2021/03/16

ブリンケン国務長官「台湾は国」

  米民主党や米国議会の一部は本当に戦争をしたいんだろうなぁ、との思い再び。

 Taiwan Newsのこの記事によると、「ブリンケン国務長官が台湾を国(country)と呼んだ」らしい。そのまま素直に解釈すれば、「一つの中国」に米国はもはやコミットしないということだ。このように、相手側の採れる選択肢をどんどん潰していくやり方は、相手自体が自壊しない限り力の行使に繋がりやすい。対フセイン・イラクも対タリバン・アフガニスタンも、時の米政権は大量破壊兵器が存在する証拠とやらを「でっち上げる」などの手まで使って、相手支配地域内への直接侵攻に持ち込んだ。しかも同盟国まで巻き込んでいる。

 私は台湾周りの扱いについて先の米トランプ政権を好感していたが、その理由は「相手側(中国共産党)の採れる選択肢を限定、可能であれば誘導も試みる」ようなアプローチを採っていたからだ。ウィグル族に対するジェノサイド認定のように、トランプ政権末期のポンペオ国務長官などの発言は中国共産党に対して強硬的ではあった。台湾との国交を制限する多くの国内法も廃止した。だが同時に「一つに中国」のコミットに直接触れるような具体的なアクションはしなかった。このようなトランプ政権の一連の動きは、私の目には「あ~、あんたこのままこんなこと続けてると、さすがに『一つの中国』をコミットし続けることができなくなっちゃうな~(チラッ」といった一種の目くばせに見えた。別の言い方をすれば、トランプ政権は「『一つの中国』へのコミットの維持」を最初から最後まで取引材料とし、相手はどこまでも言っても目の前に選択肢がある状態を作り続けたと言える。

 ただ中国共産党は、或いは習近平国家主席はその取引には乗り気ではなかったようだ。理由は全く分からないが、「時間が味方にならない」とでも悟っていたのだろうか。戦狼外交という「何事も譲らない、交渉や取引はやらない」という姿勢に出た。なお「戦狼」外交の主体は外交経験のない内政畑の官僚とされる。その視点からは、「戦狼」のスタイルとは「国内或いは中華圏固有の流儀そのまま」であり、「その言葉は、自分の党中央への忠誠心のアピールでしかない」可能性が示唆される。実際、言っていること、やっていることは大国間の外交とは程遠い下品なものだ。で、本当に譲れないところもトランプ政権がほのめかす取引も同様に受け入れない方針によって、中国共産党は「真綿で首が絞められる」状態に自らを陥れてしまった。もちろん、中国共産党がその姿勢を続ければ、トランプ政権であっても「『一つの中国』へのコミットの維持」はいずれ現実的ではなくなっただろう。だが、現実的でなくなるその瞬間まで交渉や取引の窓口は開かれており、中国共産党の面子を潰すようなことは極力避けるようにした筈だと信じる。少なくとも北朝鮮の指導層はそれまでの米国流からの変化を決してネガティブには捉えず、色々と将来の可能性について考えたと思しき節がある。少なくとも南の隣国の指導者に対する場合とは違い、トランプ大統領に対して「ば~か!ば~か!」とは言わなかった。

 一方ブリンケン国務長官の今回の発言は、どの程度自覚的か分からないが、はっきり言って中国共産党の面子を潰した。更に、相手方の意思をある程度尊重した順番、内容での交渉、取引を志向してきたトランプ政権流は、左翼政権にありがちは「アレはアーならない?コレはコーならない?次のソレはソーならない?」といった相手へのリスペクトも取引要素も欠く流儀に変容する可能性が極めて高い。実効的な同盟戦力を持たない中国共産党と米国との交渉においては、トランプ政権が「交渉、取引の展開次第では将来的に選択肢となり得る」地位に意図的に置いていた選択肢である「ならば戦争だ」は、今後は双方の交渉のテーブルに最初から乗った状態となり得る。ただ新政権の面子には親中・媚中を指摘される人間が多いが、その割にアジア通はいない。なので、ブンリンケン国務長官が自身の発言の意味を理解していない可能性も残っているのが辛い。

 言い過ぎ覚悟で敢えて言うが、トランプ政権時代の「『一つの中国』へのコミットの維持は無理」に相当するラインは、米国新政権や現在の議会によって「ならば戦争だ」まで押し上げられたようにしか見えないのだ。そして、それは大量の「無知」という飾りつけに彩られた「戦争したい人達の意思」が導いたものだ。

 最近聞いた評論家の発言でなるほどと思ったのは「米国新政権は人権問題を最優先事項とした」という見解だ。換言すれば、中華人民共和国や北朝鮮の内政或いは体制や指導者層の方針の全否定だ。全否定された側にとって交渉や取引の余地は全く無く、まるで太平洋戦争の一因となったハルノートようにその方針は作用しかねない。これは、「ならば戦争だ」と告げるより、「戦争か死か」と問いかけている状態に限りなく近い様態と言える。

 んで提案。米国からのレンタルによる核武装はコストパフォーマンスが極めて高く、短期間での配備も可能なので、専守防衛を貫くならば日本にとっても外せない選択肢だ。まずは周辺国の反応も見ながら、「じっくりと検討」してみては如何だろうか。中距離核ミサイル1発の価格及びメンテナンスコストはF-35A1機よりも安いとの情報もある。巡航ミサイル用核弾頭だけなら間違いなく安い。これは「戦争をしない」「戦争に巻き込まれない」ための選択肢ではなく、戦争の有無とは無関係に「国土が戦場とされない」ための極めて消極的な策についての提案に過ぎないので念のため。

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