さて、iPod touchシリーズの終焉と言う外部要因に強いられる形で外出時の音楽鑑賞環境の見直しを始めて久しい。当面の再生環境は8inch級画面のAndroidタブレット+Musicolet(ローカル音楽ファイル再生に特化した音楽再生アプリ)で固まり、次はインナーイヤーヘッドホンをどうするかとなったのだが、ひょんな弾みで色々と面白いと言うか個人的には興味深い経験をする羽目に陥っている。「ひょんな弾み」とは、「勘違いから」FiiOのBTR7と言うBluetoothレシーバー/USB接続DACを購入してしまったことを指すのだが、本エントリではそこは取り合えずすっ飛ばす。
外出時、特に特急列車移動中に音楽を聴く際に使っているヘッドホンはPioneer SE-CH9Tだ。2017年春ごろにハイレゾ対応を謳って発売された有線式インナーイヤーヘッドホンで、事前知識も入れず、視聴もせず、近所の大型家電量販店にふらっと立ち寄って直観にのみ従って価格も気にせず購入したものだ。所謂「SHURE掛け」に戸惑ったものの、音はまさに私が求めていたものだった。一聴して余りに音が気に入ってしまったため、当日のうちに改めて件の家電量販店に車を走らせてもう一本追加購入してしまった程だ。なお追加購入品は今でも未使用のまま保管してある。あと5年以上前の製品を未だ使っている理由の一つは、2018~2021年は体調を崩していてヘッドホンの更新どころではなかったからである。
先行するエントリでは再生環境にSoundID(ちょっと特殊なヘッドホン向けイコライザーアプリ)が必須と書いたが、それはノイズキャンセリング機能やドライバーなどは(恐らく)優れているのに、正気を疑わざるを得ない音の味付けをされる某SONY社の可哀そうな製品を使う場合の話だ。実際、SoundIDを通して鳴らした某SONY社製ヘッドホンの音は概して好みではある。
と、SoundIDが何をするアプリかを知っている人ならば、この時点で私が好む音の方向性は分かるだろう。ヘッドホンなどの音響機器メーカーがユーザーに押し付ける迷惑な「味付け」、例えば低音域を強調するといったもの、を極力排した、作り手や送り手の意図したものに近い筈だと信じられる音だ。業務用のモニターヘッドホンの音かと言われればそれは違うと明言できる。が、極めてモニターヘッドホン寄りの、リスニングヘッドホンの音と言うことにはなる。粒立ちの良い音、分離の良い音を好んでいるのは間違いない。別の言い方をすれば、ヘッドホンの味付けが適切に効力を発揮するためには音源自体が味付けされていないことが前提となる訳で、私が欲しい音はその「味付けされることも想定した、味付けの無い音源自体の素の音」となる。それはモニターヘッドホンやモニタースピーカーをも使ってプロが作った、リスニングヘッドホンやスピーカーの為の音の筈だ。
オーバーイヤーヘッドホンになるが、Yamaha HPH-MP8の低音域を多少持ち上げると割とそんな音となるのではないかと思っている(異論は認める)。SoundIDのメーカーであるSonarworks社が測定したYamaha HPH-MP8の再生周波数特性(SoundIDで確認できる)は低音域の再生時レベルがやや下がっているので、SoundIDを通してこの部分のレベルを少し上げてやると「少なくとも低域は」良い塩梅となる。まぁ8kHz以上の高音域は少し下げ過ぎな感じもするが、これは私が加齢で高音が聞こえにくくなっている所為かも知れない。
ではPioneer SE-CH9Tの音はどうかと言うと、上記のSoundIDを通した際のYamaha HPH-MP8の音の変化の説明を基準にすれば、高音域は下げず、低音域をもう少し(+2デシベル~25%増しくらい?聴覚上音量が2倍大きく聞こえるのが+6デシベル)持ち上げた上で、全体の音の粒立ちを少し抑えた感じだろうか。長時間聞いていても疲れないぐらいに高音域、低音域ともにまろやかで、特に「刺さるような高音」が良い塩梅に無い。ただし音の分離はあくまで良い。
まぁそんなに言うならPioneer SE-CH9Tを使い続ければ良いんじゃない?、と思ったあなた、あなたは完全に正しい。そして、エゴ丸出しのこんな文章をここまで読んでくれてありがとう、とも言いたい。だが、エントリタイトルが指す内容の本番はまだ先だ。
未使用の予備を所有しているとは言えPioneer SE-CH9Tは既にカタログ落ちして久しく、ネット上の評判やレビューをチェックする限りは、使われている技術はともかく、音の味付けまで含めて考えると直系と呼べる後継製品は見当たらない。故に、仕事柄「一歩先の状況に対して手を打っておく」ことが習い性となっている身としては、「私にとってのPioneer SE-CH9Tの後継品」を見つけるまではイマイチ落ち着かない。加えて先に触れたFiiOのBTR7の導入で、音楽プレーヤーアプリが動作しているタブレットと有線ヘッドホンとの接続方法は「タブレットのヘッドホン端子に直接プラグを刺す」だけではなくなった。当然、接続方法によって音も変わる。後継候補品もそれは同じで、更に接続する機器がサポートするBluetoothのオーディオコーデックの違いも加わり、混沌の度は深まるばかりとなったのだった。
ちなみに選んだ後継候補品はSennheiser IE 100 Pro、モニターヘッドホンだがネット上ではリスニングユースでも評判が良いロングセラー品だ。まさに現在テスト中で、この土日の自由な時間はほぼIE 100 Proの視聴で潰れている。とは言え本製品には既に問題が判明している。昨日Sennheiser社のウェブページにアクセスしたところ、ん~カタログ落ちしたん?・・・続く。