中共の不動産バブル崩壊はもはや既定路線で、素人目にも「何時か」以外は問題ではなくなっていたと言って良いと思う。氏のコラムは、ついに顕在化した不動産バブル崩壊の一端を具体的に記している。書かれていることが全て事実であれば、なんとも予想通りで一片の驚きもない展開のようである。
ただ、驚きのない展開 という点は実は重要と個人的には捉えている。それは中共特有のファクターを踏まえて展開が読めるならば、不動産バブルが崩壊するにしてもまだソフトランディングのための方策が打てる可能性を残すからだ。想定外事象ばかり起こるようでは手の打ちようがない。
中共における「不動産」は日本などにおける「不動産」とはちょっと違う。中共において「土地」は共有財であり、売り買いできるのは「上モノ」だけである。「共有財」と書くとまともっぽいが、実のところは地方政府や人民解放軍、或いは人民解放軍や地方政府を牛耳る共産党員達が自由に扱うことが可能な「実体物」とも言える。
とある人が中共で不動産バブル崩壊が起きない根拠として、「国家、或いは共産党が土地価格を統制できるから」を挙げていたが、それはナイーブ(恥ずべき無知)に過ぎると言えよう。
シャドーバンキングもその利率の高さから明らかにバブル崩壊に関与している。シャドーバンキングの原資は基本的に理財商品であり、それら商品の購買者の多くが一般人民だ。社会主義国家には似合わず基本的に年金制度がない中共においては、高利率の理財商品は老後の備えという意味合いが強いのだそうだ。
上記の事項も踏まえて件のコラムを読めば、中共の不動産バブル崩壊の影響がどう広がっていく「筈」なのかが良く分かる。
ところで、シャドーバンキングの「信用の有り所」は実は私も理解していない。が、理財商品で損害を被った一般人民が地方政府相手にデモを起こすという話を読むに、
実際のところはともかく、共産党乃至は地方政府が信用の元として使われてきたという可能性は高い。それらが商品購入を陽に煽っていた可能性もある。もしそうならば、中共における不動産バブルの崩壊は政治的となる側面を多分に持つことになる。これは中共の特殊事情と言え、産党乃至は地方政府が逃げを打つか、それとも保身の意味でもソフトランディングに尽力するかは重要な分水嶺となる筈だ。
あからさまに逃げを打てば、人民解放軍の発言力、影響力が一気に高まり、中共内外の政治状況が一気に不安定化する可能性があると思う。 政治状況の不安定化は、内部には排除すべき不満分子、外部に軍事的に叩くべき敵国を求める傾向を内在するが故、日本を含む周辺国は特ア特有の「面子」を念頭に置きつつ慎重に振る舞うことが求められようが、事はそう簡単ではない。従って、このような特殊事情の連鎖の発生を未然に防がなければならない。中共指導部が「大人」として振る舞えるかどうかがまず試されることになろう。
本件とは関係ないが、日本の財界人が最近書いたコラムで「中共の(経済)エリートは親日」という内容のものがあった。書き手は何かポジティブなメッセージを込めたいようだったが、一読しての思いは陰鬱としたものだった。エリートということは、中共でいったん事が起これば国外脱出、さもなくば人民からの吊るしあげの対象となるということだ。そんな人間が「親日」だろうが事が起こった時には何の意味もない。ただ、「親日」とばれた時に吊るしあげる側の人間がどう反応するかは実のところ良く分からない。もし更なる激高を呼ぶようならば、自らも加担して育て上げた怒りに自らがさらされることになった、という事だろう。