"New Order"の"Bizarre Love Triangle"はやはり80年代を代表する名曲だと思うのだ。歌詞も「思いつめた人間の気持ち」を想像すれば何気にありそうな話にも思えるし、実際、似たような経験がない訳でもない。
それはさておき、Vocaloid3 Megpoid English用のテストオケとして、ほぼオリジナル曲に忠実な(私の耳コピレベルではだが)シーケンスデータは作ったものの、どうもしっくりこない。Megpoidが悪いんじゃなくて、オケが文字通り単なるカラオケ曲になってしまっている時点で面白くないということ、何をやりたいのかがはっきりしないうちは基本的に「どうでも良いもの」にしかならない。故に、暫く放置状態としてきた。
再開のきっかけは、別の曲のシーケンスを組んでいる際に頭をよぎった疑問、「私にとってチップチューンに相当するものは何か?」であった。
元来「チップチューン」というのは、改造したゲームボーイなどの旧式の携帯ゲーム機で演奏した楽曲である。つまり、ゲームの音楽、効果音用の音源チップを楽器化するというもので、広義では旧式ゲーム機の音源をシミュレートして作った楽曲も指す。だからと言って、編曲はそのままで音色のみファミコン風の音に変えただけでは「チップチューンの心」は宿らない。音色自体のチープさをキャッチ―に変えるためには、同時発声数などの制限がある中で生み出された数々の方法論、特に特有の編曲法、音源チップのバグの活用や仕様外の使用方法などの実際にどう使われてきたかも踏まえたアプローチが必要、というのが個人的に信じるところだ。
「チップチューン」を「チップチューン」たらしめるためには、送り手と受け手とが共通体験としての「ゲーム体験」があった方が良い。が、如何せん任天堂ファミリーコンピュータですら私の世代には遅れてきたゲーム機であり、私には共通体験たる「ゲーム体験」が欠けている。だから私には「チップチューン」はおそらく作れない、それこそ作る理由がない。では、共通体験としての「ゲーム体験」に代わるものは何か、別の言い方をすると、ある特定のハードウェアと結びついたかつては存在したが今は無い音はないか、という点に思いを巡らせた結果が"CASIO SK-1"超廉価版サンプリングキーボードや同時期のポップキーボードの音だったのだ。
"CASIO SK-1"は8bit、9.7kHz(CDは16bit、44.1kHz)のサンプラーなので、固有の音なんて無いだろうと見做すことは八割方正しい。が、当時のポップキーボードに当たり前のように付いてきた伴奏機能、特にドラムパートの音源には製造元や機種毎に結構癖がある。先週水曜日にふと思い立ってググったところ、有難いことにSK-1のドラム音の音のサンプリングデータをアップロードしてくれている人がいた。早速データをダウンロードしてDAWのドラム音源データセットを作って使ってみたら「(曲は選ぶものの)まさにコレだ!」という感じ、探していたモノのひとつはすぐ入手できるところにあったのだ。
出来の良し悪しはどうでも良し、ある意味「今の私だからこそできること」は80年代の自分の方法論の再現、より正確には翻案だ。そして、そのコアには「チープだけど味のあるドラム音色」をどう生かすかという課題がある。
という訳で音色変更から、ボカロデータ作成、ムービーの背景ドローイングまで土曜日一日で力ずくでまとめちゃったのが以下のムービー。繰り返しになるけど、出来の良し悪しはどうでも良いのだ。考えていることと実際にやっていることが一致してるとか比較対象が無いとかは精神衛生上も良いのですよ。
CASIO SK-1 - like Lo-Fi Mix (8bit 9.7kHz Mix)
CASIO SK-1 Drum Mix
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