私の住むアパート内に急に大声を挙げる住人が居て、まぁ隣室の住人などとの間では色々あったようなのだが、とにかく五月蠅くする原因が分からなかった。発生は10月下旬ごろである。
さて、それとは別に、1月下旬から混雑時間帯のインターネット通信速度がほぼ0(スパイク状のピークですら2Mbps以下)となる症状が発生した。軽いことで有名な某俳優のウェブページの表示すら数10秒かかる状況は完全に非常事態である。このため、通信会社やプロバイダのサポート部門と短期的にかなり密な情報をやり取りする機会を得た。
症状自体は家庭用光信号-デジタル信号変換器兼ルータの交換(のタイミング)で解決したのだが、具体的な原因は不明のままだ。ただ、サポート部門から頂いたデータ(症状が出た日時をこちらが分単位で提示した上で、対応する時間域でのとある症状の有り無しについてのみ口頭で情報を開示頂いた)や(ここでは具体的に書かないが)単に遅いというのではない特異な症状の特徴などからは、衰退傾向のある地方都市のインターネット環境の相対的悪化(帯域不足よりも新技術に対応した新規設備の導入の遅れ、帯域が効率良く使われていない)の可能性を憂えずを得ない。少なくとも、実効的な帯域の拡大が、リモートワーク需要などの急激な需要増大に追いついていないように見える。
ただし、通信会社やプロバイダの需要増大に対する対応は頑張っていると感じているし、両社のサポート部門の対応ともに星五つあげたいぐらいの満足度だ。金曜日の夜にサポート部門にコンタクトして日曜の夜には解決だから、少なくとも迅速さにかけては文句のつけようが無い。電話やメールのやり取り、交換機器の送付までを含んでの話だからね。更に書けば、「自分でいろいろ試した結果から、家庭用光信号-デジタル信号変換器兼ルータの故障の可能性は無いと判断」というこだわりを当時の私が持つことがなければ、家庭用光信号-デジタル信号変換器兼ルータの交換による症状の解決は1日早い土曜日となっていたのは間違いない。
で、話が新たに飛ぶのだが、GoogleがStadiaサービス向けの自社ゲームスタジオの閉鎖を発表した。ここ数日には「Googleの判断の理由」に関する記事がネットなどで公開されたりしたが、個人的にはこれら記事の内容は綺麗ごとばかりで、実のところもっと泥臭い実態があるのではないかと疑っている。
ご存じの通り、インターネットの基本的な通信プロトコルはTCP/IPである。TCP/IPは核攻撃下でも通信ができるよう、とにかく1つでもネットワーク上に通信経路が確保されていれば、「全てのデータが届く」ように「とにかく頑張る」プロトコルである。その結果、「データの着順と実際のデータの並びの一致は保証されない」、「データ到着の遅延は許容される」、「いつかは全データが届く」プロトコルとなっている。これらの特徴と言うか、TCP/IPの仕様を改めて眺めると、「インターネットに向いていない」、もっと言えば「TCP/IPプロトコルの思想に違反しているかもしれない」サービスが見えてくる。
それらはずばり、①映像や音楽の大容量ストリーミング(現行のマンションタイプなら4k60fps以上はもう危ない)や②常時接続型のリアルタイムゲームだ。TCP/IPプロトコルの枠内でこれらのサービスが許されるのは、帯域幅が無限大の場合だけである。ちなみにリモートワークでも使われているだろうWindows10のリモート機能は少なくとも私の使い方ではTCP/IPプロトコルに忠実に見え、通信遅延により発生する待ち時間でイライラさせられることが少なくない。
Stadiaのような所謂クラウドゲーミングサービス上でのリアルタイム対戦ゲームは、①、②ともに抵触するため、プロトコル上は実に行儀が悪い代物と言える。もっと言えば、①を低遅延で行えと言う要求は、技術的視点からは「タヒぬの?」級の狂気の沙汰と言える。現実問題として、Googleが専用の通信回線を提供でもしない限り、現行の通信技術の延長線上ではStadiaは成功どころか成立しないと個人的には見る。「やりたいことができないから撤退」と言うクリエイターの言葉に嘘は無いだろうが、内実はそんなGoogleのコントロール外の問題の方が大きかったのだと思う。TCP/IPプロトコルを使う限りリアルタイム性は捨てなければならないが、要はStadiaが成立する条件を満たさないレベルで捨てなければならない訳だ。
人工衛星群や高高度飛行ドローン群によるインターネットサービスには夢はあるが、常識ある人間ならば「特定レベル以上の国家間の軍事オペレーションが実行されれば、それらハードウェアが短時間のうちに全てハードウェア的に破壊又はソフトウェア的に無効化される」ことは十分に予測できよう。つまり、破綻リスクの極めて高いリスキーなビジネスと言うのがリアリティだ。ちなみに5G通信ネットワークもエッジコンピューティング部分を担うハードウェアを抑えれば、少なくとも低遅延性は実質的に失われ、旨味は無くなる。電源ケーブルか通信ケーブルを切断するだけでそうなってしまう。エッジコンピューティングは「冴えたやり方」だが、それは「一種の誤魔化し」という側面も持つ。
なお、①は通信においてバッファリング自体をも含む遅延を許容する限りは現状のTCP/IPプロトコルと共存はできそう(IPv4でしかサービス提供してないサービスは直ぐ会社を畳むか、速やかにIPv6化して欲しい)だが、②、お前は既に無条件にダメだ。プロトコルを守っていないのでホントに邪魔なのである、俺の使っている回線から出ていけとしか言いようが無い。常時接続型のリアルタイムゲームをやりたいやつは通信会社と専用回線を契約しろ、今すぐしろ。ただし、このアパートは某社も某社も某社もそんなサービスの対象外だけどね。
で、話は冒頭に戻る。10月下旬、日本国内のCOVID-19患者(厳密にはPCR検査陽性者)の急増傾向を受け、事前に決定済のシナリオに従って躊躇無くリモートワーク対象者の枠拡大に動いた会社が有ったとか無かったとか。かくして、フレッツ光マンションタイプなどと言う「安かろう悪くなかろう」なサービスを利用する某地方都市の居住者の多くが、②の常時接続型のリアルタイム対戦ゲームがやりにくい環境に置かれることになったのではないかと思う。そして、これが「急に大声を挙げる住人」が現れた原因の一つと見ている。
また、同時期から大手動画配信サービスを利用し始めたアパート住人が居る様子も伺え、これが状況の悪化に拍車をかけている可能性もある。リアルタイム対戦ゲームの実行に必要な通信帯域幅は大きくないが、通信の一時的途絶や遅延などの対する許容度が著しく低いのは言わずもがな。3秒程度の通信途絶はYoutube視聴では全く問題とならないが、リアルタイム対戦ゲームでは致命的である(遅延が3000ミリ秒では話にならない)。また通信遅延はチート行為の結果、またはチート行為の一部としても発生し得るので、チート検出の観点から通信遅延自体を気にしているゲーム運営もあると聞く。
実質的に通信プロトコルを違反しないと成立しないサービス(=常時接続型リアルタイムゲーム)を格安な通信回線で享受しようとしている以上、サービスに不満が出るような状況の発生はこのアパートでは必至と諦めてもらわなければならない。混雑時間帯の通信帯域の奪い合いは既に限界に近い。そして、深夜、早朝こそリモートワークでの時間待ちのイライラが少ないことは明らかなのでそのような時間帯が益々利用されるようになり、プレイ可能な時間帯は今後ますます狭まっていくだろう。元々海外との仕事が多い人間は、特に独り者は、リモートワークを機会に勤務時間を±4時間程度ずらすだろう(欧州は同日、米国は昨日の勤務時間帯を2時間程度ダブらせることができる)。つまり深夜のネットワーク通信量がほぼ確実に増えており、「深夜のネットは空いててゲーム三昧」とは以前よりは言いにくくなっている。少なくともウィークデーの深夜や早朝の通信量は、以前より増えているように見える。
リモートワークは地方の企業においても固定化が進む方向にある。だから、「急に大声を挙げる住人」である君、君は自分だけが使える光回線を契約できるマンションか一軒家に今すぐ引っ越すべきだ。このアパートが常時接続型のリアルタイムゲームが何時でもできる環境に戻る可能性はほぼ無い・・・と当事者の一人である私からも言っておこう。悲しいかな人口減少で、古くても良ければ空き物件には事欠かないんだ。