5年以上チェックしていなかったSteamのウェブページをふと覗いてみたら隔世の感が凄くてびっくり、何時の間にやら日本語ページも用意されている。
Steamと言うのはゲームの購入、ダウンロード、インストール、アップデート、ライセンス管理、コミュニティなどの機能を提供する狭義ではプラットフォームアプリ、広義にはサーバーも含めた環境とでも言うべきものだ。
ポイントの一つは、Steam上で購入したゲームのライセンス管理はSteamアカウント単位で行われる点、つまり「同時にプレイしなければ」複数のPCに同じゲームがインストールできるということ。仕組み上ゲームの実行にはSteamアプリの実行とインターネット接続が必須となるが、このご時世、これら必須用件はコストとは感じられないだろう。メディアやシリアルナンバーなどの管理は面倒、つまりユーザーは自らの権利維持に一定のコストを強いられる訳だが、Steamはこの部分のコストをばっさりカットすることに成功している。また、ゲームが対応していれば、セーブデータやカスタマイズした操作設定などもサーバー側に保存することも可能のようだ。
一方、ゲームの進捗具合やゲーム関連のハードウェアなどの情報もサーバーに送信される。これは(ジョージ・)オーウェル的監視社会を彷彿させるものだが、「まぁ、それぐらいの情報は渡しても良かろう」とユーザーに思わせるだけの利便性がサービスとして提供できるかどうかと言う問題でしかない。その辺りをSteamは上手くクリアしたものと見える。また、今年末にはAlienware Steam Machineと言うゲームコンソール"風"DELL製PCの発売もアナウンスされている(AlienwareはDELLのゲーム向けPCのブランドだ)。これは明らかにPlay StationやXBOXといったコンソールゲーム機への対抗軸であり、Microsoftがことごとく失敗してきた「リビングの覇権獲得」も狙った製品かと思う。今年のクリスマス商戦時期には、Steamが提供するサービスにラジカルな変更がおそらく加えられるだろう。AppleのiTunesエコシステム(音楽、映画、iOSアプリ)とも競合するものになるかも知れない。
「リビングの覇権」は勝者が無いまま消耗戦が繰り返し続けられるセットトップボックス競争に始まり、「トロイの木馬的セットトップボックス・キラー」として投入されたゲームコンソール機のやはり勝者無き消耗戦として続いている。「リビングの覇権」とは、音楽、映像、ゲームなどを提供するサービスとリビングのテレビと接続されてこれらサービスを独占的に処理するソフトウェア及びハードウェアのデファクトスタンダード争奪戦と言える。現行のSteamにおけるライセンス管理は既に十分に分かり易く、極めて公正に見える。一度購入したものは再ダウンロードが何時でも可能であり、サブスクリプション(例えば月極め払い)で利用できるアプリも既に存在する。音楽や映像のレンタル、販売への技術的障壁は既に無いと言って良いだろう。これで購入したライセンスの委譲が、ユーザー側、提供側がともに納得できる形で処理できるようになれば、Amazon.comすらダメージを受けかねないエコシステムとなり得る。ただし、現行のゲーム、アプリ総数約3700は決して大きな数字ではなく、音楽、映像コンテンツ提供を含めたエコシステムを構築するとなると、一気に1000倍以上のアイテム取り扱い能力を持たねばならない。と言う訳で、今年末のSteam動向には色んな注目しているのである。
さて、かつてのゲーマーにとっての現行Steamの魅力のひとつは、昔遊んだような古いゲームが1000円以下ということ。Armored Fist 3とかComanche 4とか10年以上前の懐かしいゲームもラインアップされている。ぐっとこらえてみたものの、やっていなかったTomb Raider: Underworld(2008)は思わず購入してしまった。初Steamである。