2019/12/07

EDIROLブランド製品とWindows10バージョン1803サポートの終了

 本ブログのキラーコンテンツ的エントリと言えば「Windows10でEDIROL PCR-M1が使えるようになったよ!」。2015年のエントリだが、未だに月当たり10回以上のアクセスがある。内容は、Windows10用ドライバがサポートされなかったEDIROLブランドMIDIコントローラを、Windows8用ドライバを使ってWindows10上で使えるようにする方法の説明だ。今では同じ内容をもっと丁寧に説明しているブログもあるので、なかなかにニーズがある情報のようだ。

 ただエントリで説明している方法は「マイクロソフト社的に推奨されないもの」なので、Windows10の大型アップデートを適用するとご破算、ドライバや設定は引き継がれない。そのため半年毎の大型アップデートの度に件のエントリ記載の手順を繰り返さなければならない。ちなみに私は、2017年夏のPCR-M1の故障を機にIK MULTIMEDIA iRig Key(Windows10のUSB接続MIDIキーボード標準ドライバが対応)を新たに導入した。このため、件のエントリで説明した方法が未だ有効なのかどうかは確認できなくなっている。

 で、この一カ月の件のエントリへのアクセス数が3倍以上に急増した。 一瞬「?」となったが、ちょっと思い当たる節もあったのでそれについて書いておこうと思う。

 Windows10のバージョン1803、つまり2018年3月バージョンのサポート期限が2019年11月いっぱいで切れた(筈)。このためだろう、バージョン1803を使用していたPCでは10月初旬ごろから盛んにバージョン1909(最新バージョン)へのアップデートを促すメッセージが表示されるようになった。と言うのも、親が使っている実家のPCがそういう状態になっていたのだ。色々な手を尽くしたものの実家のPCのアップデートは失敗し続けたため(結局、「コンピュータに加えた変更を元に戻しています」となる)、バージョン1909のクリーンインストールを余儀なくされた。

 ちなみにアップデートログによれば、アップデート失敗の原因は古いバージョンのWindowsフォルダのバックアップコピーの失敗だった。少し具体的に書くと、「古いバージョンのWindowsフォルダ」を含むドライブの指定が、本来あるべき「C:」ではなく「D:」となっていたのである。無いフォルダをコピーしようとするからエラーになる。ググってみると分かるのだが、同じ原因での失敗はバージョン8.1以前のWindowsからWindows10へのアップデート時に既に発生が報告されている。由緒あると言うか、これ、マイクロソフトに原因があるでしょ?

 さて、そのような経験を踏まえると、この一カ月ほどの間に(失敗はしなかったにしても)Windows10の予定外の大型アップデートを強いられた人は少なくないと思える。そしてこの予定外の大型アップデート適用が、上述した件のエントリへのアクセス数の急増の原因ではないかと推測している。実際のところはどうなのだろう?

 アクセスがあること自体、またエントリの内容が役に立ったということがあれば単純に嬉しい。と同時に、「ブランド消滅からほぼ10年、未だ愛されてるEDIROL製品があるんだなぁ」とちょっとほっこりした気分にもなりますね。

2019/12/03

「読解力」は「解釈力」ではない

 「解釈力」なんて日本語は無いとは思うけど、まぁ、そこは流して。

 NHKのニュースで、経済協力開発機構(OECD)が2018年に行った学習到達度調査(PISA)の結果、日本は「読解力」が15位と前回8位から順位が下がったとの報道を観た。番組中、とある小学校での「読解力」を高めるための取り組みの様子、とやらも紹介された。そこには、児童文学作品「ごんぎつね」を題材に自身の「解釈」や「感想」を交換し合う子供たちの姿があった。

 これはダメだ、と思った。

 「読解力」とは、文章として書かれている内容そのもの、或いは論理を理解することである。正しく読解された論理は読解した主体に依存することなく、(使用された単語の曖昧さの範囲内で)一致しなければならない。対して「解釈」は、正しく読解されたとしても解釈した主体によって違い得る。従って「解釈」の訓練(或いは「解釈」が評価対象となるようなカリキュラム)などいくらやっても「読解力」の向上には繋がらない。

 ニュースでは「英語などもやらないといけなくなった現在、『読解力』向上のための手を打つ時間をひねり出すことが難しい」旨の言及があった。ならば、英語をきっちりやれば良い。曖昧さをより排して論理が明確な文章を書くには、総じて日本語より英語の方が向いている。逆もまた然りなので、英文を英語のまま読む(日本語に翻訳せずに)、英文で書かれている論理を理解する、すなわち日本文よりも論理がより露わであることが多い英文の「読解力」を訓練すればよい。

 どうせ英語教育カリキュラムの要求は「読解」までで、読解したものを「解釈」することは求めない。テストの回答に「解釈」を記述しても点は貰えない。ちょっと勘の良い子供なら、国語、英語の授業を通じて、「読解」と「解釈」が別物であることはすぐに理解できる(この理解の有無がテストで得られる点数に確実に影響するからだ)。問題は、教師の多くがそれを理解していない可能性が高そうなこと、加えて意図的に生徒にそれを教えていない場合(「読解力」の無い大人の生産を意図?私が共産主義革命を夢見る教師ならばやるかもしれない)もあり得ることだ。

 昔、日本国憲法を「ある人達が自分達の言葉で書き換えたもの」が出版されたことがあった。出張帰りにJR上野駅内の本屋で立ち読みし、すぐにこれはダメだ、と思った。行間に見え隠れする特定の方向の政治的思想は措いておこう、それらは私の「解釈」に過ぎないかもしれないからだ。だが、それら「書き換えたもの」の示す論理、すなわち「読解」した結果が、「オリジナルの文章」(原文)の示す論理と大幅に違ったのは大問題だ。換言すると、「書き換えたもの」の示す論理が、「原文に対する書き換えた主体の『勝手な解釈に過ぎない』」としか判断できず、なんらの価値も見いだせなかったからだ。「自分達の言葉で書き換える」ことは構わないが、書かれている論理が変わってしまっては日本国憲法とは全くの別物である。

 「『正しい』解釈があり、(読解の結果はすっ飛ばして)それにしか点は与えない」と言う小中学校教育の一犠牲者である私や近い世代の知り合いの多くは、「二度と騙されないぞ」との思いなどもあり、「読解」と「解釈」の区別に敏感である。小説家・野坂昭如氏は自著の文章がとある試験に使われた際、試験問題の正解、すなわち問題作成者の「解釈」、に異を唱えたことがある。この件をニュース報道で知った瞬間こそ、私が「教えられた『正しい』解釈」なんて当てにならないことを理解した瞬間だった。

 片や体感として、職場でも「それはあなたの解釈でしょ?(本当はそうじゃない)」と口にせざるを得ない機会がこの10年ほどで明らかに急増した。やはり「読解力」の低下は起きているのだろうか?

 今日の教育は、「読解」と「解釈」が別物であることをきっちり教えているのだろうか?「読解力は読解力」として、「解釈力は解釈力」としてそれぞれ評価しているのだろうか?上述のNHKのニュースの映像からは全然期待できない気がする。

2019/11/26

SONY WH-1000XM3、結構ウマくない

2019/12/21:デスクトップPCとの接続状況の確認結果を追記しました。また最終的な使用感には影響しませんでしたが、iPod touchもペアリング相手として使ってみた旨も追記しました。

2020/1/8 : 関連エントリ「続・SONY WH-1000XM3、結構ウマくない - Sonarworks Reference 4を使ってみる」


 SONY WH-1000XM3はBluetooth接続のワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン/ヘッドセット、結構いい値段する。色々めぐり合わせがあって購入し、1ヵ月程使っている。連続使用可能時間やノイズキャンセリング機能には全く不満はない。

 主なペアリング相手はデスクトップPC(Windows10)で、Bluetooth通信チップやドライバ用ライブラリはQualcomm社製、通信コーデックはaptXだ。体感の遅延は50~75msとBluetoothとしては悪くないが、リアルタイム性が要求されるゲームや大部分のDAW作業には辛い。

 ただDAW作業であっても、「イコライザーやフェーダーを操作しては聴く」を繰り返すような最終マスタリング作業を「時折部屋中を踊りながら」行うには問題ない、と言うか、購入時の主な使用目的こそそれだった。が、音質と言うか音の味付けと言うか、音そのものがマスタリング作業向けとは言えなかった・・・と言うのが本エントリで書きたいことの一つだ。

 あとApple iPod touch(第6世代)もペアリング相手として使ってみた。なおSONYの専用アプリは使用しなかったほか、iPod touchがデフォルトで持つ音質を変え得る機能も一切使用しなかった。

 ちなみに普段使いのヘッドホンはPanasonic PR-HD5(密閉型)とSENNHEISER HD599(開放型)及びPioneer SE-CH9T(インナーイヤー型)、スピーカーはBauXar Marty 101(タイムドメインスピーカー)だ。当然これらのヘッドホン、スピーカー間でも音質に違いはあるが、結論に先立って書いてしまうと、WH-1000XM3はとびぬけて音質が違う。

 なおタイムドメインスピーカーにはネガティブな人も多いようだが、個人的に本品はスピーカーとして良くできていると思う。楽曲のジャンルも選ばず、音楽以外にも十分対応し、良く音が通るため低音量で使える。高さ30cm程度と大きくはなく、配置もルーズで良いので置き場所には困らない。なお「タイムドメイン万歳!」などとは微塵も考えていない事は断っておく。昔々Maxellが出していたタイムドメインスピーカーの音は本体を叩き壊したくなるほど酷いものだったし、「タイムドメイン」は理論(セオリー)ではなく手法(メソッドまたはテクニック)というのが数式も追っかけた上での私の結論である。蛇足ながら一実験屋、計測屋としての立場から言わせてもらうと、ゼロ信号をきっちり出せるハードウェアの設計という視点からはタイムドメインの考え方は面白く、テクニックとして一つの解答になっていると思う。

 閑話休題。

 まずはデスクトップPCとの接続状態のチェックである。WH-1000XM3のWindows10での接続形態はヘッドセットとヘッドホンがある。Windows10の仕様なのかWH-1000XM3の仕様なのかは知らないが、ペアリング直後はヘッドセットとして接続される(下図の下から2番目)。この状態での音質はノイズ交じりで低域も出ておらず、音楽視聴にはとても耐えられない。が、その後10秒も経つとヘッドホンに自動的に切り替わり(下図の一番下)、音質は向上する。ヘッドホンとして接続されているかどうかは、下図に示すようにサウンドのプロパティから確認できる。
 次いで 、後で触れるDAW(ざっくり言えば音楽制作アプリのこと、ここでは具体的にSteinberg CubasePro10)とWH-1000XM3との接続を確認する。大抵のDAWは、ヘッドホンなどの入出力デバイスとの入出力信号(音声信号)のやり取りをASIOと呼ばれる規格に基づき行う。ASIOはWindows10などのOSの音声処理機能をバイパスするので、DAW上でWH-1000XM3を出力先(アウト)先と明示的に指定する必要がある。下図はWH-1000XM3チェック時のASIOの接続状態で、「ヘッドホン(WH-1000XM3)」の状況がアクティブ(=接続中)となっており、ちゃんと出力先として指定されていていることが分かる。
と言う訳で、デスクトップPCとの接続は問題なさそうだ。

 音楽などの再生アプリ、環境は以下の通りだ。

  • Apple iTunes 12.10.3.1 (AAC、AIFF、MP3形式ほか)
  • SoundEngine Free  5.21 (Wave形式)
  • Steinberg CubasePro10.0.30
  • SoundCloud/Firefox 71.0
  • YouTube/Firefox 71.0
 既存の楽曲に加え、本件用のリファレンス音源を1曲用意した。リファレンス音源はDAW上でマスタリング段階にあるボーカル無しカバー曲で、iZotope社のTonal Balance Controlというツールで「周波数分布(バランス)が楽曲としてかなり良好」と確認できたものだ(下図参照、詳細は省きます・・・)。
 リファレンス音源はWave形式でDAWから書き出した後、AAC、AIFF、mp3などの形式に変換して再生アプリ、環境毎に適するものを用いた。

 古くは「ドンシャリ」に代表されるように、本格的な業務用であってもヘッドホンの音質には大なり小なり意図的な調整がされていることが多い。まぁ、そのため本当かどうか分かったもんじゃない「原音忠実」の代わりにリファレンス(参照)やスタンダート(標準)とされる製品があるんだろうし、逆に低音を盛ったような特定の音の味付けを売りとする製品も実現できる訳だ。当然、WH-1000XM3も音質に意図的な調整がされている筈だ。何しろ密閉型ヘッドホンとしては特段重くもなく、大きくもない。「原音忠実」を目指そうにも重量、形状や寸法に余裕がないし、そもそもそれがユーザニーズに合致しているかも分からない。

 WH-1000XM3は「高音質」を謳うが、あらためて考えてみると「いやそれ実際具体的にはどういう事だ」となる。少なくとも「原音忠実」ではないし、そうも言っていない。高サンプリングレート、高ビットレートなら高音質だということにはならない。が、値段もそこそこ、最適化機能付きノイズキャンセリングということで、多少なりとも「原音忠実」寄りの調整を期待してしまったのがそもそもの問題、間違いだったのである。実のところ、音質に関しては「専用アプリやOSの機能で調整してね」とばかりにユーザに丸投げしているだけだった・・・ように見える。もしそうなら「音楽を聴くための機器」としての性能は担保されていないように思える。技術的には素晴らしいハード、でしかない誰得製品と言うことである。

 「これは音質にかなり癖がある」ということには使い始めて直ぐに気が付いた。この辺はDAWをいじってきた経験やそもそも周波数分布や音の定位(左右の位置)などに癖のある楽曲を聴くことが多い事も影響しているのだろう。サイン波だけで作った現代音楽作品(例えばRichard MaxfieldのSine Music [A Swarm of Butterfiles Encountered Over the Ocean])の聴こえ方は周波数特性をダイレクトに反映してしまう。Satoru Wonoのアルバム「Sonata for Sine Wave and White Noise」なんかもそう。また自分でマスタリングした楽曲となれば、聴こえ方の変化には敏感とならざるを得ない。と言うか、「誰だこれマスタリングしたのは!」級に(部分的に)聴こえ方が別物になった楽曲もあった。

 そこで購入前には検索すらしなかったネット上のWH-1000XM3の製品レビューをチェックした。音質に関する指摘に限定すれば、「低域盛り過ぎ」とのレビューが多い。が、私の結論は似て非なるもの、「高域が痩せている」だ。これはデスクトップPC、iPod touchともに共通だ。そしてこの特性が、「低域をやや盛っていることが多い」他のヘッドホンやスピーカーと「明らかに違うと感じる」一つの原因となっていると考える。

 バスドラムやベースといった低域の音(例えば1kHz未満)はちゃんと出ていて、それらの残響音(エフェクトで言えばリバーブ)の広がり具合も良く分かる。一方、高域(例えば4~6kHz以上)は残響音の有無すら良く分からなくなり、原音自体も低域に埋もれて普段使いのヘッドホンやPC接続のスピーカーより聴こえにくい。低域はいい具合にウェット(残響がある)だが高域ではデッド(残響がない)な変なスタジオに入ったような気分だ。この聴こえ方は、「低域を盛った」製品での聴こえ方とも明らかに違う。高域のキレが悪い癖に低域の残響はちゃんと出るので、全体としてモコモコした音質になり易い。救いかつ問題なのは定位(音の左右位置)の左右の分離が良いので、低域の音が配置され易い中央付近以外の高域の音はそこそこ聴こえる。

 あくまでイメージだけど、グラフィックイコライザーで言えばこんな感じ。まず「低域が盛られている」
次いで「高域が痩せている」
まぁ実際のところは
ではないかと疑っている。最後の場合だと一応「低域を盛っている」ことにもなる。繰り返すけど、あくまでイメージね。

 結果としてどのようなことが起こっちゃたのか、或いはどうして「高域が痩せている」という結論に至ったかについて触れていこう。

・DAW上でドラムの音が決められない

 さてベースやドラムといった所謂リズム隊は曲の骨組みであり、DAWを用いた楽曲制作では初期でいったん詰めることが多い。この際、時折スピーカーや他のヘッドホンでも聴くことを繰り返す。このルーチンにWH-1000XM3を組み込んだとたん、スネアドラムの音が決められなくなった。言うまでもなくスネアドラムの音は高域の音を含み、自分の持つイメージの実現には音の選択のみならず、イコライジングやコンプレッサ、リバーブなどのエフェクト、定位までもいじる必要がある。簡単に言ってしまえば、WH-1000XM3だけスネアドラムの聴こえ方が極端に違うことが決められない原因だ。WH-1000XM3で良い感じにスネアドラムの音を調整すると、他のヘッドホンではやたらとシャリシャリした音になり、残響も強過ぎる。

・かつて自分でマスタリングした楽曲の聴こえ方が変わる

 YouTubeにMegpoidなどのVocaloidを使った楽曲をアップロードしているが、根が捻くれている所為なのか、意図的に聴きにくく(流し聴きにくく)している楽曲もある。ある楽曲では、フレーズの高音部でのみぶーんといった耳障りな自励振動音が乗るようなシンセサイザー音をわざわざ作って使ってたりしている。年寄りの自分が聴いても未だに「ひいいいいっ」となってしまうレベルだから、若い人の良い耳には数秒とは言えキツイのではないかと思う。ところがWH-1000XM3ではその耳障りな音が全く聴こえない、本当に全くだ。わざわざ入れたフック(引っかかり)が消えてしまうとなると、曲として別物と言える。

・ ピアノ、ストリングスがおいしくない

 ピアノ、ストリングスの音は高周波成分を多く含む。高周波成分が多いのは所謂アタック時、音の鳴り始めだが、残響音や共振音を介してアタック時以降の音の響きを複雑なものとしてくれる。音がリッチで「おいしい」状態だ。が、WH-1000XM3ではピアノ、ストリングスが多々おいしくなくなる。ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲作品43~第18変奏」なんて酷い有様となる。有名な曲なので、タイトルは知らなくても聴いたことはある人は多い筈。ちなみに下に引用した動画は著作権的に無難そうだっただけで、好きだとか良いとか思うバージョンではありませんので念の為。あと、Megpoidのおいしい周波数域はピアノのそれに結構近いんですよ、つまり・・・(嘆息)


・もともと極端な周波数分布の楽曲はその味が失われる

 特にゲンナリさせられることになった例がXeno & OaklanderのBlueという楽曲。この曲、結構モコモコした状態で始まり、次いで輪郭のはっきりしたチキチキした音が加わる。ざっくり言えば、冒頭は低域音だけ、次いで高域音が追加で、ボーカル登場直前までは中域音抜きという形。WH-1000XM3では終始モコモコ、チキチキした音の持つ低域音との強いコントラスト(音量が大きいと耳が痛く感じるくらい、ただ下の動画ではレコードプレーヤーの針が痛んでいるのか高域はあまり強く出ていない)が完全に潰れてしまう。台無しですね。

・実は音の定位(左右の位置)がおかしい

  TPS(三人称視点シューティング)やFPS(一人称視点シューティング)といったゲームでは音も重要だ。特に足音などが聴こえてくる向き、の重要性は馬鹿にならない。「Tom Clancy's The Division」というTPSの場合、WH-1000XM3では足音などが聴こえてくる向きと足音の主の画面上での位置とのずれが他のヘッドホンより目立って大きい。また足音の主の移動による聴こえてくる足音の向きの変化がスムースではない。イメージとしてはWH-1000XM3は足音を真横に置きたがっている感じ。音の左右分離が良く聴こえるように音場を制御した結果、音場自体を破壊しているのではと疑ってしまう。

 Edgard Varèseの「Poem Electronique」も、あらためて聴くとWH-1000XM3だけ時折音の定位が他のヘッドホンやスピーカーと違うことが確認できている。足音の話と同じく、音が右からだけまたは左からだけとか極端に振れる。ピーガリガリバキューン系の楽曲(作品)なので再生する場合は音量注意。
 という感じで、SONY WH-1000XM3は使い方を選ぶなぁという残念な結論。安かったとしても音楽好きには勧められないなぁとすら思う。オーケストラ曲、弦楽曲、ピアノ曲、女性ボーカル曲は確実に殺される。金属弦を使ったカンテレの音はスッカスカでモニョモニョした何か別の音に変えられる。

 ノイズキャンセリング機能など含めワイヤレスヘッドセットとしては結構出来は良いと思うんですがねぇ。

2019/11/25

Cubase 10.5、変

 Cubaseユーザの年末と言えばアップグレード、もちろん有料。「年貢」なんて言い方もされるDAW界の風物詩です。今年はバージョン10から10.5へのマイナーバージョンアップでした。

 さて、本日Cubase10.5(Win)を触ってみたのですが、挙動が色々と変。 ASIO設定周りのウィンドウの変な挙動(操作しなければならない新たに開いたウインドウが既に開いていたウインドウの下に表示され、実質的に操作不可になるなど)は明らかにバグでしょう。

 やっかいなのは、Cubase10で作成した同じプロジェクトファイルを読み込んだ時に、Cubase10とCubase10.5で「Outputでのトラックの音量バランスが別物レベルで違うことがある」こと。起きるプロジェクトファイルと起きないプロジェクトファイルがある訳です。ちなみに全トラックのオーディオインサートを無効にしても音量バランスは違うままなので、特定のvstエフェクトが無効化されたりクラッシュしたりが原因の可能性は極めて低く、まさに音量、フェーダーに関わる不具合のように見えますね。

 あと再現性が無いんだけど、プロジェクトファイル読み込み中にいつの間にか落ちていることが多々ある。有効にできないオーディオインサートFXがある。

 アップデートを重ねたCubase10も悩まされるレベルの細かな不具合がまだまだ残っていましたが、確認した範囲でそれらもきっちり10.5に引き継がれていましたね・・・

補足(2019/11/25):
 色々とアカンですね、不審な挙動が多すぎますよ10.5。暫くは10で行きます。

2019/11/16

YouTubeのCOPPA対策強化で何か起きる?

 今回もYouTubeの話。仕様や規約の変更の具体的内容も色々議論に事欠かないところにきて、とにかくYouTubeから出てくる文書の文章、表現が曖昧過ぎるのである。

 米国のCOPPA規制がYoutubeクリエータに与える影響が大きいのではないか、という議論が件のYouTube上も含めて為されている。COPPA(読みはコオゥパ、カゥパ、カーパなど)は"Children's Online Privacy Protection Act"の略で、1998年からあるざっくり「子供に不適とされるオンラインコンテンツから子供を隔離する義務を定めた法律」である。ポイントの一つはコンテンツそのものだけでなく、コンテンツに付随する広告も対象となることだ。

 (良く知らないのだが)YouTubeには"YouTube for Kids"という機能と言うか仕組みと言うかがあるそうで、親などが子供に観せるYouTubeコンテンツをある程度制御できるのだそうだ。ただCOPPA対策としては不十分だったようで、多数の違反を指摘されしまった。違反の多くは「子供向けではない広告の表示」「広告のカスタマイズのためのクッキーによる情報収集」とされる。

 えーと、ここでの「子供向け広告」とは「何らかの価値基準に基づいて、子供に観せても内容に問題が無い広告」と読み替えて頂きたい。そもそも購買力の無い存在に対する「直接的な広告」は実効的には存在し得ないですからね。

 さて、

 このような事態を受け、YouTubeはCOPPA対策の強化を準備、具体的な対策内容の予告とチャンネル所有者への対応要求を始めている。チャンネル所有者なら、チャンネルを「子供向けとするかどうかを設定するように」との通知を最近受けた筈だ。そして近々、アップロードする動画毎に子供向けかどうかの設定も必須としていくとのことらしい。まぁ、COPPAの理念や目的は理解できる。子供向け動画に「子供向けではない広告が表示されない」ことが実現できればそれはそれで素晴らしい。

 では、Youtubeの新しいCOPPA対策に危惧を持つ人々の主張はどのようなものか。実のところ細かい話も一杯あるのだが、ここではとあるお金のからむ話に限定しよう。更にYouTube側の機械学習機能などの間抜けな挙動、もとい影響は考えないことにしよう。

 既に収益化できたチャンネルを持つNintendoゲーム実況者を考える。実況中にうかつな動画や静止画を挟んだり汚い言葉を使ったりしなければ、文句無しの子供向け動画を作れるだろう。さて動画をアップロードするのだが、ここで動画を子供向けと指定すべきだろうか。

 子供向けと指定した場合はYouTube Kidsの対象となり、多くの子供に視聴してもらえる機会は高まる。が、広告は「子供向けとされたものに限定される」こととなり、広告収入は従来よりも下がる可能性がある。YouTubeによれば、「子供向けとされたものに限定される」と付き得る広告の数が60%~90%に減少するとされる。対して子供向けと指定しなかった場合はYouTube Kidsの対象外となり、本来のターゲット視聴者である子供へのリーチ機会は確実に減る。が、付き得る広告の数は減少しない。ケースバイケースも良いところだが、より収益を得るにはどちらが良いかは悩みどころだ。

 ゲーム会社の公式チャンネルへの影響に関する幾つかの議論も面白かった。私なりにそれら議論を咀嚼した結果を基に、子供向け・ファミリー向け志向が強い「Nintendoみたいな会社」を想定して思考実験してみよう。

 「Nintendoみたいな会社」の公式チャンネルの視聴者の年齢層は広いと思われるが、「Nintendoみたいな会社」としてはチャンネル、動画ともに子供向けとせざるを得ないだろう。子供が視聴する限りはほぼ問題は無い。COPPA対策は十分できているし、広告のリンクを辿る視聴者はそもそも多くない。ではゲームを含め娯楽や趣味に使うお金がある子供ではない視聴者の場合はどうか。

 YouTubeにアカウントを持つ視聴者ならば広告はそれぞれの視聴者にカスタマイズされたものとなるが、この場合に表示される広告はさらに「子供向けに限定されたもの」となる。果たしてどのくらいの視聴者が広告に反応してくれるだろうか。加えれば、カスタマイズされた広告群にそもそも「子供向け広告」が含まれていなかった場合はどうなるのだろう。用意される子供用の広告は「カスタマイズされたもの」とは独立である可能性もYouTubeの文書は示唆している(「カスタマイズされたもの」そのものは使わない、との旨が簡潔だが曖昧な表現で書いてある)。まぁ、「Nintendoみたいな会社」の公式チャンネルに来る視聴者なら、「Nintendoみたいな会社」の製品の広告ぐらいはクリックしてくれるだろう。

 で、極端な一シナリオは「『Nintendoみたいな会社』の公式チャンネルの視聴者は、自社以外の広告にほとんど反応してくれない。そのうちに自社以外の広告も表示されなくなっていく」というものである。この場合そのチャンネルのYouTubeからの収益は激減するだろう。このシナリオは、上述のゲーム実況者のチャンネルにも当てはまり得る。

 当然、新しいCOPPA対策の影響は、日本を含む全世界のYouTuber、視聴者が受けることは言わずもがな。

 最後に"New YouTube Policy Could Destroy Nintendo Channels"というタイトルのYouTube動画に対するコメントで思わず笑ってしまったものをご紹介。動画本編の内容は笑えないけどね。

2016: “Your videos aren’t kid friendly enough, no ads”
2019: “Your videos are too kid friendly, no ads”

2016年:「あなたの動画は十分に子供向きとは言えません、広告無しと言うことで」
2019年:「あなたの動画は余りに子供向き過ぎます、広告無しと言うことで」

いやまさにそんな感じになるかもなんだよなぁ・・・

追記(2019/11/19):
 動画に対するコメントなどもYouTubeではCOPPAの対象となり得るとの指摘もあった。YouTube動画"Will COPPA affect scale model builders?"では、予測ではなく当然の帰結として
・子供向けに指定したチャンネルのコメント機能は無効化される
・子供向けに指定したチャンネルのアクセス統計情報は無効化(または非公開化)される
となるのではないかと述べている。それぞれ、汚い言語的表現などから子供たちを守るため(と言うか、YouTubeとしてそのような事態が起こるリスクを無くすため)、主要な閲覧者たる子供たちのプライバシーに繋がる情報を保護するため、と言う理由からとのことである。なるほど。

2019/11/14

YouTubeのRecommendedの耐えられない軽さ、など補足

 思わず動画に投げそうになったコメント:
「やぁ。きみたちはYouTubeを使ったことが無いからわからないと思うんだけど、今回はサムネイルが大きすぎるよ!60%ぐらいまで縮小してくれたら嬉しいな。宜しく。」
とか
「以前のUIに戻すオプション設定が見つからないの。どこにあるのか教えて!」
とか。
"I'd appreciate it if you can..."とか使いつつ米語ではなく英語っぽく、目指すは英国人に負けない意地の悪さ。

 さて、 

 YouTubeのPC用の新しいHome画面についての紹介ビデオが、実は一週間ほど前に公開されていた。つまり今後はこの退化著しいHome画面と付き合わなければならないということのようである<Sigh。

 動画へのコメントを読むとネガティブな反応が少なくなく、具体的な不満点は私のそれらと大部分一致している。幾つかのコメントの厳選された言葉、表現が醸し出す「オマエラバッカジャネーノ」感は結構半端ない。理由はあれこれあれど、動画内で一番最初に紹介されているサムネイルの大型化は目立って評判が悪い。再生キュー機能を歓迎する人もいるが、それはRecommendedがちゃんと機能していないと余りに意味が無いように思う。また画面右下にウィンドウを開いての動画表示も、ウィンドウが表示されずに音だけが流れ、同時に左側ツールバーが非表示となるといったバグっぽい挙動をしょっちゅう起こす。これはFirefox、Chromeを問わない。Chromeで起こすって、もはや最低限の品質管理もできていないってことでしょ。そもそも私には要らない機能なので、無効化するオプションが欲しい。

 経験的に、上記動画左側の女性が何らかの動画内で「ぅへっへっへぇっ」と品無く笑うとYouTube周りでその後悪いこと(≒頭悪そうなこと)が起きるのはもはやお約束。

 次いでYouTubeにチャンネルを持っている人ならご存じAnalytics機能だが、新しいAnalyticsからBetaの表示が消えた(厳密には上階層のCreator StudioからBeta表記が消えた)。つまり今後はこの退化著しいAnalyticsと付き合わなければならないということのようである<Sigh。

 退化とは単純、Home画面の退化と似たOverview画面内の情報量の大激減である。情報の減少は半分などという生易しいレベルではなく、個人的にはもはやOverviewと呼ぶのもはばかられる。表示して欲しいパラメータが8つ足りない、表示されているパラメータのうちの4つは要らない。理想的なOverview画面とは、確認したい全てのパラメータのトレンドなどが1画面内に収められているものである。日常的なチェックならばその1画面さえ見ればOK、ぐらいでなければOverviewとしての機能を果たしているとはいえない。

 画面は有限の面積しか持たないから、確認などが必要無い要素の削除は極めて高度な知的作業たりうる。新しいOverview画面は、第一階層たるOverview画面には不要な要素を表示することにした結果、確認したいパラメータの大部分が表示できなくなったという感じの代物となってしまった。知性の介在が感じられない代物と言って良い。

 これまでのOverview画面には多くパラメータが表示されるため、小さなグラフがたくさん並んでいる。これらグラフを読むものと捉えると、情報不足で得られるものが余りに少ないとか、単に見にくいだけのように感じるかもしれない。だがこれらグラフはそれぞれのパラメータの詳細情報表示画面のリンクも兼ねている。つまり特定のパラメータの詳細情報が知りたければ、そのパラメータのグラフをクリックすればよい。この段階でのグラフはトレンド表示レベルで十分、と言うか表示する情報を考えた上で絞り込んであるところがミソなのだ。UI構造・階層は実に分かりやすく直感的となり、ナビゲーションに迷うことはほぼ無い。

 対して新しいOverview画面は、表示されているパラメータ自体が少ない時点で詰む。Overview画面に表示されていない大部分のパラメータを調べるにどういう手順を踏まなければならないか、Overview画面からは全く分からないからだ。実際、踏むべき手順は多くて面倒くさい。例えば"Likes"取得状況は従来Overview画面のグラフを見れば概略は把握でき、そのグラフをクリックすれば"Likes"取得の詳細情報表示画面となる。1クリックでおしまいだ。新しいAnalyticsではOverview画面から"SEE MORE"をクリックして新しい画面を開き、新しい画面内のグラフや表に"Likes"の情報を追加するためにとあるアイコン(丸にプラス)をクリック、開いたメニューから2階層辿ってやっと"Likes"の詳細情報をグラフや表に追加表示できる。3クリック+メニュー2階層の移動(メニューは読まなければならない)して1クリック+メニューや画面の表示アニメーション待ち、といった手間と時間が最低限必要だ。冴えたやり方を好むハッカー気質は全く感じられなくなった。

 従来なら1画面を開くだけで把握できた情報を、これからは別画面を開いてから更に操作をしなければ得られない。カスタマイズ機能は実質的に無く、いったんやった操作の結果も保存できないので操作量低減に寄与する要素は無い。"Fast. Clear. Actionable."とは本当に笑わせる。ならば以前は"Faster. Clearer. More Actionable."な訳だからね。

2019/11/13

YouTubeのRecommendedの耐えられない軽さ

 YouTubeのHome画面の仕様変更(個人的には大改悪)に触れたエントリで、「Recommendedの教育内容がリセットされた」とうっかり書いてしまった。が、正確に書くならば「リセットされたとしか思えない結果しか返ってこなくなった」というところだろう。具体的に発生した状態は、「以前に『興味がない』と指定した動画またはチャンネルの動画がRecommendされたものの8割程度を常に占める」というものである。

 「興味がない」とした動画やチャンネルをいちいち覚えているほど記憶が良いなんて訳ではない。特定の動画またはチャンネルを「興味がない」と指定する際のルールがはっきりしているだけに過ぎない。

 例えば「(日本の)80年代シティポップ」なんてタイトル、内容の動画は例外無く「興味がない」と指定してきた。ところがタイトルがまんま「80年代シティポップ」だったり「80年代シティポップ」を含んでいたりする動画ばかりがいきなり20個以上Recommendされたのだ。このキーワードをタイトルに含む動画群がRecommendされ続けるに状態には一時期心底悩まされたため、この例に関してだけは「興味がない」と指定したことのある幾つかの動画タイトルやチャンネル名は(サムネイルの絵と併せて、文字列としてではなく絵や図形という形で)さすがに覚えていた。当然のように記憶にあるサムネイル、動画タイトル、チャンネル名がそこに並んでいたのである。そして類似の状態がHome画面をリロードする度に繰り替えされた。

 新しいHome画面では、Recommendされた個々の動画に対していきなり「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」という指定ができる。従来は「(この動画を含む)このチャンネルは好きではない」までしか指定できなかった。従って「チャンネルからは動画をRecommendしない」という指定相当の状態を実現するためには、次々とRecommendされる続ける特定のチャンネルに含まれる動画に対して、延々と「このチャンネルは好きではない」という指定をし続けるしかなかった。という訳で、Recommendedの教育内容がリセットされた(ように見える)状況にはうんざりしたものの、「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」という指定ができるようになったことでRecommendedの再教育が加速できるのではと同時に期待したのだった。だが、結果から言えばその期待は裏切られる。

 まず「指定する機能」の実装の問題がある。

 以前は「このチャンネルは好きではない」という指定はHome画面以外の画面からもできた。動画閲覧画面の右側にサムネイルが縦に並んで表示されている動画に対しても指定できたのである。が、現在は動画閲覧画面では「このチャンネルは好きではない」どころか「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」も指定できない、つまり「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」の指定は、Home画面で動画がRecommendされなければ指定できない。一方、「このチャンネルは好きではない」は画面を問わず一切使えなくなった。これではむしろ教育効率は下がってしまう(=教育に必要な時間が延びる、または教育する機会が与えられない)。

 次いで、「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」というのは劇薬の如く強力過ぎることである。

 Recommendedの教育方法はあらためて考えるに非常にダサく(=ハイテクとか冴えた考えとかと無縁にしか見えない)、例えるならば「『嫌い』は指定できるが、『好き』は指定できない」ものとなっている。つまり、「こういうのが好き!」「こんな感じのものをRecommendして!」といったポジティブな教育はおろか、「この状態を維持して!」といったニュートラルな教育すら不可能なのだ。言わばRecommendedの教育過程とは、

「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」・・・

というネガティブで非常に気持ち悪いものなのだ。もともと「嫌い」を中和するような指定が不可能とあっては「(この動画を含む)チャンネルからは動画を(今後)Recommendしない」は結果が非可逆的でるが故に過激すぎる。間違って「嫌い!」としてしまった場合、それを取り消す手段は用意されていない。

 結論から言うと、まじめに1時間程「嫌い!」「嫌い!」「嫌い!」・・・を、当然興味が無い動画のチャンネルのみに対して繰り返したところ、再生回数が1年で1~2桁の動画がぽつぽつという状態を経て見事に何にもRecommendされなくなった。指定することに意味があるのかと疑問すら持つことがあった従来の「このチャンネルは好きではない」の緩さでなんとか保たれていたバランスは見事に崩壊、私に対してのRecommendedは1日とかからずに破綻したようである。「嫌い!」とはしなかった動画やチャンネルの情報は使われないのか、どこへ行ったのか・・・ユーザ個人に対しては捨てているも同然の取り扱いなんだろうね。

 ちなみに新しいHome画面では、Recommendした動画が無い場合も「空のRecommended欄」が表示される。「ちゃんと考えてつくられたもの、気を配ってつくられたもの」なら、このような場合は「Recommended欄」自体を表示しないんじゃないですかね。
じゃあ「好き」はどこにあるのか。敢えて挙げるならばSubscribed(登録済み)なのだろう。観たからといってその動画やチャンネルが「好き」とは限らない、むしろ観た結果嫌いになっている可能性すらある。しかし、SubscribedとRecommendedのそれぞれの内容が相互作用していると感じたことは一切無い。Subscribeしたチャンネルの動画がRecommendされることはあるが、そんなことされても意味は無い(=知ってた、でしかない)、相応の計算機リソースを消費しながらRecommendはユーザにとって意味あることを一切しておらず何の価値も生み出していない。

 YouTubeのRecommendedには動作だけではなく在り方自体に何か釈然としないものを感じていたのだが、このたった2日間でその理由が分かった気になってしまった。Recommendedがやっていることは、90年代の大々容量データに対応したデータベースソフトができたこと未満の低レベルなものなのである、少なくともこの2日間で起きたことを見る限りは。

2019/11/12

YouTubeの利用規約変更について、現時点での雑感

 YouTubeの(12月からだったかな)利用規約変更が話題、議論となっているようだ。「採算の合わないチャンネルを勝手に削除可能とする項目」の追加が焦点だ。

 「採算の合わない」という表現はかなり政治的であいまいで、ポリコレ対策の一面も持つように思う。加えて「採算の合わないかどうか」は「YouTubeの独自の裁量」によるのだそうだ。つまりYouTube側は「採算の合わない」と判断したとしても、当事者に判断理由などを一切説明する気が無いということだろう。

 まぁYouTubeとて営利企業、儲からないことはやらないというのは至極当然ではある。とは言え、ほんの2年ほど前には登録者200人弱の私のチャンネルに対しても「あなたのチャンネルを収益化しませんか?」なんてYouTubeからのメールが何通もあり、「YouTube必死だな」などと思わされたのも事実。その後の収益化ハードルのインフレも含めてなんとも華麗な掌返し、と言うか、チャンネル収益化プログラムが一気にYouTubeを経済的に潤したということなのだろう。

 ただこの規約変更、Dailymotionなどヨーロッパの類似サービスの衰退原因(とYouTubeの独り勝ちの原因)を彷彿とさせるところもある。日本国内(Googleにとっては余りに小さい市場)の類似サービスへの影響もあるかもしれない。いよいよ本格的にビッグブラザー感や"Be Evil"感が出てきましたね、「採算の合わない」は魔法の言葉。

 「採算の合わない」とは具体的にどういう状態を指すかについてYouTube側からの公式情報はまだ無いらしく、現時点ではTwitterなどで色々な意見が飛び交っている段階のようだ。

 個人的には「広告は付かないが、再生数がやたら多い又は再生時間がやたら長い動画」はサーバー容量、負荷ともに大きいのに収益は全くもたらさないという点で「採算の合わない」と判断されるのではないかと思う。全く別の文脈で書いた以前のエントリで触れた「紳士向けMMD動画」の削除理由には十分だ。Sexual contentに広告が付く筈も無く、反面Sexual content故に再生数を稼ぎ易い。悪目立ちする訳だ。

 権利所有者以外にアップロードされた著作物(映画、TVプログラム、レコード、CDなど)を含む「チャンネルの削除」も容易となる、もはや権利所有者からの通報や削除要請を待つまでも無い。 広告は付かないし、下手をすればYouTube自体のビジネスとバッティングするからだ。では著作権が消失してパブリックドメイン化した著作物はどうか?広告が付けばOKとの理屈もありに思えるが、はたして広告主が現れるかどうか。

 広告は付かないがPatreonといったクリエータへの寄付・援助・応援サービスで一定の収益を得ているユーザをどう取り扱うのか。例えば銃砲店関係者や銃マニア(銃関係にはほぼ広告が付かなくなって久しい)、まだ知名度の無い各種アーティストはYouTubeをショーケース的に使いつつ、YouTube外からの収益を得ている場合が多々ある。このようなユーザをYouTubeは自社サービスにただ乗りしている(フリーライダー)と見做すことになるのだろうか。もうお気づきの方もおろう、チャンネルの有料提供には"少なくとも代替サービスが現れない限り"高いニーズがある。いやぁ、えげつないまでに金の匂いがしますなぁ・・・(逆に"YouTube for Creators with Patreon"プログラムとか格安のチャンネル有料提供でやったらまだ多少の救いはあるかな)。まぁ、日本でもMembership機能利用者がいよいよ本格的に増えることになるのかなぁ。

 おっと脱線。

 そして現在は「動画の削除」までしかYouTubeにはできないものの、新しい規約では「チャンネル削除のみならず、Googleアカウントに基づく全てのサービスから(元)チャンネル所有者をBanできる」ことになる。企業の持つGmailアカウントですら停止される可能性をYouTubeは示唆しているとされる。つまり、「紳士向けMMD動画」を1本アップロードしたがために、Google及び傘下企業の全サービスから締め出される可能性があるということだ。

 まぁ、再生数が少ないことが「採算の合わない」理由にされると私のチャンネルはもう駄目。

 YouTubeも成熟し、結果としてテール切りに手を染めることになるのか。とは言え自社独自コンテンツを持たない保守化したNetflixみたいになったらもうオワコンだ。極端な最期は「キッズ動画専用共有サービス」辺りだろう(最近、チャンネルの動画がすべてキッズ向きか、すべてキッズ向けではないか、両者混合かをチャンネル毎に設定することが要求されるようになった)。ユーザも次のサービスを探す段階に入ったのかもね。

Youtube Home画面の仕様変更?

 突然、PCでのYouTubeのHome画面の見かけが変わった。うっかり何かの設定変更でもしてしまったのかと思ったが、ググってみるとYouTube側の仕様変更の可能性が高いことが分かった。その場合には見かけ等の変更に関してユーザ側にはできることは無いと言う。ちなみにブラウザはFirefox 70.0.1だ。

 なおAdブロッカープラグインを組み込んでいるが、巡回する大部分のサイトに対しては無効としている。YouTubeの場合は「Home画面への初回アクセス時に生理的に苦手な広告が表示された場合」にその日一日中(実際には1~2時間)だけ有効とすることが癖となっている。文化的背景差などに起因して生理的に苦手な広告はさすがに許して欲しい。なおブラウザ画面のキャプチャー時にはAdブロッカーを有効としている。本エントリ中の画像キャプチャー時も同様だ。

 さて新しいHome画面だが・・・

 まずサムネイルが異様にデカいのがウザい。画面内の情報量(例えばサムネイル数)が従来の半分以下まで低下するため正直かなりイラつく。新しいAnalytics(Beta)も同様だが、「一目で分るようにできるだけ大量の情報をコンパクトにまとめる」、「目的達成のためのユーザ操作を最小限にする」といったこれまでの画面設計の方向性と(それなりの)進化は打ち捨てられるのだろうか。なお個人的にAnalytics(Beta)はクソだと思う。遅く、色々と曖昧で、構造が非論理的だ(Slow. Vague. Illogical)。
 ブラウザのウィンドウサイズを変えるとサムネイルサイズも若干変わるが、結局のところ画面内の情報量が増えることは無いので更にイラつくばかりだ。また、Recommendedの教育内容がリセットされているのも地味にイラつく。
 触って数分で分かった表示上の不具合(おそらくバグ)もある。まず、Not interestedを指定されていったん非表示となったサムネイルの幾つかが、ウィンドウサイズを変更すると再び表示されるようになる。これはこれでウザい。また、上の画像の下端中央付近には下向きの「<」みたいな印がある。これはYouTube Mixesの2行目以降を表示させるためのボタンだが、ボタンをクリックしていったん2行目以降を表示すると1行表示には戻せない。上向きの「<」といったそのような操作のためのボタンが無いからだ。仕様だと言うなら「かなり間抜けで気の利いていない仕様」だと断言しよう。センスが無さ過ぎる。ちなみに2行目には1アイテムしか無いので、従来のサムネイルサイズなら1行におさまるのだから尚更ツマらない。

 なお、画面表示以外にも細かな仕様変更が多数あるがここでは割愛する。と言うのも、操作に対してバグっぽい挙動や他画面での操作・機能の制限発生(Home画面の仕様変更が他画面の機能に多数の悪さをしている模様)がみられるほか、仕様が元に戻される可能性もあるらしいからだ。

 ググったところによると、YouTubeはこの種の仕様変更を特定のブラウザを使う特定のユーザに対して行うことがあり、かつ数日で以前の仕様に戻すこともまれではないらしい。ちなみに別のブラウザ(Edge)かつログインしない一般ユーザでは従来通りのHome画面表示だったし、Firefoxであっても(ほぼ放置状態である)別アカウントでYouTubeログインした場合も同様に従来通りのHome画面表示(下図)だった。
  ググった先のページには「慣れるしかない」との記述もあったが、画面当たりの情報量低下が酷すぎ、同じ量の情報を得るための操作が増えて不便極まりない。Recommendedが上手く機能していた時代のかってのHome画面では、サムネイル全数がぎりぎりフルスクリーン表示のウィンドウ1枚内におさまり、スクロールバーは表示されなかった。画面は無駄なく活用され、特段のキー、マウス操作も不要だったのである。同数のサムネイルのチェックにスクロールが必要となった言うことは、操作無しから見れば無限大倍の作業量増加である。

 上述したように、Home画面での仕様変更は他画面での機能の一部が使えなくなるなど悪影響を及ぼしている(操作や機能の一貫性が失われ、できないことなどが発生している)。Home画面でのYouTube Mixes再生周りや再生クエリー周りに明らかにバグがある。バグの実際の原因がFirefox側にあったとしても「意図的にFirefox使用時に適用している」以上はYouTube側の失態だ。まぁChromeも同じバグっぽい挙動をするのも確認済ですけどね。「Home画面以外にも影響する部分に手を入れるが、Home画面さえ意図通りに機能すればあとはどうでも良い」という開発側の低レベル過ぎる認識が透けて見え、極めて不快だ。

2019/08/31

London ElektricityとLogisticsの新譜が楽しみ

 それぞれのタイトルは"Building Better Worlds"(10/25リリース)と"Waveforms EP"(9/13リリース)。

 既に公開されている両者の楽曲を聴いての印象は、それぞれ「歌詞込みでLondon Elektricityの曲にしか聴こえない」「Logisticsの曲にしか聴こえない」というもの。新規性にはやや欠けるかも知れないけれども、「変わらないアーチスト色の強い楽曲」を好む身としては実に好印象。まだ公開されていない楽曲でその辺りを色々と裏切って(新境地を見せて)くれれば尚良し、ってところでしょうか。

 "Build A Better World"の撮影場所は札幌市内の「テイネオリンピア遊園地」みたいですね。