2013/04/05

「トレーサビリティ」というリトマス試験紙

 実験計測における「トレーサビリティの確保」に対する振る舞いは、その人の合理性と論理性の有無を如実に反映する。「トレーサビリティ」の本質は誤差評価結果の定量性の確保、試験結果の信頼性の確保或いは不確かさ幅の定量性の確保ではあるものの、試験結果の「品質保証」とは必ずしも同義ではない。この辺りを取り違えると、無駄な作業や議論を重ねることになりがちだし、やってることに楽しみも見出せない。

 「トレーサビリティの確保」という概念を理解すれば、試験に臨む際の行動はそれを理解する前とは全く変わらざるを得ない。幸いにして、私は今で言うところの「数値シミュレーションのV&V(検証と妥当性確認、Verification & Validation)の概念」に比較的早い時期に気付いてしまっていた。「トレーサビリティの確保」のための具体的な手順を理解するには一週間ほど要したものの、その概念自体は数値シミュレーションのV&Vのためのそれまでの思考実験結果と馴染むものだった。

 誰をもを納得させる論理性、無駄なく必要なことしかやらない合理性。

 「何をアングロサクソン的な!」などと一笑に付すこと無かれ、マニュアル化が可能な品質保証プロセスと同一視することなかれ。「最小限」の「トレーサビリティの確保」は「品質保証」のための必要条件にしか過ぎないが、「トレーサビリティの確保」の概念自体が示唆する内容は「品質保証」の枠組を超えて遥かに広がっている。「トレーサビリティの確保」の為に今何を為すべきか、という自らの問いに自ら答えることは立派な知的活動だ。

 日々の業務で使っているMS-Excelのワークシートをどの段階で、どういう名前で保存するか。そんな毎日の作業の中にすら「トレーサビリティの確保」という視点からの回答はある。おそらく正解はないだろうが。

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