今回の話は「散財」と言われても仕方ない。この冬、我が家には2台のミニPCが導入された。1台は用途が無くなり処分済のノートPCの後継品、もう1台は使用中だが処分予定の古いデスクトップPCの後継品だ。ただし購入したPCは3台だ、あれ?
さて、先行するエントリでIntel i5-1235U搭載のBeelink SEi12ミニPC(メモリ32GB)の購入について触れた。が、コレ、入手したその日にはHDMI画面出力が出なくなって実質的にお亡くなりになってしまった。CMOSクリア実行から始めて色々と回復に務めたものの、割と早い段階で心折れてしまった。保証期間内なので返却・交換も考えたが、分解したい欲求には勝てず、購入から3日で起動ドライブもメモリも外されたベアボーン機状態となった。来年早々には、地方自治体の電子機器リサイクルボックスに放り込まれるだろう。まぁ箱出し時にケース内に謎のネジ1本が入っていた時点で、この顛末の可能性を考えておくべきだったのだろう。
分解して分かったのは、まずマザーボード基盤への端子コネクタ取り付けの雑さだ。コネクタに横方向の力が加わると半田が割れたりはがれたりしそうな付け方となっている。HDMI出力の不具合も端子の抜き差しのタイミングで発生したので、マザーボードへの端子の取り付け周りがその原因の可能性が捨てきれない。
次いで、本製品の魅力の一つは間違いなくミニPCの名に恥じないコンパクトさだが、その熱設計(冷却設計)はIntel i5-1235Uの発熱量に対してはほぼ限界設計と呼んで良いものではないかと思う。ここで「限界」とは、CPUの冷却に関わる機器のうち一つでも不具合を起こすと爆熱(冷却不足)か爆音(過剰な冷却)となりそうだ、という意味だ。温度センサの取り付け方も上記の端子の取り付けと同様に雑なので、温度センサが所定の位置から外れることで冷却系の制御がおかしくなっても驚かない。あと、高出力時の冷却ファンの音はゲーミングノートPCでありがちな「吐息のような音を全力運転前後に伴うひゅーん」といった音で、個人的にものすごく苦手なタイプだ。
続いて登場のPCはIntel i5-8279U搭載のBeelink SEi8(最終的にメモリ32GB)だ。使用目的に照らすとSEi12がややオーバースペック(cinebench R23マルチで約6800ポイント)だったこと、SEi12から外したメモリなどが再利用できることから、最小構成で購入した。先に書いて置くと、こちらは極めて安定して動作していて、メモリ交換のために分解した範囲から判断する限り、ケースがほぼ同寸のSEi12に比べれば熱設計には余裕がありそうだ。高出力時のみ発生するファン音は「さー」といった感じで気に障るようなところは無い。「さー」以外の音は実質しないので、「”ほぼ”無音」といった製品の謳い文句はまぁ許せる範囲だ。が、「無音」は嘘だ。
ところで本PCの問題は、使用目的に対する能力不足、厳密には能力の余裕がゼロな点だ。Intel i5-8279UはCPU単体では使用目的に対して30%以上の余裕がある筈なのだが、出力上限が28Wに制限(最大クロックがベースクロック相当?cinebench R23マルチで3180ポイント)されていること、ネットワーク周りの機器のオーバーヘッドが事前予測より高かったことから微妙な性能となってしまったようだ。CPU使用率がほぼ0%の時間と100%の時間との間を行き来するような稼働状況となるため、色々と寿命が早く来そうで嫌な感じなのだ。つまり耐久性に不安が付きまとってしまう。そこで3台目のPCの登場となる。
最後のPCはAMD Ryzen 9 5900HX搭載のMINISFORUM EliteMini HX90だ。実はBeelink SEi12が私の初Intelヘテロジニアスコア搭載機で、本PCは私の初AMD製CPU搭載機だ。なお、本機の後継品は本日発売開始だったかと思う。
「手のひらに乗る」といった感じのBeelink社製品と比べると本製品はかなり大きく感じる。容積的には5倍は固い。Ryzen 9 5900HXの能力(cinebench R23マルチで約6800ポイント、バーストモード時は時間制限はあるが約13000ポイント)は使用目的に対しては十分だ。実際、使用目的に沿った運用時の最大負荷は約30%であることが確認できている。高負荷時(厳密にはバーストモード時)のファン音は静音寄りのタワーケースPCと大差ない。実際の寸法までは確認していないが、そもそものファン径が大きいこともその原因だろう。対してSEi8の冷却ファンはノートPCに多いシロッコファン、SEi12ではCPU用のシロッコファンに加えてケース内冷却用に直径2cmぐらいの小さなファンが使われている。
なお、今朝からMINISFORUM EliteMini HX90が処分予定PCの後継機のトライアルに入った。
かつてはデスクトップPCとノートPCとをそれぞれ1台ずつ、というのが私のPC運用スタイルだった。が、従来ノートPCに担わせていた機能の大部分をAndroidタブレットに移行したことで状況が変わった。ノートPCは持ち出されることが無くなって据え置き機化し、さらに在宅勤務を機会に導入したモバイルディスプレイ(基本的に会社からの貸与PCを接続するだけなので、仕事時以外は余り)が使える状況では、ディスプレイ一体型(=別途ディスプレイを用意する必要が無い)というノートPCのメリットは実質無くなってしまう。特にディスプレイ解像度やサイズが小さいノートPCが据え置き機化すれば、より大画面、高解像度の外部ディスプレイとの常時接続は避けられない。我が家ではつい最近ノートPCが消えたばかりだ。結果から言えば、「サブPC=ノートPC」から「サブPC=モバイル用途はタブレット、据え置き用途はミニPC」への転換が起きたとも見做せようか。
最後に個人の見解、ただし「3Dゲームはやらない」が前提です。
- Beelink社製品かMINISFORUM社製品かの二択を迫られた場合、メインPCにするつもりならMINISFORUM社製品一択だ。価格的には若干上だが、少なくともこの1年間のモデルについてはその分性能も上だ。
分解して中身を見ると、初期不良や使用開始から早い段階での故障の可能性はMINISFORUM社製品よりもBeelink社製品の方が高いように思える。また、私が購入したSEi8、SEi12ともにBeelink社製品の電源にはPSEマーク(電気用品安全法に適格)が表示されていないため、電気機器の安全性に多少のクエスチョンマークが付く。一方、MINISFORUM EliteMini HX90の電源にはPSEマークが付いている。加えてSEi12の電源のコンセントはアース含む三口で、かつ二口への変換コネクタは附属していなかった。 - ラズパイやワンチップコンピュータは敷居が高いが、WindowsやLinux環境下でWifi、Bluetooth、usbなどで接続できるガジェットで遊んでみたい、いつPC本体が壊れてもあきらめがつく、みたいな向きには低価格のBeelink社製品の複数導入はアリかもしれない。凄く短いHDMIケーブルが付属しているなど、そもそもデジタルサイネージ利用も睨んだ消耗品的な使い方が想定されている製品に見えなくもない。
- ネット上で触れている人が少なくないのだが、両者製品共にプレインストールされているWindows11 Proの仕様は「日本語対応版」であって「日本語版」とはちょっと違う。メッセージの日本語がおかしかったり、単一のメッセージ内で英語と日本語とが混在したりする。表示言語を日本語にしてもキーボードマッピングが英語キーボードのままだったりもする(ログイン後には手動で設定変更できるが、マイクロソフトアカウント入力のためにも英語マッピングでは「@」が「SHIFT+2」なのは覚えておいた方が良い)。ただ、アップデートの度に状況は良くなっている感じはする。
プレインストール版のライセンスはMicrosoft社にちゃんと認証されているので、Microsoft社サイトで入手できるセットアップメディアツールを使えば日本語Windowsの再インストールは可能のようだ。再インストール方法などはググってくだされ。