの性能が100%発揮されていることになる。CPUパワーはメインPCのそれの40%程度ともはや高いとは言えないが、メモリは32GB、nVIDIA GTX 1070カードも積んでいるので、この辺りの特長を生かした利用方法を検討中だ。ただ最大出力時のファン音はCPU、GPUともに正直かなり五月蠅い。

 さて、

ここはクーラーの変更が王道だし、せめてグリスぐらいは塗りなおしたら?、と言う意見には全く異論はない。が、正直今は金銭的やらなんやらと辛い。PCのケース寸法も電源の余裕も小さい。なのでIntelからExtreme Turing Utilityをダウンロードし、当面はこのユーティリティ上からの設定変更で逃げることとした。目標はコア及びパッケージ温度を90℃以下に維持すること。ただし90℃と言う数字にはお気持ち以上の意味は無い。ちなみにアイドル時のCPUパッケージ温度は外気温26℃時に47~50℃とやや高めだ。

 上述したように、従来のクーラーとCPUのデフォルト設定との組み合わせでは、サーマルスロットリングにより高負荷時のクロックは4.1GHz程度が上限だ。短時間ブーストもサーマルスロットリングによって効果はスポイルされる。つまりターボブーストによる能力向上は割と早い段階でつっかえている。別の言い方をするとCPUの力を発揮できない酷い実装状況だとなるのだが、この点には頓着しないと割切るしかない。真冬のフィンランドの野外ならきっとつっかえない。CPU設定の変更方針は簡単、①短時間ブーストは無効化、②CPUパッケージの最大TDPをパッケージ温度の最大値が90℃以下となるまで下げる、だ。動作クロックの最大値はTDPスロットリングで決まる出来高とすることになる。

 そんなこんなで、設定変更は最大TDPの80W(デフォルト値120W)への低減とした。最大クロックは3.7GHz(従来サーマルスロットリング時4.1GHz)と10%程度ダウンし、CPUコア及びパッケージの最大温度は86~90℃となった。暫くはこの設定で運用していく予定だ。なお、Cinebench R23のマルチコア時のスコアは9530(対従来比-10.1%)と、予想通りと言うかクロック数低下にほぼ相当する低下となった。あと何かするならば、最大負荷時のファン動作音の大きさが1ランク下がったので、現行の最大負荷時のファン回転数を上げることぐらいだろうか、でもそもそも現環境でそれできるんかね?能力-10%だけど1ランク静か、と言うのも正直悪くはないのだが。

 やっぱり低TDPは大事、それは最大性能に転嫁可能だからね。