長野県で地震、先の大震災の経験者としても被害が最小限である事を心から祈りたい。
ネットの一部で「給水ごときで軍隊(自衛隊)使うな」との声もあるようだが、それは能天気に過ぎると言っておこう。地方自治体の危機管理能力なんて知れているのが実態で、飲料水の確保は死活問題だ。
個人的な経験だけで言うが、自衛隊の給水作業は効率良く、きめ細かく、心配りが効いている。能力には限りがあるが、それを踏まえた運用は信頼、信用に繋がる。少し具体的に書くと、私の居住地域では自衛隊は給水タンクと牽引車を2組用意していて、上水施設への水補給と被災者への給水を交互に行っていた。給水タンクの到着から給水開始までの作業もてきぱきしており、待たされる感じは無かった。給水タンクが到着しても、「どうすればいいの?」といった雰囲気で多くの人間が立ちつくしていた地方自治体とは対照的だった。しかも24時間体制である。
繰り返すが、「給水ごときで軍隊(自衛隊)使うな」なんて言う人間は想像力が著しく欠ける、現実を知らない野外の存在に過ぎない。
私の場合は早朝から11時間待ちで飲料水を手に入れる事が出来たが、自衛隊によりほぼ常に給水が行われている状況を目にしていなければとても冷静に待ってはいられなかったろう。
自衛隊投入前の自治体の対応では30分余りで給水タンクが空となり、かつ当日に追加の水補給も無かったことがあったという。集まった住人の1/10程度しか水を受け取れず、給水場所はかなり険悪な雰囲気になったという。食料と水を求める人々の行列の持つ独特の緊張感は、その場にいた人間にしか分からないだろう。
それと、有志者の活動についても触れておかないといけない。
私の居住地域は町工場が少なくなく、可搬式水タンクとそれらを輸送できるトラックを持つところも多い。地方自治体があたふたする中、自衛隊派遣前に給水に活躍したのは町工場の人々だ。タンクの容積は限られ、トラックのガソリンもやがて切れるのは分かっていながら、若手社員と社長、そして近所の人々としか見えない集団がてきぱきと水を輸送、供給する姿は頼もしかった。町工場の社長さん達と言うのは概して意思決定能力が高く、指示も的確、やるとなったらやるが引き際も逃さないもの、社長の肩書は伊達ではないのだ。しかも自衛隊員達の作業の様子も良く見ていて、自衛隊員と情報交換をしているような姿も見られた。結局、地方自治体の水供給作業も彼らが手伝い始めてから効率が格段に良くなっていった。
これらの流れもあってか、私の近所では自衛隊の活動を高く評価する声が多く聞かれた。対して終始車の流れを制御できなかった警察はあまり評価されなかった。
あとこぼれ話をひとつ。
私は米陸軍の旧型野戦ジャケットを持っている。未使用のまま放出されたものらしく、中古感は全く無い。早朝の薄暗い中(停電中なので町に灯りはない) それを着て近所の湧水を汲むためにペットボトル詰めたアリスパックを背にとぼとぼ歩いていると色んな人に声をかけられた。曰く、「頑張ってね」「有難う」「状況はどうなっているのか、何か情報を知らないか?」「水質の検査に来たのか?」「ちょっと力仕事を手伝ってくれないか?」「病院に給水車を直接回してもらえないか」などなど。一種の笑い話としてこのエピソードが紹介できる現状を心から嬉しく思う。