ウクライナ動向の進展が余りに早く、なかなか追いきれない。ここまではロシアの手際の良さ、準備万端ぶりが際立っている。これがエントリタイトルの「ウクライナ」の部分だ。「ドイツのチャレンジ」とは「脱原発と再生可能エネルギーの積極導入」のことだ。主観だが、敢えて「チャレンジ」と呼ばせて頂きたい。
ウクライナに対するロシアの動きに対して、日本は相対的にソフトな対応をこれまで取ってきている。これは安倍内閣となってからロシアとの関係改善を積極的に進めてきた経緯を踏まえれば理解できる。だが、今回ばかりは日本よりもソフトな、と言うか非常に慎重な態度を取っている国がある。
ドイツだ。
今日はドイツに関して興味深い2つの報道があった。一つは上述の対ロシア姿勢についての記事、もう一つはドイツ国内企業の自家発電導入が急激に進んでいるという記事だ。企業が自家発電設備を持つ理由は、電気料金の大幅な値上がりにある。ドイツでは太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの発電分野への導入を進めているが、「再生可能エネルギーの採算性確保」のための国からの支出が電気料金に上乗せされている。ついに「自家発電の方が経済的」というレベルまでドイツ国内の電気料金が上昇してしまったということなのだろう。
で、これからは推定なのだが、企業が投資する自家発電設備の燃料は何だろうか?価格だけで判断すれば、「ロシアからパイプラインで供給されている天然ガス」以外は有り得ない。つまり、ドイツ国内企業の活動はどんどんロシア頼みになっていくということだ。ロシアは「パイプラインのバルブを閉める」だけでドイツに圧力がかけられるようになる、いや既になっていると言って良い。
ドイツの総発電量は国内需給を賄うに足るレベルにある。が、価格が折り合わなければ企業は使ってくれない。さらに高くなれば買い手が付かず輸出もできない。この種のアンバランスの発生は予測されていたことであり、それ故に「チャレンジ」なのである。
東欧諸国が原子力発電の導入を検討するのも、根底にはロシアへのエネルギー依存がある。ロシアの圧力にさらされ続けるのも、周辺国から高価格の電力を輸入するのも、エネルギーセキュリティや自国生産品の価格競争力確保の観点からは望ましくない。
韓国が電力会社を実質的な破綻状態に追い込んででも電力価格を低く抑え続けているのは、やはり自国製品の価格競争力を維持するためだ。だが、これは国と国内企業がチキンレースをしているようなもので、内需拡大が無いまま輸出依存度の高い経済状態が続けば破綻は避けられない。
ドイツは内需の維持、拡大のためにも企業の自家発電設備の導入が避けられない。高い電力料金に甘んじれば輸出競争力を失い、ひいては内需が縮小するからだ。故に、企業の自家発電設備の導入は基本的に正しい。が、企業が使わなくなることによる更なる電力価格の上昇があれば、それは一般家庭の家計を圧迫、内需を冷え込ませる要因ともなる。加えてロシアからの天然ガス依存度が上昇すれば、それだけ国としての主体性や経済政策の自由度が下がってしまう。
現在のウクライナ周辺状況は予断を許さないが、その距離故もあって日本に居ては危機感を感じることはないだろう。が、経済やエネルギーセキュリティの観点から見ると、色々な国の対応の中に様々なサインが見え隠れしている気がする。
では、戦争は起こり得るのか?
経済の観点からはノーだ。どの国にとっても割が合わない、少なくとも現時点では、だ。
ロシアの望まぬ形で誰かが天然ガスパイプラインに手を出したら?
そうなったときはどう状況が転がるか分からない。
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