さて#2です。#1は
こちら。
朝日新聞及び朝日新聞デジタルは
「慰安婦問題を考える」というシリーズ記事を最近掲載した。はてさて、今度はどう出てくるかと思ったが、悪い意味で予測が的中、時宜もわきまえず、自らの
非も認めずといった内容であった。私なら(自己検閲)。本エントリから始まるシリーズは、「慰安婦問題を考える」の記事に解説と言うか、「読者への考える
きっかけ」を加える試みである。「不完全な」に込めた意味は主に下記の3点である。
- 記憶に頼るところが多く、ソースが示せない内容を含む。
- どう頑張っても一個人の力だけでは客観性を完全に担保することはできない。
- 事実ベースのアカデミック寄りの姿勢は譲れない。
記憶、と言うのは大学生時代に足しげく大学や自治体の図書館に
通って目にした戦前~戦後の新聞紙面、歴史研究書、手記、個人的な聞き取りの内容である。これらはネットだけでは引用元を担保できない。また、先の震災経
験後に蔵書を泣く泣く処分した。従って引用元が手元に無い場合も多い。
さて、具体的なやり方だが、
- 定本は朝日新聞デジタルの記事とする。より厳密には、 まず2015年8月6日午前7時42~44分の間にダウンロードした記事のウェブページの内容とする。
- 不完全とは言え解説を目指すので、記事全文の引用を基本とする。
- 解説を加える部分に下線を引き、下線部の末尾に"*数字"を付す。つまり、こんな感じだ。*3
- 記事引用の後に、番号毎に解説を付す。
って感じかな。
なお、必要に応じて刺激の強い表現、単語も使用している場合がある。ご注意のほど。
記事開始
強制連行 自由を奪われた強制性あった
2014年8月5日05時00分
〈疑問〉政府は、軍隊や警察などに人さらいのように連れていかれて無理やり慰安婦にさせられた、いわゆる「強制連行」を直接裏付ける資料はないと説明しています。強制連行はなかったのですか。*1
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慰安婦問題に注目が集まった1991~92年、朝日新聞は朝鮮人慰安婦について、「強制連行された」と報じた。吉田清治氏の済州島での「慰安婦狩り」証言(「『済州島で連行』証言」で説明)を強制連行の事例として紹介したほか、宮沢喜一首相の訪韓直前の92年1月12日の社説「歴史から目をそむけまい」で「(慰安婦は)『挺身(ていしん)隊』の名で勧誘または強制連行され」たと表現した。
当時は慰安婦関係の資料発掘が進んでおらず、専門家らも裏付けを欠いたままこの語を使っていた。秦郁彦氏も80年代半ば、朝鮮人慰安婦について「強制連行に近い形で徴集された」と記した=注①。
もともと「朝鮮人強制連行」は、一般的に、日本の植民地だった*1朝鮮の人々を戦時中、その意思とは関係なく、政府計画に基づき、日本内地や軍占領地
の炭鉱や鉱山などに労働者として動員したことを指していた=注②。60年代に実態を調べた在日朝鮮人の研究者が強制連行と呼び=注③=、メディアにも広
がった経緯もあり、強制連行は使う人によって定義に幅がある。
こうした中、慰安婦の強制連行の定義も、「官憲の職権を発動した『慰安婦狩り』ないし『ひとさらい』的連行」に限定する見解=注④=と、「軍また
は総督府が選定した業者が、略取、誘拐や人身売買により連行」した場合も含むという考え方=注⑤=が研究者の間で今も対立する状況が続いている。
朝鮮半島でどのように慰安婦が集められたかという過程は、元慰安婦が名乗り出た91年以降、その証言を通して次第に明らかになっていく。
93年2月、「韓国挺身隊問題対策協議会」は、元慰安婦約40人のうち「信憑性(しんぴょうせい)に自信が持てる」(鄭鎮星〈チョンジンソ
ン〉)・挺身隊研究会会長)19人の聞き取りを編んだ証言集を刊行。「軍人や軍属らによる暴力」があったと語ったのは4人で、多くは民間業者が甘い言葉で
誘ったり、だまして連れて行ったりする誘拐との内容だった。
慰安婦たちは、徴集の形にかかわらず、戦場で軍隊のために自由を奪われて性行為を強いられ、暴力や爆撃におびえ性病や不妊などの後遺症に苦しんだ経験を語っていた。*3
93年8月に発表された宮沢政権の河野洋平官房長官談話(河野談話)は、「慰安所の生活は強制的な状況で痛ましいものだった」「募集、移送、管理
等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」と認めた。関係省庁や米国立公文書館などで日本政府が行った調査では、朝鮮半島では軍
の意思で組織的に有形力の行使が行われるといった「狭い意味の強制連行」は確認されなかったといい、談話は「強制連行」ではなく、戦場の慰安所で自由意思
を奪われた「強制」性を問題とした。
談話発表に先立つ7月には、ソウルの太平洋戦争犠牲者遺族会事務所で、日本政府が元慰安婦たちに聞き取りをした。今年6月に発表された河野談話作
成過程の検証チーム報告は、聞き取りの目的について「元慰安婦に寄り添い、気持ちを深く理解する」とし、裏付け調査などを行わなかったことを指摘した。
河野談話の発表を受け、朝日新聞は翌日の朝刊1面で「慰安婦『強制』認め謝罪 『総じて意に反した』」の見出しで記事を報じた。読売、毎日、産経の各紙は、河野談話は「強制連行」を認めたと報じたが、朝日新聞は「強制連行」を使わなかった。
官房長官への取材を担当していた政治部記者(51)は、専門家の間でも解釈が分かれていることなどから「強制連行」とせず単に「強制」という言葉
を使ったのだと思う、と振り返る。「談話や会見、それまでの取材から読み取れたのは、本人の意思に反する広い意味での強制連行を認めたということだった。
しかし、強制連行という語を使うと読者の誤解を招くと考え、慎重な表現ぶりになった」
93年以降、朝日新聞は強制連行という言葉をなるべく使わないようにしてきた。
97年春に中学教科書に慰安婦の記述が登場するのを機に、朝日新聞は同年3月31日朝刊でこの問題を特集した。
日本の植民地下*2で、人々が大日本帝国の「臣民」とされた朝鮮や台湾では、軍による強制連行を直接示す公的文書は見つかっていない。貧困や家父長制
を背景に売春業者が横行し、軍が直接介入しなくても、就労詐欺や人身売買などの方法で多くの女性を集められたという。一方、インドネシアや中国など日本軍
の占領下にあった地域では、兵士が現地の女性を無理やり連行し、慰安婦にしたことを示す供述が、連合軍の戦犯裁判などの資料に記されている。インドネシア
では現地のオランダ人も慰安婦にされた。*4
97年の特集では「本人の意思に反して慰安所にとどまることを物理的に強いられたりした場合は強制があったといえる」と結論づけた。*5
河野談話が発表されて以降、現在の安倍内閣も含めて歴代の政権は談話を引き継いでいる。一方、日本軍などが慰安婦を直接連行したことを示す日本政府の公文書が見つかっていないことを根拠に、「強制連行はなかった」として、国の責任が全くなかったかのような主張を一部の政治家や識者が繰り返してき
た。*6
朝鮮など各地で慰安婦がどのように集められたかについては、今後も研究を続ける必要がある。だが、問題の本質は、軍の関与がなければ成立しなかった慰安所で女性が自由を奪われ、尊厳が傷つけられたことにある。*7
これまで慰安婦問題を報じてきた朝日新聞の問題意識は、今も変わっていない。*7
■読者のみなさまへ
日本の植民地だった朝鮮や台湾では、軍の意向を受けた業者が「良い仕事がある」などとだまして多くの女性を集めることができ、軍などが組織的に人
さらいのように連行した資料は見つかっていません。一方、インドネシアなど日本軍の占領下にあった地域では、軍が現地の女性を無理やり連行したことを示す
資料が確認されています。*4共通するのは、女性たちが本人の意に反して慰安婦にされる強制性があったことです。*7
◇
注① 「従軍慰安婦(正続)」陸軍史研究会編「日本陸軍の本 総解説」(自由国民社、1985年)
注② 外村大「朝鮮人強制連行」(岩波新書、2012年)
注③ 朴慶植「朝鮮人強制連行の記録」(未来社、1965年)
注④ 秦郁彦「『慰安婦狩り』証言 検証・第三弾 ドイツの従軍慰安婦問題」「諸君!」1992年9月号
注⑤ 吉見義明「『河野談話』をどう考えるか――その意義と問題点」「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター編「『慰安婦』バッシングを越えて」(大月書店、2013年)
記事終了
- <疑問>の時点で既におかしい。「政府の説明の真偽」と「強制連行はあったのか」は独立して検証可能な事項である。これら二点を分離していない書きっぷりは論理性の欠如の証左と言えよう。
- (百歩譲って)議論の分かれる「当時、朝鮮半島が植民地であったか」について当然のようにこう書く姿勢を疑う。朝日新聞社は「植民地の定義」を明確にしなければならない。
歴史上の事実は「合邦」であり、大日本帝国憲法が朝鮮半島にも適用された。この形態は例えばドイツ帝国のパラオや、英国のインドの取り扱いとは一線を画しており、同様に「植民地」と呼ぶには論理的に無理があるとともに、当時の実態に対しての印象操作が疑われても仕方ない。
- 証言資料にのみ依拠しているということ。
- 証拠の存在する事実である。
が、大部分の事案において関係者が法に基づいて処罰されているという事実、つまり軍、政府は「慰安婦強制的連行」を禁止しており処罰者も出ている事実に触れないのは印象操作のそしりを免れ得ない。軍や政府の通達を破った人間が逮捕、処罰されたが故に、当時の司法関連書類などが「慰安婦強制的連行が行われた」という証拠資料として残っているのである。本来はこれら証拠資料の全文を記載、乃至は参照可能としておくことが必要であろう。
- 結論自体は否定しない(厳密には議論のしようがない、理由は続いて記載の通り)が、なぜそう結論したのかの経緯、根拠に一切触れられていない。他者の認識に触れるのは構わないが、自らの結論に対してそこに至る経緯、判断根拠を示さないのは詐欺師のよく使う手段である。また他者の言行に基づいて自己の言行を肯定するという手段は、真っ当な日本人ならば小学校入学時にはもはや使わなくなっているものである。
- 根拠も示さずこの言説は意味不明。印象操作のそしりを免れ得ない。
- 「共通するのは」がかかる範囲が不明、文章自体も意味不明。そのまま読めば、「資料がない」ことと「資料がある」こととに「共通するのは」「強制性があったことです」となる。これは主観だが、まずはちゃんとした日本語の文章が書けるようになってから記事を書くべきである。
「問題意識」の内容も文章中に明確に述べられていない。執筆者はもっとまらしい事を書いているつもりなのだろうが、論理的には何も言っていない。つまり、この一文は無くても良い、と言うか何も変えないつもりならば無い方が良かろう。これからも卑怯でいきまっせ、という宣言と解釈させて頂く。
(注:文字通り「何も言っていない」ということ、「何も言っていないも同然」ということではない。)
全体・感想
<疑問>に対する回答は、
- 日本政府の主張を覆すような資料は現時点でも見つかっていない。
- 当時の日本施政下及び軍事的占領地下において慰安婦として現地の軍隊が女性を連行した事実はある。
の2文で朝日新聞的にも十分であろう、残りの文章は全く不要。それら事項が書きたければ<疑問>を変えるべきであったろう。 執筆者の論理構成能力の欠如があからさまな酷い記事としか言いようがない。論文であればイントロダクションだけでいきなり結論が書いてある様なもの。大事なのはその間に書かれていることなのにね。
*4で触れているように、現地軍による強制連行事案があったのは証拠資料が残る事実であるが、これら事実を強調するならば、少なくとも証拠資料の残る事案において関係者が処罰を受けている事実も記載するのが真っ当な姿勢であろう。こういう底の浅い印象操作を平気で未だにやるあたりに朝日新聞社の卑怯さ具合が良く出ている、
もしこのような印象操作が不要な差別や被害者を生み出す口実にされれば、もはやねつ造、偏向、犯罪のそしりは免れまい。日本人の「察しと思いやり」の中には、「他者を犯罪に導きかねない自らの安易な行動、言動を厳に慎む」というものがある。列車で財布を席に置いたままトイレに行ったりしない、みたいな話である。朝日新聞社にはそういう日本人的な感性も無いのか、分かってはいても酷いものは酷いとしか言いようがない。
2014/08/09 初版