2020/01/08

続・SONY WH-1000XM3、結構ウマくない - Sonarworks Reference 4を使ってみる

 使ってみる、と言っても試用版。

 先行するエントリ「SONY WH-1000XM3、結構ウマくない」を書きながら、「こんな時のために何かソフトがあった筈・・・あった筈・・・」ともやもやしていたのだが、正月にそれを思い出した。

 Sonarworks社のReferenceシリーズだ。

 調べてみると現在はReference 4 Headphone Editionという製品があり、WH-1000MX3もサポートされていることが分かった。Reference 4 Headphone Editionは所謂キャリブレーション・ソフトウェアで、ヘッドホン毎の再生周波数特性を揃えることができる。つまり、マスタリングにおいてターゲットとされる環境での音を、リーズナブルな価格帯のヘッドホンでシミュレートしようというものだ。Windows10であればOSレベルでもキャリブレーションはサポートされ、当然ながらOSレベルのキャリブレーションと排他的に動作するDAW用プラグインも用意されている。

 なお、WH-1000MX3のキャリブレーションデータが用意されていたのは有線時のみだ。

 で、試用版を使ってみた結果なのだが、思わず笑ってしまうぐらい音は別物になった。失笑レベルではなく、思わずのけぞってしまい、椅子に座っていたらそのまま笑いながら後ろに倒れてしまいそうなぐらいの衝撃的な結果だった。ちゃぶ台PC設置環境で助かった。

 まずキャリブレーションしない場合、事前に測定済の再生周波数特性がソフトウェアのウインドウ上に表示されている。40~300Hz、5~15kHzが結構持ち上げられている一方、1~5kHz、15kHz以上が低い。先のエントリで触れた疑われる再生周波数特性は、当たらずとも遠からずと言ったところだろう。「低域盛り過ぎ」という他の方のレビューも基本的に正しい。が問題は、グラフ縦方向の分布幅が±6dbを越えるいう点にありそうだ。この分布幅は、そういう製品であるとの説明が無い以上、大きすぎると思う。±6dbと言うのは、それぞれ音量2倍、1/2倍に相当するのだ。このため、本来は同じ音量で再生されるべき音が、周波数が違うと4倍以上も音量に差が発生し得る。ちなみにSENNHEISER HD599の再生周波数特性は、形状こそ60Hz以上の範囲では似たり寄ったりだが、上下方向ともに6dbを超えてはいない。
  楽曲を再生しながらキャリブレーションをONにし、まずは再生周波数特性をフラットとする。ベース、バスドラ、スネア、ボーカルと全ての聴こえ方が変わる。全体に音の横、奥行き方向の分布の幅が小さくなるが、音の重なりが無くなり音毎の分離はむしろ良くなる。バスドラは奥に引っ込み、ベース音も奥に引っ込むと同時に音自体も変わることがあり、ボーカルは前に出てきてやや広がり、スネアの音は別物になる。1~5kHzの特性がボーカルやスネアに効いている感じだ。iTunesで購入した楽曲も自分のカバー曲も同じ印象で、ピアノ、ストリングス、女声スキャットなどは生まれ変わる。Stelvio CiprianiのMary's Theme(iTunesでも買えるよ!)なんて、ホント別物になる。宇宙戦艦ヤマトの楽曲群も蘇るね!ただし、ベース持ち上げ気味の味付けの音に慣れた耳のせいか、癖の無い分、音に若干味気無さも感じる。
  次いでPredefined Target CurvesをONにする。 ざっくり言ってマスタリング時に参照すべき特性の一つで、見ての通り再生周波数特性は全体としてやや右下がりだ。フラットな場合と比べて音の味気無さは弱まり、「ああ、コ↓レ↑コ↓レ↑」感が出てくる。「グラフィックイコライザーなどで好みの音に加工するのが当然」のリスナーやベースブースト系ヘッドホンのユーザーに聴かれても、この辺りの特性でマスタリングしておけば破綻はしなさそうに思える。

 と言う訳で、SONY WH-1000XM3、より客観的見地からも結構ウマくないと言うことになってしまった。ちなみにReference 4 Headphone Editionは€99、意地張って親戚にお年玉とか出しちゃった金の無い身にはすぐには手は出せないなぁ・・・。

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