"Native Instrument"(以下、NI)はドイツの会社で、モジュラー形式のソフトシンセ、ソフトサンプラー、エフェクターやDJソフトなどを開発、販売している。ここで言うモジュラー形式とは、まずプラットフォームと部品があって、ユーザーが部品の構成をプラットフォーム上で自由に編集できるというものだ。例えば"Reaktor"というプラットフォーム製品の場合、ユーザーは部品を組み合わせてソフトシンセを組み上げることができる。
NIの商売の巧みなところのひとつは、「部品構成は編集できないが再生だけはできる」ソフトを無料配布し、「編集済みの部品群データ(なんて呼べば良いの?)」を商品として販売していることだ。上述の"Reaktor"の場合、再生専用の"Reaktor Player"が無料配布されている。「編集済みの部品群データ」は良い意味で所詮プリセットデータでしかないから、価格はそこそこに抑えることができるのが強みだ。
私は"Razor"というソフトシンセ(のデータ)を"Reaktor Player"上で走らせて使っているが、重い(CPU負荷が高い)、不安定、という感は否めない。モジュラー形式というのは自由度の高さでは魅力的なコンセプトだが、リアルタイム性が要求される分野ではまだまだCPUパワーの向上が必要かと思う。JAVAアプリをイメージして欲しい。様々なハードウェア上で動作するものの、動作速度はネイティブコード(特定のハードウェア用の実行形式)には遥かに劣る。
さてここからが本題。
NIの製品で"Guitar Rig"というプラットフォーム製品がある。このプラットフォーム上の部品はギターアンプや各種エフェクターである。ユーザーは用意されているアンプ(実在するアンプの特性をシミュレートしたものもある)やエフェクターを好きなだけ組み合わせ、それぞれのパラメータを設定することで、望みの音作りにいそしめる、という趣向である。
私がこれまで使用していたバージョンは"Guitar Rig 4 LE"というものだったのだが、アップデートパッチを当てたところエラいことになった。これまで見たことの無いアンプやエフェクターが追加され、"Guitar Rig 5"なんてものもインストールされていたのだ。
「あぁ、アップデートで追加されたのね、有難いねぇ」などと思ったら大間違い。新しいアンプやエフェクターは上位バージョンの"Guitar Rig 5 Pro"で導入されたもので、インストールされた"Guitar Rig 5"の大部分のアンプやエフェクターは30分しか使えないデモ版なのだ。
困ったことに、追加されたアンプやエフェクターに限って結構良い感じに音をいじってくれる。更に困ったことに、デモ版のあるプリセットが、ここ2週間程試行錯誤を繰り返していた音作りを一気に解決してしまったのだ。お金で解決できる問題は(納得できる額であれば)お金で解決するのが大人の特権であり、悪い癖だ。結局"Guitar Rig 4 LE"を"Guitar Rig 5 Pro"へとアップグレードした。
偶然の巡り合わせがあったとは言え、アップデートパッチにかこつけてNIにしてやられたのは確かだろう。トロイの木馬も同然である。
最後に、"Guitar Rig 4 LE"や"Guitar Rig 4"ユーザーで、「ボーカル向けプリセット」を"Vocaloid Editor 3"上で使っている人は要注意。
"Guitar Rig 4 LE"は"Vocaloid Editor 3"上でも動作するし、実際重宝する。編集時の音が良ければボーカロイド編集作業もノレるというものだ。が、"Guitar Rig 5 Pro"にアップグレードしても「ボーカル向けプリセット」は増えないし、"Guitar Rig 5"自体も"Vocaloid Editor 3"上では使えないようだ。これらはかなり期待外れだったことは明言しておきたい。
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