2021/05/26

EV普及の道筋が見えない件

 2000年よりちょっと前、会社の上司から「某電力会社の30歳代幹部候補生が結構異動している」との話を聞いた。異動先は某自動車会社などと共同で立ち上げた電気自動車の実証プログラムらしい。が現在、電力会社とEVとを組み合わせた話が話題に上ることは無い。EV普及に電力会社が何らかの役割を果そうとうする気配も全く感じられない。

 バブル崩壊後とは言え、当時の電力会社には未だ勢いもお金もあった。ただ技術開発や戦略の失敗もあった。「オール電化の家」も不幸な失敗の一つだろう。

 さて、上記の電気自動車の実証プログラムの結果は如何なものだったのか?不幸にして私はその詳細どころか概略すら知らない。知っていることと言えば、プログラムに参加した幹部候補生と当時呼ばれた人達が今や幹部となり、一部はその能力の高さ故に厄介で長期的な別のプログラムに従事しているらしいという噂だけだ。東日本大震災が某電力会社の経営及び将来ビジョンに与えた影響は本当に大きそうだ。あと、日本型ではあるものの、電力自由化の有無の影響は無視できないと考えている。例えEV普及が「国策」となろうとも、電力自由化までされてそれに従う義務は無い。もはや経済合理性が意思決定の重要因子だ。

 私に言わせれば、日本はEV普及に関して一種の「先食い」をし、優秀な人材も投入したが、結局構想されたであろうエコシステムはモノにならなかった。私の記憶だと、初期EVの普及開始と家庭用ガスヒートポンプの本格普及は同時期が構想されていた筈だ。しかしかつて近所で時折見かけていたテスラやシボレー・ボルトも見なくなって久しく、EVと言えばリーフぐらいしか走っていない。ちなみにリーフを製造する会社の2000年ごろの経営状態と言えば未だ酷い有様で、EV実証プログラムへの参加なんて考えられなかった。少なくともEVに関しては、この20年で自動車会社間の力関係の逆転が起きたと言える。

 北関東に住む人間の視点からは、余裕が無いのかやる気が無いのかは不明だが、某電力会社がEV普及に何らかコミットする状況は感じ取れない。同様に他の電力会社からも特に感じるものは無い。どうやら電力会社が「充電スタンド」を建ててはくれなさそうだ。多少逆張り気味の国と言えば、原発がいっぱい稼働していて国営電力会社と(実質)国営自動車会社を持つ欧州の某国ぐらいだろうか。ちなみに当時は、水素の形での電力貯蔵も当時のEVエコシステムの一端を担うことが期待された。現在はもう研究されていないようだが、水素ガスを吸着する(内部に溜め込む)合金の開発研究が研究室レベルで盛んだった時期がある。

 かつての日本でのEV普及のシナリオには、電力会社が寄与する部分が多い形で起草された。が、今はかつてのシナリオで電力会社が占めていた部分を埋める存在が見えない。これが私にとって「EV普及の道筋が見えない」理由だ。

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