つい最近、韓国の発電用原子炉である新古里3号で作業員3名の死亡事故が発生した。事故の経緯はまだはっきりしないところもあるのだが、酸欠が死因であるようだ。漏れてはいけない窒素ガスが大量に漏れたために低酸素雰囲気が形成され、たまたまそこに足を踏み入れた作業員が死亡したということらしい。
酸欠、と聞くと「息苦しいと感じる段階がある」と考えている人も少なくないと思うが、 本当の酸欠というのは当人がそれと気づくことなく一瞬で昏倒してしてしまうものらしい。人間の五感では酸欠を事前に察知できないから、「2次災害も含んでの3人」という可能性もある。目の前で人が倒れれば、思わず駆け寄ってしまうのが人情というものだ。
さて、事故を受けて新古里3号及び4号の運転開始に向けた作業は停止されている。亡くなられた3人の方々には申し訳ないのだが、本件は「韓国の抱える時限爆弾の一つ」の針を大きく進めた可能性がある。
新古里3号は韓国の最新型原子炉APR1400だ。この原子炉は韓国が受注、建設を進めているアラブ首長国連邦の原子炉と同形式である。問題はAPR1400に運転実績が無い事だ。新古里3号が初号機なのだが、当初予定の2013年中の運転開始ができないまま、未だ運転開始準備中なのである。
アラブ首長国連邦は運転実績の無い原子炉を建設することを選択した訳だが、当然ながら新型原子炉の世界初運転、うっかりすると実験、をする事なぞ望む筈もない。従って、受注した韓国企業及び韓国との契約にあたって至極真っ当な事項を含めた。ざっくりと書くと、アラブ首長国連邦のAPR1400の運転開始に先立って同形式の運転実績を作る事、それができない場合は実績ができるまで賠償金を払い続ける事、である。では何時までに新古里3号或いは他のAPR1400を運転開始まで持っていけば賠償金を払わずに済むかというと、なんと今年の秋らしい。裏取りはできていないのだが、賠償金は毎月建設費の1%との話も聞く。本当なら洒落にならない額だ。
原子力発電所建設のような大型プロジェクトでは経済的リスクをヘッジするために保険をかけるものである。が、当初プロジェクトに参加予定だった東芝が余りの安値受注に驚いて手を引いこともあり、ロイズが保険を引き受けなかったと聞く。そのため賠償金発生となれば韓国が引き受けなければならない。実績作りを意図したと思われる赤字必至の安値受注自体も裏目に出ているようだ。業界内でアラブ首長国連邦事案の受注額が既に知れわたっている(韓国の契約履行状況に不満を持ったアラブ首長国連邦が意図的にリークしたとされる)ため、もはやそれより高い価格では世界中で応札もさせてもらえない状態に韓国は追い込まれている。
先にも触れた通り、受注段階での新古里3号の運転開始は2013年だった。韓国は十分余裕があると思っていたに違いない。が、信号ケーブルや多くの部品の性能未達、検査成績書偽造などのため未だ運転開始に辿り着けていないというのが実態だ。これも裏取りできていないのだが、近隣住民の反対運動で送電用の鉄塔が未だ作られていないとの話も聞く。これが本当なら新古里3号自体が完成しても商用運転には入れない。すなわち運転実績は作れない。
さて、この爆弾は爆発しちゃうんだろうか?
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